元第二王子とヒドインの子は復讐を誓う。

ありま氷炎

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第四章 ざまぁの子は魔犬と再会する。

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「ジョセフィーヌ。セインは兄上そっくりだったな」
「はい」

 謁見の間は人払いしており、王と王妃だけになっていた。
 
「恨んでいる……。そんな目をしていたな」
「ええ。隠しているようでしたけど」

 二人は顔を見合わせて悲しく微笑む。

「セインは黒頭巾として魔王の配下だったとして働いていたらしい。魔王の配下になる前は、反乱分子の一人だったとか……」

 トールは宰相からすでに魔の国でのセインの情報を入手していた。

「恐らく、彼は私たちの命を狙っている」

 王は腕を組んで天井を仰いだ。
 その隣で王妃ジョセフィーヌは大きな息を吐く。

「私はセインを次の王にするつもりだ。そのためには人の国を理解してもらう必要がある。私たちへ恨みと王族としての義務は別物だと理解してもらわねば」
「難しいですわ。きっと」
「そうだな。街でも彼らへの扱いは酷いものだったらしいからな。それでも、王として相応しいのはセインただ一人なのだ。……もし兄上が過ちを起さなければ……」

 彼らに兄がいた。王太子で魔族に殺された王子だ。王太子の魔族への認識は歪んだもので、国の平和と繁栄を維持するためには王として相応しい存在ではなかった。
 家臣たちは第二王子のカイルを王として推しており、血縁正しく魔法使いでもあるジョセフィーヌを婚約者にしたのもその意図もあった。
 けれどもカイルは道を誤った。
 期待を裏切り、恋に溺れた。
 
「トール様。それは過ちではありません。確かにカイル様が恋で盲目になってしまったのは事実ですが、それは間違ったことではないのですから。その後、私たちは彼らを見放してしまった。そこが問題だったのです。ミエルが殺された時点で、私たちはカイル様とセインを保護すべきでした」
「……そうだな」

 ミエルが殺され、彼女を愛し続けたカイルは命を絶った。セインのことは、王家に任せたつもりだったのだろう。
 
「魔王はセインの憎しみに付け込んで、我らを攻めるつもりだろうな。だが、今は倒れるわけにはいかない。セインを正しい道へ導くまでは」
「ええ」

 王の決意に、王妃は頷いた。



 その夜、セインを迎えるため、または魔族の使者をねぎらうため、夜会が開かれた。
 集められたものは、大臣たちとその妻だ。
 魔の国との親善との意味を込めて、セインは魔王ザイネルが用意した正装を身に着けていた。

 金色の髪に、琥珀色の瞳の王子セインの正装は、水色の上衣に銀色の刺繍がされた華やかなものだ。まさに王子様といういでたちで、猫の魔族カリンの指導もあって、仕草も様になっていた。
 セインに対して悪印象を抱いていた大臣たちだが、王の側室ではなく、第一後継者のセインに娘を嫁がせることも可能だと思い始めたものもいて、セインのご機嫌取りを計る者もあらわれた。

 三人の魔族はそんな人の様子を遠目から眺めている。

「順調にいってるな」
「そうだな」
「あ、これ美味しいです」

 亀の魔族タトルは酒の入ったグラスを持ち、鳥の魔族バイゼルは皿に野菜を盛り付けている。その隣で、兔の魔族ラギルはケーキやタルトを頬張っていた。

「ボクはセインに付き添って人の国に住みたい。こんなおいしいものがあるなんて」
「獣の姿ならば愛玩動物として可愛がってもらえるかもしれないぞ」

 ラギルにバイゼルは嫌味を返し、二人がいがみ合う。

「やめておけ。王が見てるぞ」

 タトルに言われ、二人は顔をそちらに向けた。
 王トールがゆっくりと近づいてくるところで、ラギルは口に入れようとしていたタルトを手元の皿に戻す。

「楽しんでいるか?」
「はい。人の国の食べ物は凝っているものが多くて、見目もいいですね」

 最初にラギルが答え、王は笑い出す。

「食べ物か。そんなに気に入ったなら、持って帰ってもいいぞ」
「本当ですか?日持ちはしますかね」
「このケーキなどは酒が入って中の果実も付け込んだものだ。1か月は持つ。魔の国に戻る際は用意しよう」
「ありがとうございます」

 ラギルは頭を下げ、その長い耳が大きく一緒に動く。
 勢い余って、耳が王に当たり、慌てて謝った。

「申し訳ありません」
「大丈夫だ。慣れているからな」
「慣れて……?動物でも飼われているのですか?」
「いや、まあ、そんなものだな」

 王は曖昧に答え、手を振ると再び大臣たちの元へ戻っていく。

「ラギル。お前調子に乗りすぎだそ」
「そのおかげで話は短く済んだじゃないですか」

 鳥の魔族バイゼルに、ラギルは鼻を鳴らしながら答える。それに言い返そうとして、亀の魔族タトルが間に入った。

「まあ、助かった。詮索されるのも面倒だからな。さあ、夜会のあとは一仕事だ」



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