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雨宿りの次は?
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「お風呂沸かすから匠海と星澤さんも入っていってねー」
腕まくりをしている聡善さんがリビングの扉の前でそう言うと、隣の椅子に座っている姉さんが勢いよく立ち上がり、顔の前で大きく手をふる。
「いえいえいえいえ!そこまでしてもらわなくていいですから!」
表向きではこうだが、内心は「お風呂なんか入ったらこいつとまだ一緒にいることになるから嫌だ」とか思ってるんだろうな。
まぁそんなこと言ったら聡善家と星澤家の関係がなくなるだろうから絶対に言わせないんだけど。
そんな否定的な姉さんに聡善さんは腕まくりを直しながら口を開く。
「これで風邪を引かれたら困るから入ってほしいなー」
悪意なんてなさそうに完璧な演技をする聡善さんを目の前に姉さんは困ったように俺の顔を見つめてくる。
だが残念なことにオレは聡善さん側の人なので姉さんの味方になることはできない。
「千咲もこう言ってることだし風呂入ってこ?」
姉さんにそう伝えると、自分に味方がいないことが分かったのか、諦めたように席に座り直す。
多分──いや絶対味方はいるよ。姉さんからは見えてないだろうが、お兄さん今すっごい不服気な顔してるよ?
横目にお兄さんの顔を見ながらオレは思わず口元がニヤけてしまう。
聡善さんもお兄さんの顔に気づいたのか、軽く微笑を浮かべてこちらを見てくる。
一瞬見つめ合った後、聡善さんは順番を決めるためにオレ達3人が座っている椅子に近づいてくる。
「それじゃあどっちが先に入るか決めよう」
「……これかなり重要だな」
「でしょ?ちなみにだけどワタシは星澤さんと一緒に入りたいから」
誰も聞いていないのにそう呟いた聡善さんは姉さんの顔をじっと見る。
姉さんは先程玄関前で囁いたオレの言葉が気になるのか、そっと目を逸らしてしまう。
「わ、私ですか……?」
「はいそうです。だから男子は男子で2人で入っていいよ?てか入って。そっちの方が順番決めやすいし時間もかからないし」
「オレは別にいいけどお兄さんは大丈夫ですか?」
体ごとお兄さんの方に向けて答えを待っていると、お兄さんは少し考えた後に顔を逸しながら言葉を放つ。
「いいですよ」
顔を逸らした理由は聡善さんもオレと同じようにお兄さんの耳元でオレがメイクのことを知っていると囁いたからだろうな。
この脅しはまだまだ使えそうだから存分に使わせてもらおう。
お兄さんの言葉を聞いた聡善さんは机の上に両手を付き、オレに勝負を挑むような目を向けてくる。
「なら男チーム代表の匠海と女チーム代表のワタシがゲームで戦って勝った方が先に入るってのはどうよ」
「ほう?このオレにゲームを挑むというのか?」
「悪いけどワタシ強いよ?それで勇達はこの案でいい?」
オレからお兄さん達の方に目を向け直した聡善さんは2人に問いかける。
当然脅されている2人には拒否権なんて存在しないので頷くだけだった。
「じゃあこれで決まりね」
「それでオレと勝負するゲームは?」
聡善さんの後ろにあるテレビの方を見ながらそう問いかけると、この状況を予測していたのか、どこからかとあるゲームパッケージを取り出す。
「このゲームよ」
パッケージにはたくさんの有名キャラや格闘のキャラが描かれており、とあるゲーム機では有名なゲーム名がデカデカと書かれていた。
「悪いがそのゲームは得意中の得意だぞ?」
「それはワタシもよ?」
オレと聡善さんの間には火花が散り、数秒睨み合った後にテレビの前へと移動する。
聡善さんが手早くテレビにゲーム画面をつけてオレにコントローラーを渡してくる。
キャラの設定画面に移動した2つのカーソル。それぞれ違うキャラを選択しており、1つのカーソルはコマを扱うロボのキャラクターを選択し、もう1つのカーソルは緑色の帽子を被ったおじさんのキャラを選択する。
「ほーん匠海はすっぽんしか取り柄がないそのキャラ使うんだ」
「千咲こそコマしか取り柄がないキャラじゃん」
バチバチと未だに火花が散り続けているが、優先するべきなのはずっと椅子に座っている2人だ。
一言も話もしない2人に目を向けた聡善さんは2人に2つの案を出す。
「2人ともカップルなんだし勇の部屋行っててもいいよ?こっちは長くなりそうだし。まぁもしこっちを見たいならそこのソファーに腰掛けててー」
親指で後ろにあるソファーを指差すと、カップル2人はなにも言わずに無表情のままソファーに腰掛ける。
……ちょっとぐらいは悩む素振りを見せてほしかったなぁ……。
そんなことを心の中で考えていると、1つのカーソルがスタートのボタンを押す。
目を外していたオレはカウントダウンが始まるタイミングでコントローラーを持ち、ゲームに集中する。
このゲームは至ってシンプルで、時間以内に相手の残基をすべて減らせば勝ちというゲーム。時間切れになった場合は残基が多いほうが勝ち、もし同じ残基ならサドンデスで生き残ったほうが勝ちというルール的には簡単なゲームだ。
だが、このゲームは奥が深い。相手の動き、相手の癖や技の振り方……そのそれぞれを観察して相手の行動を予測して技を置いたり回避したりと本当に奥が深い。
オレの見た目はチャラ男だからゲームとはあまり接点がないと思われるかもしれないが実はかなりゲームをやり込んでいる。特にこのゲームは相当やり込んでいる部類だ。
出会って1日も経っていないやつだろうが、このゲームでは本気を出させてもらう。力の差というものを見せてやろう。
「空前コマ投げコマキャッチ空前コマ投げコマキャッチ空前コマ投げ横B……よし」
「ほう……千咲もかなりやるようだな」
「ワタシこのゲームうまいからね」
初っ端から即死コンボを決められて少々動揺をしてしまったが、オレも仕返しを兼ねて即死コンをお見舞いしてやろう。
リスポーンしたオレのキャラはステージ中央で相手を掴み、
「下投小ジャン空下急降下空N小ジャン空下急降下空中つかみ上B……よし追いついた」
「……やっぱりすっぽんしか取り柄ないじゃん」
「……そっちもコマしか取り柄ないだろ?」
リスポーンした聡善さんのキャラは空中に浮かぶ台に乗ったまま。
油断していたのか、聡善は深呼吸をして気合を入れ直す。
オレも少々油断していたので息を吸って気合を入れる。
腕まくりをしている聡善さんがリビングの扉の前でそう言うと、隣の椅子に座っている姉さんが勢いよく立ち上がり、顔の前で大きく手をふる。
「いえいえいえいえ!そこまでしてもらわなくていいですから!」
表向きではこうだが、内心は「お風呂なんか入ったらこいつとまだ一緒にいることになるから嫌だ」とか思ってるんだろうな。
まぁそんなこと言ったら聡善家と星澤家の関係がなくなるだろうから絶対に言わせないんだけど。
そんな否定的な姉さんに聡善さんは腕まくりを直しながら口を開く。
「これで風邪を引かれたら困るから入ってほしいなー」
悪意なんてなさそうに完璧な演技をする聡善さんを目の前に姉さんは困ったように俺の顔を見つめてくる。
だが残念なことにオレは聡善さん側の人なので姉さんの味方になることはできない。
「千咲もこう言ってることだし風呂入ってこ?」
姉さんにそう伝えると、自分に味方がいないことが分かったのか、諦めたように席に座り直す。
多分──いや絶対味方はいるよ。姉さんからは見えてないだろうが、お兄さん今すっごい不服気な顔してるよ?
横目にお兄さんの顔を見ながらオレは思わず口元がニヤけてしまう。
聡善さんもお兄さんの顔に気づいたのか、軽く微笑を浮かべてこちらを見てくる。
一瞬見つめ合った後、聡善さんは順番を決めるためにオレ達3人が座っている椅子に近づいてくる。
「それじゃあどっちが先に入るか決めよう」
「……これかなり重要だな」
「でしょ?ちなみにだけどワタシは星澤さんと一緒に入りたいから」
誰も聞いていないのにそう呟いた聡善さんは姉さんの顔をじっと見る。
姉さんは先程玄関前で囁いたオレの言葉が気になるのか、そっと目を逸らしてしまう。
「わ、私ですか……?」
「はいそうです。だから男子は男子で2人で入っていいよ?てか入って。そっちの方が順番決めやすいし時間もかからないし」
「オレは別にいいけどお兄さんは大丈夫ですか?」
体ごとお兄さんの方に向けて答えを待っていると、お兄さんは少し考えた後に顔を逸しながら言葉を放つ。
「いいですよ」
顔を逸らした理由は聡善さんもオレと同じようにお兄さんの耳元でオレがメイクのことを知っていると囁いたからだろうな。
この脅しはまだまだ使えそうだから存分に使わせてもらおう。
お兄さんの言葉を聞いた聡善さんは机の上に両手を付き、オレに勝負を挑むような目を向けてくる。
「なら男チーム代表の匠海と女チーム代表のワタシがゲームで戦って勝った方が先に入るってのはどうよ」
「ほう?このオレにゲームを挑むというのか?」
「悪いけどワタシ強いよ?それで勇達はこの案でいい?」
オレからお兄さん達の方に目を向け直した聡善さんは2人に問いかける。
当然脅されている2人には拒否権なんて存在しないので頷くだけだった。
「じゃあこれで決まりね」
「それでオレと勝負するゲームは?」
聡善さんの後ろにあるテレビの方を見ながらそう問いかけると、この状況を予測していたのか、どこからかとあるゲームパッケージを取り出す。
「このゲームよ」
パッケージにはたくさんの有名キャラや格闘のキャラが描かれており、とあるゲーム機では有名なゲーム名がデカデカと書かれていた。
「悪いがそのゲームは得意中の得意だぞ?」
「それはワタシもよ?」
オレと聡善さんの間には火花が散り、数秒睨み合った後にテレビの前へと移動する。
聡善さんが手早くテレビにゲーム画面をつけてオレにコントローラーを渡してくる。
キャラの設定画面に移動した2つのカーソル。それぞれ違うキャラを選択しており、1つのカーソルはコマを扱うロボのキャラクターを選択し、もう1つのカーソルは緑色の帽子を被ったおじさんのキャラを選択する。
「ほーん匠海はすっぽんしか取り柄がないそのキャラ使うんだ」
「千咲こそコマしか取り柄がないキャラじゃん」
バチバチと未だに火花が散り続けているが、優先するべきなのはずっと椅子に座っている2人だ。
一言も話もしない2人に目を向けた聡善さんは2人に2つの案を出す。
「2人ともカップルなんだし勇の部屋行っててもいいよ?こっちは長くなりそうだし。まぁもしこっちを見たいならそこのソファーに腰掛けててー」
親指で後ろにあるソファーを指差すと、カップル2人はなにも言わずに無表情のままソファーに腰掛ける。
……ちょっとぐらいは悩む素振りを見せてほしかったなぁ……。
そんなことを心の中で考えていると、1つのカーソルがスタートのボタンを押す。
目を外していたオレはカウントダウンが始まるタイミングでコントローラーを持ち、ゲームに集中する。
このゲームは至ってシンプルで、時間以内に相手の残基をすべて減らせば勝ちというゲーム。時間切れになった場合は残基が多いほうが勝ち、もし同じ残基ならサドンデスで生き残ったほうが勝ちというルール的には簡単なゲームだ。
だが、このゲームは奥が深い。相手の動き、相手の癖や技の振り方……そのそれぞれを観察して相手の行動を予測して技を置いたり回避したりと本当に奥が深い。
オレの見た目はチャラ男だからゲームとはあまり接点がないと思われるかもしれないが実はかなりゲームをやり込んでいる。特にこのゲームは相当やり込んでいる部類だ。
出会って1日も経っていないやつだろうが、このゲームでは本気を出させてもらう。力の差というものを見せてやろう。
「空前コマ投げコマキャッチ空前コマ投げコマキャッチ空前コマ投げ横B……よし」
「ほう……千咲もかなりやるようだな」
「ワタシこのゲームうまいからね」
初っ端から即死コンボを決められて少々動揺をしてしまったが、オレも仕返しを兼ねて即死コンをお見舞いしてやろう。
リスポーンしたオレのキャラはステージ中央で相手を掴み、
「下投小ジャン空下急降下空N小ジャン空下急降下空中つかみ上B……よし追いついた」
「……やっぱりすっぽんしか取り柄ないじゃん」
「……そっちもコマしか取り柄ないだろ?」
リスポーンした聡善さんのキャラは空中に浮かぶ台に乗ったまま。
油断していたのか、聡善は深呼吸をして気合を入れ直す。
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