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第四章 ざまぁの子は魔犬と再会する。
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しおりを挟む「セイン王子。また間違いましたね」
猫の魔族カリンは、人差し指でセインを差しながらセインに注意する。
彼女はザイネルから紹介された礼儀作法の先生だ。
灰色の大きな耳に、細長い尻尾が揺れている。
人の国で暮らしたことあり、人の国の常識には詳しいという説明を受けた。けれども指を差すという行為はすでに礼儀にかなっておらず、ザイネルの手配が正しいかは不明だ。
けれどもセインにとっては知らないことも多く素直に彼女に従った。面倒なことも多くて、うっかり手順を飛ばすと猫の魔族カリンから注意を受ける。
セインより少し年上に見える外見なのだが、魔族は人よりも寿命は長くて15歳を超えると成長速度が違うので、実年齢はセインにもわからなかった。
「まあ、たった二日で王子らしく見えてきたのでよいでしょう。読み書きも教えなければならないのかと思いましたが、習得されているのは驚きました」
「ザイネルが教えてくれたから」
4年前、魔法と体術の他に、ザイネルはセインに文字を教えた。
ならば礼儀作法もその際に教えてくれたらよかったのにと今ならば思うのだが、ザイネルの性格を考え礼儀作法などは面倒な部類のはいるのだろうと、妙に納得する。
ーー本当、ザイネルはよくわからない。突き放すこともあるし、面倒見がいいこともある。まあ、気分屋なんだろうな。
「さて、次はダンスでも教えて差し上げましょう」
「ダ、ダンス?!」
「王族であれば夜会があります。それに参加することになるでしょう。私も獣の姿でしか見たことがないので、きちんと教えられるかは自信がありませんが、何ごともぽく、見えればいいのです!」
そんなことで大丈夫かと心配にもなったが、やらないよりはましだろうとセインは頷いた。
☆
「ご苦労様」
ザイナルは人の国の使者を待たせたまま、書簡を開いた。
「なるほど。返事は直ぐに書く。ペンと紙を」
魔の国では魔王の権力が絶対で、決断するのに議会などを開くことはない。彼の一存で物事は決められる。不満を覚えるものは決起するが、歴代の魔王はそれを力で抑えてつけてきた。
ザイネルも同様で、彼が魔王になって11年経つが、何度も反乱を押さえてきている。
小間使いが持ってきたペンで紙に文字を綴っていく。一度読み返してから彼はそれを丸めて円筒の箱に入れた。
「使者よ。これが返事だ。王へ渡すがいい」
ザイネルと使者の間には距離があり、その間を小間使いが動く。魔王から筒を受け取り、使者に渡した。
「畏まりました」
使者は緊張した面持ちのまま、頭を下げるとすぐに立ち上がる。魔族に四方を囲まれて緊張しないわけにはいかない。汗を額ににじませながら、彼は謁見の間から出て行った。
国境まで彼には手を出さないように魔族たちには命じている。もし命を破る者がいたら、それは魔王の使役する魔族によって殺されることを意味する。
「あと二日あれば、セインくんも大丈夫だろう。そうだ。服も新調したほうがいいかな。彼が特別なことを知らしめなければな」
ザイネルは愉快そうに笑って、小間使いに新たな命を下した。
☆
「人の使者が来たか。そろそろ始まるのか」
国境近くの森で、ヴァンは暇つぶしに鍛錬をしていた。軽く汗をかいていたので、布で体を拭う。
「情報ありがとうな。これは謝礼だ」
わざわざ情報を持ってきてくれた鼠の魔族に、彼は袋から小さな魔石を取り出し投げる。獣型のかなり大きな鼠の姿のまま、それは宙で魔石を口に銜えた。
魔の国では魔石によって物を売買する。魔石は文字通り魔力のこもった石だ。魔力の度合いによって色が異なり、それによって価値も変わる。大きさも価値に加わる。
魔力の強度は上から赤、紫、青である。
魔石の魔力を使い切ると、色はなくなりただの石となる。再び石に魔力を込めることは不可能で、魔石採掘は魔王の配下が行うのが決まりだ。
「さあて、俺も準備するかな」
大きな鼠が完全に姿を消すのを待って、ヴァンは仕度を始める。
彼は一つ目の魔族、人と違うのはその目の数だけだ。目を覆えば、その見た目は人と変わりがない。
ヴァンは人の国がある方向へ目をやり、石に立て掛けてあった剣を背中に背負い直した。
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