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第五章 ざまぁの子は復讐を……。
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広間に到着してセインにとって苦痛でしかない朝食を終えようとしたところで、王トールが部屋に待機していた侍女、侍従、騎士たちに命じた。
「他の者は退席してもらえるか?」
彼らは礼を取ると、静かに部屋を去っていく。
長方形のテーブルの端に、セインとトールはそれぞれ掛けている。王妃ジョセフィーヌはトールの斜め右に席を取り、水をゆっくりと飲み干していた。
「セイン、そこでは話がし辛い。私の隣、ジョセフィーヌの前に座ってくれないか」
現時点では彼は大人しい王子を演じている。王の言葉に従い、彼は指定された椅子に座った。
「さて、お前に聞きたいことがある」
父、自身と同じ琥珀色の瞳は真っすぐセインに向けられている。
威圧感を覚え息苦しい気持ちになったが、それを受け止め彼は続きを待った。
「お前は、黒い魔犬を知っているか?」
「魔、魔犬ですか?」
ーーメルヒのことか?なんで……。
顔色を変えないように平静を装い彼は聞き返す。
「9年前、魔族が城を襲来した。その際に指令を出していたのが、黒い魔犬で、彼女はお前と兄の名を呼んでいた」
--メルヒ……。
セインは動揺を隠せず、ただ俯く。
テーブルの下に隠した拳を握りしめ、溢れる感情を押さえようとした。
ーーメルヒは僕と父さんのために……。だけど、今はすっかり記憶を失っているのに。
「その魔犬は9年前大樹(リグレージュ)に取り込まれていたのだが、2か月ほど前に大樹から解放されたのだ。リグレージュは私に娘を頼むと伝えてきた。極秘に私と王妃で保護していたのだが、今朝方、姿を消してな」
ガタンを音が立てて椅子が倒れる。
彼は衝撃に耐えきれず立ち上がってしまったのだ。それこそ椅子が倒れるのを構わないほど動揺していた。
--メルヒ、なんで。どこにいったんだ。僕を置いて。また僕を置いていく気か……。
「……お前とあの魔犬はどういう関係なのだ?お前の元にいると思ったがそうではないようだな」
トールは淡々と彼に問いかける。
セインの行動が彼らの関係を表していた。すでに知らないとは言える状態ではなく、セインは心を決める。
--僕は捕まるだろうか。捕まるくらいなら、ここで。
彼自身は剣を携帯していなかったが、武器として食事用のナイフ、フォークも使える。
そのことも想定しながら、彼はトールを睨んだ。
「セイン。お前が私たちを憎んでいるのはわかっている。だが、今はその時ではない。私たちが不在になれば人の国は混乱する。そうなればどうするつもりだ?」
「そんなことはしらない」
「セインよ。もう少し時間をくれ。あの魔犬……私たちはケリルと名付けたのだが、彼女の行方も全力で探す。なので、しばらく待ってくれるか」
「待つとは……、どういう」
「セイン。あなたに王になってほしいのです。陛下は。私もそうお願っています。私たちの民、人を導いてよい国を築いてくれないかしら」
それまで黙っていたジョセフィーヌは二人の間に入るように口を開く。
「そんなこと、僕には関係ない。メルヒのことは僕自身で探す。あんたたちの手は借りない」
メルヒ……ケリルが無邪気にジョセフィーヌのことを語る笑顔がふいに浮かんで、セインはそれをかき消して叫んだ。
「仕方ありません。セイン。少し眠りなさい」
テーブルに置いてあったナイフを掴んだところで、王妃の謳うような声が彼の耳に届く。すると、体に力が入らなくなった。
「お、お前……」
消えていく意識の中で、セインは魔王ザイネルの言葉を思い出していた。
--強力な魔法使いの王妃……。
「目覚めたら余計怒ってしまうかしら。けれども……」
「彼に聞いたのは間違いだったな。もっと時間をかけて彼に話すべきだった」
「後悔しても遅いですわ。それでも私たちはまだ間に合う。今度こそは」
「ああ」
トールは床に倒れ込んだセインを担ぐと、壁際に設置しているソファに彼を横たえた。
「他の者は退席してもらえるか?」
彼らは礼を取ると、静かに部屋を去っていく。
長方形のテーブルの端に、セインとトールはそれぞれ掛けている。王妃ジョセフィーヌはトールの斜め右に席を取り、水をゆっくりと飲み干していた。
「セイン、そこでは話がし辛い。私の隣、ジョセフィーヌの前に座ってくれないか」
現時点では彼は大人しい王子を演じている。王の言葉に従い、彼は指定された椅子に座った。
「さて、お前に聞きたいことがある」
父、自身と同じ琥珀色の瞳は真っすぐセインに向けられている。
威圧感を覚え息苦しい気持ちになったが、それを受け止め彼は続きを待った。
「お前は、黒い魔犬を知っているか?」
「魔、魔犬ですか?」
ーーメルヒのことか?なんで……。
顔色を変えないように平静を装い彼は聞き返す。
「9年前、魔族が城を襲来した。その際に指令を出していたのが、黒い魔犬で、彼女はお前と兄の名を呼んでいた」
--メルヒ……。
セインは動揺を隠せず、ただ俯く。
テーブルの下に隠した拳を握りしめ、溢れる感情を押さえようとした。
ーーメルヒは僕と父さんのために……。だけど、今はすっかり記憶を失っているのに。
「その魔犬は9年前大樹(リグレージュ)に取り込まれていたのだが、2か月ほど前に大樹から解放されたのだ。リグレージュは私に娘を頼むと伝えてきた。極秘に私と王妃で保護していたのだが、今朝方、姿を消してな」
ガタンを音が立てて椅子が倒れる。
彼は衝撃に耐えきれず立ち上がってしまったのだ。それこそ椅子が倒れるのを構わないほど動揺していた。
--メルヒ、なんで。どこにいったんだ。僕を置いて。また僕を置いていく気か……。
「……お前とあの魔犬はどういう関係なのだ?お前の元にいると思ったがそうではないようだな」
トールは淡々と彼に問いかける。
セインの行動が彼らの関係を表していた。すでに知らないとは言える状態ではなく、セインは心を決める。
--僕は捕まるだろうか。捕まるくらいなら、ここで。
彼自身は剣を携帯していなかったが、武器として食事用のナイフ、フォークも使える。
そのことも想定しながら、彼はトールを睨んだ。
「セイン。お前が私たちを憎んでいるのはわかっている。だが、今はその時ではない。私たちが不在になれば人の国は混乱する。そうなればどうするつもりだ?」
「そんなことはしらない」
「セインよ。もう少し時間をくれ。あの魔犬……私たちはケリルと名付けたのだが、彼女の行方も全力で探す。なので、しばらく待ってくれるか」
「待つとは……、どういう」
「セイン。あなたに王になってほしいのです。陛下は。私もそうお願っています。私たちの民、人を導いてよい国を築いてくれないかしら」
それまで黙っていたジョセフィーヌは二人の間に入るように口を開く。
「そんなこと、僕には関係ない。メルヒのことは僕自身で探す。あんたたちの手は借りない」
メルヒ……ケリルが無邪気にジョセフィーヌのことを語る笑顔がふいに浮かんで、セインはそれをかき消して叫んだ。
「仕方ありません。セイン。少し眠りなさい」
テーブルに置いてあったナイフを掴んだところで、王妃の謳うような声が彼の耳に届く。すると、体に力が入らなくなった。
「お、お前……」
消えていく意識の中で、セインは魔王ザイネルの言葉を思い出していた。
--強力な魔法使いの王妃……。
「目覚めたら余計怒ってしまうかしら。けれども……」
「彼に聞いたのは間違いだったな。もっと時間をかけて彼に話すべきだった」
「後悔しても遅いですわ。それでも私たちはまだ間に合う。今度こそは」
「ああ」
トールは床に倒れ込んだセインを担ぐと、壁際に設置しているソファに彼を横たえた。
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