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第四章 ざまぁの子は魔犬と再会する。
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しおりを挟む「ここまでくれば大丈夫か」
ヴァンの足が止まり、気がつけば追手の気配が消えていた。セインは夢中でヴァンを追っていたことに気が付き、自身を叱咤する。
ーー豚の魔族は消えたけど、まだヴァンがいる。
「おいおい。セイン。お前、馬鹿だろう?そんな状態で俺に勝つつもりか?」
「煩い!」
魔力はほとんど残っていない。
背中に背負った剣を鞘から抜いて、ヴァンに切りかかる。
数十の魔族を相手にした後、豚の魔族から逃げきったのだ。体力も限界で、動きは鈍かった。
「馬鹿だな」
ヴァンは口を歪めると、すぐに応戦した。
手首を掴まれて簡単に捻られて、武器を手放してしまう。ならば残った魔力でと思ったが、器用に剣を動かして、手袋だけを刻まれてしまった。
「くそっつ!」
「本当、面倒な奴だな。昔はあんなに素直だったのに」
「煩い!」
セインは懐かしそうに語る彼の声を聞きたくなくて、がむしゃらに抵抗した。
「話すら聞くつもりはないんだな。なら、いい。自分でどうにかしろ!」
苛立ちまぎれにそんな声が聞こえて、セインの意識は途切れた。ヴァンが彼の鳩尾に一撃を食らわせて、意識を奪ったのだ。
「まあ、可愛い子は旅をさせろってね。自分の道は自分で切り開けよ」
彼は地面に伏したセインに語るのだが、すでに意識を失っている状態で聞けるはずがなかった。
「まったく、ザイネルの奴。わざとだな。俺が邪魔をしないと高をくくってるんだな」
ヴァンは彼を肩に背負い、歩き出す。
「放置していたら、殺られるのはわかってるからな。仕方ない。送るとするか。俺も相当いい奴だな」
溜息交じりの言葉は誰に聞かれることもない。
そんな風に独り言をぼやく自身に苦笑しつつ、ヴァンはとりあえずセインを安全な場所へ送り届けることにした。
☆
「反対です」
翌朝、トールは大臣たちを集め会議を開く。
議題はセインを城に迎えることだ。
宰相、国務大臣、国防大臣、財務大臣、外務大臣、総務大臣、そして近衛兵団長 の7人が顔を揃え、宰相が議題について述べていく。
大臣に意見を聞く前にトールの意見を伝えると、3人の大臣が反対の意を示す。
「第一王位継承者として城に迎えるなどとはあり得ない話」
「失礼ながら、王族として教育も受けておらず、魔の国で育った者が統治者として人の国を治めることなど不可能です」
「カール殿下は王位を剥奪されており、すでに王族ではありません。よって、その子、セイン殿下にも王位継承権は発生いたしません」
それに対して、二人の大臣ーー総務大臣と外務大臣が賛成の意を示した。
「現時点で陛下にはお子がおりません。王妃様もまだお若く可能性はありますが、念のためにセイン殿下を王位継承者の一人として城に迎えることは良策だと思われます。聞けばまだ15歳になったばかり。今後教育を施せば立派に王族になるでしょう」
「魔の国との親善の意味でも受け入れる方針に私は同意する」
5人の大臣たちがそれぞれの意見を口にして、それからお互いに罵り始めた。
「セイン殿下を迎えなければ、王位はどうなります?」
「陛下はまだ若い。この際側室を迎えて」
「ガンザス国務大臣殿、それは己の娘を……ということですかな?」
総務大臣が揶揄すると、ガンザスは顔を赤らめて反論する。
「そういうことではない。私の娘ではなくとも、他の大臣にも年頃の娘がいらっしゃるはず。それで」
「黙れ」
話を黙って聞いていたトールはそこで口を挟んだ。
表情は穏やかだが、その青い瞳は冷え切っていた。
「私は側室を娶る気はない。わかったな。ガンザス」
「は、はい」
結局、現在直系の王位継承者が不在であること、魔の国との親善の意味を込めてということで、セインを城に迎えるという結論は変わることはなかった。
不満を覚える大臣たちは腹の底に苛立ちを溜めながらも、それ以上反対することはなかった。
「当初の陛下の意見通り、セイン殿下を第一後継者として城に迎えます。各大臣はその準備をするように。日程などは追って知らせます。以上。本日の会議は閉会といたします」
宰相の言葉で会議は終了となり、まずはトールが席を立つ。それを待って大臣たちはそれぞれゆっくりとした足取り、または足早に去っていった。
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