一日一編

馬東 糸

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020208【陽炎】

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「あれは諸君らも既に痛いほど分かっていると思うが、存在自体許されないものだ。私達はここ数年、絶望の暗闇の中一筋の光も見えないところから這い上がってきた。友が倒れ、家族の屍を越えてきた者も少なくないはずだ。しかし! 諸君らの文字通り血の滲むような活躍があってこの作戦は最終段階に入っている! 次の任務で全てを終わらせ、冥土の友人、家族等にせめてもの手向けをやろうじゃないか!」
 そう仰々しく演説を行うのは、国を実質的に操っているとされる参謀本部長である。私はこの人の胡散臭さが気に入らない。
 演説が終わり、私の方へ歩いて来る頃にはいつもの不敵な笑みを浮かべていた。私の肩に馴れ馴れしく手を置いて、耳元で囁くように話すのが不愉快だ。
「私の要請に応えてくれて感謝するよ。その年齢で既に統括の地位にまで登りつめた君の助けがどうしても必要だったんだ。最後の任務は君に指揮を取ってもらいたいのだが、いいかな?」
「私はやれと言われたことをただ遂行するまでです」
 にやりと笑って靴音を響かせながら去って行った。やはり私は彼が苦手だ。
 ずっとこの任務から除籍希望を出していた。理由は至極明確である。
 排除対象が私の恋人であるからだ。
 それは突然の出来事であった。事故に近いような形で彼女は銃弾に倒れた。私が駆けつけた時には大量の出血があり、明らかに助からない状態であった。また、意識の混濁も起きており、既に手の施しようがない状態だったのだ。
 そして、私の手の中で息を引き取った。その途端、彼女の身体は溶けるように変化し、瞬間、周囲全ての存在を灰に帰した。眩い閃光の中私が見たのは陽炎のようにぼやけた鳥のような姿だった。
 それからその鳥は様々な戦地に現れては、その度に全てを燃やし尽くしているとのことだ。
 そんな厄介な存在を許容し続けるわけにも行かず、撲滅作成を開始した。
 私は最後の指揮を取らねばならない。つまり、最後の引き金をひかねばならないのだ。これまでこの仕事は彼女を守るためだと言い聞かせて誇りを持って打ち込んできたつもりだ。私はこれから一体どうすれぼ良いのだろうか。
 任務当日の朝、私はある決意をしえ、家を出た。
 それは、太陽が眩しく、温かな日差しが心地よい日のことであった。遠くを見ると薄っすら陽炎が見えていた。
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