【中編版】「愛している」と言われたのに、前世の事を話したとたん、冷たくなりました。

ありま氷炎

文字の大きさ
11 / 18
二章 愛していない?

2-3

しおりを挟む

 ケヴィンはローズと共に屋敷に到着すると、着替えを済ませるため部屋に戻る。隣の部屋は彼女の部屋で、扉を開ければそこに彼女がいるはずだ。

(開けるわけないが)
 
 結婚してから二度目の夜会。
 ローズはケヴィンの瞳の色の青色のドレスで参加した。何もしてないのに、初夜を迎えてから彼女の雰囲気が少し変わった。少女から大人になったような、そんな色気を感じる。
 そのためか、ローズに向けられる視線が何やら下卑たものに思えて、ケヴィンは見てくる奴らを視線で射殺した。

(おそらく、次期公爵夫人としての責任や、母上の指導のせいだろうな)

 彼と彼女の関係は、誓いのキスのみ。
 それ以上の触れ合いはまったくなかった。

(人妻としての色気など馬鹿らしいことを言う奴らがいるが、それはあり得ない。何もないんだから)

 彼の前だといけ好かないロイのように振る舞うローズは、彼以外の者が側にいると彼の妖精に戻る。ケヴィンが一目惚れした、森の妖精のローズだ。

(中身はあのロイだ。騙されるな)

 胸がドキドキするたびにそう言い聞かせて、ケヴィンは気持ちを落ち着かせていた。

(愛人か……。そう言えば初夜のあの日、そんな話をしたな。愛人を越えて離婚まで仄めかしてきた)

 着替えを終わらせ、ベッドに腰かけて彼は馬車での会話を思い出す。

(跡取りのため、子供が必要なんだよな。そのために結婚をしたつもりだった。いや、あの時はそのつもりじゃなかった。俺は、ローズの外面だけを見て妻にしたいと決めたんだ。……外面か。あれは本当に外面なのか?)

 前世のロイはお調子者で、ケヴィン、もといジェイスの気に触る事をしていた。
 けれども軽薄な彼が優しかったのをジェイス(ケヴィン)は知っている。

(俺の前だけでロイのように振る舞う。それが疲れるって言っていなあ。ってことは本当の性格はローズそのものってことか?)

「ケヴィン様」

 扉が叩かれる音と名を呼ばれたことで彼は考えを中断させられた。

「入れ」

 ケヴィンが答えると、ローズが白いワンピースにガウンを羽織り部屋に入ってきた。

「なっ!」
「仕方ないだろう。マチルダに強引に着せられたんだ」

 今宵のローズの夜着は、白いワンピースに見せかけた、かなり際どいものだった。レースの柄で誤魔化されているが、かなりの透け透けだ。ガウンを取ったらとんでもないことになるだろう。
 侍女のマチルダはケヴィンの母に言われているのか、ローズの懐妊を望んでいる。初夜は細工をしてみたが、その後ケヴィンは何もしていない。綺麗な寝具をみれば何もないことはバレバレだろう。
 
「見るなよ。俺も恥ずかしい」

 夫婦の関係がうまくいっていると見せかけるために、寝る時は一緒だ。ローズはケヴィンの座っているベッドの反対側に回り込んで、ベッドの中に潜り込んだ。ガウンはつけたままらしい。

「ガウンを取れ。俺は見ない」
「……本当だな」
「ああ」

 ケヴィンは立ち上がるとローズに背を向け、壁を見る。
 さらりとかすかな音がして、彼はチラリと振り返ってしまった。すると夜着で隠れているが、彼女の体が透けて見えて、慌てて壁側に目を向けた。

(俺はなんてこと。あいつはロイだ。ロイ)

 ぬるっと生ぬるい感触がして気が付けば、鉄の味がした。

(鼻血か!嘘だろう?!)

 気がつかれないようにケヴィンは慌てて鼻を抑える。

「ちょっと出てくる」
「あ?」

 ローズの返事を聞かず、彼は慌てて部屋を出た。

「ケヴィン様?!」

 廊下を通りかかった侍女長のリズが鼻血をダラダラと流す彼を見つけ悲鳴のような声を出した。
 
「何かあったのか?!」

 すると扉を開けて、ローズが姿を見せる。

「ローズ様?!あのお部屋の中へ。その格好では。ケヴィン様のことはお任せください」
「あ、え?はい」

 彼女は自身がガウンなしの透け透けの夜着を身につけた状態であることに気がついたようで、顔を真っ赤にして扉を閉めた。

「御坊ちゃま。さあ、こちらへ」

 事情がわかったような、そんな生暖かい目をして侍女長のリズがケヴィンを手当てをするために部屋に案内した。

 ☆

「恥ずかしすぎる!」

 部屋の中でローズは悶えていた。
 透け透けの夜着姿見られたくなかったのに、ケヴィンと侍女長のリズに見られてしまった。リズは同性だからいいとしてケヴィンにまで。
 見ないからと背を向けてもらい、ガウンを取ったのが馬鹿みたいだった。

(あ、でも背を向けていたよね。ケヴィン様はリズを見ていたし、大丈夫かな?)

 ローズは自分を落ち着けるためにそう言い聞かせる。

(次は絶対にこんな夜着は着ない。期待されていることは起きやしないんだから)

 ロイであるローズにケヴィンがそういう気持ちを持つことはない。
 結婚前のローズを熱心に口説いて、愛していると言ったのは全て猫を被ったローズだからだ。

(意識するだけ無駄。ロイだった時、半分裸だったケヴィンと雑魚寝したこともあったし。っていうか、あの時、結構ドキドキしたんだよね。男として暮らしていたから、もう男になっちゃたと思ったけど、私にも乙女の心があったのだと驚いたっけ)

 ローズは前世(かこ)を思い出してほくそ笑む。

(まあ、意識していたのは自分だけ。まあ、男って思われたしな。っていうか女だって知っても同じだったかもしれない。ジェイスが好んだのは女性らしい小柄な子だった。ああ、だからローズの外見は彼の好みにドンピシャだったのかな)

 いつまでも戻ってこないケヴィン。
 また戻ってきてもこの夜着では気まずいので、ローズはベッドに再び潜り込んだ。
 そうしているといつの間にか眠りに落ちていった。







 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

王太子妃クラリスと王子たちの絆【完】

mako
恋愛
以前の投稿をブラッシュアップしました。 ランズ王国フリードリヒ王太子に嫁ぐはリントン王国王女クラリス。 クラリスはかつてランズ王国に留学中に品行不良の王太子を毛嫌いしていた節は 否めないが己の定めを受け、王女として変貌を遂げたクラリスにグリードリヒは 困惑しながらも再会を果たしその後王国として栄光を辿る物語です。

ヒロインしか愛さないはずの公爵様が、なぜか悪女の私を手放さない

魚谷
恋愛
伯爵令嬢イザベラは多くの男性と浮名を流す悪女。 そんな彼女に公爵家当主のジークベルトとの縁談が持ち上がった。 ジークベルトと対面した瞬間、前世の記憶がよみがえり、この世界が乙女ゲームであることを自覚する。 イザベラは、主要攻略キャラのジークベルトの裏の顔を知ってしまったがために、冒頭で殺されてしまうモブキャラ。 ゲーム知識を頼りに、どうにか冒頭死を回避したイザベラは最弱魔法と言われる付与魔法と前世の知識を頼りに便利グッズを発明し、離婚にそなえて資金を確保する。 いよいよジークベルトが、乙女ゲームのヒロインと出会う。 離婚を切り出されることを待っていたイザベラだったが、ジークベルトは平然としていて。 「どうして俺がお前以外の女を愛さなければならないんだ?」 予想外の溺愛が始まってしまう! (世界の平和のためにも)ヒロインに惚れてください、公爵様!!

ワザとダサくしてたら婚約破棄されたので隣国に行きます!

satomi
恋愛
ワザと瓶底メガネで三つ編みで、生活をしていたら、「自分の隣に相応しくない」という理由でこのフッラクション王国の王太子であられます、ダミアン殿下であらせられます、ダミアン殿下に婚約破棄をされました。  私はホウショウ公爵家の次女でコリーナと申します。  私の容姿で婚約破棄をされたことに対して私付きの侍女のルナは大激怒。  お父様は「結婚前に王太子が人を見てくれだけで判断していることが分かって良かった」と。  眼鏡をやめただけで、学園内での手の平返しが酷かったので、私は父の妹、叔母様を頼りに隣国のリーク帝国に留学することとしました!

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

女王は若き美貌の夫に離婚を申し出る

小西あまね
恋愛
「喜べ!やっと離婚できそうだぞ!」「……は?」 政略結婚して9年目、32歳の女王陛下は22歳の王配陛下に笑顔で告げた。 9年前の約束を叶えるために……。 豪胆果断だがどこか天然な女王と、彼女を敬愛してやまない美貌の若き王配のすれ違い離婚騒動。 「月と雪と温泉と ~幼馴染みの天然王子と最強魔術師~」の王子の姉の話ですが、独立した話で、作風も違います。 本作は小説家になろうにも投稿しています。

「地味で無能」と捨てられた令嬢は、冷酷な【年上イケオジ公爵】に嫁ぎました〜今更私の価値に気づいた元王太子が後悔で顔面蒼白になっても今更遅い

腐ったバナナ
恋愛
伯爵令嬢クラウディアは、婚約者のアルバート王太子と妹リリアンに「地味で無能」と断罪され、公衆の面前で婚約破棄される。 お飾りの厄介払いとして押し付けられた嫁ぎ先は、「氷壁公爵」と恐れられる年上の冷酷な辺境伯アレクシス・グレイヴナー公爵だった。 当初は冷徹だった公爵は、クラウディアの才能と、過去の傷を癒やす温もりに触れ、その愛を「二度と失わない」と固く誓う。 彼の愛は、包容力と同時に、狂気的な独占欲を伴った「大人の愛」へと昇華していく。

婚約破棄で異世界転生を100倍楽しむ方法 ‐漫画喫茶は教育機関ではありません‐

ふわふわ
恋愛
王太子エランから、 「君は優秀すぎて可愛げがない」 ――そう告げられ、あっさり婚約破棄された公爵令嬢アルフェッタ。 だが彼女は動揺しなかった。 なぜなら、その瞬間に前世の記憶を取り戻したからだ。 (これが噂の異世界転生・婚約破棄イベント……!) (体験できる人は少ないんだし、全力で楽しんだほうが得ですわよね?) 復讐? ざまぁ? そんなテンプレは後回し。 自由になったアルフェッタが始めたのは、 公爵邸ライフを百倍楽しむこと―― そして、なぜか異世界マンガ喫茶。 文字が読めなくても楽しめる本。 売らない、複製しない、教えない。 料金は「気兼ねなく使ってもらうため」だけ。 それは教育でも改革でもなく、 ただの趣味の延長だったはずなのに―― 気づけば、世界の空気が少しずつ変わっていく。 ざまぁを忘れた公爵令嬢が、 幸運も不幸もひっくるめて味わい尽くす、 “楽しむこと”がすべての異世界転生スローライフ譚。 ※漫画喫茶は教育機関ではありません。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

処理中です...