元第二王子とヒドインの子は復讐を誓う。

ありま氷炎

文字の大きさ
3 / 52
第二章 ざまぁの子は一つ目の男と旅をする。

1

しおりを挟む
 


 魔の国に来てから、6年が経っていた。
 メルヒが殺されてから5年だ。
 彼女が率いる魔族の一部が王国を襲撃したことで、両国は再び緊張状態に入るかと思われた。しかしながら、魔の国の王――魔王がメルヒに加担した者たちを処罰対象にして、人側を納得させた。
 一つ目の男ヴァンと共にセインは、魔王の追っ手から逃げながら勢力を少しずつ増やしていた。

「……あいつが裏切りやがったか」

 ヴァンとセインは森の中を駆けていた。
 仲間であった者が魔王に寝返り、彼らの居場所がばれたのだ。追ってから逃げるため、森へ逃げこむ。
 11歳になったセインの身長は伸びて、メルヒと同じくらいになっていたが、ヴァンよりもまだ頭二つ分低いくらいだ。
 金髪の髪と琥珀色の瞳、色彩自体は魔族でも同様のものがいた。けれども、魔族はそれぞれ人とは違う特徴があり、セインがその姿をそのまま晒しているとすぐに人とわかってしまう。
 だから彼は黒い外套を羽織って、黒い頭巾を被っていた。人に対抗する者が人である。その事実を隠すためだ。
 魔族たちは、ヴァンの傍にいるセインのことを黒頭巾と呼んだ。

「ヴァンがあいつをなんで信じたか、わからないよ」
「……まあ、お前にはまだ早いだろうな」

 今回ヴィンは所謂色仕掛けに負けてしまった。その肉欲に溺れ、女を信用してしまい、捕縛の危険にある。魔王からヴァンとセインーー黒頭巾は捕縛するように命令が出ているようだ。もちろん抵抗すれば殺してもいいとも言われている。
 復讐を達成するため、魔王に掴まるわけにはいかない。
 セインはヴァンを横目でにらみながらも、速度を緩めることはなかった。

「仕方ねぇ。別れよう。落ち合う場所はあの場所だ。わかったな」
「了解」

 魔王の追手から追いかけられることは日常茶飯事で、万が一お互いが離れた場合でも落ち合う場所は決めてあった。ヴィンは手を上げると、右手に進行方向を変えた。セインは背後を気にしながらもそのまま走り続けた。





「もう、大丈夫か……」

 追手の気配をやっと感じなくなって、セインは木の根っこに座る。 

「ヴァンは大丈夫かな」 

 ヴァンとの付き合いはすでに5年にもなり、最初に拾ってくれたメルヒよりも長い付き合いになる。 
 けれどもメルヒとの思い出はまだ色濃く残っており、王国の奴らに殺された事実を思い出すと怒りで心を震わすのは毎度の事だ。5年も立っているが、その恨みは薄れることはない。  
 王国の、現国王トールと王妃ジョセフィーヌによって、父と母は町へ落とされた。他人からも嘲笑され、その死に対して悲しむ者もいなかった。 死にかけていた自身を拾ってくれたメルヒ。厳しく、言葉も甘くはなかったが彼女から愛情を感じることができた。 
 それが………。 
 メルヒはセインがトールの代わりに人の国を支配することを望んでいた。そのために自身を拾った。その事実をヴァンから聞かされた時、傷ついた。けれども彼女が与えてくれた愛情は本物であったし、何よりも命の恩人だった。 

「トールとジョセフィーヌを殺して、王になり人を支配するんだ。僕を殴った奴や母さんと父さんを馬鹿にした奴に仕返ししてやる」  

 セインの憎しみは増長する一方で、それは彼の生きる力にもなっていた。
 



「畜生……。あいつら、俺狙いかよ」

 セインとは異なり、ヴァンは傷だらけで、追いつめられていた。

「なんだよ。捕縛じゃなかったのかよ」

 致命傷はまだ追っていないが、矢が容赦なく飛んできて、とても捕縛目的とは思えなかった。

「俺は殺して、セインは捕縛か?」

 皮肉気に笑って、彼は木に持たれかかる。

「セインを使って何がするつもりか、魔王の奴」

 ヴァンは現魔王のにやけた笑みを思い出して、唾を吐く。
 武闘派の前魔王と異なり、現魔王は謀略を巡らせて戦いに勝つタイプだった。人の国同様数年前にこちらも代替わりをしている。だからこそ、平和協定などが成立したともいえる。前魔王であれば人の王の申し出などを受けるはずがないからだ。

「……俺と同じことか。だから、俺が邪魔かよ」

 ヴァンは現魔王が魔王になる前までは、友人であった。魔王の側近など堅苦しいとその立場を断り彼の元から離れた。

「ふん。殺されてやるもんか。お前の面を拝むまではよ!」

 気配が近づいてきて、ヴィンは一気に攻撃に転じた。まさか、攻められると思っていなかった追手には隙があった。

「俺をなめんじゃねーよ!」

 追手の喉を掻っ切って、血しぶきが上がる。返り血を浴びて、他の追手をみると、急に逃げに転じ始めた。

「馬鹿野郎が!」

 怒りに任せて始末してしまおうとも思ったが、ヴァンは舌打ちすると待ち合わせ場所へ急いだ。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある

柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった 王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。 リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。 「わかりました。あなたには、がっかりです」 微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?

夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」 教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。 ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。 王命による“形式結婚”。 夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。 だから、はい、離婚。勝手に。 白い結婚だったので、勝手に離婚しました。 何か問題あります?

思いを込めてあなたに贈る

あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。

結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました

ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。 ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。 王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。 そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。 「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。

つまらない妃と呼ばれた日

柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。 舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。 さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。 リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。 ――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

処理中です...