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第五章 ざまぁの子は復讐を……。
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しおりを挟む国王トールが死去し、王妃ジョセフィーヌが新王となった。
このようなことは歴代にもなかったことであり、人々は動揺を隠せなかった。
その上、魔族との全面戦争に突入、十五歳以上の男子を徴兵するという話。
不満が上がるのは当然のことであった。
しかもトールがジョセフィーヌに殺されたという噂も同時に広がり始め、人々は新王に対して不信感を抱く。反逆者で死刑確定だったフェンデルが近衛兵団長の職に復帰したことも不信感を増長させることになった。
『初めからフェンデルは王妃と組んでいて、王殺害を企てた。それが明るみにでて、王妃が直接手を下した』
噂はそのように変容していったが、フェンデルが先頭に立って徴兵を行い、罰せられることもあり、人々は夫と子供を兵士として送り出した。
フェンデルが入っていた牢に、セインは入れられていた。その向かいの牢に入るのは元宰相のステファンだ。
「食べないのか?」
ステファンが宰相であった頃、何度か話した記憶はあった。いい印象はなかったが、目の前で人がやせ細っていくのはいい気持ちはしない。
なので、セインは思わず聞いてしまう。
「あなたはよく食べる気がしますね」
「食べないといざという時動けないからな」
ジョセフィーヌに眠らされ、起きると牢に入っていた。それがフェンデルの入っていた牢屋だと気が付き、同時にステファンの存在も知った。最初に気になったのはメルヒのことだ。門番は生きているという言葉だけで、後の質問には答えなかった。
--王妃はメルヒのことを気に入っていた。だから殺されるわけが。
そう思い立って、気が付いたのがトールのことだ。
セインから見ても二人は仲の良い夫婦だった。信頼し合っているのを見て取れた。けれども、ジョセフィーヌがトールを殺したという。
それを考えるとメルヒも殺されているかもしれない、そんな思いが先行したが彼は自分を奮い立てた。ここを逃げ出してメルヒを救う。それを考え与えられた食事は口にしていた。
「逃げるつもりですか?」
「ああ」
セインが答えるとステファンが薄く笑う。
「あなたは責任をとらないといけない。だから逃げるなんてとんでもないですよ」
「どういう意味だ?責任?」
「陛下はあなたに託した。人の国を」
「は?王妃にだろう?」
「いえ、あなたにです。王妃、ジョセフィーヌ様はその準備をしているだけ」
ステファンはそれだけ言うと、ベッドに横になってしまった。
聞きたいことは沢山あり、声をかけるが彼が答えることはなかった。
☆
「よく戻ってきたね」
魔の国へ戻ったヴァンとタトルと迎えたのは、機嫌のよさそうな魔王ザイネルだった。
城から逃げ出し、情報収集を心掛けている2名の元へ、城で別れたラギルたちがやってきた。浮かない顔で経緯を説明され、ザイネルからの呼び出しということで、魔の城へ戻って来た。
「ヴァン。とうとう全面戦争をすることになったんだ。君に頼みたいことがある」
ザイネルから相談されたことは、戦争を止めるために、セインを利用するということだった。人でも不満があがっている。だから、いまであればセインが正統な後継者として、即位させることが可能。 彼が王になれば戦争は止められる。
そう説明されたが、ヴァンは疑問を口にする。
「だが、ジョセフィーヌは強いぞ。だからこそ人は不満に思いながらも彼女に従っているのだろう?」
「私が彼女を殺す。だから心配ないよ」
ザイネルは自信たっぷりに答え、その眼は楽しいおもちゃを見つけたように輝いていた。
「大丈夫かよ?かなり強いぞ。魔法陣なんて使ってないように見えた」
「そう。それは強敵だね」
ヴァンが再度聞くが、彼は笑っているだけで負けるなどと思ってもいないようだった。 ジョセフィーヌの力を直接見たラギルとバイゼルは、己の主人の強さには畏怖を覚えるほどであったが、やはり訝し気な表情を隠せない。タトルに至ってはただ黙り二人のやり取りをみているだけだ。
「あれ、私を誰だと思っているんだ。魔族の王、魔王だよ。負けるわけがない。人ごときに」
彼が押し切る形で話は終わり、ヴァンはセインを助け、即位をさせるために再度人の国へ行くことになった。
☆
「ケリル」
「その名で呼ぶな」
メルヒは部屋の一角に閉じ込められていた。
厳重な扉に窓、犬型になっても食い破れないような鉄製だ。
人型に戻ったメルヒはジョセフィーヌと対峙している。
「事が済んだら、セインと共にこの世界をお願いね」
「どういう意味だ?」
「時期にわかるわ」
「私を解放しろ!セインはどこだ?」
「セインは生きてるわ。ちょっと閉じ込めてるけど。無事よ」
「なら会わせろ」
「今は駄目。事が終わってから」
「事ってどういうことだ?大体。なんで、あんたはトールを殺したんだ?夫だろう?」
「……すべては願いのため」
「願い?お前のか?」
メルヒの問いにジョセフィーヌは薄く笑う。
「もう少しの辛抱よ。だから待っていてね。大人しく」
彼女は問いには答えず、背を向けた。そうして鉄の扉をして出て行く。
「待て!ジョセフィーヌ!」
メルヒが叫ぶが彼女が再び扉を開くことはなかった。
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