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「ヒーローショー」
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ある日の番組にて、一つのニュースが取り上げられた。
『悪の組織か⁉︎怪しげな秘密結社!』
「われわれ新梢TVは世界征服を企む悪の秘密結社の所在を明らかにした。調べによるとこの秘密結社は夜な夜な怪しげな会議を行なっており……」
このニュースを受けて、各メディアはこぞってこの秘密結社を取り上げた。
曰く、「地元住民も寄り付かない。」
曰く、「近年行方不明者が増加している。」
曰く、「連続殺人鬼を匿っている」……。
連日のように畳み掛ける報道に、世間は恐れおののき、とうとうその秘密結社をやっつけるべきだとの声が出始めた。
「これ以上、悪の秘密結社の好きにさせてはならない!誰かがやらねば!」
そうして有志により、秘密結社の討伐チームが結成された。世間は彼らを正義のヒーローと呼び、彼らの勇気を称えたのだった。
そうして、とうとうその日はやってきた。
討伐チームが秘密結社へと突入し、彼らの壊滅を図ったのである。だが……。
「な、なんなんだ。これは……。」
そこは見てくれこそ不気味そのものだが、中は悪の組織でもなんでもない、ただの張りぼての空き家だった。
討伐チームが戸惑っていると、そこに報道関係の男がジュラルミンケースを持って近づいてきた。
「驚きましたか?ここははじめから何もないただの廃屋なんです。我々が話題作りのためにでっち上げた、ね。」
「話題作りって…。あなた方、マスコミなんでしょう?真実を語るのがあなた方の仕事じゃないんですか?」
報道関係の男は高笑いをしてこう言った。
「あなたは勘違いしている。大衆が求めているのは真実じゃない。正義が悪を討つ、そんなエンタテインメント、言ってしまえばちょうど今のあなた方のようなヒーローショーが見たいんですよ。悪事の真偽なんてどうだっていい。ただ悪と言われてる連中が正義に討たれるのをみたいだけなんだ。……いや、あなた方のおかげで我々も随分と儲かりました。これは謝礼です。」
男がジュラルミンケースを開けると、そこには札束が満杯に入っていた。
「今後とも仲良くしましょう。我々が悪者をでっち上げれば、あなた方が成敗に出る。我々はニュースで儲かる、あなた方は我々の謝礼で儲かるし世間からはヒーローと崇められる。悪くない話でしょう……?」
討伐チームはお互い顔を見合わせた。その中のリーダーがおずおずと尋ねる。
「もし…俺たちがこれは全てでっち上げだ、と告発したら?」
「それはやめた方がいい。世間はもう秘密結社の存在を信じて疑っていない。今更でっち上げだと言っても信じてはもらえない。逆にあなた方を秘密結社に怖気ついた臆病者と罵る者も現れるでしょう。素直にこの金を受け取った方が賢明というものです。」
リーダーはしばらく悩んだが、やがてそのジュラルミンケースを受け取る。報道関係の男はにっこりと笑った。
「今後もよろしくお願いしますね。正義のために……。」
『悪の組織か⁉︎怪しげな秘密結社!』
「われわれ新梢TVは世界征服を企む悪の秘密結社の所在を明らかにした。調べによるとこの秘密結社は夜な夜な怪しげな会議を行なっており……」
このニュースを受けて、各メディアはこぞってこの秘密結社を取り上げた。
曰く、「地元住民も寄り付かない。」
曰く、「近年行方不明者が増加している。」
曰く、「連続殺人鬼を匿っている」……。
連日のように畳み掛ける報道に、世間は恐れおののき、とうとうその秘密結社をやっつけるべきだとの声が出始めた。
「これ以上、悪の秘密結社の好きにさせてはならない!誰かがやらねば!」
そうして有志により、秘密結社の討伐チームが結成された。世間は彼らを正義のヒーローと呼び、彼らの勇気を称えたのだった。
そうして、とうとうその日はやってきた。
討伐チームが秘密結社へと突入し、彼らの壊滅を図ったのである。だが……。
「な、なんなんだ。これは……。」
そこは見てくれこそ不気味そのものだが、中は悪の組織でもなんでもない、ただの張りぼての空き家だった。
討伐チームが戸惑っていると、そこに報道関係の男がジュラルミンケースを持って近づいてきた。
「驚きましたか?ここははじめから何もないただの廃屋なんです。我々が話題作りのためにでっち上げた、ね。」
「話題作りって…。あなた方、マスコミなんでしょう?真実を語るのがあなた方の仕事じゃないんですか?」
報道関係の男は高笑いをしてこう言った。
「あなたは勘違いしている。大衆が求めているのは真実じゃない。正義が悪を討つ、そんなエンタテインメント、言ってしまえばちょうど今のあなた方のようなヒーローショーが見たいんですよ。悪事の真偽なんてどうだっていい。ただ悪と言われてる連中が正義に討たれるのをみたいだけなんだ。……いや、あなた方のおかげで我々も随分と儲かりました。これは謝礼です。」
男がジュラルミンケースを開けると、そこには札束が満杯に入っていた。
「今後とも仲良くしましょう。我々が悪者をでっち上げれば、あなた方が成敗に出る。我々はニュースで儲かる、あなた方は我々の謝礼で儲かるし世間からはヒーローと崇められる。悪くない話でしょう……?」
討伐チームはお互い顔を見合わせた。その中のリーダーがおずおずと尋ねる。
「もし…俺たちがこれは全てでっち上げだ、と告発したら?」
「それはやめた方がいい。世間はもう秘密結社の存在を信じて疑っていない。今更でっち上げだと言っても信じてはもらえない。逆にあなた方を秘密結社に怖気ついた臆病者と罵る者も現れるでしょう。素直にこの金を受け取った方が賢明というものです。」
リーダーはしばらく悩んだが、やがてそのジュラルミンケースを受け取る。報道関係の男はにっこりと笑った。
「今後もよろしくお願いしますね。正義のために……。」
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