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第三章
僕の新しいご主人様
ウィリアムとヘンリーは、ウィリアムが帰ってきたその日のうちに役所に婚姻届を出した。晴れて夫婦となった二人だが、ウィリアムはまだ外国での仕事が残っていたので、またすぐに仕事に戻らなければならず、二人がともに過ごせたのはたった一夜だけで、次の日の船で、ウィリアムはまた遠い異国へと旅立って行ってしまった。
ウィリアムを乗せた船が港を出て、遠く遠く点になってもまだじっと見送っているヘンリーに僕は思わず声をかけた。
「せっかく一緒になれたのに、さみしいね」
「うん……」
ヘンリーはやっと海から目を離し、僕を見た。
「本当にひとりぼっちになってしまっていたら、どんなに心細かったか分からないけれど、君がいるから」
ヘンリーは僕の手を両手で握りしめて、僕の目を見て言った。
「エドワードがいてくれて、本当によかった。ありがとう」
気を使ってくれているんだ、と僕は思った。新婚の幸せな家庭に、一人のオメガの奉公人。どう考えても邪魔だ。でも気にしないで、とヘンリーの瞳が言っていた。だから僕は何も言わなかったし、何も考えないようにした。より正確に言うと、もう考えることが億劫になっていた。
ヘンリーが門番小屋に飛び込んできて、「一緒にこの屋敷から出よう」と言ってくれた時、正直に言うと僕はうれしくはなかった。かと言って、嫌でもなかった。僕はずっとどこか上の空のまま、荷物を片付けて、ヘンリーに手を引かれるまま屋敷を出た。
ヘンリーは終始興奮気味だった。ためらいがちに僕に微笑みかけるウィリアムに僕を紹介して、少し恥ずかしそうにウィリアムを僕に紹介した。愛するアルファと晴れて夫婦となり、僕を公爵家から救い出したヘンリーは、自信にあふれ、全身から発光しているがごとく太陽の下で光り輝き、美しかった。二人はまだ結婚の準備を何もしていなかったから、僕たちはウィリアムが一人で住んでいたとても狭いアパートに住むしかなかった。
「ねえ、僕とエドワードで新居を探して、引っ越しておいてもいい? またお金が貯まれば別の家に引っ越せばいいんだし」
「そうだね」
愛する新妻に、ウィリアムは甘かった。
「いつかは大きな家を買いたいけれど、すぐには無理だから」
ウィリアムは家賃の予算と職場からの距離の範囲だけ指定して、あとは二人にまかせると言った。オメガだけで家の契約なんてできるんだろうか、と僕は思ったが黙っていた。どんな場所に住んでもどうでもよかったが、確かに一間しかないこのアパートに新婚の二人と住むのは気まずすぎる。
さっそく新居探しがはじまった。ヘンリーは精力的だった。仲介屋を回り、部屋を持て余している大家がいないか近所に聞いて回り、その全てに僕を連れまわした。
「やっぱり日当たりがいい部屋がいいよね」
「ちょっとウィリアムの職場から遠いかな、エドワードはどう思う?」
ヘンリーは終始ご機嫌で、これからの生活に夢を膨らませていた。僕はヘンリーの気持ちに水を差してはいけないと思っていたが、彼と同じテンションではしゃぐことはできなかった。とても疲れていて、何も考えたくなかった。意見を求められるのは苦痛だった。
「そうだね」
「ウィリアムの指定した範囲からは離れていないから、いいんじゃない?」
僕はうっすら笑みを浮かべて、ヘンリーが望んでいそうな相槌を打った。彼は僕を友人として扱ってくれているけれど、本当は彼は、僕の所有者の夫人なのだ。
ウィリアムを乗せた船が港を出て、遠く遠く点になってもまだじっと見送っているヘンリーに僕は思わず声をかけた。
「せっかく一緒になれたのに、さみしいね」
「うん……」
ヘンリーはやっと海から目を離し、僕を見た。
「本当にひとりぼっちになってしまっていたら、どんなに心細かったか分からないけれど、君がいるから」
ヘンリーは僕の手を両手で握りしめて、僕の目を見て言った。
「エドワードがいてくれて、本当によかった。ありがとう」
気を使ってくれているんだ、と僕は思った。新婚の幸せな家庭に、一人のオメガの奉公人。どう考えても邪魔だ。でも気にしないで、とヘンリーの瞳が言っていた。だから僕は何も言わなかったし、何も考えないようにした。より正確に言うと、もう考えることが億劫になっていた。
ヘンリーが門番小屋に飛び込んできて、「一緒にこの屋敷から出よう」と言ってくれた時、正直に言うと僕はうれしくはなかった。かと言って、嫌でもなかった。僕はずっとどこか上の空のまま、荷物を片付けて、ヘンリーに手を引かれるまま屋敷を出た。
ヘンリーは終始興奮気味だった。ためらいがちに僕に微笑みかけるウィリアムに僕を紹介して、少し恥ずかしそうにウィリアムを僕に紹介した。愛するアルファと晴れて夫婦となり、僕を公爵家から救い出したヘンリーは、自信にあふれ、全身から発光しているがごとく太陽の下で光り輝き、美しかった。二人はまだ結婚の準備を何もしていなかったから、僕たちはウィリアムが一人で住んでいたとても狭いアパートに住むしかなかった。
「ねえ、僕とエドワードで新居を探して、引っ越しておいてもいい? またお金が貯まれば別の家に引っ越せばいいんだし」
「そうだね」
愛する新妻に、ウィリアムは甘かった。
「いつかは大きな家を買いたいけれど、すぐには無理だから」
ウィリアムは家賃の予算と職場からの距離の範囲だけ指定して、あとは二人にまかせると言った。オメガだけで家の契約なんてできるんだろうか、と僕は思ったが黙っていた。どんな場所に住んでもどうでもよかったが、確かに一間しかないこのアパートに新婚の二人と住むのは気まずすぎる。
さっそく新居探しがはじまった。ヘンリーは精力的だった。仲介屋を回り、部屋を持て余している大家がいないか近所に聞いて回り、その全てに僕を連れまわした。
「やっぱり日当たりがいい部屋がいいよね」
「ちょっとウィリアムの職場から遠いかな、エドワードはどう思う?」
ヘンリーは終始ご機嫌で、これからの生活に夢を膨らませていた。僕はヘンリーの気持ちに水を差してはいけないと思っていたが、彼と同じテンションではしゃぐことはできなかった。とても疲れていて、何も考えたくなかった。意見を求められるのは苦痛だった。
「そうだね」
「ウィリアムの指定した範囲からは離れていないから、いいんじゃない?」
僕はうっすら笑みを浮かべて、ヘンリーが望んでいそうな相槌を打った。彼は僕を友人として扱ってくれているけれど、本当は彼は、僕の所有者の夫人なのだ。
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