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プロローグ
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九條晴菜は、幼い頃、両親を事故で亡くし、現在は晴菜を引き取った祖父と2人暮らしをしている。祖父は雛人形の職人で、祖父の家に初めて来た時に見た雛人形を見て、晴菜はその美しさに一目惚れをしました。
祖父の家の近くには幼なじみの女の子がいた。その子から、「男のくせに雛人形が好きなんで気持ち悪い」と言われたことがキッカケで、晴菜は雛人形が好きだと言うことがバレないように、学校での人付き合いを断つようになった。
そして、高校に入学して2年目となり、クラス替えのあった教室の中の昼休み、一人絵画の本を見ていた。祖父に、雛人形以外の色んなものを見ることが大切だ、と言われていたからだ。
すると、晴菜の座っている机に、女子生徒が勢いよくぶつかってきた。
晴菜は驚いて本から顔を上げた。
「いった~い!押さないでよ!」とその女子生徒は怒って言っていた。
そして、直ぐに振り返って、晴菜の方を向いた。
このクラスの中でも一番華やかなグループにいる女子生徒だった。晴菜には関係のない世界にいる人。
「ごめんね。痛くなかった?」
「いや、大丈夫です」
しかし、晴菜は、女子生徒のワイシャツの脇腹の部分が5センチくらい破れていることに気が付いた。ワイシャツの中の服が見えていた。
どうしよう?言った方がいいのかな?と思ったが、
『変態!見ないでよ』という声が頭の中に聞こえた。
僕が言う必要ないかと思い、本に視線を落とした。
「本当に、どこも痛くない?」とまた声が聞こえた。
晴菜はビックリして顔を上げた。女子生徒が心配そうな顔をして見ていた。
「ほっ、ホントに、どこも痛くないです」晴菜は女子生徒の目を見ながら言った。
「それなら良かった」女子生徒は机から離れようとした。
「あのぉ」と自分で気づかない間に声を出していた。
「何?」と女子生徒はまた振り返った。
『変態!』という声が頭の中を包んだが、晴菜は、
「脇腹の所が破れてます」と冷静に言った。
「えっ?」と女子高生が驚いて、脇腹を見た。
「マジかぁ~。おかしいなぁ、太ってないはずなんだけど」
晴菜はその言い回しが面白しく感じて、
「太ってるなんて、全然見えないですよ」と言っていた。
「そのはずなんだけどぉ」と困ったように女子生徒は言った。
その様子に、
「僕、直しましょうか?」と口が勝手に動いていた。
「えっ?そんなことできるの?」女子生徒の目が輝いて、晴菜を見つめた。
ヤバい、ミシン使えるなんて分かったら、気持ち悪がられる!晴菜は下を向いた。
「あれ?どうしたの?直してくれないの?」
「男でミシン使えるなんて気持ち悪いですよね?」晴菜は心の声のつもりだったが、口から出ていた。
「えっ?凄いじゃん!ミシン使えるんでしょ!」女子生徒の声は、とても興奮しているように感じた。
晴菜はその声にビックリして顔を上げた。
「ねぇ、見せてよ。ミシン使ってる所」そういう女子生徒は満面の笑みで、その目はキラキラと輝いて、晴菜の目を見つめていた。
「あっ、はい・・・」
「放課後、家庭科室でね。約束だからね!」
「わっ、分かりました・・・」
女子生徒は、自分の席に行き、ジャージを出した。
そっか、直さなくてもあれでいいんだ、と晴菜は思った。余計な事を言ったと思ったが、直すと約束してしまった。
「夏凛、どうしたの?」と他の女子生徒が言った。
「脇腹の所が破れちゃった」
「また太った?」
「またって何よ!またって!」夏凛は怒った声で言った。
「モデルのバイト、大丈夫なの?」
「この前、また怒られた。用意する服が変わっちゃうんだからね!って」
「夏凛、食べるの好きだもんね」
「若いから大丈夫なはずなんだけど・・・」
「はぁ~、夏凛、バイト、クビになるよ」
そして放課後になった。夏凛は事前に担任に事情を話して家庭科室を使う了承を得ていた。
「九條くん、行こ」と夏凛は言った。
「はい・・・」と晴菜は付いていく。
家庭科室に入ると、
「ちょっと向こう向いてて」と夏凛が言うので、晴菜は背中を向けた。
服を脱ぐ音がした。晴菜は廊下側の窓が丸見えになっていると思った。
「ちょっと待ってください。今、服に脱いでますか?」
「うん、ジャージ脱いだけど」
「ダメですよ。廊下から丸見えじゃないでしか!誰かが通ったら、どうするんですか!」
「放課後だし、誰も通らないよ」
「ダメですよ」
晴菜は、夏凛に背中を向けながら、大きいホワイトボードで、廊下側の半分を塞いだ。
「ありがとう」と声が聞こえた。
「じゃあ、続けてください」
すぐに、
「もういいよ。こっち見て」と声がした。
振り向くと、ワイシャツを手に持っているジャージを着た夏凛がいた。
「直してくれる?」
「はい」と言いながら晴菜はワイシャツを受け取った。
しかし、さっきまで夏凛が着ていたと思うと、ドキドキした。
『変態』という言葉が頭の中を満たしていく。
晴菜は顔に出さないように、ワイシャツを裏返した。
そして、糸が切れている側の糸を全て外した。
「えっ?全部取っちゃうの?」夏凛の驚いた声がした。
「破れてる部分だけ縫っても、上と下の糸が止まってないので、いつのまにか外れてしまいます。だから、全部やり直さないと」
「なるほど。でも、大丈夫なの?」
「任せてください。縫い直すだけですから簡単です」
「簡単なんだ・・・」と夏凛は呟いた。
ミソンが動き、晴菜の手元で布が動いた。
そして、あっという間にミソンが止まった。
「はい、できました」と晴菜は言った。
糸を切り、ミシンから離すと、ワイシャツの破れていた部分を左右に軽く引っ張って見せた。
「もう大丈夫です」と言って、夏凛に渡した。
夏凛は破れていた部分をじっと見て、
「ありがとう。魔法か何か?」
「フフフッ、何言ってるんですか?ミシンで縫っただけですよ」
夏凛はしばらく無言になった。
晴菜は不安になった。ワイシャツに変な触り方をして、やっぱり気持ち悪いと思われたのかと、
「なっ、何か変な所ありました?」
夏凛はいきなり立ち上がって、晴菜の方に近づいてきた。そして、晴菜の顔の前30センチくらいに自分の顔を近づけて、晴菜の目を見つめた。
晴菜はミシン台に寄りかかるように、目一杯後ろに体を倒した。
「九條くん!お願いがあるんだけど!」と夏凛は勢いよく言った。
「なっ、なんですか?」オドオドしした声で晴菜は言った。夏凛の目を見返しながら。
「雫たんのコス作って!」夏凛は勢いよく続けた。
「雫たん?・・・、コス?・・・」晴菜は訳が分からないロシア語でも言われてように感じた。
「分かんないか・・・、ちょっと待ってて」
夏凛は前かがみの身体を起こすと、ジャージのファスナーに手をかけて、下ろした。
「えっ!」晴菜は何が起こってるのか分からなくて、ファスナーを下ろす夏凛の手を見つめた。
夏凛がジャージから肩を出した所で、勢いよく背中を向けた。
「脱ぐなら脱ぐって言ってください!」晴菜は顔を真っ赤にした。
「あっ、ごめんね」と心のこもってない声が聞こえた。
晴菜はワイシャツを着ているものとばかり思っていた。またファスナーの音がした。
ファスナー?ワイシャツを着て、またジャージを着たのか?やっぱり僕が直したんじゃ不安だよな、と少しガッカリした。
「もういいわよ」と夏凛の声がした。
晴菜が振り返ると、制服でもジャージでもない、黒い服を着た夏凛がいた。
「どう?」と夏凛はドヤ顔で言った。
「何がですか?」晴菜はキョトンとした顔で言った。
「雫たんに見える?」また夏凛はドヤ顔で言った。
「雫たんってなんですか?」
「ヌラレヌラレ女学院の雫たんだよ」
「ヌラレヌラレ女学院?」晴菜はハレンチなイメージしか浮かばない言葉に、絶句した。
「もぉ、ここまで言っても分かんないの?」夏凛は呆れた声で言って、自分のスマホを手にとって操作した。
「これだよ」とヌラレヌラレ女学院のサイトを晴菜に見せた。
サイトには、18歳未満は退出してくださいという文字があった。
あれ?僕達は、まだ2年生のはず、姫川さんって留年なのか?と晴菜は思った。
「これが何か?」
「えっ!ここにいる雫たんに私がなれてる?」
と夏凛はスマホの中を指差した。
「いや、全然なれてませんけど。同じ服を作ったつもりなんですか?」晴菜は呆れ過ぎて、淡々とした口調になった。
「ガーン」と夏凛は口に出して言った。
「その前に服として、全然できてません。祭り縫いも全然できてないし、糸止めも全然できてない。気をつけないと、着ているうちにバラバラになりますよ」
夏凛は椅子に座って、ガックリと項垂れた。
夏凛はやっと状況が掴めた。
「僕に、この衣装を作って欲しいんですか?」
夏凛は顔を上げて、勢いよく上下に顔を振った。
「でも、イチから洋服を作ったことなんてないですよ。それでもいいですか?」
夏凛はまた勢いよく上下に振った。
「分かりました。やれるだけやってみます」
「ホントに!」夏凛の顔が満面の笑みに戻った。
「どこまで期待に応えられるか、正直、僕にも分かりません。あまり期待しないでください」
「やったぁ!」と夏凛は両手を上げて喜んでいる。
僕の話聞いてましたか?と晴菜は言いたかったが、止めておいた。
これだけ喜んでくれてるんだから、期待に応えられるように僕も頑張ろう。
「まずは設計図からですね。参考になる本とかはあるんですか?」
「エロゲだから、このサイトとゲームしかないわね」
「えっ、エロゲ?」やっぱりと晴菜は思った。
「エロゲなんだけど、この雫たんが陵辱される姿が、ホントに尊いっていうか、可愛すぎて神なのよ。だから、私も雫たんになってみたくてぇ」夏凛は大興奮で言った。
「はぁ?それで、どうしたらいいですか?」晴菜は淡々と言った。
「九條くんって、エロゲをやったことは?」
「もちろんないです」
「そうなんだぁ。う~ん、私が教えに行ってもいいけど、それとも家に来る?」
「えっ?姫川さんの家に?」
「お父さん、単身赴任でいないから、今は一人暮らしだし。誰にも気を使わなくてもいいから、楽っしょ?」
「一人暮らし!」晴菜は顔を赤くした、
「どうしたの」夏凛は不思議そうな顔をした。
「それって普通のパソコンあればできますか?」
「うん、そんなに古くなければ」
「分かりました。僕の家に来てください」とは言ったものの、誰かを自分の部屋に入れるなんて、生まれて初めてだった。
「分かった。金曜でいい?場合によっては泊まるかも」
「とっ、泊まるんですか!」
「サクッとやれば1時間程度なんだけど、やっぱり雫たんの良さを知ってもらうには、それなりに時間がかかるのよ」
「土曜日1日で終わりませんか?」
「う~ん、そうね。分かった。朝、直ぐに行くわ」
「だいたい7時には起きてるんで」
「そんなに早く?分かったわ」
「朝ごはん、食べてこなくてもいいですよ。どっちみち、じいちゃんの分も作らないとならないので」
「おじいちゃんと暮らしてるんだ?」
「はい。両親は事故でいなくて」
「なんだ。私もお母さん、小さい頃に亡くなってる」
「そうだったんですか?。ご飯、どうします?」
「せっかくだし、食べよっかな?」
「分かりました。7時半頃に来てくれればいいです」
「良」
夏凛が制服に着替える間、晴菜はまた背中を向けていた。
祖父の家の近くには幼なじみの女の子がいた。その子から、「男のくせに雛人形が好きなんで気持ち悪い」と言われたことがキッカケで、晴菜は雛人形が好きだと言うことがバレないように、学校での人付き合いを断つようになった。
そして、高校に入学して2年目となり、クラス替えのあった教室の中の昼休み、一人絵画の本を見ていた。祖父に、雛人形以外の色んなものを見ることが大切だ、と言われていたからだ。
すると、晴菜の座っている机に、女子生徒が勢いよくぶつかってきた。
晴菜は驚いて本から顔を上げた。
「いった~い!押さないでよ!」とその女子生徒は怒って言っていた。
そして、直ぐに振り返って、晴菜の方を向いた。
このクラスの中でも一番華やかなグループにいる女子生徒だった。晴菜には関係のない世界にいる人。
「ごめんね。痛くなかった?」
「いや、大丈夫です」
しかし、晴菜は、女子生徒のワイシャツの脇腹の部分が5センチくらい破れていることに気が付いた。ワイシャツの中の服が見えていた。
どうしよう?言った方がいいのかな?と思ったが、
『変態!見ないでよ』という声が頭の中に聞こえた。
僕が言う必要ないかと思い、本に視線を落とした。
「本当に、どこも痛くない?」とまた声が聞こえた。
晴菜はビックリして顔を上げた。女子生徒が心配そうな顔をして見ていた。
「ほっ、ホントに、どこも痛くないです」晴菜は女子生徒の目を見ながら言った。
「それなら良かった」女子生徒は机から離れようとした。
「あのぉ」と自分で気づかない間に声を出していた。
「何?」と女子生徒はまた振り返った。
『変態!』という声が頭の中を包んだが、晴菜は、
「脇腹の所が破れてます」と冷静に言った。
「えっ?」と女子高生が驚いて、脇腹を見た。
「マジかぁ~。おかしいなぁ、太ってないはずなんだけど」
晴菜はその言い回しが面白しく感じて、
「太ってるなんて、全然見えないですよ」と言っていた。
「そのはずなんだけどぉ」と困ったように女子生徒は言った。
その様子に、
「僕、直しましょうか?」と口が勝手に動いていた。
「えっ?そんなことできるの?」女子生徒の目が輝いて、晴菜を見つめた。
ヤバい、ミシン使えるなんて分かったら、気持ち悪がられる!晴菜は下を向いた。
「あれ?どうしたの?直してくれないの?」
「男でミシン使えるなんて気持ち悪いですよね?」晴菜は心の声のつもりだったが、口から出ていた。
「えっ?凄いじゃん!ミシン使えるんでしょ!」女子生徒の声は、とても興奮しているように感じた。
晴菜はその声にビックリして顔を上げた。
「ねぇ、見せてよ。ミシン使ってる所」そういう女子生徒は満面の笑みで、その目はキラキラと輝いて、晴菜の目を見つめていた。
「あっ、はい・・・」
「放課後、家庭科室でね。約束だからね!」
「わっ、分かりました・・・」
女子生徒は、自分の席に行き、ジャージを出した。
そっか、直さなくてもあれでいいんだ、と晴菜は思った。余計な事を言ったと思ったが、直すと約束してしまった。
「夏凛、どうしたの?」と他の女子生徒が言った。
「脇腹の所が破れちゃった」
「また太った?」
「またって何よ!またって!」夏凛は怒った声で言った。
「モデルのバイト、大丈夫なの?」
「この前、また怒られた。用意する服が変わっちゃうんだからね!って」
「夏凛、食べるの好きだもんね」
「若いから大丈夫なはずなんだけど・・・」
「はぁ~、夏凛、バイト、クビになるよ」
そして放課後になった。夏凛は事前に担任に事情を話して家庭科室を使う了承を得ていた。
「九條くん、行こ」と夏凛は言った。
「はい・・・」と晴菜は付いていく。
家庭科室に入ると、
「ちょっと向こう向いてて」と夏凛が言うので、晴菜は背中を向けた。
服を脱ぐ音がした。晴菜は廊下側の窓が丸見えになっていると思った。
「ちょっと待ってください。今、服に脱いでますか?」
「うん、ジャージ脱いだけど」
「ダメですよ。廊下から丸見えじゃないでしか!誰かが通ったら、どうするんですか!」
「放課後だし、誰も通らないよ」
「ダメですよ」
晴菜は、夏凛に背中を向けながら、大きいホワイトボードで、廊下側の半分を塞いだ。
「ありがとう」と声が聞こえた。
「じゃあ、続けてください」
すぐに、
「もういいよ。こっち見て」と声がした。
振り向くと、ワイシャツを手に持っているジャージを着た夏凛がいた。
「直してくれる?」
「はい」と言いながら晴菜はワイシャツを受け取った。
しかし、さっきまで夏凛が着ていたと思うと、ドキドキした。
『変態』という言葉が頭の中を満たしていく。
晴菜は顔に出さないように、ワイシャツを裏返した。
そして、糸が切れている側の糸を全て外した。
「えっ?全部取っちゃうの?」夏凛の驚いた声がした。
「破れてる部分だけ縫っても、上と下の糸が止まってないので、いつのまにか外れてしまいます。だから、全部やり直さないと」
「なるほど。でも、大丈夫なの?」
「任せてください。縫い直すだけですから簡単です」
「簡単なんだ・・・」と夏凛は呟いた。
ミソンが動き、晴菜の手元で布が動いた。
そして、あっという間にミソンが止まった。
「はい、できました」と晴菜は言った。
糸を切り、ミシンから離すと、ワイシャツの破れていた部分を左右に軽く引っ張って見せた。
「もう大丈夫です」と言って、夏凛に渡した。
夏凛は破れていた部分をじっと見て、
「ありがとう。魔法か何か?」
「フフフッ、何言ってるんですか?ミシンで縫っただけですよ」
夏凛はしばらく無言になった。
晴菜は不安になった。ワイシャツに変な触り方をして、やっぱり気持ち悪いと思われたのかと、
「なっ、何か変な所ありました?」
夏凛はいきなり立ち上がって、晴菜の方に近づいてきた。そして、晴菜の顔の前30センチくらいに自分の顔を近づけて、晴菜の目を見つめた。
晴菜はミシン台に寄りかかるように、目一杯後ろに体を倒した。
「九條くん!お願いがあるんだけど!」と夏凛は勢いよく言った。
「なっ、なんですか?」オドオドしした声で晴菜は言った。夏凛の目を見返しながら。
「雫たんのコス作って!」夏凛は勢いよく続けた。
「雫たん?・・・、コス?・・・」晴菜は訳が分からないロシア語でも言われてように感じた。
「分かんないか・・・、ちょっと待ってて」
夏凛は前かがみの身体を起こすと、ジャージのファスナーに手をかけて、下ろした。
「えっ!」晴菜は何が起こってるのか分からなくて、ファスナーを下ろす夏凛の手を見つめた。
夏凛がジャージから肩を出した所で、勢いよく背中を向けた。
「脱ぐなら脱ぐって言ってください!」晴菜は顔を真っ赤にした。
「あっ、ごめんね」と心のこもってない声が聞こえた。
晴菜はワイシャツを着ているものとばかり思っていた。またファスナーの音がした。
ファスナー?ワイシャツを着て、またジャージを着たのか?やっぱり僕が直したんじゃ不安だよな、と少しガッカリした。
「もういいわよ」と夏凛の声がした。
晴菜が振り返ると、制服でもジャージでもない、黒い服を着た夏凛がいた。
「どう?」と夏凛はドヤ顔で言った。
「何がですか?」晴菜はキョトンとした顔で言った。
「雫たんに見える?」また夏凛はドヤ顔で言った。
「雫たんってなんですか?」
「ヌラレヌラレ女学院の雫たんだよ」
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「もぉ、ここまで言っても分かんないの?」夏凛は呆れた声で言って、自分のスマホを手にとって操作した。
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「これが何か?」
「えっ!ここにいる雫たんに私がなれてる?」
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「ガーン」と夏凛は口に出して言った。
「その前に服として、全然できてません。祭り縫いも全然できてないし、糸止めも全然できてない。気をつけないと、着ているうちにバラバラになりますよ」
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夏凛は顔を上げて、勢いよく上下に顔を振った。
「でも、イチから洋服を作ったことなんてないですよ。それでもいいですか?」
夏凛はまた勢いよく上下に振った。
「分かりました。やれるだけやってみます」
「ホントに!」夏凛の顔が満面の笑みに戻った。
「どこまで期待に応えられるか、正直、僕にも分かりません。あまり期待しないでください」
「やったぁ!」と夏凛は両手を上げて喜んでいる。
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これだけ喜んでくれてるんだから、期待に応えられるように僕も頑張ろう。
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「エロゲなんだけど、この雫たんが陵辱される姿が、ホントに尊いっていうか、可愛すぎて神なのよ。だから、私も雫たんになってみたくてぇ」夏凛は大興奮で言った。
「はぁ?それで、どうしたらいいですか?」晴菜は淡々と言った。
「九條くんって、エロゲをやったことは?」
「もちろんないです」
「そうなんだぁ。う~ん、私が教えに行ってもいいけど、それとも家に来る?」
「えっ?姫川さんの家に?」
「お父さん、単身赴任でいないから、今は一人暮らしだし。誰にも気を使わなくてもいいから、楽っしょ?」
「一人暮らし!」晴菜は顔を赤くした、
「どうしたの」夏凛は不思議そうな顔をした。
「それって普通のパソコンあればできますか?」
「うん、そんなに古くなければ」
「分かりました。僕の家に来てください」とは言ったものの、誰かを自分の部屋に入れるなんて、生まれて初めてだった。
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「土曜日1日で終わりませんか?」
「う~ん、そうね。分かった。朝、直ぐに行くわ」
「だいたい7時には起きてるんで」
「そんなに早く?分かったわ」
「朝ごはん、食べてこなくてもいいですよ。どっちみち、じいちゃんの分も作らないとならないので」
「おじいちゃんと暮らしてるんだ?」
「はい。両親は事故でいなくて」
「なんだ。私もお母さん、小さい頃に亡くなってる」
「そうだったんですか?。ご飯、どうします?」
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