皇太子殿下の愛奴隷【完結】

野咲

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第2章

モデルのお仕事

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 アイルは荒縄で全身を縛られた状態で上体を引っぱり上げられて、正面から表情が良く見えるように固定されていた。アイルの体重でだんだん縄が締まり、アイルは思わず身じろぎした。
「動くな!」
「す、すみません……」
 アンソニーに鋭い声で注意されて、アイルは小さな声で謝った。でも縄が締まって苦しい……。
「うっ、うぅ……」
 アイルは歯を食いしばって、必死に耐えていた。
「うーん。ちょっと、表情が険しすぎますね。もうちょっと色っぽい顔を描きたいんですが……」
 絵師が首をひねりながら言った。
 今、アイルは絵のモデルをしているのだった。

 サミルトン国では毎年、王家の奴隷たちの肖像画が描かれ、それが大量に印刷されて国民たちに売られるのだ。王家の奴隷はある意味アイドル的な人気があり、肖像画の需要は高く、王家の重要な収入源の一つとなっていた。奴隷の肖像画は必ず全身が描かれ、裸だったり、薄衣一枚で大事なところが透けて見えたり、表情やポーズも悩ましげでエロティックなのが売りだ。
 アイルにとって、これがはじめての肖像画だった。構図やポーズはアンソニーと絵師が話し合って決めた。縛られた構図になったのは、アイルに自身をエロティックに見せる技術が足りないから、構図がすでにエロティックなものの方がいいだろう、という考えだ。しかし、構図で誤魔化せる部分にも限界はある。苦しそうな表情の中にも色気がないと奴隷の肖像画としてはふさわしくない。
「アイル。悩まし気な顔をするんだ。俺に抱かれている時のことを思い浮かべながらやってみろ」
 アンソニーに言われて、アイルは必死にアンソニーに抱かれている時のことを思い出そうとした。しかし、アンソニーに抱かれている時、いつもアイルの頭の中はふわふわしてしまうので、あまり具体的なことは思い出せないのだった。
「う、うー、むむむ」
 眉間にしわを寄せて、一生懸命考えるアイルに、絵師は苦笑いした。
「ううん。表情が固いな。もっと、エッチだけどかわいい、アイルくんの魅力がはじけているような顔をして欲しいんだ」
 エッチだけど、かわいい!?
 ますます分からなくなって、アイルは困惑を深めた。
「アイル」
 アンソニーがアイルのところに近づいてきて、頭の上にぽん、と手を載せた。
「ちゃんとできるな?」
 そう言って、アイルの頭を軽く撫でる。アイルは目を潤ませてアンソニーを必死に見上げた。
「ああ! イイですね!!」
 突然絵師が大きな声を上げて、二人ににじり寄って来た。アイルはびっくりして、思わず絵師の方を見る。
「いえ! こちらではなく殿下を見つめていてください、そのせつない表情で!!」
「ひえ……」
 絵師の圧がすごくて、アイルは変な声を出してしまった。すると、アンソニーはアイルの顎をくいっと引いて、自分の方を向けさせる。
「はわ……」
 至近距離でアンソニーに見つめられて、アイルはうっとりする。それを絵師が至近距離でガサガサとすごい勢いでスケッチしていた。
「アイル……」
 どこか熱の載った声で呼びかけられて、アイルはぴくりと身体を震わせた。
「アンソニー様……」
 アンソニーに触られているのは、顎だけだ。でもそこから熱が伝わって来るかのように、身体じゅうが熱くなる。
「は、はう……」
 アイルは、アンソニーをうるんだ目で見つめ続ける。この熱をどうにかして欲しい。むずむずして、思わず身体を揺らしてしまう。
「動くな」
 するどく言われて、アイルはぴたりと動きをやめた。それでも身体がうずくのは変わらない。アイルは熱っぽい目でアンソニーを見つめ続けた。
「ありがとうございます。もう動いて大丈夫ですよ」
 絵師の言葉でアイルはハァっと息を吐きだした。
「あ、アンソニー様ぁ……」
 縛られた体で、ぎこちなく腰をふりふり振りながら、アイルはアンソニーを一生懸命誘った。
「なんだ、はしたない真似をして」
「も、もう、お尻……せつなくて……」
 アイルは上目遣いで一生懸命アンソニーを見つめる。
「うーん、せつない! いい表情だ! でもせつないはもう描いたので…、次はこう、快感を得て身もだえするような、そういうエッチな顔が書きたいんですけど」
 アンソニーをじっと見つめていたアイルの前に、ずいっと顔を割り込ませて絵師が言った。
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