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殺し屋
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「あ、あんたが殺し屋なのかい?」
「はい、そうです。」
都内某所のバーの一角。スーツ姿の男2人が、テーブルに向かいあって座っていた。
「こ、こんな所で待ち合わせて大丈夫なんだろうね。絶対に依頼人は巻き込まないって言うから呼んだんだ。」
「問題はありません。我々は依頼人様に不利益になるようなことは絶対にしません。これは我が社のポリシーです。」殺し屋と名乗った男は、そう言って黒いサングラスをくいとあげた。「それでは依頼内容を聞かせていただけますでしょうか。」
「わ、わかった。殺して欲しいのはうちの課長だ。あの野郎、会社で俺に嫌がらせばかりしてきやがる。無理な仕事を押し付けたり、かと思えば俺のことを無視したり、俺の勤務態度のことも悪くいってるらしい。」
「課長さんのことはよくわかりました。それで?」
「こんどその会社をやめることにしたんだ。原因はあいつさ。今更会社をやめることは構わない。だがあいつだけは許せないんだ。俺が会社をやめる前にあいつを殺して欲しい…。」
「かしこまりました。ではこちらも準備に取り掛かります。報酬のお支払いをお忘れなく…。」そう言って、殺し屋は胸元から紙幣を取り出した。「ここの飲み代です。どうぞ。」
「わ、わかった。よろしく頼む。」
それから一週間が経った。
課長はまだ死んでいなかった。
(おかしい…。そろそろ殺されてもいい頃なのに…。もしかして騙されたのか?)
依頼人の男が思案に暮れていると、課長の出勤する声が聞こえてきた。
「おはよう~。」
「おはようございます。課長。」
いつも通り、席に着く課長。いつも通りの風景だ。
(やっぱり何も変わってない!騙されたんだ!クソ!)
と、突然部長が青筋を立ててやってきた。
「K課長!K課長はいるか!」
「は、はい。いかがされましたか?部長。」
「この写真は君のかね?」
見ると、部長が一枚の写真を持っていた。写真にはセーラー服姿で決めポーズを取っている課長が写っている。
「…!こ、これをどこで?」
「今朝、わたしの机の中に入っていたんだ。しかも1枚や2枚ではない。」
「ご、誤解です!私はこんなことは!」
「何が誤解なんだね!?この写真はわたしだけではない。社長にも、さらにはマスコミにまで送られているんだぞ!」
「な、なんですって!?」
(…何やらえらいことになった。あの課長、あんな変態趣味があったのか。それにしてもいったいだれが…。)
依頼人は少し考えて、ピンときた。
(そうか!あの殺し屋だ!あの殺し屋が調査して、課長の秘密を世間に暴露したんだ!)
これならば、責められるのは課長だけ。依頼人にはなんの被害も及ばない。
(殺すというのは、社会的に殺すということだったんだな。なるほど…。)
程なくして、課長は自主退職した。あんな生き恥をさらしたのだ。会社にはいられるはずもない。
依頼人は意気揚々と殺し屋に電話をした。
「ありがとう!あんたたちのおかげで胸がスッとしたよ!」
「ご満足いただけたようで、結構でございます。それで報酬のほうなんですが…。」
「ああ、今持ち合わせがなくてね。少し待ってくれないか?」
「構いませんが、決して逃げないように…。我々はあなたを殺すことも出来ることをお忘れなく…。」
「あ、ああ。気をつけるよ。」
そう言って電話は切れた。
俺も殺せる?
何を握ってるんだ?
あのことか?
それともあのことか?
依頼が完了しても、依頼人の不安は増える一方であった。
「はい、そうです。」
都内某所のバーの一角。スーツ姿の男2人が、テーブルに向かいあって座っていた。
「こ、こんな所で待ち合わせて大丈夫なんだろうね。絶対に依頼人は巻き込まないって言うから呼んだんだ。」
「問題はありません。我々は依頼人様に不利益になるようなことは絶対にしません。これは我が社のポリシーです。」殺し屋と名乗った男は、そう言って黒いサングラスをくいとあげた。「それでは依頼内容を聞かせていただけますでしょうか。」
「わ、わかった。殺して欲しいのはうちの課長だ。あの野郎、会社で俺に嫌がらせばかりしてきやがる。無理な仕事を押し付けたり、かと思えば俺のことを無視したり、俺の勤務態度のことも悪くいってるらしい。」
「課長さんのことはよくわかりました。それで?」
「こんどその会社をやめることにしたんだ。原因はあいつさ。今更会社をやめることは構わない。だがあいつだけは許せないんだ。俺が会社をやめる前にあいつを殺して欲しい…。」
「かしこまりました。ではこちらも準備に取り掛かります。報酬のお支払いをお忘れなく…。」そう言って、殺し屋は胸元から紙幣を取り出した。「ここの飲み代です。どうぞ。」
「わ、わかった。よろしく頼む。」
それから一週間が経った。
課長はまだ死んでいなかった。
(おかしい…。そろそろ殺されてもいい頃なのに…。もしかして騙されたのか?)
依頼人の男が思案に暮れていると、課長の出勤する声が聞こえてきた。
「おはよう~。」
「おはようございます。課長。」
いつも通り、席に着く課長。いつも通りの風景だ。
(やっぱり何も変わってない!騙されたんだ!クソ!)
と、突然部長が青筋を立ててやってきた。
「K課長!K課長はいるか!」
「は、はい。いかがされましたか?部長。」
「この写真は君のかね?」
見ると、部長が一枚の写真を持っていた。写真にはセーラー服姿で決めポーズを取っている課長が写っている。
「…!こ、これをどこで?」
「今朝、わたしの机の中に入っていたんだ。しかも1枚や2枚ではない。」
「ご、誤解です!私はこんなことは!」
「何が誤解なんだね!?この写真はわたしだけではない。社長にも、さらにはマスコミにまで送られているんだぞ!」
「な、なんですって!?」
(…何やらえらいことになった。あの課長、あんな変態趣味があったのか。それにしてもいったいだれが…。)
依頼人は少し考えて、ピンときた。
(そうか!あの殺し屋だ!あの殺し屋が調査して、課長の秘密を世間に暴露したんだ!)
これならば、責められるのは課長だけ。依頼人にはなんの被害も及ばない。
(殺すというのは、社会的に殺すということだったんだな。なるほど…。)
程なくして、課長は自主退職した。あんな生き恥をさらしたのだ。会社にはいられるはずもない。
依頼人は意気揚々と殺し屋に電話をした。
「ありがとう!あんたたちのおかげで胸がスッとしたよ!」
「ご満足いただけたようで、結構でございます。それで報酬のほうなんですが…。」
「ああ、今持ち合わせがなくてね。少し待ってくれないか?」
「構いませんが、決して逃げないように…。我々はあなたを殺すことも出来ることをお忘れなく…。」
「あ、ああ。気をつけるよ。」
そう言って電話は切れた。
俺も殺せる?
何を握ってるんだ?
あのことか?
それともあのことか?
依頼が完了しても、依頼人の不安は増える一方であった。
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