死んでる場合じゃない 〜小学生とエリートスパイとの奇妙な共同作戦〜

ぱるゆう

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父と母の内緒

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「うん」と青龍も真剣な顔になった。

「相手が未経験だと、柔道とは非常に危険なものだ。分かるか?」

「受け身のこと?」

「おぉ、そうだ」と父は優しく微笑んだ。

「受け身というのは、とっても大切なことなんだ。怪我をしないためにな」

「うん、転んでも受け身ができれば怪我しない」

「フフフッ、そういうことだ。受け身が取れない相手を投げることは、相手に大変な怪我がをさせることになる」

「うん、分かった。無闇に使ったりしない」

「うん、それでいい」

「でも、お母さんは何で笑ってたの?」

父はまた固まった。

「もういいでしょ?青龍に柔道をやらせないために黙ってたんだから」

「どういうこと?」と青龍はまた困惑した。

「実はね。お父さん、若い頃柔道の選手だったの」

「母さん」と父は弱々しく言った。

「お父さんは黙ってて」と母は強い口調で言った。

「お父さん、とっても強くて、オリンピックの代表候補になるくらいだったのよ」

「うそ!」と青龍は父のお腹を見た。

「その頃は全身筋肉の塊で、お腹も割れてたのよ」

「そうなんだ・・・」

父はお腹を擦った。

「お父さん、一番軽い階級だったんだけど、それでも皆、お父さんより背が高い。でも、お父さんは、そんなことお構い無しに面白いように相手を投げてたわ」

「どうやって?」

「私は詳しくは分からないけど、とっても速かった。相手を掴んだらすぐに懐に入って、腰をピョ~ンって跳ね上げて相手を投げるの。本当に綺麗だった」

「へぇ~」と青龍は感嘆の声を上げた。

「でも、辞めちゃった」と母は残念そうに言った。

「どうして?」

「それはお父さんに聞いて」

青龍と母は父を見た。

「はぁ~」と父は息を吐き出した。

「ある日、日本で世界大会が開かれる時があった。そこで外国の選手達が練習と稽古のために、うちの道場を使うことになった。まだその頃は父さんは代表じゃなかったから、相手をした。その相手も父さんと同じ階級だと言っていた。しかし、明らかにデカい。話を聞いたら、まだ減量中だと言っていた。父さんは、もちろん減量なんかせずに、その階級だ。相手は一つ上の階級から父さんの階級に来る。ボクシングでも、そうだが、一つ上の階級というのは別次元なんだ。それでも父さんは練習相手になった。いい機会だったからな。でも、やってみたら腕力が全然違う。父さんは振り回されただけだった。それで世界を知り、代表になっても恥をかくだけだと分かり、柔道を辞めたんだ」

「日本の中では強かったの?」

「そうだな。何回か優勝したことがある」

「凄い!でも、何で隠してたの?」

「お前も父さんに似てしまった。その身長だといくら頑張っても、父さんと同じことになる。辛い思いをさせたくなくてな」

「そうだったんだ。ありがとう。お父さん」

「いや、勝手に決めつけてしまった。悪かったな、青龍」

「ううん、僕が苦しまないように考えてくれたことだから、気にしないでよ」

「そうか、ありがとう」

「でも、お母さんはそんな昔からお父さんのこと知ってたんだ?」

「えっ?2人ともずっとここに住んでるから」と父は言った。

「そうよ。近くの工場に元々お父さんが住んでて、ここは私が産まれてからずっと住んでるんだから」

「そうだったっけ?聞いたのかもしれないけど、忘れてた。工場はおじいちゃん達がいるから知ってる。お母さんのおじいちゃん達は、関西じゃなかった?」

「私が結婚するって言ったら、しばらくして、おじいちゃんが産まれた家に戻ったの」

「そうなんだ」

「昔の母さんは・・・」

「お父さん」と母は眉間にシワを寄せながら言った。

父は母をチラリと見て、微笑みながら、
「体操をやっててな。まるで妖精みたいだった」

「へぇ~」青龍が母を見ると、母は恥ずかしそうにしていた。

「前や後ろにグルグル回りながら、ゴム毬のようにピョンピョン跳ねて、最後は見事にピタッと止まるんだ。本当にあの後ろ姿は良かったなぁ。ウエストがギュッとしまっててお尻がキュッと上がっててな。丁度いい筋肉が付いた太腿へのラインが・・・」

「お父さん、言い方がやらしい」

「どうして辞めちゃったの?」

「練習のし過ぎでな。腰をやってしまってドクターストップがかかったんだ。このままだと歩行に支障が出るって」

「違うでしょ?お父さんがもう辞めてくれって泣いたんでしょ?」母は反撃に出るつもりのようだ。

「そりゃそうだよ。まだ若いうちはいいが、年を取ったら一緒に何処にも出かけられなくなる。そんなのは嫌だ」

「やっと青龍ができた時も、無理しないでくれって泣くし」

「そりゃそうだろ。俺が一人で生きていけるわけないだろ。靴下の場所さえ分からないのに」

「全く!少しは自分のことは自分でできるようになってください」

「分かった。分かった、少しずつできるようになるから・・・」

全く仲が良いことで・・・と青龍は苦笑いした。

すっかり冷めてしまった昼ご飯を食べ終わった。

「ご馳走様」色々な意味を込めて青龍は言った。

「はい、ご馳走様。青龍、2時になったら行くか?」

「何処に?」

「何処にって、道場だよ」

「うん!分かった!」

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