一日一編

馬東 糸

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020123【ふたり】

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 私は5時48分に起きる。まずはベッドの上で2分間その日の段取りを確認する。そして10分間のストレッチを行い、朝食の準備に取り掛かる。朝食は栄養バランスを考え、月の終わりに一ヶ月分のメニューを決めており、レシピを見ながら完璧にこなす。腕時計は重要である。日々の生活を完全に管理する事で私の安定は保たれているのだ。
 わたしは、朝は起きたい時に起きる。朝食はその日の気分によって食べたり食べなかったりだ。腕時計を持たない。時間に支配なんかされたくないからだ。仕事も自分の好きな時間に好きな場所で行えるものを選んだ。
 私は電車には乗らない。遅延をする可能性があるためだ。そのため、自宅は会社から徒歩圏内と決めている。
 わたしは大抵自転車に乗って移動する。その方が気楽であるし、好きな場所に着の身着のまま行くことができるからだ。
 私は仕事が終わると家に帰る前に必ず行くバーがある。そこに着くと決まった注文をする。店も承知をしているため、私が行く時間に用意は整っている。素晴らしい店だ。
 わたしは基本的に自宅で仕事をしているが、たまにカフェに行ったりして気分を変えたりする。自転車で少し行ったところに雰囲気の良いバーがあるが一度も行ったことはない。
 その夜もいつも通り、決まった時間に店に入った。そして決まった酒を飲んでいる。
 その夜は大きい仕事が片付いたため、何かいつもと違う事がしたかった。そうだと思い立ち、気になっていたバーに行ってみることにした。カウンターで飲んでいると、一人の男性が入ってきた。数分に一度は腕時計を見ているようだ。
 いつも通り酒を飲んでいると、隣に見慣れない女性がいるのが分かった。ここは常連が多く私が行く時間はいつも決まった人しかいないはずだと不思議に思った。
 こんなにも時間を気にする人も珍しいなと思いつつ、その手をつい見てしまう。爪が大きく貝殻のようで、節も細くて綺麗な手である。わたしは彼が気になっている。
 隣の女性がこちらを見ているようである。私のいつもの日常が壊れかけている。それにも関わらず、不思議と悪い気はしない。腕時計を見ると後数分で帰る時間である。
 声をかけてみようかと思う。あまり自分から行く性格ではない。しかし、彼のことが気になるのだ。
 声をかけてみようかと思う。こんなことはあり得ないことだ。しかし、どうしても彼女のことが気になる。
 既に二人は腕時計から目を離し、互いの視線を合わせている。どちらから声を発するのかは分からない。
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