偽装彼氏

yuu

文字の大きさ
2 / 4
第一章

プロローグ2

しおりを挟む
 寒さも和らぎ、緑葉が増え始めた5月中旬。2限目の授業が終わり、俺は次の授業である体育の準備をする為ロッカーからもってきた体操着に手際よく着替えはじめた。

「今日は隣のクラスと合同だったけ?」

 ズボンのベルトに手をかけた時、ふと前の席から声をかけられ視線を向けるとシャツのボタンを外し終えた鳴海が体操着の上を着る所だった。
 俺の前の席である橋本鳴海《はしもとなるみ》は中学からの付き合いで、気心の知れた仲である。ゆるくウェーブがかかった栗色の髪の毛が特徴的で、前髪をいつもド派手なピンク色のヘアピンで留めている。
 
「そうだったな。それでたしか種目別に分かれてやるんじゃなかったか?」
「そうそう!陽人はなにすんの?ってか一緒にやろうよ!」
「別にいいけど、お前体力ないから激しい運動とか無理だろ。バスケとかサッカーとか。」

 そう言うと癪に障ったのか鳴海の片眉がピクリと動き眉根を寄せてこちらを睨んでくる。

「…体力あるし。」

 まるで拗ねた子供のように頬を膨らませてつっけんどんに言い返してきた。

「嘘つけ。一昨日の体育でやった200m走でバテバテになって死にかけてたじゃねーか。他の奴らは余裕で走ってたぞ。」
「っ、そ…それはっ!あー…、あの時は寝不足だったんだよ!そう、寝不足!!」

 誰が見ても体力がないことは明白なのに男としてのプライドがそうさせるのか、苦し紛れな言い訳をする鳴海に思わず吹き出しそうになる。気持ちはわからなくはない。けど、流石に寝不足を理由にするのには無理があるだろと胸の内で笑みを溢した。
 鳴海は運動部に入っていないせいか体つきは細かった。身長もそれほど高くなく、中性的な顔立ちをしているので制服を着ていないと女の子と間違われることが多いらしい。
 実際、休みの日に私服の鳴海と市街地へ遊びに出かけると必ずと言っていいほど男からナンパをされるのだ。鳴海は同性愛者ではない。だから男から誘いを受けても全く嬉しくないと憤っていたけれど、そもそも女の子と間違われるようなレディース物の服を着ている鳴海も悪いと思う。
 少し話は外れたが、そんなこともあって余計に弱っちい奴等と思われたくはないんだろう。まぁ俺にもコンプレックスの一つや二つあるのだから、余り強く言ってやると可哀想だ。
 これ以上追及するのをやめ、話を選択球技に戻した。

「そういうことにしといてやる。んで、球技ってなにがあったっけ?」
「しといてやるって!…って、えーとたしか、卓球・バスケ・サッカーに…あとバトミントンじゃなかったけ?」
「んー…じゃあ、卓球にでもするか。」
「卓球?」
「おう。昼前にあんま激しい運動とかしたくないからな。4限目腹空いて授業に集中できなくなったら嫌だし」
「それもそっか。じゃあ俺も卓球にする!ぜってぇ陽人に勝つからな!!」

 鳴海は体操着のズボンを握りしめ、宣戦布告するかのように声高高にそう宣言する。深い群青色の瞳には好戦的な光が宿っていた。見るからに負けん気の強さがひしひしと伝わってきて、こいつは本当に負けず嫌いだなと一人苦笑する。

「はいはい、楽しみにしとくよ」

 着替え終えた俺はトイレに向かうため鳴海にに背を向けるとひらひらと片手を振って教室を後にした。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語

紅林
BL
『桜田門学院高等学校』 日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。 そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語

劣等アルファは最強王子から逃げられない

BL
リュシアン・ティレルはアルファだが、オメガのフェロモンに気持ち悪くなる欠陥品のアルファ。そのことを周囲に隠しながら生活しているため、異母弟のオメガであるライモントに手ひどい態度をとってしまい、世間からの評判は悪い。 ある日、気分の悪さに逃げ込んだ先で、ひとりの王子につかまる・・・という話です。

百合豚、男子校に入る。

BL
百合をこよなく愛する男子高校生・眞辺恵。 母の歪んだ価値観により共学への進学を断たれ、彼が入学させられたのは―― 男同士の恋愛が“文化”として成立している、全寮制男子校《私立瑞嶺学園》だった。 この学園では、生徒会長は「抱かれたいランキング」で選ばれ、美貌こそが正義とされる世界。 それでも眞辺は決意する。 生徒会長になり、この学校を“共学”に変え、間近で百合を拝むことを。 立ちはだかるのは、顔面至上主義の学園制度、性に奔放すぎるイケメンな幼馴染、そして彼らに憧れ恋をする生徒たち。 さらに何故か、学園の人気者たちに次々と目をつけられてしまい――。 百合を拝むため男子校を変えようとする異端者が、歪んだ王道学園を改革する物語。

幼馴染みのハイスペックαから離れようとしたら、Ωに転化するほどの愛を示されたβの話。

叶崎みお
BL
平凡なβに生まれた千秋には、顔も頭も運動神経もいいハイスペックなαの幼馴染みがいる。 幼馴染みというだけでその隣にいるのがいたたまれなくなり、距離をとろうとするのだが、完璧なαとして周りから期待を集める幼馴染みαは「失敗できないから練習に付き合って」と千秋を頼ってきた。 大事な幼馴染みの願いならと了承すれば、「まずキスの練習がしたい」と言い出して──。 幼馴染みαの執着により、βから転化し後天性Ωになる話です。両片想いのハピエンです。 他サイト様にも投稿しております。

分厚いメガネ令息の非日常

餅粉
BL
「こいつは俺の女だ。手を出したらどうなるかわかるよな」 「シノ様……素敵!」 おかしい。おかしすぎる!恥ずかしくないのか?高位貴族が平民の女学生に俺の女ってしかもお前は婚約者いるだろうが!! その女学生の周りにはお慕いしているであろう貴族数名が立っていた。 「ジュリーが一番素敵だよ」 「そうだよ!ジュリーが一番可愛いし美人だし素敵だよ!!」 「……うん。ジュリーの方が…素敵」 ほんと何この状況、怖い!怖いすぎるぞ!あと妙にキモい 「先輩、私もおかしいと思います」 「だよな!」 これは真面目に学生生活を送ろうとする俺の日常のお話

どうせ全部、知ってるくせに。

楽川楽
BL
【腹黒美形×単純平凡】 親友と、飲み会の悪ふざけでキスをした。単なる罰ゲームだったのに、どうしてもあのキスが忘れられない…。 飲み会のノリでしたキスで、親友を意識し始めてしまった単純な受けが、まんまと腹黒攻めに捕まるお話。 ※fujossyさんの属性コンテスト『ノンケ受け』部門にて優秀賞をいただいた作品です。

ノリで付き合っただけなのに、別れてくれなくて詰んでる

cheeery
BL
告白23連敗中の高校二年生・浅海凪。失恋のショックと友人たちの悪ノリから、クラス一のモテ男で親友、久遠碧斗に勢いで「付き合うか」と言ってしまう。冗談で済むと思いきや、碧斗は「いいよ」とあっさり承諾し本気で付き合うことになってしまった。 「付き合おうって言ったのは凪だよね」 あの流れで本気だとは思わないだろおおお。 凪はなんとか碧斗に愛想を尽かされようと、嫌われよう大作戦を実行するが……?

処理中です...