続・クラスイチ(推定)ブスだった私が、浮気しない真面目なイケメン彼氏と別れた理由

ぱるゆう

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入籍

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何事もなく無事に、結納という名の食事会が終わった次の日、私達は婚姻届を役所に提出した。

受け付けてくれた若い女性は事務的に婚姻届を確認していたが、
「はい、こちらでお受けします。おめでとうございます」とニッコリと笑った。

「ありがとうございます」私達は照れながら言った。
その後、記念品と言われ、袋を受け取った。私達が会釈をすると、笑顔で会釈を返してくれた。

私達は役所を出た。
「これで、やっと夢が叶った」

「一年前は誰かと付き合うことさえも考えられなかったのに」

「良かった。花音のこと、誰にも取られなくて」

「そんなこと言うの、真司だけよ」私は真田さん、もう真司でいいか、真司に腕を絡みつけた。

「素敵な職員さんに受け付けてもらえてよかったね』

「ニコリともしないイメージだったのに。変わるものね」

「いよいよ次は引っ越しだね」真司は相変わらず照れくさそうだ。

「うん。いい奥さんになるからね」

「花音は花音らしくしてくれれば、僕は幸せだよ」

「もう真司ったら、甘やかさないでよ」

はぁ、私、結婚したんだ。S君から二度目の恋で。

あっ、S君にも言わないと、しばらくみんなとも会ってないなぁ。まぁ、結婚式までには会おう。



それから私達は宝石店に来た。頼んであった結婚指輪を引き取るためだ。

真司が来たと分かると、奥の部屋に案内された。

私達は指輪をそれぞれ手に取り、自分の薬指に嵌めてみる。

「うん、ちょうどいい」「私も」

それから指輪をもう一度ケースに戻し、店を出た。


「真司、時間、大丈夫?」

「丁度いいよ」


私達は少し古びれた教会に着いた。
「あら?真司さん。久しぶりね」とシスターの衣装を着た女性が言った。

「すいません、シスター・アビゲイル。ご無沙汰になっちゃって」

「いいのよ。お母様は、毎週いらしてるわよ」

「はい、知ってます。お世話になったのに、申し訳ないです」

「なるべく元気な顔を見せに来てね。それで今日は?」

「神父様にお願いして、少し教会をお借りすることになっていて」

「あら?結婚でもしたの?」

「実はそうなんです。式は先なんですけど、籍だけさっき入れてきました」

「あら?おめでとう。そちらの方が?」

私は前に出て「山上花音です。すいません。教会のこと全然知らなくて」

「まぁ、昔のことだから、気にする必要はないわ。今この時、主に恥じぬ日々を送っていれば何の問題はないわよ」

「はい、肝に銘じます」

「シスター・アビゲイル」と奥から声がかかった。

「じゃあ、行くわね。2人に主のご加護があらんことを」と十字を切って去った。

「奥が孤児院なんだよ」

「そうなんだ」

「母さんも寄付してるんだけど、全然足りないみたいでさ。母さんが余りに大きな金額を言うもんだから、神父様とシスターに必死に止められてさ」

「そうなんだ。有り難く貰うってことにはならないんた』

「そこがこの教会のいいところさ。貧しくても楽しいことはある。人を助けることができるって考えなんだ」

「ふ~ん」

「さっ、行こう」真司は私の手を引っ張った。

そして、とても綺麗なステンドグラスに包まれた教会に出た。

「素敵!」

「あぁ、ここのステンドグラスはかなり古くてとても貴重なんだよ。さっ、こっち来て」

私と真司は、キリスト像の前に立って向かい合った。

真司の手には指輪のケースが握られている。

「うっうん」真司は咳き払いをした。そして私の目を見ながら、

「私、真田真司は、健やかなる時も、病める時も、永遠に山上花音を愛することを誓います」

「私、山上花音は、健やかなる時も、病める時も、永遠に真田真司を愛することを誓います」

真司は指輪のケースから小さい方の指輪を取り出した。ケースをポケットにしまい、私の左手を優しく持ち上げた。

そして、私の薬指に指輪を嵌めていく。

次は大きい指輪を取り出して、私に渡した。

私はゆっくりと真司の左手を上げる。そして薬指に嵌めた。

「花音、これからもよろしくね」

「うん、ずっと一緒だよ」

2人はキスをして、軽く舌を絡めた。


「うわぁ、チューしてるぞ!」

「ホントだ!エッチだ!」

と何人かの男の子が覗いていた。

「こら!教会の方に来ちゃダメでしょ」と女性の声がした。

「すいません。邪魔しちゃって」と女性は姿を見せて、頭を下げた。

「えっ、もしかして、千代ちゃん?」真司は言った。

頭を下げていた女性は、ゆっくりと顔を上げた。

「えっ?真ちゃん?」

真司は女性に近づいていった。
「そうだよ。久しぶり」

「ホントに久しぶりね」

2人は手を取り合っている。
「うわぁ、十年ぶりくらい?」

「えっ、もっとよ」

「あれ?東北の方に行ったんじゃなかったっけ?」

千代さんは少し暗い顔をした。
「うん、そうなんだけど、子供できなくて、離婚したの」

「あぁ、そうだったんだ」

「だから、ここに戻って働いてるの。みんながいると、嫌なこと考えなくて済むし」

「えっ、30前でしょ。まだまだこれからじゃん。今は子供いない方がいいって人も結構いるし」

「うん、まぁ、そういう人がいたらね。真ちゃんは、今日、どうしたの?」

「実は結婚したんだ」真司は私に目を向ける。まだ2人の手は繋ぎ合っている。

千代さんも私を見る。少し残念そうな表情をしたように見えた。

私は2人に近づいて行った。

「初めまして、山上花音です」

「あぁ、初めまして、西山千代です。なんだ、真ちゃん、おめでとう。あの真ちゃんが結婚する年になるとは、私も年食うわけだ」

「僕の方が年上だが」

「精神年齢の話よ。お坊ちゃま丸だしだったじゃない」

「初めのうちだけだろ。すぐにみんなに負けないくらい速く走れるようになったよ」

「そうだったかしら?いつもビリでえんえんと泣いてたんじゃなかったっけ?」

「こら、怒るよ。そんな泣き虫じゃなかった」

「ふ~ん、奥さんの前だから、そういうことにしときましょ」

私は目が丸くなった。こんな風に子供っぽく話す真司を見たことがなかったからだ。

そして、嫉妬心が湧いてしまった。私の知らない真司。

「懐かしいから、少し見てもいい?」

「別にいいけど、みんなホッとかないわよ。もう若くないんだから」

真司は分かりやすくムッとした。
「大丈夫だよ」真司は昔取ったなんとやら、で建物の中をスタスタと歩いていく。

「うわぁ、懐かしい」と真司は感嘆の声を上げた。

「うわっ!エッチが来たぞ」さっき覗いていた男の子だろう。声を上げた。

「うわぁ、エッチマンだぞ!」と真司が駆け出す。

「キャッキャッ」みんな歓声を上げながら、逃げ回る。

真司が捕まえては、少しずつくすぐっていく。そしてまた走り出す。


そんな姿を微笑ましく見ていると、私のスカートを引っ張る小さな女の子が2人いた。

「お姉ちゃん、絵本読んで」と抱えていた絵本を出す。

私が床に座ると、2人が両太腿に乗ってきた。
「大丈夫?重くなったら言ってね」と千代さんは言った。

「分かりました」

私は題名を読み上げて、なるべく感情を入れて読んだ。

視線を落とすと、2人は前かがみになりながら、絵本を見ている。

かっ、可愛いと心の中で叫びながら、読むのを続けた。

「はい、おしまい」と言うと、
「今度は私の本読んで」と顔を覗き込まれた。

「大丈夫?」と千代さんに言われたが、頷いて
「持ってきて」と言った。

そして、新しい本を読んだ。それが終わると、「また」と言ってきたので、千代さんが、
「また来たときね」と言った。

2人が残念そうにしていたので、
「2人とも大人しくお話聞けて、偉いね」と優しく頭を撫でた。

「うん」と2人は笑顔になった。

すると、真司がはぁはぁ言いながら、帰ってきた。
「もう無理」

「だから言ったでしょ。子供の体力は半端ないんだから」

「あぁ、負けを認めるよ」

「おじちゃん、もっと遊ぼうよ」と男の子達が寄ってきた。

「うん、次はもっと遊べるようにしてくるから、今日はオシマイ」

男の子達は残念そうにしている。

「楓じゃないと無理ね。次は連れてきましょう」

「そうしてくれるかい?」

「今度、おじさんたちが来るときは、もっと遊んでくれるお兄ちゃんを連れてきてくれるって」と千代が言った。

「ホントに?」男の子たちの目が光る。

「だから、それまではいい子にするのよ」

「は~い」

私達は部屋を出た。
「真ちゃん。ありがとう。無理してくれて」

「いや、楽しかったよ。やっばりみんな体力が有り余ってるね」

「うん、女の私じゃ、どうしょうもないわ。体が動かないから、口ばっかりで」

「それは辛いね。でも、そんなに頻繁には来れないな」

「うん、分かってる。無理のない範囲でまた来てね」

「うん、分かった」

私達は外に出た。

「はぁ。久しぶりにあんなに動いたよ」まだ息が上がっている」

「お疲れ様」私はじっと真司を見た。

「どうかした?」少し心配そうな顔で見られた。

「まだ、真司のこと全然知らないんだなぁって思って」

「ごめんよ。まさかこんなことになるなんて思わなかった」

「何を謝ってるの?」

「えっ!いやぁ、ビックリさせちゃったと思って」何故か少し焦っている。

「ふ~ん」

「何が言いたいんだよ。いつものように、はっきり聞けばいいじゃないか!

「はいはい、私は突っ走り女ですよ。もう今日は帰る!」

「えっ!結婚した日に、こんなまま帰れないよ。謝るから、ちゃんと教えて」

「だから、なんで謝るのよ!謝ればいいと思ってない?」

「だって、花音は僕が悪いと思ってるんでしょ?」

「別にそんなこと言ってないでしょ!もう帰る!」私は小走りに足を動かした。

真司は追ってこない。さすがに訳が分からないのだろう。

あぁ、私、何やってるんだろう。折角の結婚記念日が。



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