旦那様は、パーフェクト高校生

ぱるゆう

文字の大きさ
156 / 165

卒業試験 1

しおりを挟む
優一と小百合の旅行が終わった日の3日後、詩織は、大きいスーツケースを脇に、優一のマンションの集合玄関の前に立った。

これが最後。今更だけど、高校生がこんなマンションに一人暮らしって、どんな金銭感覚なのよ。私の給料で払えるのかしら?

詩織は、集合玄関のインターホンに、優一の部屋番号を打ち込んだ。




当の優一は、午前中に格闘技のジムに行き、帰ってきてから、ずっとスマホの画面に詩織の電話番号を表示させたまま、悩んでいた。

電話しなくちゃ・・・。

この2日間、この画面を何度も開いては消した。

でも、どうしてももう一度だけ会いたかった。




そして、インターホンが鳴ったので、優一は、誰だ?こんな時に、と思いながら行った。

画面には詩織が映っていた。

「あれ?し~ちゃん?鍵忘れたの?」

「ううん、ちゃんと持って来たわよ」

「それなら何で?」

「分かってるんでしょ?部屋に入れたくないなら、今言って」詩織は努めて優しく聞こえるように言った。

「えっ?」優一は言葉に詰まって少しだけ考えた。

しかし、
「でも、やっぱり会いたい!」
そう言いながら、優一は集合玄関のロックを解除した。

「うん、今から行く」詩織は中に入った。

優一の部屋の玄関に着いた。

もういいだろう。鍵で玄関のドアを開けた。

優一は、玄関の前の廊下で立っていた。しかし、明らかに顔は迷っていた。

詩織は玄関の鍵を閉めて、優一の前に立った。
「ゆうくん、しよっ!」詩織は笑顔で言った。

「えっ!」優一は驚いたが、すぐに
「でも・・・」と視線を逸らせて、下を向いた。

「じゃあ、しなくていいのね。帰る」

「嫌だ!」といつもの癖で、顔を上げて反射的に言ってしまった。

しかし、顔は困惑したままだった。

詩織は、スーツケースを玄関の脇に置き、靴を脱いで廊下に上がった。優一の胸の辺りを掴みながら、顎を上げて背伸びをした。

「最後だから」

しかし、優一の手は自分の体の両側に下りていた。

「でも、小百合が・・・」

「分かってる。だから、もう私とのお遊びは終わり。だけど、ゆうくん、踏ん切りがつかないでしょ?お別れの儀式をして、これまでのことは忘れるのよ」

「そんな!忘れられないよ。し~ちゃんのこと・・・」

「前にも言ったでしょ?先生のこと好きだなんて、いつか笑い話になるって」

「そんなことない!し~ちゃんは先生だから好きになったわけじゃない!」

小百合は背伸びを止めて、少し離れた。

「まだ、ここで話す?」




2人はリビングに来た。

詩織は懐かしい、と思ってしまった。たった1ヶ月くらい来なかっただけなのに、遠い昔のような気がした。

それだけ私がこの場所に相応しくないと思ってるのね。

何度もご飯を食べた椅子に座った。

詩織から話し始めた。
「あなたには櫻井さんがいる。それだけで十分でしょ?私がいることが邪魔になるの。いつまでも悩んでる時間なんてない」

「これで最後?」

「うん。明日から、私は先生に戻って、あなたは高峰くんに戻る」

「またしたくなったら?」

「もう分かってるんでしょ?今だって本当は無理だって」

「でも、キスして、裸になれば」

「そんなことで変わらないことくらい、あなたが一番分かってるでしょ?」

「じゃあ、どうやってするんだよ」

「できないってことを知るの。それがお別れの儀式」

やっぱりし~ちゃんは、全部分かってしまっている。

「知りたくない!」

「そんなこと言っても、どうなの?固くなってるの?あなたの体のことなのよ」

し~ちゃんとできるのに、全然嬉しい気持ちが湧いてこない。でも、し~ちゃんのことが好きだ、ずっと一緒にいたいと言ってきたのに、それが全部嘘になってしまう。

「し~ちゃんと離れたくない」そう優一は言ったが、顔は浮かないままだった。

嘘ではないのだろう、と詩織は思った。詩織は、優一の父親の言葉を思い出した。過去の自分が間違っていたことを認めたくない。だから、口では好きだと言うかもしれない。

「勘違いしないで。今はあの頃と状況が変わったの。別にあなたが今まで私としたいから、嘘をついてたなんて、これっぽっちも思ってないから。
あの頃は、本当に私のこと好きだった。でもね。人間の感情は変わるの。あんなに好きだった食べ物が、いつか食べたくなくなる。よくあること。
もし、好きって感情が、いつかなくなってしまうことを心配してるなら、小百合ちゃん無しで、あなたは生きられる?生活できる?」

「無理だと思う」

「そうでしょ。今までは小百合ちゃんが、あなたの傍から必死で離れなかった。これからは、あなたが小百合ちゃんに必死でしがみつくの。
そりゃ、これから喧嘩もするだろうし、顔を見たくない日もあると思う。
そういう時は、いくら理不尽な原因があっても、あなたから謝りなさい」

「分かってる。父さんもよくしてるから」

「心配しないで。ゆうくん以上の男なんて、この世に存在しないから。小百合ちゃんは、何処かに行ったりしないわよ」

「それなら、し~ちゃんは?」

「私が、あなたと年が近くて、フレッドより先に会ってたら、分からなかったわよ」

「僕は年なんて、どうでもいい」

「全く!私のことを好きになる男は、本当にろくなのがいないわね」詩織は呆れた。

「し~ちゃんが悪いんだろ。それだけ魅力的なんだから」

「私がした相手は、フレッドとあなただけ!他の男は見向きもしないわよ!」

「えっ?ホントに?」

「こんなことで、あなたに嘘ついてどうするのよ。本当に面倒くさい!」

優一は少し嬉しくなった。
「もしできたら、また会ってくれる?」

「はいはい、いいわよ」詩織は頷いたが、無理なことは分かっていた。

私に罪悪感を抱きながら、桜井さんとはできた。ゆうくんの性格を考えたら、2人とするなんて選択肢はない。となると、櫻井さんに罪悪感を抱きながら、私とできるわけがない。

「ベッド、いや、その前にシャワー行く」

「はいはい。好きにして」





しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

永遠の十七歳なんて、呪いに決まってる

鷹 綾
恋愛
永遠の十七歳―― それは祝福ではなく、三百年続く“呪い”だった。 公には「名門イソファガス家の孫娘」として知られる少女キクコ。 だがその正体は、歴史の裏側で幾度も国を救ってきた不老の元聖女であり、 王家すら真実を知らぬ“生きた時代遺産”。 政治も権力も、面倒ごとは大嫌い。 紅茶と読書に囲まれた静かな余生(?)を望んでいたキクコだったが―― 魔王討伐後、王位継承問題に巻き込まれたことをきっかけに、 まさかの王位継承権十七位という事実が発覚する。 「……私が女王? 冗談じゃないわ」 回避策として動いたはずが、 誕生した新国王アルフェリットから、なぜか突然の求婚。 しかも彼は、 幼少期に命を救われた“恩人”がキクコであることを覚えていた―― 年を取らぬ姿のままで。 永遠に老いない少女と、 彼女の真実を問わず選んだ自分ファーストな若き王。 王妃になどなる気はない。 けれど、逃げ続けることももうできない。 これは、 歴史の影に生きてきた少女が、 はじめて「誰かの隣」を選ぶかもしれない物語。 ざまぁも陰謀も押し付けない。 それでも―― この国で一番、誰よりも“強い”のは彼女だった。

苦手な冷徹専務が義兄になったかと思ったら極あま顔で迫ってくるんですが、なんででしょう?~偽家族恋愛~

霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
「こちら、再婚相手の息子の仁さん」 母に紹介され、なにかの間違いだと思った。 だってそこにいたのは、私が敵視している専務だったから。 それだけでもかなりな不安案件なのに。 私の住んでいるマンションに下着泥が出た話題から、さらに。 「そうだ、仁のマンションに引っ越せばいい」 なーんて義父になる人が言い出して。 結局、反対できないまま専務と同居する羽目に。 前途多難な同居生活。 相変わらず専務はなに考えているかわからない。 ……かと思えば。 「兄妹ならするだろ、これくらい」 当たり前のように落とされる、額へのキス。 いったい、どうなってんのー!? 三ツ森涼夏  24歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』営業戦略部勤務 背が低く、振り返ったら忘れられるくらい、特徴のない顔がコンプレックス。 小1の時に両親が離婚して以来、母親を支えてきた頑張り屋さん。 たまにその頑張りが空回りすることも? 恋愛、苦手というより、嫌い。 淋しい、をちゃんと言えずにきた人。 × 八雲仁 30歳 大手菓子メーカー『おろち製菓』専務 背が高く、眼鏡のイケメン。 ただし、いつも無表情。 集中すると周りが見えなくなる。 そのことで周囲には誤解を与えがちだが、弁明する気はない。 小さい頃に母親が他界し、それ以来、ひとりで淋しさを抱えてきた人。 ふたりはちゃんと義兄妹になれるのか、それとも……!? ***** 千里専務のその後→『絶対零度の、ハーフ御曹司の愛ブルーの瞳をゲーヲタの私に溶かせとか言っています?……』 ***** 表紙画像 湯弐様 pixiv ID3989101

憧れのあなたとの再会は私の運命を変えました~ハッピーウェディングは御曹司との偽装恋愛から始まる~

けいこ
恋愛
15歳のまだ子どもだった私を励まし続けてくれた家庭教師の「千隼先生」。 私は密かに先生に「憧れ」ていた。 でもこれは、恋心じゃなくただの「憧れ」。 そう思って生きてきたのに、10年の月日が過ぎ去って25歳になった私は、再び「千隼先生」に出会ってしまった。 久しぶりに会った先生は、男性なのにとんでもなく美しい顔立ちで、ありえない程の大人の魅力と色気をまとってた。 まるで人気モデルのような文句のつけようもないスタイルで、その姿は周りを魅了して止まない。 しかも、高級ホテルなどを世界展開する日本有数の大企業「晴月グループ」の御曹司だったなんて… ウエディングプランナーとして働く私と、一緒に仕事をしている仲間達との関係、そして、家族の絆… 様々な人間関係の中で進んでいく新しい展開は、毎日何が起こってるのかわからないくらい目まぐるしくて。 『僕達の再会は…本当の奇跡だ。里桜ちゃんとの出会いを僕は大切にしたいと思ってる』 「憧れ」のままの存在だったはずの先生との再会。 気づけば「千隼先生」に偽装恋愛の相手を頼まれて… ねえ、この出会いに何か意味はあるの? 本当に…「奇跡」なの? それとも… 晴月グループ LUNA BLUホテル東京ベイ 経営企画部長 晴月 千隼(はづき ちはや) 30歳 × LUNA BLUホテル東京ベイ ウエディングプランナー 優木 里桜(ゆうき りお) 25歳 うららかな春の到来と共に、今、2人の止まった時間がキラキラと鮮やかに動き出す。

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

【完結済】25億で極道に売られた女。姐になります!

satomi
恋愛
昼夜問わずに働く18才の主人公南ユキ。 働けども働けどもその収入は両親に搾取されるだけ…。睡眠時間だって2時間程度しかないのに、それでもまだ働き口を増やせと言う両親。 早朝のバイトで頭は朦朧としていたけれど、そんな時にうちにやってきたのは白虎商事CEOの白川大雄さん。ポーンっと25億で私を買っていった。 そんな大雄さん、白虎商事のCEOとは別に白虎組組長の顔を持っていて、私に『姐』になれとのこと。 大丈夫なのかなぁ?

あの夜、あなたがくれた大切な宝物~御曹司はどうしようもないくらい愛おしく狂おしく愛を囁く~

けいこ
恋愛
密かに想いを寄せていたあなたとのとろけるような一夜の出来事。 好きになってはいけない人とわかっていたのに… 夢のような時間がくれたこの大切な命。 保育士の仕事を懸命に頑張りながら、可愛い我が子の子育てに、1人で奔走する毎日。 なのに突然、あなたは私の前に現れた。 忘れようとしても決して忘れることなんて出来なかった、そんな愛おしい人との偶然の再会。 私の運命は… ここからまた大きく動き出す。 九条グループ御曹司 副社長 九条 慶都(くじょう けいと) 31歳 × 化粧品メーカー itidouの長女 保育士 一堂 彩葉(いちどう いろは) 25歳

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

腹黒上司が実は激甘だった件について。

あさの紅茶
恋愛
私の上司、坪内さん。 彼はヤバいです。 サラサラヘアに甘いマスクで笑った顔はまさに王子様。 まわりからキャーキャー言われてるけど、仕事中の彼は腹黒悪魔だよ。 本当に厳しいんだから。 ことごとく女子を振って泣かせてきたくせに、ここにきて何故か私のことを好きだと言う。 マジで? 意味不明なんだけど。 めっちゃ意地悪なのに、かいま見える優しさにいつしか胸がぎゅっとなってしまうようになった。 素直に甘えたいとさえ思った。 だけど、私はその想いに応えられないよ。 どうしたらいいかわからない…。 ********** この作品は、他のサイトにも掲載しています。

処理中です...