35 / 52
第五章 ざまぁの子は復讐を……。
8
しおりを挟む
「王妃様。あんたは手出しをしちゃいけない。あんたの相手は私だ」
セイン達のやり取りを見ていたメルヒだが、強力な魔法使いであるジョセフィーヌが邪魔しないように牽制する。
「ケリル……」
「私はケリルじゃない。その名で呼ぶな!」
メルヒは甲冑を脱ぐと、犬の姿に変化した。そして王妃にとびかかる。
「ごめんなさい。今はだめなの」
勝負はあっけなかった。
ジョセフィーヌが手をかざすとメルヒの姿が消えた。
「メルヒ?!」
「何だと?」
トールと剣を合わせていたセインが、状況を見ていたヴァンが声を上げる。
「余裕だな」
王はその状況に驚くことなく、隙を見て彼を攻め立てた。メルヒに注意を払っている余裕がなくなり、防戦一方になる。ヴァンは彼女が消えた状況に驚きながらも、剣を構えると王妃に向かう。
「どういう魔法がわからんが、当たらなきゃいいんだろうが!」
「それが難しいということよ」
王室の床が光り、今度はヴァンが消えた。
「同じ場所に飛ばしているからご安心なさい。セイン、あなたも。私たちは人の国を守る必要があるの。王と王妃として。トール様!」
ジョセフィーヌの呼びかけに呼応して、トールはセインから離れた。
するとセインの足元の床が光り、光が彼を包み込む。
「くそっつ!」
彼が残したのは悪態だけで、その姿は王室から綺麗に消え去っていた。
「こうなれば私自身で決着をつけるのみ」
最後にフェンデルが残され、彼は選択する。
「あなたには残ってもらう必要があります」
けれどもフェンデルの剣はトールに届くことはなかった。
彼は目前で気を失い、床にたたきつけられていた。
「助かった。ジョセフィーヌ」
「彼らからしたら、私はとんでもない極悪人なのでしょうね」
「君は私の命を救ってくれた。極悪人などととんでもない」
トールの言葉にジョセフィーヌは薄く微笑んだだけだった。
☆
ザイネルはご機嫌だった。
翌日呼び出された亀の魔族タトル、鳥の魔族バイゼル、兔の魔族ラギルは魔王の様子に驚きながらも平伏したままだ。
「いやいや、王妃は強いねぇ。まったくどうしたものか」
困ったような言葉なのだが、口調は以前と変わって楽しそうだった。
「何があったのでしょうか?」
昨日の今日だ。この変わりようにタトルが代表して尋ねる。
「いやはや、セイン君、とうとう復讐をする気になったみたいなんだ。それもヴァンとメルヒと一緒にね」
ザイネルの返答にタトルは耳を疑う。
メルヒには直接会ったことはなかったが、フェンデルから王妃にかなり懐いていると聞いていたので飼い主を噛むような態度に出たことが不思議だったし、ヴァンに至ってはいつの間に人の国に、しかも城に侵入していたのだろうと、表情は無表情を保っていたが驚きでいっぱいだった。
「それでさ、面白いことに王妃が魔法を使って三人を一気に転移させちゃったらしい。フェンデルは昏倒させられただけだけどね」
それのどこが面白いのかと思いながらも、タトルは黙って聞いている。
「まあ、王妃は手ごわいってことだね。大樹も何もしないし。さて、どうしたものか。とりあえず君たちセイン君たちに合流してくれる?話はそれからだ」
セインを暗殺しろという話から、今度は合流。
ザイネルの気の変わり方にタトルは溜息をつきたくなったがぐっと堪えた。
「畏まりました」
「早速出発してね。報告待ってるよ」
魔王との話はそれで終わり。
タトルたちは腑に落ちないと思いながらも、部屋を退出した。
セイン達のやり取りを見ていたメルヒだが、強力な魔法使いであるジョセフィーヌが邪魔しないように牽制する。
「ケリル……」
「私はケリルじゃない。その名で呼ぶな!」
メルヒは甲冑を脱ぐと、犬の姿に変化した。そして王妃にとびかかる。
「ごめんなさい。今はだめなの」
勝負はあっけなかった。
ジョセフィーヌが手をかざすとメルヒの姿が消えた。
「メルヒ?!」
「何だと?」
トールと剣を合わせていたセインが、状況を見ていたヴァンが声を上げる。
「余裕だな」
王はその状況に驚くことなく、隙を見て彼を攻め立てた。メルヒに注意を払っている余裕がなくなり、防戦一方になる。ヴァンは彼女が消えた状況に驚きながらも、剣を構えると王妃に向かう。
「どういう魔法がわからんが、当たらなきゃいいんだろうが!」
「それが難しいということよ」
王室の床が光り、今度はヴァンが消えた。
「同じ場所に飛ばしているからご安心なさい。セイン、あなたも。私たちは人の国を守る必要があるの。王と王妃として。トール様!」
ジョセフィーヌの呼びかけに呼応して、トールはセインから離れた。
するとセインの足元の床が光り、光が彼を包み込む。
「くそっつ!」
彼が残したのは悪態だけで、その姿は王室から綺麗に消え去っていた。
「こうなれば私自身で決着をつけるのみ」
最後にフェンデルが残され、彼は選択する。
「あなたには残ってもらう必要があります」
けれどもフェンデルの剣はトールに届くことはなかった。
彼は目前で気を失い、床にたたきつけられていた。
「助かった。ジョセフィーヌ」
「彼らからしたら、私はとんでもない極悪人なのでしょうね」
「君は私の命を救ってくれた。極悪人などととんでもない」
トールの言葉にジョセフィーヌは薄く微笑んだだけだった。
☆
ザイネルはご機嫌だった。
翌日呼び出された亀の魔族タトル、鳥の魔族バイゼル、兔の魔族ラギルは魔王の様子に驚きながらも平伏したままだ。
「いやいや、王妃は強いねぇ。まったくどうしたものか」
困ったような言葉なのだが、口調は以前と変わって楽しそうだった。
「何があったのでしょうか?」
昨日の今日だ。この変わりようにタトルが代表して尋ねる。
「いやはや、セイン君、とうとう復讐をする気になったみたいなんだ。それもヴァンとメルヒと一緒にね」
ザイネルの返答にタトルは耳を疑う。
メルヒには直接会ったことはなかったが、フェンデルから王妃にかなり懐いていると聞いていたので飼い主を噛むような態度に出たことが不思議だったし、ヴァンに至ってはいつの間に人の国に、しかも城に侵入していたのだろうと、表情は無表情を保っていたが驚きでいっぱいだった。
「それでさ、面白いことに王妃が魔法を使って三人を一気に転移させちゃったらしい。フェンデルは昏倒させられただけだけどね」
それのどこが面白いのかと思いながらも、タトルは黙って聞いている。
「まあ、王妃は手ごわいってことだね。大樹も何もしないし。さて、どうしたものか。とりあえず君たちセイン君たちに合流してくれる?話はそれからだ」
セインを暗殺しろという話から、今度は合流。
ザイネルの気の変わり方にタトルは溜息をつきたくなったがぐっと堪えた。
「畏まりました」
「早速出発してね。報告待ってるよ」
魔王との話はそれで終わり。
タトルたちは腑に落ちないと思いながらも、部屋を退出した。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる