元第二王子とヒドインの子は復讐を誓う。

ありま氷炎

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第五章 ざまぁの子は復讐を……。

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 ザイネルは頬のついた血を拭った。
 突風が巻き起こり、彼はそれを防御した。他の魔族を守るために彼は先頭に立って、ジョセフィーヌを対峙していた。
 魔力は尽きかけている。
 お互いに魔法を打ち合っているのに、ジョセフィーヌの顔色は変わらない。
 魔法を放つ時も、魔法陣を使っている様子もなく、ザイネルはある可能性にいきつく。

「人は魔法を使えない」

 だからこそリグレージュが人に加担し、ついに一つ目を滅ぼしかけ、女神は大樹へと姿を変えた。
 けれども、記録に残っている大戦では人は魔法を使っている。

「彼女だけだ。彼女だけが魔法陣を使わない」

 
 ーーまさか。

 炎が放たれ、ザイネルが氷の壁を展開させてそれを防ぐ。

「かはっつ」
「陛下!」

 片膝をついた彼に周りを固めていた牛の魔族の一人が駆け付ける。魔王だと知れ渡っているため、人が群がりそうになるのを他の魔族も集まり、彼を守った。

「大丈夫だ」

 ザイネルは立ち上がり、ジョセフィーヌではなく人に向けて放つ。
 しかし、それは彼女によって防がれた。

「そうか、君が、君こそが大樹(リグレージュ)か!」

 世界を作った大樹、リグレージュ。 
 セインという傀儡をつかって、その力を一度は利用とした。
 けれども大樹は動かなかった。
 それもそうだ。
 リグレージュが愛するのは人のみ、魔族などは見捨てられた存在。
 知っていたはずなのに、ザイネルはセインにかけてみた。

「神などいらない。……ヴァン、君の復讐はここにあったのに」

 一つ目の魔族の最後の生き残りのヴァン。
 彼の願いは神(リグレージュ)への復讐。

「君の復讐は僕がやり遂げてあげよう」

 ザイネルは不敵な笑いを浮かべると、周りの魔族をどかせて、炎の魔法を人に向かって放った。

 ーーリグレージュであれば彼女は人を守る。

「守ってみろ。人を。君が愛する人を!」




 ヴァンは名を呼ばれた気がして、顔を上げた。
 その隙をフェンデルは逃さなかった。けれどもヴァンは振り下ろされた剣を受け止める。

「息が上がってるぞ。攻撃が荒い!」

 彼は力任せに押し切って、剣ではなく蹴りを繰り出す。
 それを食らって、フェンデルは地面を擦って吹き飛ばされた。
 血を滲ませた体を必死に起こして、立ち上がり、また構えを取る。

「しつこい!俺はお前を遊んでる暇はない。どうせ、目的は一緒だ。諦めろ!」

 フェンデルのことを彼は気にいっており、殺すつもりはなかった。だからこそ勝負が長引いており、そんな自身に腹が立っていた。

「甘いですね。魔族なのに。そんなに悠長にしていると、ザイネルは殺されてしまうでしょうね」
「あいつが死ぬわけがない!」
「ジョセフィーヌ様が人だから、ですか?彼女はすでに人ではありませんよ。かといって魔族ではありませんが。彼女は神です」
「は?なんだそれは?」
「知りたいですか?知りたいなら、私を殺して聞き出すことですね」
「殺したら聞き出せないだろうが!」

 ヴァンは苛立ちを表し、フェンデルに攻撃を仕掛ける。

「ヴァンに、タトルに、ラギル、バイゼル。魔族と人はかわりませんね。セイン陛下はきっと良い世界を築いてくれます。あなたたちと」
「ふん。人の国と魔の国は別物だ!セインは人の国の王になる。魔の国ではない!ジョセフィーヌのことを聞かせろ!」
「私を殺してくれたら、聞かせてあげましょう。もう疲れましたから」
「自分勝手な野郎だな!死にたいなら自分で死ね!その前にジョセフィーヌとリグレージュのことを聞かせろ!」
「こうすればいいですかね」

 問いには答えず、フェンデルは一歩彼から引くと構え直した。そうして駆け出した。
 ヴァンの首を狙った突きで、彼はぎりぎりで避ける。だが、フェンデルは別の手に小剣を持っておりそれで腹部を狙った。迷っている暇はなく、剣で応対する。小剣を打ち落とそうとしたはずなのに、彼の剣はフェンデルの首を掻き切っていた。

「お前!」
「……ジョセフィーヌ様はリグ…レージュ…様そのもの。セ…イン様を……お願…いします」
「くそったれ!」

 フェンデルはわざと切られた。死ぬために。

「馬鹿が!」

 血を噴き出し彼は地面に伏す。目は開いたまま、けれどもどこか穏やかな表情で、それがヴァンには余計に気に食わなかった。
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