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第2話 シオの記憶
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「このガキか。まあ、綺麗にすりゃ売れそうだな」
由喜乃の部屋から連れだされた吉雄は、車に乗せられ倉庫に連れていかれた。
そこにいたのは人相が悪そうな男たち。
男の一人が、吉雄に触り顔を確認。
はねのけようとしたが、羽交い絞めにされた。
「縛ってトランクに入れろ」
「東多さん。これで見逃してもらえますかねぇ」
「いいだろう。約束だ」
口にはガムテープ、体にも巻き付けられ、芋虫のような状態で彼は運ばれる。
彼の耳に届くのは父親と東多のやり取り。
父親は彼を迎えにきたのではなく、自分の借金の代わりに彼を売った。
運ばれながら、父親に助けを求め、叫ぼうとするが口は塞がれ、体も動かせない。
だから視線だけで彼は助けを求める。
しかし、父親は彼のことを一度も見ようとしなかった。
商品価値を感じているのか、丁寧にトランクの中に彼は運び入れられる。
ガタンと蓋が閉められ、吉雄の視界は一気に真っ暗になった。車が走り出す音がして恐怖心が煽られる。
(助けて、誰かお願い!助けて)
叫ぼうとするが口は塞がれている。
脳裏に浮かぶのは由喜乃だ。
(由喜乃姉ちゃん、由喜乃姉ちゃん!助けて!なんで僕を引き留めてくれなかったの?なんで?!)
彼の思考は悪い方向へ走っていく。
涙が次々と溢れ出てきて、どうにか逃げ出せないかともがく。
その内、後ろで縛られている手に何かが触れた。小さい堅いものだ。それを掴もうとしてもがいているうちに、急に光に包まれた。
そして光が止んで、目の前に優しそうなおじいちゃんがいて、吉雄は本当にほっとした。
「これは、また……」
初老の男性の言葉が聞こえ、吉雄はそのまま気を失った。
★
「シオくん」
「何?」
「お昼は、パスタ?それともサンドウィッチ?」
「パスタがいいな」
「うん。わかった。作ってくる」
シオへ微笑み、由喜乃は台所へ走っていく。
彼女と共同生活を始めて三日。
日本から来た由喜乃はシオ同様魔力が高かった。
生活魔法と呼ばれる初歩の魔法は一日できるようになり、家事全般は由喜乃が担当している。
十五年前、何度もご飯を作ってもらっていたが、その腕は健在で、シオは日本風の食事に喜びを感じていた。
半面、どす黒い感情も浮かぶ。
あの時に感じた恐怖、由喜乃は知らないだろうと。
あの時、由喜乃が引き留めてくれたら、売られそうになることもなかったのに。
そんな感情が時折シオを支配しそうになる。
運よく異世界転移ができて、彼は不幸な道から外れることができた。そうでなければ、今頃生きていたかわからない。人身売買の末路は最悪だ。日本にいた期間は短いが、この世界でも人身売買は行われている。それを考えると異世界転移できなかった時の末路は簡単に想像できた。
「ご飯できたよー」
「今行く」
由喜乃に呼ばれて、ダイニングルームへ向かう。
クリームパスタの他にサラダも用意されていて、驚く。
十歳から十八歳まで魔法学校に通い、十八歳から魔法使いに師事した。それから二年後に王宮魔法使いになり、今に至る。
料理をしない彼はもっぱら食堂で食べたり、パンなど簡単なものを買うくらいだった。それが由喜乃が来てから変わった。
お風呂に入ることになったのも変化の一つだ。
「口に合う?」
「うん。美味しい」
彼女の料理を食べると、彼のどす黒い感情が小さくなる。
彼自身、この世界に来てから優しい両親を得て、傷はかなり癒えていた。昔の夢もほとんど見なくなっていた。
けれども由喜乃が現れ、彼は再び夢を見るようになってしまった。
「……あの。どう進展は?」
由喜乃はもじもじしながら聞いてくる。
当時は姉さんとしてしか見てなかったが、こうして彼女が年下になり、想いは変わってきていた。見方も。
日本人に多い、のっぺりした顔。
愛嬌がある黒い瞳。
サラサラな黒髪。
美人ではない。可愛いといえば可愛い部類に入る顔だ。
元から顔が整っているシオは、王宮魔法使いという地位を手に入れ、さらにモテるようになってしまった。
今回由喜乃と暮らすことになり、彼は「恋人」として彼女が同居することを家主に連絡した。家主は王宮魔法使いの長でもあり、彼に恋人がいるという話は一気に広まった。
おかげで、変な女性が寄り付かなくなったので、シオは今の現状に満足していた。
だから彼女を日本に戻すことなど考えていなくて、由喜乃の問いに一瞬だけ躊躇していた。
「ちょっと難航していて。進展があったら報告するから」
「うん、ありがとう」
彼女の生活をシオがすべて保証している。
そのことを理解している由喜乃はシオを急かせることはなかった。
由喜乃の部屋から連れだされた吉雄は、車に乗せられ倉庫に連れていかれた。
そこにいたのは人相が悪そうな男たち。
男の一人が、吉雄に触り顔を確認。
はねのけようとしたが、羽交い絞めにされた。
「縛ってトランクに入れろ」
「東多さん。これで見逃してもらえますかねぇ」
「いいだろう。約束だ」
口にはガムテープ、体にも巻き付けられ、芋虫のような状態で彼は運ばれる。
彼の耳に届くのは父親と東多のやり取り。
父親は彼を迎えにきたのではなく、自分の借金の代わりに彼を売った。
運ばれながら、父親に助けを求め、叫ぼうとするが口は塞がれ、体も動かせない。
だから視線だけで彼は助けを求める。
しかし、父親は彼のことを一度も見ようとしなかった。
商品価値を感じているのか、丁寧にトランクの中に彼は運び入れられる。
ガタンと蓋が閉められ、吉雄の視界は一気に真っ暗になった。車が走り出す音がして恐怖心が煽られる。
(助けて、誰かお願い!助けて)
叫ぼうとするが口は塞がれている。
脳裏に浮かぶのは由喜乃だ。
(由喜乃姉ちゃん、由喜乃姉ちゃん!助けて!なんで僕を引き留めてくれなかったの?なんで?!)
彼の思考は悪い方向へ走っていく。
涙が次々と溢れ出てきて、どうにか逃げ出せないかともがく。
その内、後ろで縛られている手に何かが触れた。小さい堅いものだ。それを掴もうとしてもがいているうちに、急に光に包まれた。
そして光が止んで、目の前に優しそうなおじいちゃんがいて、吉雄は本当にほっとした。
「これは、また……」
初老の男性の言葉が聞こえ、吉雄はそのまま気を失った。
★
「シオくん」
「何?」
「お昼は、パスタ?それともサンドウィッチ?」
「パスタがいいな」
「うん。わかった。作ってくる」
シオへ微笑み、由喜乃は台所へ走っていく。
彼女と共同生活を始めて三日。
日本から来た由喜乃はシオ同様魔力が高かった。
生活魔法と呼ばれる初歩の魔法は一日できるようになり、家事全般は由喜乃が担当している。
十五年前、何度もご飯を作ってもらっていたが、その腕は健在で、シオは日本風の食事に喜びを感じていた。
半面、どす黒い感情も浮かぶ。
あの時に感じた恐怖、由喜乃は知らないだろうと。
あの時、由喜乃が引き留めてくれたら、売られそうになることもなかったのに。
そんな感情が時折シオを支配しそうになる。
運よく異世界転移ができて、彼は不幸な道から外れることができた。そうでなければ、今頃生きていたかわからない。人身売買の末路は最悪だ。日本にいた期間は短いが、この世界でも人身売買は行われている。それを考えると異世界転移できなかった時の末路は簡単に想像できた。
「ご飯できたよー」
「今行く」
由喜乃に呼ばれて、ダイニングルームへ向かう。
クリームパスタの他にサラダも用意されていて、驚く。
十歳から十八歳まで魔法学校に通い、十八歳から魔法使いに師事した。それから二年後に王宮魔法使いになり、今に至る。
料理をしない彼はもっぱら食堂で食べたり、パンなど簡単なものを買うくらいだった。それが由喜乃が来てから変わった。
お風呂に入ることになったのも変化の一つだ。
「口に合う?」
「うん。美味しい」
彼女の料理を食べると、彼のどす黒い感情が小さくなる。
彼自身、この世界に来てから優しい両親を得て、傷はかなり癒えていた。昔の夢もほとんど見なくなっていた。
けれども由喜乃が現れ、彼は再び夢を見るようになってしまった。
「……あの。どう進展は?」
由喜乃はもじもじしながら聞いてくる。
当時は姉さんとしてしか見てなかったが、こうして彼女が年下になり、想いは変わってきていた。見方も。
日本人に多い、のっぺりした顔。
愛嬌がある黒い瞳。
サラサラな黒髪。
美人ではない。可愛いといえば可愛い部類に入る顔だ。
元から顔が整っているシオは、王宮魔法使いという地位を手に入れ、さらにモテるようになってしまった。
今回由喜乃と暮らすことになり、彼は「恋人」として彼女が同居することを家主に連絡した。家主は王宮魔法使いの長でもあり、彼に恋人がいるという話は一気に広まった。
おかげで、変な女性が寄り付かなくなったので、シオは今の現状に満足していた。
だから彼女を日本に戻すことなど考えていなくて、由喜乃の問いに一瞬だけ躊躇していた。
「ちょっと難航していて。進展があったら報告するから」
「うん、ありがとう」
彼女の生活をシオがすべて保証している。
そのことを理解している由喜乃はシオを急かせることはなかった。
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