41 / 52
第五章 ざまぁの子は復讐を……。
14
しおりを挟む計画はフェンデルを助けるのが先で、その後に王と王妃を殺す。
彼が収容されている牢屋は、他の囚人とは異なる場所にあった。厳重ではあったが、警備の兵士を攻略すれば騒ぎを起こさず事を済ませられる。
自分たちの力を見せてやるとばかり、ラギルとバイゼルが甲冑を纏っているにも拘らず、警備の兵士を一瞬で倒していく。もちろん、事前に間者が見張り時間を確認しており、その交代の時間を狙って事を起こした。
「お前たちは?」
現れた甲冑の騎士たちを見て、フェンデルは動揺を隠さなかった。しかし、騒ぎ立てるようなことはしない。
「フェンデル。僕だ。助けに来た。今から王と王妃にもう一度挑む。お前はそのまま逃げるといい」
「王妃殿下の魔法を見たでしょう?同じ目に合うだけです。それよりも」
「おいおい、この間の決意はなんだったんだ?死を前に怖気づいたか?」
セインを宥めようとした彼に、ヴァンが皮肉を放つ。
しかしフェンデルは感情を抑えたままだ。
「無駄死にしてほしくありません。今度こそ、彼女はきっと。二度目はありません。私はここでじっと裁きを待ちましょう。だから、あなたは」
「煩い。逃げるなんて絶対にしない。それくらいなら王妃に殺された方がましだ」
「まあ、今回は負けるとは決まってないぜ。なあ、タトル、ラギル、バイゼル」
「……あなたたち舞い戻ってきたのか?」
フェンデルはその名を聞いて少し呆れた声を漏らした。
セインの背後に立っていた甲冑騎士の一人、タトルが前に出て兜を外す。そうして答えた。
「陛下の指示でな」
「陛下……。ザイネル様ですね」
フェンデルは少し考えるような仕草を見せる。
セインはその様子に不安を覚えてしまった。
メルヒはラギル達と共に状況を見守っているだけだ。今は口を挟む場ではないと、彼女は弁えていた。
「王と王妃が亡くなった後、セイン殿下を人の国の王として受け入れるつもりですか?」
「フェンデル?」
現時点でセインは当初の目的を忘れており、フェンデルの問いに横から聞き返してしまった。
それに構わず、タトルが答える。
「当然だろう。始めからその予定だった」
「そうでしたね。安心しました」
緊張が走った気がしたが、タトルの返答にフェンデルが笑う。
その笑みがまた意味深で、セインは首を傾げたくなる。
「話は終わりだな。さて、次の目的地に向かうぞ」
ヴァンがそう取りまとめ、一行は牢を後にした。
☆
今までが上手く行き過ぎたのがおかしかった。
フェンデルの収容されていた牢は塔の一角であり、階段を使って降りていくと、待ち構えていたように騎士や兵たちが勢ぞろいしていた。
「これは、元近衛兵団長殿。魔族に上手く取り入ったようだな」
年齢は50歳近く、恰幅のよい騎士が剣を抜く。
「ガル様。あなたが来られるとは。そういえばあなたが新しい近衛兵団長でしたか?」
「そうだ。やっとだ。そしてこの手で貴様を殺せる時がやってきた」
ガルと呼ばれた騎士は部下に指示を出す。すると騎士の一人が何かをセイン達の前に投げつけた。それは先ほど東の塔で見た間者だった。甲冑は着ておらず暴行を受けたようで、体中が傷だらけ、一番ひどい部分が尾っぽだった。半分ほどが千切れて、間者はすでにこと切れている。
「魔族といえでももろいものだ。こいつが工作したことからお前たちのいる場所は直ぐに割り出せたからな」
「この、外道め!」
バイゼルが外衣を脱ぎ捨て、その羽を広げる。
「外道はお前たちだ。気色悪い奴らめ」
ガルは、前王時代に活躍した騎士だった。魔族に殺された王太子とも親しくしており、先の戦争にも参加している。トールが王になり、彼を退け、フェンデルを登用した。そのことを長年彼は恨みに思っていた。
「さあ、お前たち。魔族とその裏切り者を殺せ!」
合図を受け、騎士たちが次々を剣を抜く。
前近衛兵団長フェンデルを前にしているというのに、騎士たちには迷いはなかった。ガルは団長に就任するとフェンデル派の騎士たちを降格させたりと自分に媚を売る者を登用して、ここに集まった騎士たちもそのような輩ばかりだった。
「こんな雑魚がいくらいても僕たちには敵わないんですよね」
「その通りだ」
間者の遺体に外衣をかけ、ラギルが甲冑を脱ぎ捨てる。タトル、メルヒも同様で、メルヒに至っては犬型に変化した。
「ここは私と、ジリン……ヴァンでしたか?私たちが引き受けます。殿下は王の元へ!」
「くそっ。俺を指名か。まあ、受けてやる。力比べは負けないからな」
フェンデルは襲ってきた騎士の剣を奪い応戦、ヴァンはその隣で、騎士の攻撃を防ぐ。
「私も参加しよう。他の者はセインと一緒に行動しろ」
「いいね!」
「魔法対決が面白そうだぜ」
タトルがヴァンの傍に立ち、さらに防御壁を作る。
一人と二名の魔族の華麗な剣捌きによって、彼たちは騎士たちはそれ以上進めなかった。
「セイン!私の背に乗れ!」
戸惑っているセインにメルヒが声をかけ、彼は自身のやるべきことを認識した。迷うことなく、その背に乗る。バイゼルがラギルを掴んで、空を舞う。メルヒはセインを乗せて、騎士の間を潜り抜けた。
0
あなたにおすすめの小説
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】
星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。
だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。
しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。
王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。
そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。
地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。
⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。何か問題あります?
夢窓(ゆめまど)
恋愛
「――離婚届、受理されました。お疲れさまでした」
教会の事務官がそう言ったとき、私は心の底からこう思った。
ああ、これでようやく三年分の無視に終止符を打てるわ。
王命による“形式結婚”。
夫の顔も知らず、手紙もなし、戦地から帰ってきたという噂すらない。
だから、はい、離婚。勝手に。
白い結婚だったので、勝手に離婚しました。
何か問題あります?
思いを込めてあなたに贈る
あんど もあ
ファンタジー
ファナの母が亡くなった二ヶ月後に、父は新しい妻とその妻との間に生まれた赤ん坊を家に連れて来た。義母は、お前はもうこの家の後継者では無いと母から受け継いだ家宝のネックレスを奪うが、そのネックレスは……。
結婚初夜、「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と夫に言われました
ましゅぺちーの
恋愛
侯爵令嬢のアリサは婚約者だった王太子テオドールと結婚した。
ちょうどその半年前、アリサの腹違いの妹のシアは不慮の事故で帰らぬ人となっていた。
王太子が婚約者の妹のシアを愛していたのは周知の事実だった。
そんな彼は、結婚初夜、アリサに冷たく言い放った。
「何故彼女が死んでお前が生きているんだ」と。
つまらない妃と呼ばれた日
柴田はつみ
恋愛
公爵令嬢リーシャは政略結婚で王妃に迎えられる。だが国王レオニスの隣には、幼馴染のセレスが“当然”のように立っていた。祝宴の夜、リーシャは国王が「つまらない妃だ」と語る声を聞いてしまい、心を閉ざす。
舞踏会で差し出された手を取らず、王弟アドリアンの助けで踊ったことで、噂は一気に燃え上がる――「王妃は王弟と」「国王の本命は幼馴染」と。
さらに宰相は儀礼と世論を操り、王妃を孤立させる策略を進める。監視の影、届かない贈り物、すり替えられた言葉、そして“白薔薇の香”が事件現場に残る冤罪の罠。
リーシャは微笑を鎧に「今日から、王の隣に立たない」と決めるが、距離を取るほど誤解は確定し、王宮は二人を引き裂いていく。
――つまらない妃とは、いったい誰が作ったのか。真実が露わになった時、失われた“隣”は戻るのか。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる