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旅行に行ける?
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あ僕は部屋を出た。
「はぁぁぁ」と体中の息を吐いた。
旦那さんが立ち上がって近づいてくる。
僕はパソコンを持っていない手を前に突き出して、下がらせた。
スミレさんと3人で座る。
僕はプリンターで契約書を印刷した。
「美杉さんが提示した条件を飲むなら、堕胎することに同意すると言っています」
「私と妻の離婚とか?」
「お2人の夫婦関係や、お子さんとの親子関係を直接壊すようなことは、何もありません。安心してください」
印刷し終わった紙を旦那に渡す。一通り読み終わった後、スミレさんに渡した。
スミレさんの顔がピクピクと引きつった。バレたか!逃げ出したくなった。
「私は全部OKよ。相手の条件を飲むわ」
「ホントにいいのか?」
「別に問題ないわ」
「分かった」
白石はペンを渡した。
「お互い同じ内容か確認し、問題ないなら、お互い2枚に署名して、1枚ずつ保管してください。僕の仕事はここまでです」
「分かった。行ってくる」
「じゃあ、私、帰るわね」
「えっ!何でだよ」
「美杉さん出てきて、私がいたら、まずいでしょ」
「あぁ、確かに。分かった」
「僕は10分くらい残りますから、何かあったら、出てきてください」
「分かった」
旦那さんは扉を開けて、中に入った。
「ねぇ、ちょっといい?」
「あれ?帰られるんでは・・・」
「あなたが盛ったんでしょ」
「なんのことだか、さっぱり」パソコンをしまい始めた。
「待ちなさい」
「はい!」
「私と会う時間を作るために、会わせる回数を増やしたでしょって言ってるの!」
「これは、美杉さんが・・・」
「素人がこんな重箱の隅をつつくみたいな条件を出すわけないでしょ。全く、仕事に私情を持ち込むなんて最低!ご褒美はなしよ!」
「えぇ!そんな頑張ったのに」
「仕事は頑張って当たり前!」
「はい、おっしゃる通りです」
「はぁ、全く。行くわよ」
「えっ!でも」
「入って何もないんだから、もう問題ないわよ。特に向こうの条件を全部呑んでいるんだから」
「はい、わかりました」
店を出た。
「ああっ!説教し足りないわ。行くわよ」
「はい・・・」
近くの飲み屋に入った。
「ビール!」とスミレさんは言う。
「僕も」
「適当に頼んで」
「分かりました」
傍目には、会社の上司に怒られる若い社員といったところだろう。
「全くもう!」
「ごめんなさい。でも、スミレさんがなかなか会ってくれないから」
「何?これが最後にしてほしいの!」
「いえ、全然、そんなことは望んでおりません」
ビールとお通しが運ばれてくる。
「全くもう!」
スミレさんはビールを半分くらい飲む。
「本当にごめんなさい。でも、長くは続かないと思います。長くて1年、短ければ半年ってところですかね」
「えっ?なんでよ」
「契約書に最後に付け加えたんですけど、見ました?」
「最後?確か、他の人とは浮気、不倫しないってヤツ?」
「そうです」
「それがなんで?」
「美杉さんは、完全なハンタータイプですね」
「ハンタータイプ?」
「そうです。まず、美杉さん、綺麗ですねって言ったんです」
「はぁ?何しに行ったのよ」
「本心ですけど、目的は違いますよ。美杉さんの反応を見ていたんです。
美人って、大きく2つに分けられると思うんです。僕の奥さんは、美人と言われても気にしないタイプ。スミレさんも同じですね。だから?って言い返したくなりませんか?」
「まぁ、言わないけどね」
「美杉さんは、それを自信にしているんです。武器と言った方が分かりやすいですかね」
「そんな感じもするわね。それで?」
「病院では、旦那さんとスミレさんは、最近凄く仲が良くなったと噂になっていた」
「まぁ、そうね。実際に仲いいし」
「それで美杉さんは、旦那さんを奪いたくなったんでしょう。自分ならできると」
「ちょっと待って。旦那のことが好きだから奪うんじゃなくて。夫婦仲を壊すために奪おうとしたってこと」
「本人の中では、スミレさんのことはどうでも良かったと思います。だから壊すことが目的ではありません。旦那さんに家庭を捨てさせて、自分のところに来させることが目的です」
「う~ん、結果的には同じよね」
「結果的にはそうですね。自分のために、相手に大事なものを捨てさせることに快感を覚えるタイプだと思います」
「そうだとすると、今回の契約書に書かれたことは、あの子が満足を得られる内容にしたと」
「そういうことです。旦那さんを独占する。自分の目的は、ほぼ達成できと本人も思えたでしょう。それに、本人も馬鹿じゃないので、裁判沙汰になることは望んでません。僕が出てきたってことは、スミレさんから慰謝料の請求がされてもおかしくないって警告になります」
「確かにそうね。それでも妊娠までする?」
「その話ですけど、何か確かめましたか?本人からの発言だけじゃないですか?」
「えっ?もちろん私は知らないわよ。医者の旦那が言ってるんだから、確認したんじゃないの?」
「推測ですけど、気が動転していたので、はっきりとした証拠は見せてもらってないと思います」
「えっ!何!全部嘘ってこと!」
「まぁ、推測ですけど。美杉さんがそこまでするとは思えないんです」
「はぁ、なんだ。馬鹿らしい」
「マジックはトリックが分かってしまえれば、大したことはないって思うのと同じです。真実なんて、いいえて馬鹿らしいものです」
「ふ~ん」スミレさんはニヤニヤした。
「なっ、何ですか!」
「大人になったなぁって思ってね」
「もう社会人ですよ」
「あぁ、あの可愛らしい高校生のままだったら、毎週でも会いたかったなぁ」
「その頃だって、そんなに会ってくれなかったじゃないですか!」
「そうだったかしら?最近、もの覚えが。フフフッ」
「笑っちゃってるじゃないですか!もう!」
「分かったわ。成功報酬は払うわ」
「えっ、ホントですか!やった!嬉しい」
「頑張ったわね。さっきはゴメンネ。私情を挟んだなんて怒って」
「あぁ、それは気にしないでください。半年とは言え、スミレさんと会う可能性を上げるためにしたことです」
「こら!」
「ひぃ~、ごめんなさい」
「まぁ、いいわ。どのコースにする?」
「コースって、まだ食べるんですか?」
「何言ってるのよ。はとバスのコース」
「はとバス・・・って日帰りじゃないですか!」
「えっ、何が?旅行に行くとは言ったけど、泊まるとは、ひと言も言ってないわよ」
「えぇっ!」記憶を遡る。弁護士に記憶力はとても大事だ。
(回想)
「旅行でも何でもしてあげる」
「確かに泊まるとは言ってない」
「そうでしょ」
「はっとバス、はっとバス」
「はとバスじゃ嫌です」
「何で、楽しいよ。はとバス」
「エッチできない」
「もういい加減、飽きないのって、こっちが言い飽きたわよ。旅行は任せるわ。一泊なら行かないからね。分かった?」
「はい、分かりました。じゃあ決まったら、電話していいですか?」
「電話は良いけど、会わないからね」
「やっぱりダメか。分かりました。考えておきます」
「それじゃ、子供、お母さんに任せてるから、帰るわね」
「キスだけ」
「分かったわよ」
店を出て、暗いところで舌を絡めた。
白石と別れて、電車に揺られる。
ドアにもたれ掛かりながら、外の光を見る。なんかすっかり大人になってたなぁ。もう6年?それ以上かな。
私も年取ったなぁ、と映る自分に焦点を合わせる。
20代より30代のほうがセックスしてるとか、どんな人生なんだ、と考えると可笑しくなる。
もう世間的にはアラフォーか・・・。
最近は40代|でも初産という女性は少なくない。
私は一生懸命に応援するしかできない。医者がどうこうできるほど出産は甘くない。不妊治療も同じだ。できることしかできない。
少子化にしても、医者ができることはほとんどない。作ろうとする人がいない限り、医者の出番はないからだ。
欲しい人に産んでもらえるように、少しでも確率を上げるだけだ。しかし、無理に作っても、産まれてくるかは神のみぞ知るところだ。
まぁ、あの子の言っていたとおり、100%はない。やれることを一生懸命にやるだけだ。
とりあえず突然起こったトラブルは、ひとまずは解決した。後は、あの子の言う通り、早く収まることを願うだけだ。
明日はたっぷり栄養補給して、明後日からも頑張るか。
「はぁぁぁ」と体中の息を吐いた。
旦那さんが立ち上がって近づいてくる。
僕はパソコンを持っていない手を前に突き出して、下がらせた。
スミレさんと3人で座る。
僕はプリンターで契約書を印刷した。
「美杉さんが提示した条件を飲むなら、堕胎することに同意すると言っています」
「私と妻の離婚とか?」
「お2人の夫婦関係や、お子さんとの親子関係を直接壊すようなことは、何もありません。安心してください」
印刷し終わった紙を旦那に渡す。一通り読み終わった後、スミレさんに渡した。
スミレさんの顔がピクピクと引きつった。バレたか!逃げ出したくなった。
「私は全部OKよ。相手の条件を飲むわ」
「ホントにいいのか?」
「別に問題ないわ」
「分かった」
白石はペンを渡した。
「お互い同じ内容か確認し、問題ないなら、お互い2枚に署名して、1枚ずつ保管してください。僕の仕事はここまでです」
「分かった。行ってくる」
「じゃあ、私、帰るわね」
「えっ!何でだよ」
「美杉さん出てきて、私がいたら、まずいでしょ」
「あぁ、確かに。分かった」
「僕は10分くらい残りますから、何かあったら、出てきてください」
「分かった」
旦那さんは扉を開けて、中に入った。
「ねぇ、ちょっといい?」
「あれ?帰られるんでは・・・」
「あなたが盛ったんでしょ」
「なんのことだか、さっぱり」パソコンをしまい始めた。
「待ちなさい」
「はい!」
「私と会う時間を作るために、会わせる回数を増やしたでしょって言ってるの!」
「これは、美杉さんが・・・」
「素人がこんな重箱の隅をつつくみたいな条件を出すわけないでしょ。全く、仕事に私情を持ち込むなんて最低!ご褒美はなしよ!」
「えぇ!そんな頑張ったのに」
「仕事は頑張って当たり前!」
「はい、おっしゃる通りです」
「はぁ、全く。行くわよ」
「えっ!でも」
「入って何もないんだから、もう問題ないわよ。特に向こうの条件を全部呑んでいるんだから」
「はい、わかりました」
店を出た。
「ああっ!説教し足りないわ。行くわよ」
「はい・・・」
近くの飲み屋に入った。
「ビール!」とスミレさんは言う。
「僕も」
「適当に頼んで」
「分かりました」
傍目には、会社の上司に怒られる若い社員といったところだろう。
「全くもう!」
「ごめんなさい。でも、スミレさんがなかなか会ってくれないから」
「何?これが最後にしてほしいの!」
「いえ、全然、そんなことは望んでおりません」
ビールとお通しが運ばれてくる。
「全くもう!」
スミレさんはビールを半分くらい飲む。
「本当にごめんなさい。でも、長くは続かないと思います。長くて1年、短ければ半年ってところですかね」
「えっ?なんでよ」
「契約書に最後に付け加えたんですけど、見ました?」
「最後?確か、他の人とは浮気、不倫しないってヤツ?」
「そうです」
「それがなんで?」
「美杉さんは、完全なハンタータイプですね」
「ハンタータイプ?」
「そうです。まず、美杉さん、綺麗ですねって言ったんです」
「はぁ?何しに行ったのよ」
「本心ですけど、目的は違いますよ。美杉さんの反応を見ていたんです。
美人って、大きく2つに分けられると思うんです。僕の奥さんは、美人と言われても気にしないタイプ。スミレさんも同じですね。だから?って言い返したくなりませんか?」
「まぁ、言わないけどね」
「美杉さんは、それを自信にしているんです。武器と言った方が分かりやすいですかね」
「そんな感じもするわね。それで?」
「病院では、旦那さんとスミレさんは、最近凄く仲が良くなったと噂になっていた」
「まぁ、そうね。実際に仲いいし」
「それで美杉さんは、旦那さんを奪いたくなったんでしょう。自分ならできると」
「ちょっと待って。旦那のことが好きだから奪うんじゃなくて。夫婦仲を壊すために奪おうとしたってこと」
「本人の中では、スミレさんのことはどうでも良かったと思います。だから壊すことが目的ではありません。旦那さんに家庭を捨てさせて、自分のところに来させることが目的です」
「う~ん、結果的には同じよね」
「結果的にはそうですね。自分のために、相手に大事なものを捨てさせることに快感を覚えるタイプだと思います」
「そうだとすると、今回の契約書に書かれたことは、あの子が満足を得られる内容にしたと」
「そういうことです。旦那さんを独占する。自分の目的は、ほぼ達成できと本人も思えたでしょう。それに、本人も馬鹿じゃないので、裁判沙汰になることは望んでません。僕が出てきたってことは、スミレさんから慰謝料の請求がされてもおかしくないって警告になります」
「確かにそうね。それでも妊娠までする?」
「その話ですけど、何か確かめましたか?本人からの発言だけじゃないですか?」
「えっ?もちろん私は知らないわよ。医者の旦那が言ってるんだから、確認したんじゃないの?」
「推測ですけど、気が動転していたので、はっきりとした証拠は見せてもらってないと思います」
「えっ!何!全部嘘ってこと!」
「まぁ、推測ですけど。美杉さんがそこまでするとは思えないんです」
「はぁ、なんだ。馬鹿らしい」
「マジックはトリックが分かってしまえれば、大したことはないって思うのと同じです。真実なんて、いいえて馬鹿らしいものです」
「ふ~ん」スミレさんはニヤニヤした。
「なっ、何ですか!」
「大人になったなぁって思ってね」
「もう社会人ですよ」
「あぁ、あの可愛らしい高校生のままだったら、毎週でも会いたかったなぁ」
「その頃だって、そんなに会ってくれなかったじゃないですか!」
「そうだったかしら?最近、もの覚えが。フフフッ」
「笑っちゃってるじゃないですか!もう!」
「分かったわ。成功報酬は払うわ」
「えっ、ホントですか!やった!嬉しい」
「頑張ったわね。さっきはゴメンネ。私情を挟んだなんて怒って」
「あぁ、それは気にしないでください。半年とは言え、スミレさんと会う可能性を上げるためにしたことです」
「こら!」
「ひぃ~、ごめんなさい」
「まぁ、いいわ。どのコースにする?」
「コースって、まだ食べるんですか?」
「何言ってるのよ。はとバスのコース」
「はとバス・・・って日帰りじゃないですか!」
「えっ、何が?旅行に行くとは言ったけど、泊まるとは、ひと言も言ってないわよ」
「えぇっ!」記憶を遡る。弁護士に記憶力はとても大事だ。
(回想)
「旅行でも何でもしてあげる」
「確かに泊まるとは言ってない」
「そうでしょ」
「はっとバス、はっとバス」
「はとバスじゃ嫌です」
「何で、楽しいよ。はとバス」
「エッチできない」
「もういい加減、飽きないのって、こっちが言い飽きたわよ。旅行は任せるわ。一泊なら行かないからね。分かった?」
「はい、分かりました。じゃあ決まったら、電話していいですか?」
「電話は良いけど、会わないからね」
「やっぱりダメか。分かりました。考えておきます」
「それじゃ、子供、お母さんに任せてるから、帰るわね」
「キスだけ」
「分かったわよ」
店を出て、暗いところで舌を絡めた。
白石と別れて、電車に揺られる。
ドアにもたれ掛かりながら、外の光を見る。なんかすっかり大人になってたなぁ。もう6年?それ以上かな。
私も年取ったなぁ、と映る自分に焦点を合わせる。
20代より30代のほうがセックスしてるとか、どんな人生なんだ、と考えると可笑しくなる。
もう世間的にはアラフォーか・・・。
最近は40代|でも初産という女性は少なくない。
私は一生懸命に応援するしかできない。医者がどうこうできるほど出産は甘くない。不妊治療も同じだ。できることしかできない。
少子化にしても、医者ができることはほとんどない。作ろうとする人がいない限り、医者の出番はないからだ。
欲しい人に産んでもらえるように、少しでも確率を上げるだけだ。しかし、無理に作っても、産まれてくるかは神のみぞ知るところだ。
まぁ、あの子の言っていたとおり、100%はない。やれることを一生懸命にやるだけだ。
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