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第三章 ざまぁの子は魔王の配下になる。
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しおりを挟む「おお、似合ってる。王子様っぽい」
セインは魔王ザイナルが用意した正装に着替えていた。
上衣は人間の国の国旗色でもある青色で、中のシャツは白色。金色の刺繍が入っており、セインはまるで人形になったような気分で、鏡の中の自身を睨んでいる。
鏡越しに、にやけたザイネルの顔が見えて、さらに嫌な気分になった。
「さて、出かけるよ。笑顔は必要ない。もう取り繕う必要はない。君は私と対等の、王になるのだから」
その言葉とともに彼の表情が急に冷たいものに変わった。
それだけで少し緊張してしまう自身がなさけなくて、セインは気持ちを改めた。
ーー僕は、王子としてあの国へ戻るんだ。そして目的を遂げる。
「いい顔になったね。ほら、行くよ」
謁見の間への奥の部屋で彼らは待機しており、ザイネルは椅子から立ち上がると、扉へと進む。
セインはそれに続き、使い魔によって扉が開かれ、彼の15歳を祝う祝賀会は始まった。
ザイネルに続き、セインが顔を見せて集まった魔族たちはざわついた。
今日は黒頭巾の誕生日だと聞かされていたのだ。
突如人が現れ、不満の声を上げるものもいた。
「静まれ。今日は黒頭巾、セインの15歳の誕生日を祝賀会だ。不満ならば退出しろ」
「陛下。黒頭巾は人だったのですか?なぜ人を使ってきたので?しかもその者の誕生日を祝うなど」
鹿のような角を生やし、顎髭を蓄える魔族の一人が声をあげ、それは他にも伝染していく。
「黒頭巾は人だった。だが、この4年よく働いてくれただろう。お前の配下も確か、捕縛したことがあったな」
ザイネルが揶揄すると、彼は顔を真っ赤にした。
「それとこれは関係ございません」
「ああ、関係ないな。ギャンダ。この黒頭巾、セインは人の国の王子である。私が保護して見守ってきた。彼の存在によって、人の国との繋がりがさらに強化され、さらなる平和が保たれるだろう」
王子という言葉で、騒いでいた魔族が静まりかえった。
「また戦争を起こしたいか?人は弱いが、我々と違って奴らは数が桁違いだ。戦争を起せば多くの魔族が死ぬことになる。もう一度、それを見たいか?」
「そ、そんなことはございません」
最初に騒いだ鹿の魔族ギャンダが平伏し、他の魔族もそれ以上不平を口にすることはなかった。
「さあ、祝おうではないか。王子セインの15歳の、成人の日を!」
ザイネルがグラスを持って声を張り上げると、魔王から一番近い魔族が続き、ギャンダや他の魔族もグラスを掲げる。気おくれしながらも、セインはそれに習った。
「王子セインの成人を祝い、この魔の国の永久なる平和と繁栄を願おう!」
「ザイネル陛下!王子セイン!おめでとうございます」
こうして波乱を帯びるかと思った祝賀会は無事に始まり、セインは己に様々な感情をぶつけてくる魔族を眺めながら、心を新たにした。
ーーやっと、この時がきた。僕は、復讐を遂げる。そしてメルヒを助けるんだ。メルヒ……。ヴァン……。
メルヒのガサツな笑顔、その後に思い出したのはヴァンの不敵な笑みだ。
――ヴァンのことは後だ。まずは、人の国でやるべきことをする。待っていて、メルヒ。助けるから。
酒が入り、祝賀会は混とんとしていく。暴れる者、押さえる者、喧騒は喧嘩へともつながっていく。魔族の祝賀会などは毎回こんなもので、ザイネルは楽しそうにその様子を眺める。セインはその隣で、慣れない酒を煽った。
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