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『二之北 優太』の場合 前編

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『父さん!それなぁに?』
『カメラだよ、最近の人はケータイとかスマホとかで取ることが多いけど、このカメラで撮るとそのままの姿をキレイに残してくれるんだ』
『へ~!ぼくもほしい!』
『う~ん、これは貰い物出しな~それに優太には少し早いかもな』
『できるよ!ほしいほしい!!』
『じゃあ一回だけ一緒に撮ってみるか』
『え~1回だけ?』


『お前がもう少し大きくなったら、そのときにお前だけのカメラをかってあげるよ』


『あなたー!優太ー!そろそろ帰るわよー』
『はーい!ちょっと待ってー』
『そろそろ行こうか』
『写真は?』
『じゃあ最後に一回だけ』
『うん!』


『カシャ』


一一一一一一一一一一


ピピピピッ ピピピピッ カチャッ


「ッンン"はぁ…おはよ父さん」


ベット脇に置かれている写真立てを見て挨拶をする。
懐かしい夢を見た。
あの頃の僕はもっと無邪気で活発だった。ずっと父さんについて歩いて、そんな僕を見て父さんはいつも困った様に眉毛を下げて笑う。僕たちの後ろにはおおらかで優しい母がニコニコ笑って見守っている。

そんな日常がずっと続くと思っていた。


ムクッ
「顔洗って…ご飯作らないと……」


僕が今住んでいるのは、少し古びた畳や障子に囲まれた昔からある日本の一軒家のようなところで、僕は、母と一緒に祖父母の家に住んでいる。
ご飯は作らなくてもいいと祖父母達に、言われているが何もせずに住んでいるのはと思い自主的にやっている。


「…おはよ、母さん今日はいつもより早いね」
「…………」


階段をおりキッチンに向かう途中の部屋を見て挨拶をする。母さんは僕とは逆の障子をずっとボケっと見ている。返事はない。最早日常とかしたこの光景は普通の人から見たら異常だろうが、これがもう10年は続いている光景だ。


ガチャッ
「ん~今日は早いから和食にしよう」


冷蔵庫を開け食材を確認しながらメニューを決める。これも10年とはいかないが数年は続いている。そろそろ気になる頃だろう。

何故、祖父母の家に住んでいるのか、
何故、母親がいるのにご飯をつくっているか、
何故、母親は返事をしないか、

何故、父親がいないのか…


事の始まりは、不運な事故だった。


一一一一一一一一一一


その日は、母が久しぶりに同級生に会いに行く用事があり、家には僕と父の二人で留守番していた。


「優太夜ごはんはないがいい?」
「ん~オムライス!!」
「おっいいな~う~んそうだなぁちょっと材料あるか見てくるな」
「うん!」
「あ~やっぱ卵とケチャップがないなぁ」
「え~ぼくオムライスが食べたい!!」
「う~んじゃあ買い物一緒に行くか?」
「うん!!」


その時、住んでいたのは結構田舎の方で自然があふれるとこだった。父は写真家でそこの自然を取るのが好きでそこに家を建てたそうだ。
けれど、大変なのは買い物で、幼く当時6歳ぐらいの僕には、それこそ車に乗って遠くまでいく、ちょっとした小旅行みたいなものだった。


ガラガラガラ プップ‐ キィキィー ガタンッ


突然の崖崩れに父が急いで避けてそのまま、道に外れ車がひっくり返った。僕は血だらけで意識が朦朧としていた。そんな僕を見て慌てて何処かに電話をかけている僕と同じようにまたはそれ以上に血だらけの父。
僕はそのまま意識が途絶えた。


ピッピッピッピッ
「ここどこ…」


次に見たのは真っ白な天井、病室の中だった。もう外は明るくなり始め、夜が明けたことを告げていた。

周りを見渡すと、父が横たわって寝ていた。その後聞いたらどうやら父は病院に電話をかけていたみたいで、救急車がつくなり、父は安心したのか意識を失ったそうで、その後二人揃って病院に運ばれたらしい。

母にも連絡がいったが、同級生に会うために遠出をしていた母は駆けつけるのに時間が掛かり、母に会ったのは、目が覚めた日の昼過ぎだった。
母は目を覚ましていた。僕を見て、泣きながら喜んだが、僕の隣にいる父の状態を知って膝から崩れ落ちた。


「息子さんは、頭の打ちどころが悪かったのでしょう、頭が切れて、意識を失いましたがあとは骨折、貧血ぐらいで目立った怪我は見えないです。もし異常があったら言ってくださいね。で、こちらのお父さんの方が状態が悪いです。右肩から足にかけて打撲しており、ところどころ骨折しています。こちらも貧血状態ですが、意識が戻っていません。反応もなく、おそらく植物状態になっているやもしれません。」


当時の僕には意味がわからなかったが、父が死んだも同然だ、と母は告げられ、絶望が母を包んだのだろう。さっきまで僕を心配して、会話をしていた母の口からは、声にならないような微かな息を吸ったような音しか聞こえなかった。
しばらく、動かなかった母に僕が声をかけ、正気に戻った母は、僕に泣きながら、


「大丈夫…大丈夫ょ」


と微かな声で言った。まるで自分に語りかけるように


日に日に回復していく僕とは違って、意識が戻らず動かない父に段々と痩せて目の下には、隈がくっきりあり、見てわかるように弱っていく母。

僕が退院して、母と家に帰って見た光景は、数ヶ月前と変わらなく、少しホコリが溜まった部屋。
母は笑っていたが、当時の僕にも無理をしているとわかる笑顔だった。

僕も家には帰ったが完治しておらず、リハビリに病院に通い、父のことを見守っていた。母も付き添いで来ていた。


そんなある日母が倒れた。睡眠不足に栄養不足そんなところだろう。僕はまだ6歳ぐらいの年齢で病院の番号なんて、覚えていなかった。
そこで頼ったのが祖父母、番号登録されている中から祖父母の番号に電話をかけ、助けを求めた。祖父母は冷静に対応してくれて、病院に電話をかけ、急いで僕の家に来てくれた。


「どうしよっ!母さんが!!」
「大丈夫、今すぐ行くからね」
「大丈夫だ優太少し待っていろ」


祖父母の声はとても頼もしく、僕を安心させてくれた。

最早見慣れた病院につき、母が入院することになった。それを聞いて僕の頭を過ぎったのは、未だに寝ている父の姿だった。


 このままじゃ一人になる 漠然とそう思った。


「かあさんッ!一人にしないでッ!!」


僕は必死に病室のベッドで眠りにつく母に縋りつき、叫んでいた。すると、母は手をピクッと反応を見せ、ゆっくり目を開けた。


「だぃじょぅぶょ…」


声をかけられたがその目はどこにも見ていなく、虚ろとしていた。でも、当時の僕には、それが救いだった。

それから、虚ろとしていた母は心の病気と診断された。カウンセリングを受けてはいるが、ずっと心此処にあらずといった感じであった。父は眠り、母も到底子供を育てることができない。
そんな中、祖父母が僕と母を引き取ってくれた。祖父母の家に行くにあたり、今まで住んでいた家を引き払う事になった。両親ともにそこまで家にものを置くタイプではないので、引っ越し準備は割とスムーズに進んだ。
自分の荷物を入れ終え、次に向かったのは父の書斎だ。父は写真家でそして読書家でもあった。大量の本を段ボールに詰めるのは、骨が折れた。
本を入れ終わり、次のものを入れようそう考えて周りを見渡すと机の上にそれはあった。


「ぁっ…これ、父さんのカメラ…」


父さんは、僕たちと出かけるときには必ずカメラを持ち歩いていた。カメラで撮られた写真は、その時の幸せが満ち溢れた僕たちの姿があった。
僕はヨロヨロと歩き父のカメラを手に取った。
父が眠りについてから、ずっと機能してなかった涙腺がダムが崩壊したかのように大粒の涙を流した。

一度泣くと少しばかりスッキリした。
状況はなにも変わっていないが
いつか、僕が家族揃って笑顔の写真が撮れるように、僕は暗示をかけるようカメラの紐に首を通した。


一一一一一一一一一一


それからは、祖父母の家で学校に通い、その日にあった出来事を両親、祖父母に話しそして自然の写真を撮る日々を続けていた。
ずっと写真を取り続けていたら、写真の腕も上がった。コンクールで賞をとったり、ネットでも割と有名になった。モデルの写真を撮ってほしいとお願いされた事もあったが、人の写真は取らなかったはじめて人の写真は家族揃ってと決めている。


「もう、こんな時間か…ご飯はラップに包んでおくか」

「母さん、父さん行ってきます」


そんな日々をおくっていたら、僕ももう高校生になる今日は入学式の次の日、はじめて授業を受ける日だ。
僕はカメラに首を通し、外へと歩みをはじめた。


一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一一
俺実は、シリアスもので国語の作文満点取ったことあるんですよ~(*‘ω‘ *)書いてるものを途中のままですが、完結は絶対させようと思ってるんでよろしくお願いします!!
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