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ワクワク
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「ただ、かなり高価になってしまうので、一般的には広まってません」と春夏冬さんは言った。
「高価って?」
「そうですねぇ~、学校を何個か作るくらいですかね」
「うわっ!確かに普通の人だと手を出せないかも」
「まぁ、そんなわけで、人の脳を全てパソコンのデータにすることができて、そのデータを肉体に与えるんです」
「ん?でも死んでる肉体なんですよね?」
「すいません。私は回収するまでの担当なもので、あまり詳しくは説明できないのですが、血液を変えて、心臓を強制的に動かすと、生命活動が再開するということらしいです」
「それだけ新鮮さが大切ってことなんですね」
「えぇ、魚で応用されてますが、仮死状態、肉体は死んだことを気づいていないのがベストです」
「なんで僕なんですか?」
「あぁ、そうですよね。今回の移植者との適合率が、あなたが一番なんです」
「そんなことどうやって分かるんですか?」
「全国で行われている健康診断や病院での検査で血液が採取されています。
そのデータを極秘利用しています」
「それでも、その肉体の持ち主が自殺するとは限らないですよね?」
「もちろん候補には十数人と上がります。全国の小中高では、総務省から派遣されて自殺しそうな生徒をリストアップしています」
「それが僕?」
「そういうことです」
「僕の親は、それでいいと?」
「移植される側の人間には、いくつかの義務が課せられます」
「義務?」
「えぇ、あなたの身体は小学生だ。でも、脳は大人になってしまう。そのギャップを我慢して成長に合わせて行動すること。更に、両親とは家族として接し、親孝行すること」
「もし、守らなかったら?」
「私達のメンテナンスを受けられません」
「メンテナンス?」
「まだ移植技術は完全ではありません。まだ科学では解明できてないんですが、肉体が拒絶反応を示す場合があります。そのために特殊な血液に定期的に入れ替えないとなりません」
「肉体が拒絶・・・」
「まぁ、特殊な血液で眠らせるという所でしょうか。もちろん動かすには問題ありません」
「肉体が意思を持っているということてすか?」
「意思とは何か?その定義付けに拠ってくると思います。肉体となった人は、何も考えずに右足から歩き始めていた。魂だった人は左足から歩き始めていた。魂だった人は、ただ歩く、という事を考えてわざわざ左足に動けとは命令しません。その時、右足が先に動いたら?」
「肉体に記憶があるかもってことか。確かにそうですね」
「また話が逸れてしまいましたが、ご両親は、自殺してしまう実の子供よりも、親孝行を約束された他人を選んだ、ということです」
「それはしょうがないと思います。自分も他人を選びます」
「あら、悲しくないんですか?」
「綺麗事は嫌いなんです」
「そんなことじゃ、生きていくのは辛いですよ。世の中、けっこうなぁなぁで動いてるんです」
「フフフッ、春夏冬さん。何しに来たんですか?僕に自殺して欲しいんじゃないんですか?」
「あっ!これは恥ずかしい所を・・・」春夏冬さんは少し顔を赤らめた。
「春夏冬さん、産まれて初めてかもしれないです。他人とこんなに話したのは」僕は笑顔で言った。
「確かに、他の小学生だと話が通じないかもしれないですね」
「一般社会では、捻くれ者としか思われないので、話さないようにしてます。それで、自殺のことなんですが」
「はい」
「自殺してもいいです」
「私が言うのも何なんですが、大人になってからでも遅くはないんではないですか?」
「あと10年以上も退屈な時を過ごすのは御免です。それで、一つお願いが・・・」
「はい、何でしょうか?」
「その魂を入れる施設を見てみたいんです。どうも気になって、死ねそうにありません」
「分かりましたが、くれぐれも秘密にしてくれますか?」
「それは大丈夫です。話す相手なんていませんから」
「それでは、日程を確認してお知らせします」春夏冬さんはコーヒーを飲み干して、席を立った。
「ご馳走様でした」
「大したお構いもせず」
春夏冬さんは初めてニッコリと微笑んだ。
僕も微笑んだ。
玄関で、
「またお会いする日を楽しみにしてます」と言って、無表情に戻った春夏冬さんは、外に出て行った。
それからも僕は普通に日々を過ごした。両親が僕に何も期待してないことは、前から分かっていたことだ。
数週間後、春夏冬さんから連絡があり、次の土曜日に施設に行くことになった。
施設に行くことは、僕の意識がなくなる日が近づくことを意味していたが、僕はワクワクした気持ちが抑えきれなかった。本当に久しぶりにこんな気持ちになった。
「高価って?」
「そうですねぇ~、学校を何個か作るくらいですかね」
「うわっ!確かに普通の人だと手を出せないかも」
「まぁ、そんなわけで、人の脳を全てパソコンのデータにすることができて、そのデータを肉体に与えるんです」
「ん?でも死んでる肉体なんですよね?」
「すいません。私は回収するまでの担当なもので、あまり詳しくは説明できないのですが、血液を変えて、心臓を強制的に動かすと、生命活動が再開するということらしいです」
「それだけ新鮮さが大切ってことなんですね」
「えぇ、魚で応用されてますが、仮死状態、肉体は死んだことを気づいていないのがベストです」
「なんで僕なんですか?」
「あぁ、そうですよね。今回の移植者との適合率が、あなたが一番なんです」
「そんなことどうやって分かるんですか?」
「全国で行われている健康診断や病院での検査で血液が採取されています。
そのデータを極秘利用しています」
「それでも、その肉体の持ち主が自殺するとは限らないですよね?」
「もちろん候補には十数人と上がります。全国の小中高では、総務省から派遣されて自殺しそうな生徒をリストアップしています」
「それが僕?」
「そういうことです」
「僕の親は、それでいいと?」
「移植される側の人間には、いくつかの義務が課せられます」
「義務?」
「えぇ、あなたの身体は小学生だ。でも、脳は大人になってしまう。そのギャップを我慢して成長に合わせて行動すること。更に、両親とは家族として接し、親孝行すること」
「もし、守らなかったら?」
「私達のメンテナンスを受けられません」
「メンテナンス?」
「まだ移植技術は完全ではありません。まだ科学では解明できてないんですが、肉体が拒絶反応を示す場合があります。そのために特殊な血液に定期的に入れ替えないとなりません」
「肉体が拒絶・・・」
「まぁ、特殊な血液で眠らせるという所でしょうか。もちろん動かすには問題ありません」
「肉体が意思を持っているということてすか?」
「意思とは何か?その定義付けに拠ってくると思います。肉体となった人は、何も考えずに右足から歩き始めていた。魂だった人は左足から歩き始めていた。魂だった人は、ただ歩く、という事を考えてわざわざ左足に動けとは命令しません。その時、右足が先に動いたら?」
「肉体に記憶があるかもってことか。確かにそうですね」
「また話が逸れてしまいましたが、ご両親は、自殺してしまう実の子供よりも、親孝行を約束された他人を選んだ、ということです」
「それはしょうがないと思います。自分も他人を選びます」
「あら、悲しくないんですか?」
「綺麗事は嫌いなんです」
「そんなことじゃ、生きていくのは辛いですよ。世の中、けっこうなぁなぁで動いてるんです」
「フフフッ、春夏冬さん。何しに来たんですか?僕に自殺して欲しいんじゃないんですか?」
「あっ!これは恥ずかしい所を・・・」春夏冬さんは少し顔を赤らめた。
「春夏冬さん、産まれて初めてかもしれないです。他人とこんなに話したのは」僕は笑顔で言った。
「確かに、他の小学生だと話が通じないかもしれないですね」
「一般社会では、捻くれ者としか思われないので、話さないようにしてます。それで、自殺のことなんですが」
「はい」
「自殺してもいいです」
「私が言うのも何なんですが、大人になってからでも遅くはないんではないですか?」
「あと10年以上も退屈な時を過ごすのは御免です。それで、一つお願いが・・・」
「はい、何でしょうか?」
「その魂を入れる施設を見てみたいんです。どうも気になって、死ねそうにありません」
「分かりましたが、くれぐれも秘密にしてくれますか?」
「それは大丈夫です。話す相手なんていませんから」
「それでは、日程を確認してお知らせします」春夏冬さんはコーヒーを飲み干して、席を立った。
「ご馳走様でした」
「大したお構いもせず」
春夏冬さんは初めてニッコリと微笑んだ。
僕も微笑んだ。
玄関で、
「またお会いする日を楽しみにしてます」と言って、無表情に戻った春夏冬さんは、外に出て行った。
それからも僕は普通に日々を過ごした。両親が僕に何も期待してないことは、前から分かっていたことだ。
数週間後、春夏冬さんから連絡があり、次の土曜日に施設に行くことになった。
施設に行くことは、僕の意識がなくなる日が近づくことを意味していたが、僕はワクワクした気持ちが抑えきれなかった。本当に久しぶりにこんな気持ちになった。
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