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2 第三王子の前世はやっぱり従者でした。
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「申し訳ありません!」
次に目を覚ました時は自室で、私はビビアナ殿下、アダン……いやレジェス殿下に囲まれていた。
反射的に体を起こし、頭を下げる。
ビビアナ殿下はそんな私に柔らかく笑いかけた。
「謝ることはないのよ。まあ、サリタがどうして、石くらいでこけてしまったか、すごい気になるけどね」
ビビアナ殿下は茶目っ気たっぷりにおっしゃったが、私は恐縮してしまった。
横目で、アダン……レジェス殿下を確認するとじっと視線を私に向けている。
その顔は少し幼いけど、やっぱりアダンそっくりだった。
でもアダンのわけないわ。
そんなことありえないもの。
私は13歳で死んでしまったけど、アダンはきっと、兄上の補佐をし続けて、そのうちいい縁談を紹介されて、幸せな家庭を持ったに違いないもの。だから、私より1歳年下の王子なわけがない。
私の死後の、アダンの幸せな家庭を想像して、暗くなったけれども、頭の隅に追いやる。
今の私は、サリタ・コンデーロ。
150人の候補者を押しのけて、ビビアナ王女の従者を射止めた。
体が弱く、家でただ寝ていただけの少女ではない。
「さて、サリタも目が覚めたし、つまらない歴史の講義でも受けてくるわ。レジェスはどうする?心配なら、もう少しサリタの側についている?」
ぎゃー。
なんてこと提案するのですか!
レジェス殿下が困ってます。
殿下は何やら思案した後、そうしますとにっこり答えていた。
え?
レジェス殿下、私と話したことほとんどなかったですよね?しかも避けてませんでしたっけ?
そう、私がビビアナ殿下の従者になってから1年たつけど、レジェス殿下と言葉を交したことがなかった。というか、私の視界に入らないように極力していた気がする。
記憶が戻るまでは、嫌われているんだと思っていた。
いや、実際嫌われているかもしれないけど。
そんな貴方が、なぜどうして残りたがるんですか。
焦ってる私を残し、ビビアナ殿下は出て行ってしまった。
残されたレジェス殿下と私の間でいやーな沈黙が訪れる。
それを破ったのが王子だった。
「お嬢様、お身体の具合はいかがでしょうか?」
え?
ま、まさか。
私はきっと間抜けな顔をしていたに違いない。
さっきまでの幼さはどこにいったのか、レジェス殿下はアダンと同じ穏やかな笑みを浮かべて私を見ていた。
「あの、えっと」
レジェス殿下はアダンなのですか?
いや、違う。
レジェス殿下の前世がアダンってこと?
戸惑っている私に殿下は……アダンは、昔と変わらない微笑みを向けている。
「お嬢様。私はずっとお嬢様にどう接していいかわからず、避けておりました。しかしこうして記憶がお戻りになった今、やっとお嬢様にまた仕えさせていただくことができます」
「へ、は?あのレジェス殿下。何を言ってるんですか?仕えるって。今は私は貴方の主人でもないし、貴方はこの国の王子じゃないですか!」
そう、そう。
いくら、前世がアダンだって、今はレジェス殿下なんだから。
っていうか、なんで、こんなにアダン、アダンしているの?
レジェス殿下はどこにいった???
「そうですが、貴女様の前で王子として振舞うのは恥ずかしく、もう何度消えてしまいたいと思ったことか」
「レジェス殿下!そんなこと困ります。今までと同じでお願いします」
しかしアダンであった殿下は、それは恐れ多いと首を横に振っている。
いやいや、私が困る。
だって、過去は過去だもの。
私はもう守られるだけのお嬢さまじゃない。
「アダ、レジェス殿下。どうか今までと同じようにお振る舞いください。私はあくまでも貴方の臣下なのですから!」
「臣下、だなんて」
レジェス殿下、いやもう。
完全にアダンとしか思えない殿下は、私の言葉に慄き、首を横に振っている。
っていうか、アダンってもっと大人ぽくって、ゆったり構えていなかったっけ?
思い出したばかりの前世の記憶を探ってみるが、浮かんだのは大人びたアダンの微笑みだけだった。
次に目を覚ました時は自室で、私はビビアナ殿下、アダン……いやレジェス殿下に囲まれていた。
反射的に体を起こし、頭を下げる。
ビビアナ殿下はそんな私に柔らかく笑いかけた。
「謝ることはないのよ。まあ、サリタがどうして、石くらいでこけてしまったか、すごい気になるけどね」
ビビアナ殿下は茶目っ気たっぷりにおっしゃったが、私は恐縮してしまった。
横目で、アダン……レジェス殿下を確認するとじっと視線を私に向けている。
その顔は少し幼いけど、やっぱりアダンそっくりだった。
でもアダンのわけないわ。
そんなことありえないもの。
私は13歳で死んでしまったけど、アダンはきっと、兄上の補佐をし続けて、そのうちいい縁談を紹介されて、幸せな家庭を持ったに違いないもの。だから、私より1歳年下の王子なわけがない。
私の死後の、アダンの幸せな家庭を想像して、暗くなったけれども、頭の隅に追いやる。
今の私は、サリタ・コンデーロ。
150人の候補者を押しのけて、ビビアナ王女の従者を射止めた。
体が弱く、家でただ寝ていただけの少女ではない。
「さて、サリタも目が覚めたし、つまらない歴史の講義でも受けてくるわ。レジェスはどうする?心配なら、もう少しサリタの側についている?」
ぎゃー。
なんてこと提案するのですか!
レジェス殿下が困ってます。
殿下は何やら思案した後、そうしますとにっこり答えていた。
え?
レジェス殿下、私と話したことほとんどなかったですよね?しかも避けてませんでしたっけ?
そう、私がビビアナ殿下の従者になってから1年たつけど、レジェス殿下と言葉を交したことがなかった。というか、私の視界に入らないように極力していた気がする。
記憶が戻るまでは、嫌われているんだと思っていた。
いや、実際嫌われているかもしれないけど。
そんな貴方が、なぜどうして残りたがるんですか。
焦ってる私を残し、ビビアナ殿下は出て行ってしまった。
残されたレジェス殿下と私の間でいやーな沈黙が訪れる。
それを破ったのが王子だった。
「お嬢様、お身体の具合はいかがでしょうか?」
え?
ま、まさか。
私はきっと間抜けな顔をしていたに違いない。
さっきまでの幼さはどこにいったのか、レジェス殿下はアダンと同じ穏やかな笑みを浮かべて私を見ていた。
「あの、えっと」
レジェス殿下はアダンなのですか?
いや、違う。
レジェス殿下の前世がアダンってこと?
戸惑っている私に殿下は……アダンは、昔と変わらない微笑みを向けている。
「お嬢様。私はずっとお嬢様にどう接していいかわからず、避けておりました。しかしこうして記憶がお戻りになった今、やっとお嬢様にまた仕えさせていただくことができます」
「へ、は?あのレジェス殿下。何を言ってるんですか?仕えるって。今は私は貴方の主人でもないし、貴方はこの国の王子じゃないですか!」
そう、そう。
いくら、前世がアダンだって、今はレジェス殿下なんだから。
っていうか、なんで、こんなにアダン、アダンしているの?
レジェス殿下はどこにいった???
「そうですが、貴女様の前で王子として振舞うのは恥ずかしく、もう何度消えてしまいたいと思ったことか」
「レジェス殿下!そんなこと困ります。今までと同じでお願いします」
しかしアダンであった殿下は、それは恐れ多いと首を横に振っている。
いやいや、私が困る。
だって、過去は過去だもの。
私はもう守られるだけのお嬢さまじゃない。
「アダ、レジェス殿下。どうか今までと同じようにお振る舞いください。私はあくまでも貴方の臣下なのですから!」
「臣下、だなんて」
レジェス殿下、いやもう。
完全にアダンとしか思えない殿下は、私の言葉に慄き、首を横に振っている。
っていうか、アダンってもっと大人ぽくって、ゆったり構えていなかったっけ?
思い出したばかりの前世の記憶を探ってみるが、浮かんだのは大人びたアダンの微笑みだけだった。
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