がらくたのおもちゃ箱

hyui

文字の大きさ
17 / 39

ライオンさんとシマウマさん

しおりを挟む
ライオンさんはいじめっ子。いつもシマウマさんを追いかけては、その鋭い牙と爪でいたぶり回しておりました。

ある日のこと、ライオンさんの暴虐にとうとう耐えかねたシマウマさんは神様にお願いしました。
「神様。どうかお願いします。ライオンのやつらときたらひどいんです。私たちシマウマに牙や爪が無いのをいいことにやりたい放題。私たちにはライオンの奴らに対抗する手段がありません。何とか奴らを大人しくさせて下さい。」
「ふうむ…。それはよろしくないな。よし、わかった。何とかしてみよう。」

かくしてシマウマさんの願いは聞き入れられました。
次の日、全てのライオンさんから牙と爪が奪われたのです。ライオンさんはこれで以前のような横暴はできなくなりました。シマウマさんたちは大喜び。

しかしライオンさんは面白くありません。早速神様に抗議に向かいました。
「神様。何故俺たちから牙と爪を奪ったのですか⁉︎」
「ふうむ。お前たちライオンがその爪と牙で弱い者をいじめていたからじゃ。」
「そんな……!俺たちはライオンなんですよ!肉を食わなきゃ生きていけない!牙と爪無しでどうやって生きていけと言うんですか⁉︎」
「死肉を食えばよいじゃろう。いいか。お前たちは力が強すぎるんじゃ。強い者はいたずらに弱い者を脅かしてはいかん。」
「しかし……!」
まだ食ってかかろうとするライオンさんを見て、神様はピシャリと諌めました。
「くどいぞ。今まで散々好き放題やってきたんじゃ。少しは我慢したらどうだ。」
「……。」
ライオンさんのうなだれる様子を見て少し哀れに思いながらも、神様はそう言ってなだめるのでした。


その日からライオンさんとシマウマさんの力関係が変わって来ました。
牙と爪を奪われたライオンさんはそれでも力強く、まれにシマウマさんを腹いせに殴りつける者もおりました。しかしシマウマさんはそのようなことがあればすぐさま神様に言いつけ、ライオンさんへ罰を与えるように仕向けました。シマウマさんに危害を与えると我が身に返ってくると気づいたライオンさんは、もう必要以上にシマウマさんを傷つけようとはしませんでした。

次第にシマウマさんはサバンナの大草原を我が物顔で闊歩するようになりました。一方でライオンさんはどんどんと肩身が狭くなっていくばかり。食べられる肉もまずい死肉ばかりで体は次第に痩せ細っていきました。

シマウマさんの要求は次第にエスカレートしていき、ライオンさんに触られた途端やれ傷つけられただの、目があった途端脅しを受けただのと騒ぎ、その都度神様に言いつけたのでした。ライオンさんは必死に抗議しましたが、今まで散々に悪いことをシマウマさんにやってきたので信じてもらえません。一度神様に言いつけられたライオンさんは必ずと言ってもいいほど罰せられました。



ある日のことでした。
その日もシマウマさんはライオンさんに襲われたと言って神様に訴えました。いつものように神様は襲ったとされるライオンさんを呼びつけました。
「ライオンよ。またシマウマを傷つけたのか?」
「……何度も申し上げます。私は決してそんなことはしておりません。第一この腕を見てください。こんな細い腕であのシマウマを襲う事ができますか?」
そう言ってライオンさんは片腕を上げて神様に見せました。ライオンさんの腕は無残に痩せ細り、まるで枯れ木の細枝のようでした。こんな腕では襲いかかってもポキリと簡単に折れてしまいそうです。
「ふうむ……。お前の言うことももっともだ。では訴え出たシマウマもこの場に呼んで話を聞いてみようか。」
そういう訳で神様はライオンさんを訴えたシマウマさんをその場に呼びました。
シマウマさんは到着するやいなやえらい剣幕でまくしたてます。
「一体なんですか⁉︎神様!どうして私がライオンと一緒にいるこの場に呼ばれないといけないんですか⁉︎私はこいつに襲われたんですよ⁉︎被害者なんです!もうちょっと私の気持ちを考えても……。」
抗議を続けるシマウマさん。神様はなだめようとしたのですが、ある事に気がつき思わずシマウマさんに尋ねました。
「お前……。その姿は一体どうしたんだ。」
「え?」
シマウマさんはいつの間にやら、その口元に鋭い牙を、指先に尖った爪を備える姿になっておりました。身体は筋骨隆々としてたくましく、あの痩せっぽちのライオンさんに襲われたとはとても思えません。
その姿はかつて自分たちを襲っていたライオンさんの姿にそっくりなのでした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

妻への最後の手紙

中七七三
ライト文芸
生きることに疲れた夫が妻へ送った最後の手紙の話。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

麗しき未亡人

石田空
現代文学
地方都市の市議の秘書の仕事は慌ただしい。市議の秘書を務めている康隆は、市民の冠婚葬祭をチェックしてはいつも市議代行として出かけている。 そんな中、葬式に参加していて光恵と毎回出会うことに気付く……。 他サイトにも掲載しております。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...