破滅の足音

hyui

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悪夢の悪夢のそのまた悪夢の…

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「…はっ!ゆ、夢か…。」
額に流れる汗を拭いながら、俺は目が覚めた。
嫌な夢を見た気がする。どんな夢だったか具体的には言えないが、恐ろしい夢だった…。
「まあ、何はともあれ夢でよかった。どれ、眠り直すとするか…。」
…しかし、一度目が醒めるとなかなか寝付けないものだ。止むなくテレビでも見ながら時間をつぶすことにした。
深夜のチャンネルはよくわからんものばかりだ。通販番組、深夜のアニメ、そしてB級映画…。
「…ん?チャンネルが変わんねえぞ。」
B級映画にチャンネルを切り替えた途端、テレビが反応しなくなった。この映画はホラーで苦手だってのに…。…あれ?なんで俺この映画がホラーって知ってるんだ?

映画は進んでいき、吸血鬼が登場してきた。チャンネルは依然として変わらない。
「勘弁してくれよ。俺、ホラー嫌いなんだよ…。」
テレビの中の吸血鬼はこちらを睨んできた。だんだんとこちらを近づいてきてやがて…。
「お、おいおい。まさか…。」
吸血鬼はテレビの画面からゆっくりと出てきた。信じられない。こんなことが…!吸血鬼は俺の喉元にその牙を近づけていき…。



「…はっ!ゆ、夢か…。」
…嫌な夢を見た気がする。今日はなんだか寝れそうにない。
「なんだ…。まだこんな時間か。」
時計はまだ午前の3時ごろ。朝まではまだまだ時間がある。もういちど寝直そう…。
しかし、こんな時間に起きるといつもやな事が起こる。特にこんな変に生暖かい夜は…。
「…!動けない!」
それ見た事か。金縛りにあっちまった。そうして金縛りにあった後は決まって…。
「ウウウ…。ウウウ…。」
女のすすり泣く声。全身にまとわりつく冷気。
そうだ。心霊現象が決まって起きるんだ。
「ウウウ…。ウウウ…。」
俺は怖くて目も開けられない。だが、声は確実にすぐそばまで来ている。
…恐怖に耐えきれず目を開けてしまった。血まみれの女が俺の体にまたがり、手を伸ばす。その手は俺の首をゆっくりと締め付けて…。



「…はっ!ゆ、夢か…。」
…嫌な夢を見た気がする。しかも何度も見た気がする。今夜は嫌な夜だ。
改めて寝直すことにした。…しかし、こう何度も夢が続くと、今寝ている自分が現実なのか、夢なのかわからなくなる。もしかして夢の続きなんじゃないかと…。

…ガサリ。
何か物音がする。ネズミかなんかか?そう思って目を開けてみた。
…男が立っていた。片手には包丁を持って身構えている。…これは夢なのか?
男は持っていた包丁を振りかぶり、俺に突き立てた。
「ぐ、があああ…!」
激痛が俺を襲う。傷口は熱く、血が溢れ、だんだんと意識を失うのを感じていた。

ああ、これも夢だ…。きっと夢だ…。お願いだ。はやくさめてくれ。早く、早く…。
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