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第四章 ざまぁの子は魔犬と再会する。
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しおりを挟む城に入ると、セインと魔族3名は謁見の間に案内される。もちろん、武器等はすべて部屋の前で預けてからだ。
想定外であり、魔の国でも同様の措置をするため、魔族たちも不平を漏らすことなく従った。
そうして、扉が開けられ、セインは初めて仇を目にする事になる。
白い石畳の部屋、壁には人の国の旗が掲げられている。
部屋の一番奥には二つの椅子。
そこに、王トールと王妃ジョセフィーヌが座っていた。
首を垂れる前に、彼は二人の顔を確認する。
父カイルの弟である王トール。
父に類似している点は、その瞳だった。
琥珀色の瞳に、茶色の髪。
視線は厳しく、セインは己を叱咤しながら俯く。
王妃ジョセフィーヌは、華やかな母とは反対の外見であった。赤毛に茶色の髪、造形は整っているが派手さに欠ける女性だった。
「セイン。よく無事に戻ってまいった」
トールの声がかかるが、猫の魔族カリンの言葉を思い出して、セインは俯いたままで彼の指示を待つ。
「顔を上げよ。お前の顔をよく見せてくれ」
「はい」
返事をして顔を上げ、冷静さを保つように何度も心の中で言いながら、彼に視線を合わせる。
「本当に兄上とそっくりだな。疲れているだろう。お前の部屋は用意してある。また、魔族の御仁たちにも部屋の準備を整えている。休まれるとよいだろう」
トールとの謁見はそれだけで、王妃は無言のまま。セインがそっと横目で見ると、彼女の茶色の瞳とぶつかる。優しく微笑まれて、慌てて顔を逸らした。
ーー敵だ。王も王妃も、僕の両親を見殺しにした敵なんだ。
謁見の間から彼の部屋に案内されながら、セインはその言葉を繰り返していた。
「セイン殿下と少し話をしてもいいかな」
「どうぞ。我々は外に待機していましょう」
まず部屋に案内されたのはセインだったが、そこで亀の魔族タトルが案内役の騎士に尋ねる。快く返事が返ってきて、セインと魔族3名は部屋で話すことになった。
「さすが、王子の部屋だな」
「さすが?魔の城の部屋と変わらんだろう」
「ボクもそう思います」
タトルの言葉に、鳥の魔族バイゼルが反論し、それに兔の魔族ラギルが頷く。
「セイン殿下はどう思う?」
「変わらないね」
「ほら、そうだろう」
鳥の魔族バイゼルは亀の魔族タトルに勝ち誇ったように言って、ラギルが肩を竦めた。
ーー話ってこれのこと?
突然始まった会話にセインが戸惑っていると、タトルが懐から紙を取り出す。
「この机の彫刻なんて、立派じゃないか」
彼はそう讃えながら、セインに紙を見せた。
紙には、『メルヒはすでに大樹から離れ、この城の客間で王妃の客として暮らしている。今夜どうにか会う機会を作る予定だ。’焦るなよ』
書かれていたことが衝撃的で声を出しそうになったが、鳥の魔族バイゼルに腕を引かれて、どうにか堪えた。
「セイン殿下。この彫刻、立派だと思うか?」
行動と表情とは全く別に愉快そうな声で鳥の魔族バイゼルに聞かれ、セインは戸惑うが必死に答える。
「まあ、そうかな」
「立派?ボクはそう思わないですけど」
ラギルが話に入ってきて、タトルが別の紙を見せる。
ーー油断させるため、大人しく王子としてふるまえ。私たちが滞在できるのは多分3日ほどだ。その間で行動を起せるとは思えないが、私たちの協力者との繋ぎをつける。気づかれないようにしろ。
セインが頷くと、タトルはその紙も懐にしまった。
「ワタシたちの部屋もこれくらい立派だといいな」
「無理いうなよ。タトル」
「まあ、客扱いなのだからいい部屋であることには間違いないでしょう」
3名の魔族との会話はそれで終わりで、外で待機している騎士に話が終わったことを伝える。そうして、セインを残し3名は部屋を出て行った。
「セイン殿下。お茶を淹れてきましょう」
「頼むな」
入れ替わりに城のシャツに灰色のスカートをつけた使用人が入ってきて、彼はお茶を頼む。使用人はお茶の準備をするため部屋を去り、騎士は外に待機しているはずだが、セインは部屋の中に一人で取り残された。
敵の腹の中だと思うと、緊張は解けずに、椅子に座るが居心地は悪かった。
――『メルヒはすでに大樹から離れ、この城の客間で王妃の客として暮らしている。今夜どうにか会う機会を作る予定だ。’焦るなよ』
タトルから与えられた情報を思い出すと余計に心が搔き乱される。
ーーメルヒ。王妃の客とはどういう意味なんだ?メルヒは王と王妃を殺したかったんじゃないのか?僕と一緒で。いったい何が?
『焦るな』という言葉、そして腕を掴んだ鳥の魔族バイゼルの鋭い視線。
下手に動くと邪魔にしかならない。
魔王……、魔族たちとセインの目的は一致している。王と王妃の殺害、メルヒの奪回、そしてセインが人の国の王になる。
ーー何がどうなっているか、早く知りたい。メルヒに会いたい。
唇を思わず噛んで、少し甘くて苦い味が口の中に広がる。
そうしていると使用人が戻って来て、お茶の準備をし始めた。
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