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第五章 ざまぁの子は復讐を……。
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しおりを挟む「ここは、どこなんだろうな?」
「わからない」
王妃ジョセフィーヌの転移魔法によって三人はどこかの森へ飛ばされていた。
目覚めたのはセインが先だったと信じたいのだが、目を開けるとメルヒの裸体が視界に飛び込んできた。見惚れているとからかう様な口笛が聞こえてきて、彼は慌てて着ていた上着を慌てて脱ぐと彼女の体にかけた。
「見てないだろうな?」
「いや、見た。ばっちり。もうちょい胸が大きいほうが俺の好み」
「な、なんてこと言うんだ。馬鹿!見るなよ」
「っていうか、セイン。お前もばっちり見てたじゃねぇか」
にやにやと笑いながら返され、セインは言葉を詰まらせた。
「まあ、黙っていてやる。俺たちは何も見てない。いいな?」
「うん」
そんなことを言っても、裸体の上に上着が被せられていたら、それは見ただろうという話になるのだが、セインは何も考えず頷く。
「服も調達できなさそうだし、これは起して犬化してもらったほうがいいな」
「うん、だけど……」
「お前が起こしづらいなら俺がやるぞ」
「いや、僕がやる!」
メルヒに触れてほしくなくてセインは即答してしまった。その勢いでヴァンは爆笑し、それはメルヒを起すことになった。
「う?あ?人型に戻ってる?見てないよな?」
目が覚めたメルヒは真っ赤になりながらこちらを睨んでおり、覆っていた服がはだけて、その胸があらわになった。
セインが真っ赤になって俯き、ヴァンが口笛を吹いて彼女は現状に気づいて、すぐに犬化した。
「……くそっ」
漆黒の毛並みの犬に変化したメルヒは、その赤い瞳を二人に向けている。
「怒るなよ。だいたい、気絶したら人型に戻るなんて、お前体調おかしいじゃないか?以前はずっと犬の状態だっただろう?」
「ああ。犬化のほうが難しくなっているみたいなんだ。人の姿のほうが楽だ」
ヴァンに問われて彼女は怒りを忘れて答えていた。
ーーそういえば、僕が小さいときも大概メルヒは犬の状態だった。寝ている時も犬の状態で僕を包んでくれたこともあったっけ?
その温かみを思い出して嬉しくもなるが、同時に裸体のメルヒの姿も浮かんで、セインは首を振った。
「……色々大変だな。お前も」
ヴァンにぼやかれ、まるで心を見梳かれたような気持になり彼は黙りこくった。
「ところで、ここはどこなんだ?ジョセフィーヌの奴、私たちをどこに飛ばしたんだ?」
「それは俺たちも思っていたことだ」
人と魔の国は陸続きで、その環境もほぼ同じだ。森などに紛れ込めばどちらの国なのかわからないほどだった。
「ここはどこかよりも、まずはこれからのことを考えようか。それによって、俺たちの行く道が変わるだろう」
この場所を特定しようと周りを見渡しているメルヒ、むっつりと口を閉ざしたセインへ、ヴァンが話しかける。メルヒは頷き、セインも渋々同意した。
なんでもかんでも見通しているような彼に苛立つことも多いが、基本的に理にかなっていることが多い。なのでセインは王妃にまったく歯が立たなかったことを思い出しながら、二人に向き直った。
☆
「あなたは反逆罪で裁かれることになりましょう」
「承知しております」
近衛団長が第一後継者のセインと共に王の暗殺を企てたことは公になり、フェンデルは牢に繋がれることになった。牢といっても、彼は他の囚人より待遇のいい塔の一角で、宰相の訪問を受けていた。
「あなたの動きがおかしなこと、気づいておりました。間違いであってほしい、そう願っておりました」
宰相のステファンはトールが第三王子であった頃から側近として仕えており、王子の幼馴染であるフェンデルを信頼していた。
「あのような女に誑(たぶら)かされるとは信じがたいこと」
「あなたや、陛下にとってはそうだったでしょうね。けれども、私にとって彼女は光でした。カイル殿下の気持ちがわかります」
「私には理解できないことですね」
「別に理解されようとも思いません。ただ、セイン殿下は?」
「……王妃殿下が使った魔法は転移魔法。どこかで生きてらっしゃるでしょう。もしかしてまた暗殺を仕掛けてくるかもしれません」
「王妃殿下には敵わないだろう。可能であれば、このまま静かに暮らしていただけたら、愛する者と共に」
「王も王妃もその考えのようですね」
「あなたは違うのか?」
「私は、できれば反逆罪で処罰したいところです。あなたのように」
「相変わらず容赦がない」
「それは褒め言葉として受け取っておきます。けれども私は宰相にすぎない。王の意志には逆らえません」
ステファンはそう言うと、罪人相手のフェンデルに頭を下げた。
「あなたのことは尊敬しておりました。しかし今日、あなたは私の敵になり、駒として利用させていただきます」
再び顔を上げた時、彼はすでに元騎士団長を見ることはなかった。背中を向けて去っていく。
「駒か。囮にでも使うつもりか。私が囮などになるわけがないのに」
部屋の中で一人、フェンデルはつぶやく。
彼自身はそう考えていたが、彼はまだセインの性格を完全に把握していなかった。
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