味の思い出

hyui

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ポテトサラダ

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中学2年に上がり、私と父は二人暮らしになった。
祖母の告別式で
「これから二人で頑張って生きていこうな!」
と涙を流した父の決意の熱量は、日が経つにつれて目に見えて冷えていっていた。
というより、私が冷えてしまったのか。
反抗期に差し掛かっていた私は、父に対して嫌悪感を抱いていた。自分を不幸に追いやったからとかそんな理由じゃない。ただ何かと口出しをしてくるのが気に食わなかったのだ。

以前にも書いたが、父はやたらとこだわりが強い。
ネクタイの結び方を教えてくれた時は、結び目の形が気に入らない、と何時間も結び直させられた。
食べるアイスは絶対に「エッセルスーパーカップ」のバニラ味だったし、食べるスナック菓子は絶対に「おにぎりせんべい」だった。
そして借りてくるAVは必ず洋服タンスの1番上の棚に袋を二つ折りにして隠し、内容はいつも熟女ものだった。(そのときいつも私は、何故だ父よ、と心の中で嘆きながらそのビデオを見ていた。)

子供の頃は気にしていなかったが、歳を重ねて物事が少しずつ分かってくると、守る必要もない父のくだらないこだわりがちらほらと見えてきた。
まあ基本的に個人のこだわりなど自由であり、それが個人で終わるのなら別にいい。だがそれを子供である私に押し付けてくる姿勢に、私は日に日に不満が溜まってきた。

ある日のことである。
その日、食卓にはポテトサラダが並んでいた。手作りではなく、市販のものだ。
いつものように手を合わせて食べ始めようとすると、突然父が
「お前は本当に何もでけへんな!」
と怒り始めた。
何をそんな怒ってるんだと戸惑っていると、
「ポテトサラダには普通ソースをかけるやろうが!」
と父が詰ってきた。
その時、私はついにプチンと切れた。ポテトサラダの食い方で何故そこまで言われないといけないのか。
「うるせい!俺の勝手やろうが!」
そう言ってなんやかんやと言ってくる父を無視して、私は飯を黙々と食った。
途中、父が無理やりソースをかけようとしてきたが「いらんことすんな!」と私はそのソースを振り払った。

今思うと本当に下らない理由だ。
だが私にとっては大きな事件だった。
ずっと私を押さえつけていた父に反抗する。
そのはじめの一歩だったのだから。

とはいえそれからも父とのそういったケンカは何度も続いた。
私はなんとなく気づいていた。
父はなるべく立派な「父」という存在になろうとしていたんだろう。だから権威を維持するために叱ることを探していた。
私は私で、父に頼らない、縛られない「大人」になろうとしていた。だから叱りつけられたらその度に反発したんだろう。
そんなこんなでこの親子の小抗争はしばらく続いた。



時は経ち、私は大人になったがあの頃なりたいと願っていた「大人」になれただろうか。そもそもどんな「大人」になりたかったんだろうか。
もうすっかり忘れてしまった。

そういえばあの時、父がかけろかけろとやかましく言っていたポテトサラダにかけるソースは「ウスター」だったか、「トンカツ用」だったか、「お好みやき用」だったか。
うーむ、全く、思い出せない。
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