17 / 52
第四章 ざまぁの子は魔犬と再会する。
6
しおりを挟む
二日後。
セインは魔の国から人の国に向けて出発した。
魔の国の城から1日以内で国境には辿り着く。
セインに、ザイネル直属の部下3名が付くことになっており、それぞれが馬に乗って進んだ。
馬は魔族が変化したものではない。
馬の魔族が変化した場合、通常の馬よりも大柄になり、毛並みも異なる。
国境に詰める騎士や兵の中には11年前の戦争を経験した者も少なくなく、セインへ付随する魔族は3名と報告しているのに、魔族が変化した馬を連れて行くと何かと問題となるからだ。
セインと魔族3名は、国境前で一夜を過ごして早朝になり国境を超える。
彼が人の国で過ごしたのは僅か5年余り。
しかも小さいときで記憶はすこしだけ。ある記憶は両親のこと、殴られたこと、なじられたことなど嫌な想いしかなかった。
憂鬱な気持ちで、国境に位置する人の国の砦の前に立つ。
「セイン王子を人の国の城へ送り届けるため、国境を通していただきたい」
魔族の大半は戦闘的なものが多いが、ザイネルが遣わせた3名は戦闘的ではない魔族ばかりだ。
羽を背中に生やした鳥の魔族バイゼル、耳が長い兔の魔族ラギル、背中に甲羅を背負った亀の魔族タトル。
どれも人型で、それぞれの特徴がなければ生粋の人間に見えないことはなかった。
三名のうち、亀の魔族バイゼルが長になり、彼が冷静に門番に話しかけていた。
人の国より送られた証明書を見せると頑丈な門が開いた。
セインを含んだ4名は馬に乗ったまま、中に入る。
「セイン殿下。よくお戻りくださいました。私は砦の兵団長のキザンです。よろしくお願いします」
出迎えたのは、砦の兵団長キザンでにこやかな笑みを浮かべていた。年齢は四十代半ば、髪は反り上げており、背丈はヴァンと同じくらい、兵団長を名乗るのが頷けるくらい筋肉質な男だった。
さすがに馬に乗ったまま挨拶を受けるわけにはいかず、セインと他の三人は馬から降りる。
「キザン。出迎えご苦労。城までは案内が付くのか?」
猫の魔族から王族として、上から目線だが労うことは忘れないようにと助言をもらっているので、それを意識してセインは聞く。
「はい。副兵団長のジョンソンに、数名つけます。砦で一旦休憩されますか?」
「必要ない」
すでに他の三人とは打ち合わせしており、国境で数人兵士が護衛と言う名の監視目的でつくはずだから、それを伴ってすぐに王城へ向かうつもりだった。
「畏まりした。それでは、こちらへ。セイン殿下の馬は私の部下が連れていきましょう」
馬の扱いにはさすがに慣れているらしく、兵団長キザンはセインから手綱を受け取りと馬を撫でてから、彼の部下に手綱を引き渡す。その際も部下は上司と同じ動作を繰り返し、馬は抵抗することなく手綱を引かれながら、大人しくセインとキザンの後方を素直に着いていった。
魔族の三名はそれぞれの馬の手綱を引き、ゆっくりとそれに続く。
「カイル殿下とは昔何度かお手合わせをお願いしたことがあります。本当にあなた様はカイル殿下に似ていらっしゃる」
キザンはセインの隣で懐かしそうに目を細める。
最初の笑顔が胡散臭く思えていたが、嘘ではなかったとセインは内心ほっとする。
彼にとって父はいつも病床におり、泣いていた印象が強く、隣の騎士とお手合わせなどと想像もできなかったが。
「あなたが魔の国にいらしたなどと驚くばかりでした。ですがあなたが魔の国で育ったのは何かの運命にしか思えません。あの戦争は悲惨でした。もう二度とあのような戦いを望んでおりません。できればあなたがこの平和を恒久なものに変えていただけると嬉しいです」
「努力する」
セインにとって、戦争とかそういうものはどうでもよかったのだが、キザンを満足させるためにそう答える。彼の目的は復讐、メルヒの奪還だ。魔の国と人の国の親善など、口実に過ぎない。ザイネルが何度かそれを口にしているが、あの享楽主義の彼が平和を望んでいるとも思えなかった。
すぐに出発するという話は伝えられていたのか、少し歩くと5人の騎士が待っていた。
「セイン殿下。こちらが、副兵団長のジョンソン、御者を務めるアインに……」
兵団長キザンは、同行する騎士を1名ずつ紹介していく。ここからはセインは馬車を利用して、彼が乗っていた馬は別の者が王城へ連れて行くことになった。
人の国の騎士が2名前に、その後に亀の魔族タトル、セインが乗る馬車に後方に兔の魔族ラギル、鳥の魔族バイゼル、最後後方に2名の騎士が付く。
あと1名はセインの馬車の御者役だ。
こうして、国境で馬車に乗り換え、新たに人の国の騎士を4名つけて、セインは王城へ再び進み始めた
セインは魔の国から人の国に向けて出発した。
魔の国の城から1日以内で国境には辿り着く。
セインに、ザイネル直属の部下3名が付くことになっており、それぞれが馬に乗って進んだ。
馬は魔族が変化したものではない。
馬の魔族が変化した場合、通常の馬よりも大柄になり、毛並みも異なる。
国境に詰める騎士や兵の中には11年前の戦争を経験した者も少なくなく、セインへ付随する魔族は3名と報告しているのに、魔族が変化した馬を連れて行くと何かと問題となるからだ。
セインと魔族3名は、国境前で一夜を過ごして早朝になり国境を超える。
彼が人の国で過ごしたのは僅か5年余り。
しかも小さいときで記憶はすこしだけ。ある記憶は両親のこと、殴られたこと、なじられたことなど嫌な想いしかなかった。
憂鬱な気持ちで、国境に位置する人の国の砦の前に立つ。
「セイン王子を人の国の城へ送り届けるため、国境を通していただきたい」
魔族の大半は戦闘的なものが多いが、ザイネルが遣わせた3名は戦闘的ではない魔族ばかりだ。
羽を背中に生やした鳥の魔族バイゼル、耳が長い兔の魔族ラギル、背中に甲羅を背負った亀の魔族タトル。
どれも人型で、それぞれの特徴がなければ生粋の人間に見えないことはなかった。
三名のうち、亀の魔族バイゼルが長になり、彼が冷静に門番に話しかけていた。
人の国より送られた証明書を見せると頑丈な門が開いた。
セインを含んだ4名は馬に乗ったまま、中に入る。
「セイン殿下。よくお戻りくださいました。私は砦の兵団長のキザンです。よろしくお願いします」
出迎えたのは、砦の兵団長キザンでにこやかな笑みを浮かべていた。年齢は四十代半ば、髪は反り上げており、背丈はヴァンと同じくらい、兵団長を名乗るのが頷けるくらい筋肉質な男だった。
さすがに馬に乗ったまま挨拶を受けるわけにはいかず、セインと他の三人は馬から降りる。
「キザン。出迎えご苦労。城までは案内が付くのか?」
猫の魔族から王族として、上から目線だが労うことは忘れないようにと助言をもらっているので、それを意識してセインは聞く。
「はい。副兵団長のジョンソンに、数名つけます。砦で一旦休憩されますか?」
「必要ない」
すでに他の三人とは打ち合わせしており、国境で数人兵士が護衛と言う名の監視目的でつくはずだから、それを伴ってすぐに王城へ向かうつもりだった。
「畏まりした。それでは、こちらへ。セイン殿下の馬は私の部下が連れていきましょう」
馬の扱いにはさすがに慣れているらしく、兵団長キザンはセインから手綱を受け取りと馬を撫でてから、彼の部下に手綱を引き渡す。その際も部下は上司と同じ動作を繰り返し、馬は抵抗することなく手綱を引かれながら、大人しくセインとキザンの後方を素直に着いていった。
魔族の三名はそれぞれの馬の手綱を引き、ゆっくりとそれに続く。
「カイル殿下とは昔何度かお手合わせをお願いしたことがあります。本当にあなた様はカイル殿下に似ていらっしゃる」
キザンはセインの隣で懐かしそうに目を細める。
最初の笑顔が胡散臭く思えていたが、嘘ではなかったとセインは内心ほっとする。
彼にとって父はいつも病床におり、泣いていた印象が強く、隣の騎士とお手合わせなどと想像もできなかったが。
「あなたが魔の国にいらしたなどと驚くばかりでした。ですがあなたが魔の国で育ったのは何かの運命にしか思えません。あの戦争は悲惨でした。もう二度とあのような戦いを望んでおりません。できればあなたがこの平和を恒久なものに変えていただけると嬉しいです」
「努力する」
セインにとって、戦争とかそういうものはどうでもよかったのだが、キザンを満足させるためにそう答える。彼の目的は復讐、メルヒの奪還だ。魔の国と人の国の親善など、口実に過ぎない。ザイネルが何度かそれを口にしているが、あの享楽主義の彼が平和を望んでいるとも思えなかった。
すぐに出発するという話は伝えられていたのか、少し歩くと5人の騎士が待っていた。
「セイン殿下。こちらが、副兵団長のジョンソン、御者を務めるアインに……」
兵団長キザンは、同行する騎士を1名ずつ紹介していく。ここからはセインは馬車を利用して、彼が乗っていた馬は別の者が王城へ連れて行くことになった。
人の国の騎士が2名前に、その後に亀の魔族タトル、セインが乗る馬車に後方に兔の魔族ラギル、鳥の魔族バイゼル、最後後方に2名の騎士が付く。
あと1名はセインの馬車の御者役だ。
こうして、国境で馬車に乗り換え、新たに人の国の騎士を4名つけて、セインは王城へ再び進み始めた
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる