がらくたのおもちゃ箱

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サンタとトナカイの経営会議

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クリスマス…。
子供達はこの日、みんなこぞってサンタさんにお願い事をします。あれが欲しい…、これが欲しい…と、思い思いのお願い事を書いて靴下に入れておくんです。するとあら不思議。翌朝にはそのお願い事が靴下の中に入っています。サンタさんが、良い子の眠っている間にプレゼントを詰めて回っているからです。それを見た子供達は大喜びでこう言います。
「サンタさん。ありがとう…!」



…2017年。グリーンランド。
ここにはサンタさんの自宅があります。サンタさんはある事に頭を抱えておりました。
「だから…!今時、一軒一軒回って直接靴下に入れるなんて非効率なんですよ!」
「むう…。そうは言ってものう…。」
声を荒げているのはトナカイさん。赤い鼻をさらに赤くしてサンタさんに詰め寄っています。
「それに…、今の今まで黙ってましたけど、そもそも今時ソリで移動はないでしょう!?俺たちトナカイは世界規模で走らされるんですよ!?勘弁してくださいよ!」
「しかし…ソリ以外でどうやって移動しろと言うんじゃ?」
「車とか飛行機とかあるでしょう?」
「免許がないわい。」
「それなら僕が持ってますよ。飛行機は無理ですけど、ヘリなら操縦できます。とにかくソリはもうやめてください。」
「むう…。」

トナカイさんは長年の不満をサンタさんにぶつけているのでした。何十年もの間変わらない配達方法にほとほと嫌気がさしていたのです。
「次に…家への侵入方法です。ご主人はずっと煙突から入るというスタンスを取っていますが、今現在煙突のある家はほとんどありません。この侵入方法も考え直さないといけません。」
「まあ確かに…。去年はそれをよく考えていなかったからえらい目にあったしのう…。」
「我々もセ○ムやらア○ソックやらにお世話になるのはこりごりですよ。とにかく侵入方法も考え直してください。」
「ふむう…。」
サンタさんは険しい顔でますます考え込みます。

「そして…一番の問題が、蒸し返すようですがプレゼントを手渡しするという部分です。一件一件回って靴下に入れるなんて、やはり非効率です。これも変えないと…。」
「…トナカイ君。悪いがそれは譲れんよ。」
「なぜです!?世界に今どれだけ子供がいると思ってるんですか!?科学技術も進歩したというのに、なんで今時手渡しなんか…!」
憤るトナカイに、サンタさんはゆっくりと理由を語り始めました。
「トナカイ君…。我々はただ子供達にプレゼントを渡すだけの存在ではない。それなら何処ぞの宅配便に頼めばいい。それでも私が手渡しをやめないのは、ポリシーがあるからじゃ。」
「ポリシー?」
「私達は子供達にとって、夢を与える存在でなければならない、というポリシーじゃよ。宅配便などで配れば、確かに効率よく配れるじゃろう。じゃがそんなもので配られたものに夢を与えられるかね?科学技術が進歩した今だからこそ、手渡しをすることに夢を与えられるんじゃないのかね?」
サンタさんのお話をトナカイは黙って聞いていましたが、やがてはあ、とため息をついて言いました。
「…わかりました。手渡しの部分はそのままにして、配達方法を考え直しましょう。」


そしてクリスマス当日…。
日本上空を一機のヘリが旋回していた。
「…ご主人。目標は山田宅の太郎君。家の見取り図はもうご覧になりましたね?」
「…ああ。」
「まずHALO降下でここから地上へ落下。着地後は陸路を伝って目標へ接近してください。」
「…分かった。」
「間も無く到達地点です。ご主人。」


「”鳥になってこい!”」


サンタはヘリから真っ直ぐに落下。程なくしてパラシュートを開き、付近の公園に着地した。
「無事ですか!?ご主人!」
「…大丈夫じゃ。。スニーキングポイントに到着。これより目標へ向かう。」
「了解しました。何かあれば無線連絡をください。耳小骨を直接振動させる物です。周りには聞こえません。無線番号は141.80です。」
「…わかった。」
「目標地点の山田宅へはそのまま直進して向かって下さい。万が一の際はステルス迷彩を使って下さい。周りに気づかれる恐れはありません。では…。」
そうしてトナカイは無線を切った。

サンタはしばらく歩いた後、山田宅へと侵入。見取り図を元に太郎君の部屋へと入り込み無事靴下にプレゼントを入れた。
「こちらサンタ。目標を達成した。これより帰還する。」
「了解しました。予定通りですね…。ブランクがあるとは思えない。」
「回収地点へヘリを回してくれ。場所は…。」

「誰!?誰か居るの!?」

「!」


背後から誰かの声。サンタが振り向くと、そこには一人の婦人がいた。
「トナカイ!まずい!”お母さん”だ!」
山田宅に警報が響く…!サンタは窓を破って颯爽と家から脱出した。
警報を聞きつけたのか、少し遅れて父親がやってきた。
「ど、どうした!?無事か!?」
「あなた!強盗よ!さっき太郎の元に変な男が!」
「なんだって!?」
両親は太郎の様子を見にベッドに向かった。
「う…ん。どうしたの?パパ。ママ。」
「太郎!大丈夫!?」
「怪我はないか!?」
「…ないよ。二人とも大騒ぎして、なんか変だよ?」
太郎の無事を確認し、ホッと胸を撫で下ろす両親。と、太郎の側の靴下が膨らんで居ることに気がついた。
「なんだ…?何か入ってるぞ。」
「あ、あの男が置いていったんだわ…!一体何を…!?」
父親は靴下の中を調べた。中には箱と共に「メリークリスマス」と書かれた手紙が入れられていた。
「あ…。サンタさんからのプレゼント…。」
「待ちなさい!」
箱を触ろうとする太郎を父親は引き留めた。
「得体の知れない男が置いていったものだ!触っちゃいかん!」
「でも…。」
「いいから寝なさい!」
父親の恫喝に、太郎はしぶしぶ床に就いた。
「あなた…。それ一体なんなの?」
「わからん…。だが万一のこともある。これは警察に持っていって調べて貰おう。」
そう言って両親は、箱を自室へと持っていった。


山田宅から脱出したサンタは、郊外にてトナカイと合流。故郷のグリーンランドへと向かっていた。
「なんとか、プレゼントを届けることが出来ましたね。ご主人。」
「うむ…。太郎君、プレゼント喜んでくれたかのう?」
「今頃きっと大喜びしてますよ。」
「そうじゃな…。」
サンタは一仕事を終えたので、葉巻に火を付け一服することにした。
「なあ、トナカイや…。」
「なんです?ご主人。」
「お前の提案でやり方を変えてみたんじゃが、わしらなんか、間違った変化をしたんじゃないかのう…?」
「何を言ってるんですか。この方が今までより効率的だし、一件一件手渡しもできるでしょう?少し世界の我々に対する見方は変わるかも知れませんが、なあに、新しいサンタ伝説の始まりと思えばいいんですよ。」
「伝説…。伝説、か…。」
幾ばくかの不安を抱え、サンタは国へと帰る。未だ見ぬ子供達にプレゼントを渡すために…。
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