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第二章 ざまぁの子は一つ目の男と旅をする。
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「ヴァン、当てがあるって……」
「ああ、見事当てたな」
翌朝、二人は洞窟からでてヴァンの当てを頼りに進んだ。
そうして、森を抜けてから東に進み日が暮れる前に、ある小屋に辿り着いた。
そこで待っていたのは、立派な二本の角笛を生やした男で、椅子に腰かけて二人を出迎える。
「久々だね。ヴァン」
「ああ、久々だな。会いたくなかったけどな」
苦虫をかみつぶしたような顔のヴァン、対して男はにこやかな笑顔だ。
黒髪の長い髪に紫色の瞳、角笛は立派だが、体は貧弱で、セインはどうしてヴァンがその表情だけでなく、全身を緊張させて彼と話すのかわからなかった。
「君がセインくんだね。私はヴァンの友人でメルヒのことも知っている」
男は親し気だが、セインはヴァンの表情から苦手意識を持つ。自分の名を知っていることも少し驚いた。もしかしたらヴァンか、メルヒから聞いたことがあるのかと、男を見据える。
魔の国で彼の名を知っているのは、メルヒとヴァンだけのはずだった。
他の魔族には黒頭巾として知られている。
「そんなに警戒してなくても。君にいい知らせを持ってきてくれたのに」
「いい知らせ?」
「セイン。話を聞くな。立ち去るぞ!」
ヴァンがセインの腕を掴み、逃亡を試みるが、突然二人は吹き飛ばされて、壁に床を転げる。
椅子に座っていた男は手の平を二人に向けており、そこには魔法を使うための小さな魔法陣が描かれていた。
「ちっつ、魔法か」
「あんまり使うのは好きじゃないけどね。折角来たんだし、逃げられても困るしね」
セインは床から立ち上がりながら、改めて男を警戒する。ヴァンは床から体は起こしたが、そのまま床に座ったまま男を睨む。
「わざわざ、何のためにお前が出向いてきた?案外魔王さまも暇なんだな」
「魔、王?」
「そう。セインくん。私はこの魔の国の王、魔王。覚えておいてね」
今まで自分たちを捕まえようとしていた相手、自らが動くなんて信じられないと、セインは男――魔王を見上げる。
「さて、ヴァン。抵抗しても無駄だ。死にたいかい?」
「わかってるさ」
「素直でいいね。さあ、セインくん。よい知らせを聞かせてあげよう」
ヴァンは無抵抗を知らせるように、両手をあげて頭の後ろで組む。彼ほどの強さをもっても敵わないのかと、セインは諦めを持って、彼の話を聞くことにした。
「メルヒが生きている?」
「ああ、そうだよ。私はメルヒを助けたいと思っているんだ」
魔王は友好的な笑みを浮かべていた。
ヴァンは反して、ずっと険しい顔をしている。
二人の顔を見比べながら、セインは引き続き話を聞く。
「確かに、瀕死の重傷だった。だけど、彼女は生きている。誰かはそれを見殺しにしようとしたけどね」
「……誰か?」
嫌な予感がしてきて、セインは胸のあたりを触る。鼓動が早まるのを感じて、話しの続きを待つ。
「ヴァンは君に、メルヒは殺されたといったんだろう?どうして彼はそんなことを言ったのかな?メルヒが死んだところをみたのかな?」
「ヴァン?」
不安を覚えながら、セインはヴァンを仰ぎ見る。彼は真っすぐ魔王を見たままだった。
「話しちゃうぞ。ヴァン。いいのか?」
「構わない」
「面白くないなあ。セインくん。ヴァンは瀕死の重傷を負ったメルヒをその場に残して自分だけ逃げだしたんだ。なぜだかわかるかい?」
セインは答えなかった。ただ、ヴァンを見続ける。けれども彼がこちらを見ることはなかった。
「ヴァンはメルヒに死んでほしかった。彼女の死によって君を復讐に駆り立て、君を人間の王に祭り上げ、人間の世界を支配したかったのさ」
「ヴァン……、答えて。本当なの?この魔王が言ったことは?」
「本当だ。その通り。参った。さすが、魔王さまは全部お見通しってわけか」
「魔王さまか。以前のようにザイネルって呼んでもいいんだけどね。君は」
魔王――ザイネルは肩を竦める。
二人のやり取りにセインはただ衝撃で何も考えられなかった。
ただわかるのか、ヴァンが嘘をついていたこと、ずっと裏切っていたことだ。この5年訓練に付き合ってくれ、病気のときは世話をしてくれた。彼はメルヒの次に大事な人になっていた。
この5年がすべて嘘だったのかと、急にセインの中に憎しみが生まれていく。
「ヴァン!」
「おやおや、怒ったようだよ。ヴァン。悲しいねぇ」
茶化すような言葉はセインの怒りを増長するだけだ。
彼は反射的にヴァンからもらった細身の剣を鞘から引き抜き、切り掛かっていた。しかし、そんな攻撃が届くわけがない。
むしろそれを利用して、ヴァンは攻撃を避けながら立ち上がり小屋から脱出した。セインは追いかけて、外に出るがすでに辺りは暗闇に包まれていて、彼の影など見つけることはできなかった。がむしゃらに走りだろうとしたセインを止めたのは魔王――ザイネルだった。
「君の仇がまた増えたね。私が手を貸そう。この魔の国の、魔王ザイネルが。ヴァンと、人の国の王と王妃を殺して、メルヒを助けよう。そして、人を支配するんだ。君が王となって。この世界を私と君とで支配しよう」
セインの腕を掴んだまま、ザイネルは微笑む。
握っていた細身の剣が落ちて、地肌にむき出しになった岩に当たって落ちた。
日が暮れて、闇が辺りを支配していた。昼間は寝ていた獣たちが目を覚まし、夜の狩りを楽しもうとしていた。
「ああ、見事当てたな」
翌朝、二人は洞窟からでてヴァンの当てを頼りに進んだ。
そうして、森を抜けてから東に進み日が暮れる前に、ある小屋に辿り着いた。
そこで待っていたのは、立派な二本の角笛を生やした男で、椅子に腰かけて二人を出迎える。
「久々だね。ヴァン」
「ああ、久々だな。会いたくなかったけどな」
苦虫をかみつぶしたような顔のヴァン、対して男はにこやかな笑顔だ。
黒髪の長い髪に紫色の瞳、角笛は立派だが、体は貧弱で、セインはどうしてヴァンがその表情だけでなく、全身を緊張させて彼と話すのかわからなかった。
「君がセインくんだね。私はヴァンの友人でメルヒのことも知っている」
男は親し気だが、セインはヴァンの表情から苦手意識を持つ。自分の名を知っていることも少し驚いた。もしかしたらヴァンか、メルヒから聞いたことがあるのかと、男を見据える。
魔の国で彼の名を知っているのは、メルヒとヴァンだけのはずだった。
他の魔族には黒頭巾として知られている。
「そんなに警戒してなくても。君にいい知らせを持ってきてくれたのに」
「いい知らせ?」
「セイン。話を聞くな。立ち去るぞ!」
ヴァンがセインの腕を掴み、逃亡を試みるが、突然二人は吹き飛ばされて、壁に床を転げる。
椅子に座っていた男は手の平を二人に向けており、そこには魔法を使うための小さな魔法陣が描かれていた。
「ちっつ、魔法か」
「あんまり使うのは好きじゃないけどね。折角来たんだし、逃げられても困るしね」
セインは床から立ち上がりながら、改めて男を警戒する。ヴァンは床から体は起こしたが、そのまま床に座ったまま男を睨む。
「わざわざ、何のためにお前が出向いてきた?案外魔王さまも暇なんだな」
「魔、王?」
「そう。セインくん。私はこの魔の国の王、魔王。覚えておいてね」
今まで自分たちを捕まえようとしていた相手、自らが動くなんて信じられないと、セインは男――魔王を見上げる。
「さて、ヴァン。抵抗しても無駄だ。死にたいかい?」
「わかってるさ」
「素直でいいね。さあ、セインくん。よい知らせを聞かせてあげよう」
ヴァンは無抵抗を知らせるように、両手をあげて頭の後ろで組む。彼ほどの強さをもっても敵わないのかと、セインは諦めを持って、彼の話を聞くことにした。
「メルヒが生きている?」
「ああ、そうだよ。私はメルヒを助けたいと思っているんだ」
魔王は友好的な笑みを浮かべていた。
ヴァンは反して、ずっと険しい顔をしている。
二人の顔を見比べながら、セインは引き続き話を聞く。
「確かに、瀕死の重傷だった。だけど、彼女は生きている。誰かはそれを見殺しにしようとしたけどね」
「……誰か?」
嫌な予感がしてきて、セインは胸のあたりを触る。鼓動が早まるのを感じて、話しの続きを待つ。
「ヴァンは君に、メルヒは殺されたといったんだろう?どうして彼はそんなことを言ったのかな?メルヒが死んだところをみたのかな?」
「ヴァン?」
不安を覚えながら、セインはヴァンを仰ぎ見る。彼は真っすぐ魔王を見たままだった。
「話しちゃうぞ。ヴァン。いいのか?」
「構わない」
「面白くないなあ。セインくん。ヴァンは瀕死の重傷を負ったメルヒをその場に残して自分だけ逃げだしたんだ。なぜだかわかるかい?」
セインは答えなかった。ただ、ヴァンを見続ける。けれども彼がこちらを見ることはなかった。
「ヴァンはメルヒに死んでほしかった。彼女の死によって君を復讐に駆り立て、君を人間の王に祭り上げ、人間の世界を支配したかったのさ」
「ヴァン……、答えて。本当なの?この魔王が言ったことは?」
「本当だ。その通り。参った。さすが、魔王さまは全部お見通しってわけか」
「魔王さまか。以前のようにザイネルって呼んでもいいんだけどね。君は」
魔王――ザイネルは肩を竦める。
二人のやり取りにセインはただ衝撃で何も考えられなかった。
ただわかるのか、ヴァンが嘘をついていたこと、ずっと裏切っていたことだ。この5年訓練に付き合ってくれ、病気のときは世話をしてくれた。彼はメルヒの次に大事な人になっていた。
この5年がすべて嘘だったのかと、急にセインの中に憎しみが生まれていく。
「ヴァン!」
「おやおや、怒ったようだよ。ヴァン。悲しいねぇ」
茶化すような言葉はセインの怒りを増長するだけだ。
彼は反射的にヴァンからもらった細身の剣を鞘から引き抜き、切り掛かっていた。しかし、そんな攻撃が届くわけがない。
むしろそれを利用して、ヴァンは攻撃を避けながら立ち上がり小屋から脱出した。セインは追いかけて、外に出るがすでに辺りは暗闇に包まれていて、彼の影など見つけることはできなかった。がむしゃらに走りだろうとしたセインを止めたのは魔王――ザイネルだった。
「君の仇がまた増えたね。私が手を貸そう。この魔の国の、魔王ザイネルが。ヴァンと、人の国の王と王妃を殺して、メルヒを助けよう。そして、人を支配するんだ。君が王となって。この世界を私と君とで支配しよう」
セインの腕を掴んだまま、ザイネルは微笑む。
握っていた細身の剣が落ちて、地肌にむき出しになった岩に当たって落ちた。
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