女子高生コスプイヤーは恋をする

ぱるゆう

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晴菜は服の作成に取りかかった。
寿璃叶からスケッチブックを返された時には、何も変更はなかった。

まずはパターン作りから取り掛かる。出来上がったら、トルソーにピンで刺してサイズを測ってみる。それを繰り返して、パターンを決めた。

生地にパターンを置いてみたら、
「やっぱり寿璃叶は小さいな。生地が余りそうだ。あっ!どうやって着るようにしよう?前のボタン?でも、これって飾りっぽいよな。やっぱり背中でファスナーかな?コートもあるから、背中は隠れるし。でも、なんか魔法っぽくないんだよな。まぁ、アニメは変身で着替えてるわけじゃないから、作者の人に聞いても答えなんかないんだろうな」

生地を裁断し、トルソーにまち針で固定して、またサイズを測った。
「今回は少し余裕を持って細断したから、多少体形が変わっても大丈夫だ。でも、姫川さんと違って寿璃叶は食べることにそんなに興味がないみたいだから大丈夫だろうけど」

晴菜は寿璃叶にラインした。
『明日、仮縫いするから、土曜日には大丈夫だよ』

『杏寿も行きたいって言ってるんだけど』

『それなら、そっちに行こうか?』

『道具持ってくるの大変でしょ。晴菜の家に行くから』

『待ってる』

『そっちには泊まれないから、一緒に来てね』

『なんか面倒だな』

『あの子も来るんでしょ。あの子が泊まるって言い出したら、どうするの?』

『流石に、そんなこと言わないと思うけど。予定通り、こっちで』

『うん、楽しみにしてる』

『仮縫いだから、ただの黒い服だからね。完成までには程遠いから』

『分かってるわよ。でも、少しずつでも近づいてる感じが嬉しいの』

『寿璃叶の期待に応えられる物を作るよ』

『晴菜が受けてくれて良かった』

『大好きな寿璃叶のためなら』

『私も大好きだよ。明日学校もあるから、これで終わり。おやすみなさい』

『おやすみなさい』

晴菜はスマホの画面を消し、
「また明日、頑張ろう」と布団に入った。




そして、土曜日。
「こんにちは」と声がした。晴菜が居間から出ると、夏凛だった。

「九條くん、ジュジュ様は?」

「まだです。随分早いですね」

「なんか家にいても落ち着かなくて。衣装は?」

「僕の部屋です」

「見たい!」

「ダメです。寿璃叶が先です」

「はぁ~、自分の時みたいにドキドキしちゃうよ」

「とりあえず一緒に待ってください」と夏凛と一緒に居間に来た。

「おじいちゃん、こんにちは」

「おっ!夏凛ちゃん、いらっしゃい。今川焼食うか?」

「あのアンコの詰まった?」

祖父は頷いた。

「食べたい!」

「じいちゃんが食べたいんだろ」と晴菜は呆れながら、台所に行った。

包丁で半分にして、電子レンジに入れて少し温めた。

「はい」と2つの皿にのせた今川焼を出した。

「これ大きくて、半分でも十分お腹いっぱいになる。いただきます」

「お茶持ってきます」と晴菜はまた台所に行った。

「う~ん、アンコがぎっしりで、本当に美味しい」と夏凛の声が聞こえた。

「はい、お茶」と晴菜はテーブルに置いた。

夏凛はお茶を飲んで、
「アンコとお茶の組み合わせ、たまんない」

「晴菜は甘いものがあんまり好きじゃないから、夏凛ちゃんが来てくれると助かるよ」

「そんなに甘くないと思うけど」

「じいちゃんに丸々一つ食べさせる訳にはいかないから、必ず僕が半分食べることになるんです。食べ飽きたという方が正しいですよ」

「私なら毎日でもいいかも」

「夕飯減らすならいいですよ」

「若いから大丈夫だもん」

「衣装入らなくなりますよ」

夏凛はギクッとした。

「えっ!あれから着たことは?」

「初めのうちは嬉しくて着たんだけど、最近はいつでも着れると思うと、眺めてるだけで満足しちゃって・・・」

「あの衣装、初めてだったんで、ギリギリのサイズで作ってしまって」

「だっ、大丈夫よ。着れるに決まってるじゃない」

「今はダメですけど。次の衣装を作るときには、またサイズを測り直さないと、一度も着れないままなんてことはないですよね?」

「そっ、そんなことあるわけないじゃない。大丈夫よ。前のサイズのままで」

「まぁ、1、2ヶ月は先になるんで、その時また話しましょう」

「分かりました・・・」



その時、玄関から、
「お邪魔します」と声が聞こえた。

「あっ!来た」と晴菜は立ち上がって、居間を出た。

「寿璃叶、杏寿ちゃん、いらっしゃい」

「お兄ちゃん」と杏寿が言った。

寿璃叶は玄関を見て、女物の靴があることを確認して、
「もう来てるのね」

「あっ!ジュジュ様!本当にいたんだ」と晴菜の後ろから声がした。

「寿璃叶も杏寿ちゃんも上がって。ごめん、スリッパとかないんだ」

「大丈夫よ」と言って寿璃叶は上がった。杏寿は扉を閉めてから上がった。

夏凛は目を丸くして、
「この子は?」と晴菜に言った。

「寿璃叶の妹の杏寿ちゃん、中学3年生」

夏凛は杏寿の頭から足まで見て、寿璃叶と見比べた。
「そうなんだ・・・。でも、ジュジュ様の妹だけあって、とっても可愛い!」

「あっ、ありがとうございます」と杏寿は顔を赤くした。

「おじいちゃんは?」寿璃叶が言った。

「居間にいる」

「そう」と言って、寿璃叶は居間に入った。

「おじいちゃん、お邪魔します」

「あぁ、寿璃叶ちゃん、いらっしゃい。毎週のように晴菜が泊まりに行って悪いね」

「いえ、私も一緒にいたいので」

「それならいいんだ」

「ほら、杏寿」と寿璃叶は襖の陰に隠れている杏寿に言った。

杏寿は渋々顔を下に向けながら、居間に入った。
「初めまして、妹の杏寿です」と頭を下げた。

「・・・、これはまた立派な妹だ」と祖父は目を丸くしながら言った。

「中3なんだ」と晴菜が言った。

「こりゃ、この先、どんだけ美人になるか楽しみだな」

「いえ、そんな・・・・」と言いながら杏寿は顔をまた赤くした。

「じゃあ、僕の部屋に行くよ」

「あぉ、ごゆっくり。飲み物なんかは大丈夫か?」

「とりあえず衣装を確認したからにするよ」

「分かった」

春奈を先頭に2階の晴菜の部屋へと行く。

「どうぞ」と晴菜が襖を開けた。

「うわっ!凄い!」と寿璃叶が言って、パニエを履いたトルソーに着せられた衣装の所に言った。

「お兄ちゃん!凄い!」

「九條くん、素敵!」

「まだ仮縫いだから」晴菜は襖を閉めて、
「背中にジッパーが付いてるから、下から履く感じで。その後、パニエを履いて」

「分かった」と言って、寿璃叶は服を脱ごうとした。

「晴菜?」

「何?」

「見てるつもり?」

「あぁ、そうだね」と晴菜は襖を開けた。

「あなたも」と寿璃叶は夏凛に言った。

「ですよねぇ」と夏凛は背中を向けた。

「杏寿は手伝って」

「うん」

晴菜と夏凛が廊下に出て襖が閉まると、寿璃叶は服を脱いだ。

杏寿はジッパーを外してトルソーから衣装を抜いた。

「上から着たほうが早いかも」

「そうして」寿璃叶は両腕を上げて、衣装を頭から入れて、袖に手を通しながら着た。杏寿がジッパーを閉めた。

トルソーからパニエを取って、寿璃叶は履いた。

「お姉ちゃん、素敵!」杏寿は感嘆の声を上げた。

寿璃叶はキョロキョロして鏡を見つけると、自分の姿を見た。体の奥底から嬉しさが込み上げてきた。
「寿璃叶、どう?」と襖越しに声が聞こえた。

「もう、いいわよ」と寿璃叶は言った。

襖が開き、
「ジュジュ様、尊い!」と夏凛も嬉しい声を上げた。

「どう?動きづらい所ある?」

寿璃叶は腕を動かした。
「ウエストとかは丁度いいわ。ちょっと腕は上げづらいかな」

「やっぱりそっか。合皮だから、そうなるような気がしてたんだ」

「まぁ、そんなに激しく動くわけじゃないから問題ないわ」

「う~ん、少し腕の付け根の所は普通の生地にした方がいいのかな?でも、質感が全然違うんだよなぁ」

「このままの方がいいわ」

「分かった。後は気になる所はない?全体のシルエットとか?スカートの長さとか?」

「晴菜はどう思う?」

「もう少しパニエが隠れててもいいのかなって思う所はある。ほんの少しだけど」

「任せるわ」

「2センチくらいスカートを長くする」

「うん、お願い」

「お姉ちゃん、写真撮っていい?」

「いいわよ」

杏寿はリュックからカメラを取り出した。

「私も」と夏凛はスマホを取り出した。

「まだ仮縫いだって」

「これからどう変わるか残した方が、後で見て楽しいじゃん」と杏寿が言った。

「分かったけど、僕の汚い部屋は写さないで」

「どこならいいのよ」

「こっちの襖をバックにして」

寿璃叶は移動して、撮影会が始まった。

闇落ちした後の衣装のはずなのに、寿璃叶の顔はニヤけていた。

姫川さんの時もこんな感じだったな、と晴菜は思った。

撮影会が終わった。
「この後は?」

「裏地をつけて本番で縫う。後はボタンや刺繍をして終わり。土日使えば、一ヶ月もかからないけど」

「会いたくないの?」

「会いたいです」

「急がないから」

「分かった。その後は帽子とコートと靴だね」

「うん、ゆっくり作ろ」

また晴菜達は廊下に出て寿璃叶は元の服に戻った。

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