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どんぐりの背比べ
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「お前さっき、洗濯できないって言ってたけど家ではどうしてんだ?親がやってるのか?」
洗濯機を操作する紗夜に、後ろで様子を見る勇は話しかける。
「家では私がやってるよ?ただこの家の洗濯機がわからないだけ」
「やり方自体は他のやつと変わらんと思うが……」
「私の家はドラム式だけど、あんたの家のは縦型じゃん。こっちの洗濯機難しくてわかんない」
「なら俺が全部やるのに」
「それはなんかやだ」
勇に劣りたくないのか、はたまたプライドが高いのか、勇に教えてもらいながらも操作を譲ろうとしない紗夜はスタートボタンを押した。
「プライドが高いところも子供だな」
「うるさい。あなただってプライド高いくせに」
「お前ほどじゃない」
「絶対ウソ。私より高い」
「んなわけないだろ」
「んなわけがあるのよ」
「まぁプライドはあることは認めるとして、俺よりかはお前のほうが上だな」
「ごめんそれはないね。あなたのほうが上よ?」
自分が上になることだけは譲れないのか、身長差を生かして紗夜を見下す勇と、負けじと背伸びをしながら胸を張る紗夜はお互いを睨み合う。
「そういうところが子供なんだよ!」
「そういうところが子供なのよ!」
口を揃えて言う勇と紗夜は顔を背け合い、2人して同じ扉からリビングに向かい出す。どんぐりの背比べだということも気づかず、お互いがプライドが高いと決めつけた2人はそれぞれ自分のしたいことを始めた。
勇は紗夜が机に残した食器を台所に持って行って洗い物を始め、紗夜は我が家のように改めてソファーに寝転び、テレビをつけて服の中に手を入れる。
「ねぇ、サラシ外していい?」
「なんでだよ」
「だってきついんだもん」
「毎日つけてるだろ。それぐらい我慢しろ?」
「やだ。もう隠す必要ないのに付ける意味ないじゃん」
「あっそ。なら外してどうぞ」
「どもども~。あ、でも、サラシを外したからって私の胸見ないでよ」
「見ねぇから」
自分の胸を隠すように体を抱く紗夜は洗い物中の勇をじっと睨みつける。だが、紗夜の胸なんかに興味がないのか、勇は見向きもせずに冷たく反応する。
見るなとは言ったものの、自分の胸に自信があった紗夜は冷たい反応をされて少し不服気な表情を浮かべた。
「つまんなーい」
「知るか」
「こんな可愛い彼女の胸が見れるチャンスなんだよー?」
「仮だろ仮。あとお前も見せる気ないだろ」
「そりゃ見せないでしょ。ほぼ初対面なのに」
「だな」
「まぁ外すには外すんだけどね~」
「ご勝手にどうぞ」
服の中に入れた手で慣れた手付きでサラシを手早く外し、勇には見せないように自分とソファーの間に挟んだ。
勇はそんなサラシになんて興味がないのか、淡々と洗い物を済ませて自分の部屋に戻ろうとリビングを出ようとする。
「どこ行くの?」
「本取りに行くだけ」
「へ~私も見たい」
「……お前文字読めんのか?」
「それは馬鹿にしすぎじゃない!?」
「だって馬鹿だろ」
「あなたより馬鹿じゃないでーす」
腕を組んで言う紗夜の様子を見た勇はとりあえず文字が読めると判断し、とある質問を投げつける。
「家では本読むのか?」
「うん読むよ」
「まじ?」
紗夜の言葉に興味を示した勇は若干体を前のめりにして更に質問を投げつける。
「どのくらい読むんだ?」
「んー匠海の漫画を嗜む程度だねぇ。あっ、もしかして私と語り合いた――」
「そんなもんか。本取ってくるから寝とけ」
分かりやすく興味を失った勇は紗夜の言葉を最後まで聞くこともなく、冷たい反応を取ってリビングを出るのだった。
「え?なにあいつ。自分と気が合わないと思った瞬間あの態度ってすごいイラつく」
紗夜も分かりやすく機嫌を損ねてしまい、勇が出ていった扉を頬杖を付きながら鋭く睨みつける。
「あっ、そうだ。良いこと思いついた~」
呟いた紗夜は先程までとは違い、不敵な笑みを浮かべながら扉を見やる。
そして一応、勇にサラシを見られるのは嫌なので、紗夜の下敷きになっていたサラシを昨日背負ってきたリュックの中に詰めるのだった。
洗濯機を操作する紗夜に、後ろで様子を見る勇は話しかける。
「家では私がやってるよ?ただこの家の洗濯機がわからないだけ」
「やり方自体は他のやつと変わらんと思うが……」
「私の家はドラム式だけど、あんたの家のは縦型じゃん。こっちの洗濯機難しくてわかんない」
「なら俺が全部やるのに」
「それはなんかやだ」
勇に劣りたくないのか、はたまたプライドが高いのか、勇に教えてもらいながらも操作を譲ろうとしない紗夜はスタートボタンを押した。
「プライドが高いところも子供だな」
「うるさい。あなただってプライド高いくせに」
「お前ほどじゃない」
「絶対ウソ。私より高い」
「んなわけないだろ」
「んなわけがあるのよ」
「まぁプライドはあることは認めるとして、俺よりかはお前のほうが上だな」
「ごめんそれはないね。あなたのほうが上よ?」
自分が上になることだけは譲れないのか、身長差を生かして紗夜を見下す勇と、負けじと背伸びをしながら胸を張る紗夜はお互いを睨み合う。
「そういうところが子供なんだよ!」
「そういうところが子供なのよ!」
口を揃えて言う勇と紗夜は顔を背け合い、2人して同じ扉からリビングに向かい出す。どんぐりの背比べだということも気づかず、お互いがプライドが高いと決めつけた2人はそれぞれ自分のしたいことを始めた。
勇は紗夜が机に残した食器を台所に持って行って洗い物を始め、紗夜は我が家のように改めてソファーに寝転び、テレビをつけて服の中に手を入れる。
「ねぇ、サラシ外していい?」
「なんでだよ」
「だってきついんだもん」
「毎日つけてるだろ。それぐらい我慢しろ?」
「やだ。もう隠す必要ないのに付ける意味ないじゃん」
「あっそ。なら外してどうぞ」
「どもども~。あ、でも、サラシを外したからって私の胸見ないでよ」
「見ねぇから」
自分の胸を隠すように体を抱く紗夜は洗い物中の勇をじっと睨みつける。だが、紗夜の胸なんかに興味がないのか、勇は見向きもせずに冷たく反応する。
見るなとは言ったものの、自分の胸に自信があった紗夜は冷たい反応をされて少し不服気な表情を浮かべた。
「つまんなーい」
「知るか」
「こんな可愛い彼女の胸が見れるチャンスなんだよー?」
「仮だろ仮。あとお前も見せる気ないだろ」
「そりゃ見せないでしょ。ほぼ初対面なのに」
「だな」
「まぁ外すには外すんだけどね~」
「ご勝手にどうぞ」
服の中に入れた手で慣れた手付きでサラシを手早く外し、勇には見せないように自分とソファーの間に挟んだ。
勇はそんなサラシになんて興味がないのか、淡々と洗い物を済ませて自分の部屋に戻ろうとリビングを出ようとする。
「どこ行くの?」
「本取りに行くだけ」
「へ~私も見たい」
「……お前文字読めんのか?」
「それは馬鹿にしすぎじゃない!?」
「だって馬鹿だろ」
「あなたより馬鹿じゃないでーす」
腕を組んで言う紗夜の様子を見た勇はとりあえず文字が読めると判断し、とある質問を投げつける。
「家では本読むのか?」
「うん読むよ」
「まじ?」
紗夜の言葉に興味を示した勇は若干体を前のめりにして更に質問を投げつける。
「どのくらい読むんだ?」
「んー匠海の漫画を嗜む程度だねぇ。あっ、もしかして私と語り合いた――」
「そんなもんか。本取ってくるから寝とけ」
分かりやすく興味を失った勇は紗夜の言葉を最後まで聞くこともなく、冷たい反応を取ってリビングを出るのだった。
「え?なにあいつ。自分と気が合わないと思った瞬間あの態度ってすごいイラつく」
紗夜も分かりやすく機嫌を損ねてしまい、勇が出ていった扉を頬杖を付きながら鋭く睨みつける。
「あっ、そうだ。良いこと思いついた~」
呟いた紗夜は先程までとは違い、不敵な笑みを浮かべながら扉を見やる。
そして一応、勇にサラシを見られるのは嫌なので、紗夜の下敷きになっていたサラシを昨日背負ってきたリュックの中に詰めるのだった。
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