一日一編

馬東 糸

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020226【雨のち花】

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 雨のち花だと言うので。私は雨の後に降ると地面に張り付いてしまうから掃除が大変だから少し気が向かなかったけれど。皆はこぞって雨が止んだお昼過ぎには教室の窓から身を乗り出すように空を見ていた。願うように見上げていると雲間から光が見えて、青や赤、白など色とりどりの花びらがひらひらりと降ってきて、そのうち校舎の上にも降り始めて鮮やかな世界に変わった。
「今日は青系が多いね。ほら、水色とか、あれも黒じゃなくて藍色っぽいし」
「この前降った時はほとんど白色だったよね。わたしは前の方が雪っぽくて好きだったなあ」
 想い想いに感想を口にして、暫くして先生が教室に入ってきたので授業が始まった。
「みんな集中出来ないようだからそことそこ、カーテンを閉めてくれないか」
 先生から指示があり仕方なくカーテンを閉めるが、カーテン越しに漏れる影はそれでも鮮やかであった。
 最初は何かの前兆かと思われた。世界が終わるだとか。気圧の影響であるとか。中には内閣総理大臣のせいだとか言う人まで現れた。連日テレビでは熱い議論が繰り広げられて、世界中の権威あると言われる学者達の恰好の獲物になった。
 しかしながら、一体どこから、どうやって、なぜ降るのかは誰も分からなかった。不思議なことにある程度の時間が経つとあれだけ注目の的だった現象もいつのまにかお天気ニュースの中に落とされて、晴れとか雨とかと同じ扱いになった。
 大量の花びらが舞うので花傘なるものまでいつの間にか浸透して。とは言っても弾くのが雨粒なのか花びらなのかが違うだけで普通の傘のようなものだけど。花の予報が出た時は皆それを差していた。
 その日は居残りをさせられていて、いつのまにか寝てしまい、先生も忘れてしまったらしく起きた時には外は暗かった。部活をしている人の声もしなかったため相当遅くまで寝てしまったことに気が付いた。
 急いで校舎から出ようとすると、ひらりとひとつの花びらが降りてきて、直ぐにどしゃ降りの花になってしまった。予報に無かったため花傘も持たない私はどうしたものかと躊躇っていると、校舎から慌てて出てきた男子の姿があった。
「え、まだ人居たんだ」
 私がそう言うと、彼は安心したように私の顔を見た。
「良かった、寝ちゃってて気が付いたらこんな時間で怖かったんだよ。夢なんじゃないかと思って」
 そう言って渡り廊下で二人、降りしきる花と空を見上げていた。
「きみ、傘、持ってる?」
「ううん、持ってない」
 少し考えて彼が口を開いた。私が思っている事と同じだった。
「良いじゃん、走ろう」
 降りしきる花びらの中、ふたりは夜に向かって駆けて行った。目一杯に広がる鮮やかな色と、香りと、それから。
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