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7 ノエルの葛藤
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朝から酷い気分だった。
魔術の使いすぎて身体は疲弊しているし、せめてもの回復をと自棄食いした甘味で胃はもたれているし、やり場のないストレスで浴びるように酒を飲み二日酔いで頭がガンガンするし、考えることが多すぎて一睡もできていない。
この後アイツの幸せいっぱいにニヤけきった面を見ると思うと吐き気がした。
今日は国のトップ7たちが揃い会議をする予定だ。
サボりたい気持ちは山々たが、No.3である自分はそうもいかずに重たい身体を引きずり、城へと向かった。
会議の会場は王の執務室。
時間ギリギリに扉をノックするとアダムのよく通る声が聞こえた。
「入ってくれ。」
扉を開けると、他のナンバーたちの姿はなかった。
広い部屋の中央で書類仕事に追われるアダムが顔を上げる。
「ジャックか。すまない、今日の会議は中止だ。」
「…なんかあったんすか?」
「ノエルが体調不良らしくてな。しばらく休みたいと連絡があった。あいつがいないと会議しても意味ないからな。」
「はぁ…。」
とりあえず、アイツのニヤけ面は拝まなくて済みそうだ。
それにしても体調不良とは。今頃幸せの絶頂にいますみたいな顔をしてダル絡みされると思っていたのに。
昨日のジャックが降らせた雨で風邪でもひいたのだろうか。
いいやアイツはそんなにヤワじゃない。
いずれにせよ、今は彼の顔を見たくない自分にとっては好都合だった。
「そうだ、君に頼みがある。」
そう言ってアダムは山積みの書類を掻き分けて、その中から一束抜き出した。
「この書類をノエルに届けてくれないか?今日の会議の内容なんたが…。重要機密だから一兵卒には頼めないし、他のトップ7たちも仕事が入っていてな。本当は俺が持っていきたいところだが…この通り書類に追われていて。君、今日は会議以外予定がないはずだろう。ついでにアイツの様子を見てきてくれ。」
「はぁ?なんで俺が…。会議がないなら帰って寝たい気分なんですがねぇ。」
「ジャック、これはお願いじゃない。命令だ。」
傲慢な王は勝ち気に微笑む。
「王の命令は絶対だ。」
ーーーーーーーーーーー
なんで俺がこんなことしないといけないんだ。
せっかくアイツの顔を見ないで済むと思ったのに。
ジャックは書類の束を小脇に抱え大きな溜息をつく。
ノエルの家は城からさほど遠くない。
町外れの閑静な湖の畔。
顔に似合わず繊細な彼は、静かな場所を好む。
ジャックはノエルの家の玄関をノックする。
応答がない。いつもならはーいとドタドタと大きな足音をさせながらすぐに扉を開くのに。
聞こえなかったのだろうか。
ジャックは再び少し乱暴にその扉を叩く。
しかし、反応がない。
書類を置いて帰りたい気分だったが、そうもいかない。
重要機密を誰の目にも触れる屋外になんて置いていけないし、アダムからノエルの様子を見てきてくれと頼まれている。
寝ているのだろうか。
ジャックは庭を抜けて家の後ろに回り込む。
深い色のカーテンが掛けられた窓。
そこは確かノエルの寝室のはずだ。
ジャックは控えめにその窓を叩く。
「おーい、ノエル。いるんでしょう?俺ですよ、俺。」
そう声をかければ、カーテンが少し揺れ、その隙間からノエルが顔を覗かせた。
「…帰ってくれ。」
「そうもいかねぇんですよ。こちとら王様命令でお前の様子見に行ってくれって言われてるんですわ。」
「…ほっといてくれよ。ジャックには関係ない。」
そう言ってカーテンが再び閉められる。
ノエルの子供みたいな態度に、さらに鬱憤がたまる。
「はぁ~~~?!兄貴分に向かっていい口のききかたですね。こちとら窓カチ割って無理矢理入ってもいいんですよ。それとも家ごと吹き飛ばしてやりましょうかねぇ?」
そう言って魔法の詠唱を始めると、慌てた様子のノエルが再びカーテンを開けた。
「ちょっ、待って待って、今玄関開けるから。」
「わかりゃいーんですよ。」
本当に吹き飛ばすわけねーだろバーカ。と思いながらこんな簡単な手に引っかかるノエルの単純さが逆に心配になる。
半ば強引に扉を開けさせると、ノエルは酷い顔色をして立っていた。
「調子どうですか…っていいわけないか。」
ん、と短い返事だけしてノエルはジャックを家に招き入れる。
何度も足を踏み入れている勝手知ったるノエルの家。
ジャックは迷うことなくリビングのソファに腰を下ろした。
「体調不良って聞いてたんですけど、風邪とかじゃなさそうですね。」
「身体は元気だよ、多分。」
「多分って…。」
ノエルはまるでミノムシのように頭までブランケットに包まりソファの上で膝を抱える。
その姿はまるで迷子の子供のようだった。
「…失恋した。」
「…はぁ?」
どういうことだ。
何かの間違いじゃないのか。
彼女は確かに昨日彼に抱かれに行ったはずなのに。
「アンジェラさん…彼氏いたみたい。」
「それ本人が言ったんですか?」
「ううん。でも…」
言葉を選ぶように、ノエルはブランケットの中で伏せた視線を泳がせる。
「キスマークがあって。首んとこ。」
キスマーク。
以前自分がアンジェラのうなじにつけたものだろう。
なんだ、それでコイツは怖気づいたのか。
図らずしも彼女の思い通りに事が進まなかったことに、ジャックは心の中で安堵した。
こんな愉快な話があるか。ざまぁみやかれ。
「…ふーん。ご愁傷様です。」
ジャックはニヤけた口元を隠すように平静を装う。
「俺…アンジェラさんのこと何も知らないんだな、って思って…。アンジェラさん、コーヒー飲む時砂糖もミルクも使わないんだ。でも俺きっと甘いのが好きなのかな、って勝手に思って砂糖もミルクも付けて。…彼氏のことも。俺全然知らなくて…。というか知ろうともしてなくて…。聞き出すタイミングとか、きっとどっかであったはずなのに…。聞かなくて…聞こうともしてなくて…。そんなことすら知らなかったんだな、って。」
ポツリポツリとノエルが語り出す。
ジャックはただ静かに耳を傾けていた。
「昨日すごい雨で…。アンジェラさんびしょ濡れで…。つい、ウチ来る?って聞いてしまって…。そんでアンジェラさんもついてきてくれて…。抱きつかれて…。…俺、ちょっと期待しちゃって…。風呂貸して、ドライヤーさせてくれて…そこで、見ちゃって…。」
「キスマーク?」
「…うん。」
ノエル自身も考えが纏まっていないのか、取り留めのない言葉を紡ぐ。
「彼氏いたんだ、ってショックで…。ちょっと期待した分、余計キちゃって。…ヤバいじゃん、これ浮気じゃん、って。どうしよ、ってなってる時に、アンジェラさんが…その…キス、してこようとして…それで…。」
「それでキスしたと?」
ノエルはフルフルと力無く首を降る。
「…全力で拒否った。」
「…すればよかったじゃないですか。彼女もそれを望んだんでしょう?」
「そうなのかな…。望んでくれたのかな…。でもダメだろ。彼氏、いるんだし。そんなの絶対ダメだよ。」
「お前は潔癖ですね。ホントに好きなら寝取るくらいしたらいいのに。」
「無理だよ。俺、そんなのできない。」
ノエルは昔から潔癖で繊細な男だ。
良く言えば純粋。悪く言えば愚直。
いつだって綺麗で正しい道しか見えていないし、見ようともしない。
彼が自分とアンジェラの関係を知ったらどう思うのだろう。
自分で言うのもどうかと思うが、自分とアンジェラはコイツには理解できない爛れた関係だと思う。
ありえない、最低だ。とでも言うのだろうか。
コイツには口が裂けても言ってやらないけれど。
「でもさぁ…。」
言いかけて、ノエルは口を噤む。
ブランケット越しに自身をキュッと抱きしめ、いじらしげに視線を落とす。
そして指先で自らの唇をなぞり、再び口を開く。
「しちゃったんだ、キス。」
「そう、ですか。」
ジャックはできるだけ平静を装って答える。
「こんなのダメだって拒否ったのに。なんか…いつの間にか…自分から、しちゃったんだ。なんでしたのかも…わからなくて。気付いたらキスしてて…。アンジェラさんのこと見てたら頭ボーっとして、わけわかんなくなって、それで…。」
あぁ、これは使ったな。
混乱しているノエルを尻目に、ジャックは1人で納得した。
彼女の能力の1つ。それにノエルは惑わされたのだろう。
ああ、可哀想に。
彼は泥沼へ一歩足を踏み入れたのだ。
遠目で彼女を見て片想いをしているだけならよかったのに。
ここから先は泥沼だ。それは自分がよく知っている。
「それで、その先もしたんでしょう?」
「その先…。」
何かを思い出したようにノエルはブランケットに顔を埋める。
「してないよ。…押し倒しただけ。」
「そこまでしておいて、それはないでしょう。」
ブランケットの中からノエルの上目遣いが覗く。
「…笑わない?」
「笑いませんよ。」
「その………。鼻血、が…出て…」
「はぁ?」
思わぬ言葉に間の抜けた声が出た。
「ぷっ、くくくっ。押し倒しただけで鼻血って!ダサすぎる…いや面白すぎるでしょ!ガキかよ!」
「もー!笑わないって言ったじゃん!」
「いや、これが笑わずにいられるかってんですよ!」
「…アンジェラさんにも笑われた。もー、俺本当ダサい。最悪…。」
よほど恥ずかしかったのか、ノエルは若干涙目で唇を尖らせる。
いい歳した男が女を押し倒しただけで鼻血を出すなんでどこのコメディだ。
ジャックは腹がよじれるほど笑って、そして安心した。
コイツに彼女は抱けない。
「よし、自棄酒しましょ、自棄酒!」
「なんでお前そんなに楽しそうなんだよ…。」
「これが飲まずにいられるかってんですよ!」
そう言ってジャックは立ち上がりキッチンの戸棚を漁る。
普段ほとんど酒を飲まない彼は、貰い物の酒をそこに隠していることをジャックは知っていた。
さすが天下のNo.2様。貰い物の酒も1級品が揃っている。
目ぼしい酒とグラスを見繕ってジャックはソファへと戻った。
栓を開けグラスになみなみと酒を注ぐ。
「乾杯しましょ、ほらグラス持って。」
ジャックは気乗りしていないノエルの手に無理矢理グラスを握らせる。
「乾杯って…何に乾杯するんだよ。」
「ノエルの失恋記念に~!はい、かんぱ~い!」
「も~お前本当性格悪い…。」
そう言いながらもノエルは乾杯に付き合ってくれる。
カランというグラスがぶつかる音の後に琥珀色の酒を口に含む。
芳醇な香りが広がる。さすが1級品の酒はそこらの安酒とは違うな、とジャックは思った。
ノエルはというとグラスに口を付けずに、注がれた琥珀を揺らしてただ眺めていた。
「失礼ですね。慰めてやってんですよ。浴びるほど飲んでそんな女忘れちゃいましょ。ほら、飲んで飲んで。」
「…そんなの無理だよ…。」
「俺何度もいいましたよね?あの女はやめておけって。あの女は最低最悪のオンナですよ。」
「なんでそう言えんの。」
「…カンですよ、カン。ああいうタイプはたちが悪い。そう昔から相場は決まってるんです。だいたい彼氏いるのにお前に迫ったんでしょ?もし何らかの奇跡が起こって付き合えたとしても、また他の男に浮気されるのが関の山ですよ。これに懲りたらスッパリ諦めて次行ったほうがお前のためですよ。」
そうだ、お前のためだ。
お前みたいに純粋な男にあの女は似合わない。
それ以上足を踏み入れると、後はこの泥沼に沈んでいくだけだ。
彼女への独占欲。彼への友情。自分の保身。
どれを取ってもこの選択が1番いいのだ。
昔から何度も彼の恋の相談に乗りつつ、時には背中を押して、時には窘めて、諦めるように諭してきた。
「そんな簡単に諦められねぇよ。」
「どうしてです?」
「ずっと…好きだったし…。」
「どうしてずっと好きだったんですか?」
「どうしてって…。」
ノエルは天井を見つめて思案に耽る。
視線が宙を舞い、伏せられる。
長い沈黙の後、再びその瞳が開いた。
「…あれ、俺なんでアンジェラさんのこと好きなんだろう。」
彼女の能力に当てられると否応なしに彼女に心奪われる。
そこに理由などないのだ。
ただ彼女への好意だけが刻まれる。
彼女の能力に強く当てられた者、あるいは感受性が豊かすぎる者がその能力の影響を強く受ける。
ノエルはおそらく後者だろう。
そして、昨日彼女の意思でさらにその能力を強く当てられた。
「お前は恋に恋してるだけですよ。本当は彼女のこと好きでもなんでもないんです。ただ彼女が好きな自分に酔っているだけ。」
「…そんなことない。…本当に好きなんだ。好きで好きでたまらない。それは、嘘じゃないんだ。」
ノエル自身も混乱しているのだろう。
確かめるように、自分に言い聞かせるようにノエルは呟く。
「あーもうわけわかんねぇ。」
そう言って、思考を放棄するようにノエルはグラスの中の酒を一気に飲み干した。
そしてドン、と音を立ててグラスをテーブルに置き、ん、と空のグラスを指差す。
注げということだろう。
「おー、いい飲みっぷりじゃねぇですか。ほらもっと飲め飲め。んで、全部忘れちまえ。」
ジャックはノエルのグラスに酒を注ぐ。
ノエルは満たされたグラスを手に取り、グイッと半分ほどを一気に飲み込んだ。
煽ったのは自分だが、あまりのペースの早さにジャックは少し心配になる。
ノエルはあまり酒が強くない。
人前で滅多に酒を飲まないのもそれが理由だ。
そして彼は、酒に飲まれるタイプだ。
無言で何度かグラスを空にした後、ぐすっと鼻を啜る音が聞こえた。
「彼氏いるとか聞いてないし…。なんでキスしようとしてきたの…。もー、アンジェラさん俺のことどー思ってんの…わけわかんねぇ~…。」
瞳いっぱいに涙を溜めて、ノエルは尚も酒を煽る。
そうだ、コイツは泣き上戸だった。
「てか彼氏いるの知っててキスした俺最低じゃない…?も~ほんと馬鹿…。なんてことしちまったんだ…。最低最低最低…。最低過ぎて死にたい…。」
「はいはい、百回くらい死んどいた方がいいですよ。」
「…彼氏いるから諦めないといけないのに…それもできないし…。かと言って奪うなんてそんなことできないし…。も~やだぁ~…。彼氏ってどこのどいつだよ~…。絶対俺の方が好きなのに~…。」
「おーおー。そうですねぇ。」
隣で適当に相槌打ってる奴がそうだとは口が裂けても言えない。
正確に言えば彼氏ではないのだけれど。
いや複数いる彼氏のうちの1人と言った方が正しいのか。
彼女との関係はどんな名前が付くのかなんて自分でもわからなかった。
「それに俺…キス、初めてだったのに…。こんなファーストキス辛すぎるじゃん…。キスってもっと幸せなものだと思ってたのに…。」
「はぁ?初めて?その歳で?」
「そーだよ、悪いかよ。」
「お前、一途にも程があるでしょ。天下のNo.2様の価値、わかってないわけじゃないんでしょう?」
強い者がモテるのは動物界でも人間界でも同じだ。
現にNo.3である自分にも女性からの誘いがないわけではない。
遊び相手に不自由しないくらいには声がかかる。
自分よりもナンバーが上で高身長、加えて顔もいいし頭脳も賢い。
そんな彼がモテないわけはないのだ。
彼を狙っている女性は案外多い。
「…そういう誘いは全部断ってる。俺、アンジェラさんじゃないと嫌だし。アンジェラさん以外どうでもいいし。」
「わーお。今の発言、世の女どもが泣きますよ。」
「…失言した。今のはなかったことにして。」
酔ってぴーぴー泣いていても一応この国のNo.2という自覚はあるらしい。
上に立つものとして、国民を蔑ろにする発言はご法度だ。
ジャックはグラスを傾ける。
「お前は彼女を美化しすぎなんですよ。一回くらい他の女抱いてみたらどうです?相手には困らないでしょう。案外こんなもんか、ってなりますよ。」
「絶対嫌だ。…てか、お前そんなことしてんの?」
「さぁ?ご想像にお任せします。」
ノエルは心底軽蔑したような視線をジャックに向ける。
「とにかく、彼氏持ちの女なんてお前の倫理に反するんでしょう?そんなうじうじウダウダしてねーでさっさと諦めて次いきゃいーじゃないですか。それ以外の選択肢、お前の中じゃ無しなんでしょう?」
「そう、だけど…。」
本当は気づいているんだろう?
目を覚ませ。まだ、引き返せるうちに。
忘れてしまえ。そんな操られた感情なんて。
祈りにも似た思いを隠してジャックは諭す。
「追うだけ無駄ですよ。100%報われない。さっさと諦めちまえ。」
「わかってる…。そうするのがいいって頭ではちゃんとわかってるんだけど…。でも、やっぱり俺、アンジェラさんが好きだよ。諦められないんだ。アンジェラさんじゃないとダメなんだ。」
ほろりと、ノエルの頬に一粒の涙が伝う。
馬鹿な男だと思った。
同時に、自分も彼と同じように馬鹿な男なのだと悟った。
彼の気持ちは痛いほどよくわかる。
彼女への自分の愛は、彼女の能力によるよるものか、はたまた自分の本心からか、正直なところもうよくわからない。
キッカケは確かに彼女の能力に当てられたからだ。
そこからズルズルと抜け出せない泥沼にハマっている。
もし彼女が自分への魅了を解くとして、果たして自分はそれを望むだろうか。
答えはNOだ。キッカケが作られた感情だとしても、今の自分の彼女への愛は本物なのだ。
彼女と過ごした時間も、触れた体温もまがいものなどではない。自分は確かに彼女を愛している。
他人にとやかく言われたとて、到底諦めきれるものではない。
目の前の男も、きっと同じなのだろう。
ジャックは大きな溜息をつく。
「今日は朝まで飲み明かしましょう。幸いお前の家にはいい酒たっぷり揃ってますからね。全部カラにして泥酔して寝て起きたら…晴れて全てがどうでもよくなるくらいのえげつねぇ二日酔いですよ。」
「これこそ酒覚えたてのガキがすることだろ。一応俺達国のトップ7なんだけど…。」
「いいじゃないですか、たまには。お前、大人ぶってても中身はただのガキですし。背伸びばっかじゃ疲れるでしょう?たまには子供に戻って悪い遊びしてもいいと思いますけどね。誰に迷惑かけるわけでもないし。」
「No.2が連日休むこと自体、国にとって大迷惑な気がするんだけど…。」
「そんなことねぇですよ。お前は少し働きすぎです。お前も人間なんだから、たまには心も身体も休める時間を作らないとね。」
「さぼってばっかで何してるかわからないお前に言われたくないんだけど。」
「ははっ、ちがいねぇ。」
こうして2人は日が暮れて、朝が来るまで酒を飲み明かした。
魔術の使いすぎて身体は疲弊しているし、せめてもの回復をと自棄食いした甘味で胃はもたれているし、やり場のないストレスで浴びるように酒を飲み二日酔いで頭がガンガンするし、考えることが多すぎて一睡もできていない。
この後アイツの幸せいっぱいにニヤけきった面を見ると思うと吐き気がした。
今日は国のトップ7たちが揃い会議をする予定だ。
サボりたい気持ちは山々たが、No.3である自分はそうもいかずに重たい身体を引きずり、城へと向かった。
会議の会場は王の執務室。
時間ギリギリに扉をノックするとアダムのよく通る声が聞こえた。
「入ってくれ。」
扉を開けると、他のナンバーたちの姿はなかった。
広い部屋の中央で書類仕事に追われるアダムが顔を上げる。
「ジャックか。すまない、今日の会議は中止だ。」
「…なんかあったんすか?」
「ノエルが体調不良らしくてな。しばらく休みたいと連絡があった。あいつがいないと会議しても意味ないからな。」
「はぁ…。」
とりあえず、アイツのニヤけ面は拝まなくて済みそうだ。
それにしても体調不良とは。今頃幸せの絶頂にいますみたいな顔をしてダル絡みされると思っていたのに。
昨日のジャックが降らせた雨で風邪でもひいたのだろうか。
いいやアイツはそんなにヤワじゃない。
いずれにせよ、今は彼の顔を見たくない自分にとっては好都合だった。
「そうだ、君に頼みがある。」
そう言ってアダムは山積みの書類を掻き分けて、その中から一束抜き出した。
「この書類をノエルに届けてくれないか?今日の会議の内容なんたが…。重要機密だから一兵卒には頼めないし、他のトップ7たちも仕事が入っていてな。本当は俺が持っていきたいところだが…この通り書類に追われていて。君、今日は会議以外予定がないはずだろう。ついでにアイツの様子を見てきてくれ。」
「はぁ?なんで俺が…。会議がないなら帰って寝たい気分なんですがねぇ。」
「ジャック、これはお願いじゃない。命令だ。」
傲慢な王は勝ち気に微笑む。
「王の命令は絶対だ。」
ーーーーーーーーーーー
なんで俺がこんなことしないといけないんだ。
せっかくアイツの顔を見ないで済むと思ったのに。
ジャックは書類の束を小脇に抱え大きな溜息をつく。
ノエルの家は城からさほど遠くない。
町外れの閑静な湖の畔。
顔に似合わず繊細な彼は、静かな場所を好む。
ジャックはノエルの家の玄関をノックする。
応答がない。いつもならはーいとドタドタと大きな足音をさせながらすぐに扉を開くのに。
聞こえなかったのだろうか。
ジャックは再び少し乱暴にその扉を叩く。
しかし、反応がない。
書類を置いて帰りたい気分だったが、そうもいかない。
重要機密を誰の目にも触れる屋外になんて置いていけないし、アダムからノエルの様子を見てきてくれと頼まれている。
寝ているのだろうか。
ジャックは庭を抜けて家の後ろに回り込む。
深い色のカーテンが掛けられた窓。
そこは確かノエルの寝室のはずだ。
ジャックは控えめにその窓を叩く。
「おーい、ノエル。いるんでしょう?俺ですよ、俺。」
そう声をかければ、カーテンが少し揺れ、その隙間からノエルが顔を覗かせた。
「…帰ってくれ。」
「そうもいかねぇんですよ。こちとら王様命令でお前の様子見に行ってくれって言われてるんですわ。」
「…ほっといてくれよ。ジャックには関係ない。」
そう言ってカーテンが再び閉められる。
ノエルの子供みたいな態度に、さらに鬱憤がたまる。
「はぁ~~~?!兄貴分に向かっていい口のききかたですね。こちとら窓カチ割って無理矢理入ってもいいんですよ。それとも家ごと吹き飛ばしてやりましょうかねぇ?」
そう言って魔法の詠唱を始めると、慌てた様子のノエルが再びカーテンを開けた。
「ちょっ、待って待って、今玄関開けるから。」
「わかりゃいーんですよ。」
本当に吹き飛ばすわけねーだろバーカ。と思いながらこんな簡単な手に引っかかるノエルの単純さが逆に心配になる。
半ば強引に扉を開けさせると、ノエルは酷い顔色をして立っていた。
「調子どうですか…っていいわけないか。」
ん、と短い返事だけしてノエルはジャックを家に招き入れる。
何度も足を踏み入れている勝手知ったるノエルの家。
ジャックは迷うことなくリビングのソファに腰を下ろした。
「体調不良って聞いてたんですけど、風邪とかじゃなさそうですね。」
「身体は元気だよ、多分。」
「多分って…。」
ノエルはまるでミノムシのように頭までブランケットに包まりソファの上で膝を抱える。
その姿はまるで迷子の子供のようだった。
「…失恋した。」
「…はぁ?」
どういうことだ。
何かの間違いじゃないのか。
彼女は確かに昨日彼に抱かれに行ったはずなのに。
「アンジェラさん…彼氏いたみたい。」
「それ本人が言ったんですか?」
「ううん。でも…」
言葉を選ぶように、ノエルはブランケットの中で伏せた視線を泳がせる。
「キスマークがあって。首んとこ。」
キスマーク。
以前自分がアンジェラのうなじにつけたものだろう。
なんだ、それでコイツは怖気づいたのか。
図らずしも彼女の思い通りに事が進まなかったことに、ジャックは心の中で安堵した。
こんな愉快な話があるか。ざまぁみやかれ。
「…ふーん。ご愁傷様です。」
ジャックはニヤけた口元を隠すように平静を装う。
「俺…アンジェラさんのこと何も知らないんだな、って思って…。アンジェラさん、コーヒー飲む時砂糖もミルクも使わないんだ。でも俺きっと甘いのが好きなのかな、って勝手に思って砂糖もミルクも付けて。…彼氏のことも。俺全然知らなくて…。というか知ろうともしてなくて…。聞き出すタイミングとか、きっとどっかであったはずなのに…。聞かなくて…聞こうともしてなくて…。そんなことすら知らなかったんだな、って。」
ポツリポツリとノエルが語り出す。
ジャックはただ静かに耳を傾けていた。
「昨日すごい雨で…。アンジェラさんびしょ濡れで…。つい、ウチ来る?って聞いてしまって…。そんでアンジェラさんもついてきてくれて…。抱きつかれて…。…俺、ちょっと期待しちゃって…。風呂貸して、ドライヤーさせてくれて…そこで、見ちゃって…。」
「キスマーク?」
「…うん。」
ノエル自身も考えが纏まっていないのか、取り留めのない言葉を紡ぐ。
「彼氏いたんだ、ってショックで…。ちょっと期待した分、余計キちゃって。…ヤバいじゃん、これ浮気じゃん、って。どうしよ、ってなってる時に、アンジェラさんが…その…キス、してこようとして…それで…。」
「それでキスしたと?」
ノエルはフルフルと力無く首を降る。
「…全力で拒否った。」
「…すればよかったじゃないですか。彼女もそれを望んだんでしょう?」
「そうなのかな…。望んでくれたのかな…。でもダメだろ。彼氏、いるんだし。そんなの絶対ダメだよ。」
「お前は潔癖ですね。ホントに好きなら寝取るくらいしたらいいのに。」
「無理だよ。俺、そんなのできない。」
ノエルは昔から潔癖で繊細な男だ。
良く言えば純粋。悪く言えば愚直。
いつだって綺麗で正しい道しか見えていないし、見ようともしない。
彼が自分とアンジェラの関係を知ったらどう思うのだろう。
自分で言うのもどうかと思うが、自分とアンジェラはコイツには理解できない爛れた関係だと思う。
ありえない、最低だ。とでも言うのだろうか。
コイツには口が裂けても言ってやらないけれど。
「でもさぁ…。」
言いかけて、ノエルは口を噤む。
ブランケット越しに自身をキュッと抱きしめ、いじらしげに視線を落とす。
そして指先で自らの唇をなぞり、再び口を開く。
「しちゃったんだ、キス。」
「そう、ですか。」
ジャックはできるだけ平静を装って答える。
「こんなのダメだって拒否ったのに。なんか…いつの間にか…自分から、しちゃったんだ。なんでしたのかも…わからなくて。気付いたらキスしてて…。アンジェラさんのこと見てたら頭ボーっとして、わけわかんなくなって、それで…。」
あぁ、これは使ったな。
混乱しているノエルを尻目に、ジャックは1人で納得した。
彼女の能力の1つ。それにノエルは惑わされたのだろう。
ああ、可哀想に。
彼は泥沼へ一歩足を踏み入れたのだ。
遠目で彼女を見て片想いをしているだけならよかったのに。
ここから先は泥沼だ。それは自分がよく知っている。
「それで、その先もしたんでしょう?」
「その先…。」
何かを思い出したようにノエルはブランケットに顔を埋める。
「してないよ。…押し倒しただけ。」
「そこまでしておいて、それはないでしょう。」
ブランケットの中からノエルの上目遣いが覗く。
「…笑わない?」
「笑いませんよ。」
「その………。鼻血、が…出て…」
「はぁ?」
思わぬ言葉に間の抜けた声が出た。
「ぷっ、くくくっ。押し倒しただけで鼻血って!ダサすぎる…いや面白すぎるでしょ!ガキかよ!」
「もー!笑わないって言ったじゃん!」
「いや、これが笑わずにいられるかってんですよ!」
「…アンジェラさんにも笑われた。もー、俺本当ダサい。最悪…。」
よほど恥ずかしかったのか、ノエルは若干涙目で唇を尖らせる。
いい歳した男が女を押し倒しただけで鼻血を出すなんでどこのコメディだ。
ジャックは腹がよじれるほど笑って、そして安心した。
コイツに彼女は抱けない。
「よし、自棄酒しましょ、自棄酒!」
「なんでお前そんなに楽しそうなんだよ…。」
「これが飲まずにいられるかってんですよ!」
そう言ってジャックは立ち上がりキッチンの戸棚を漁る。
普段ほとんど酒を飲まない彼は、貰い物の酒をそこに隠していることをジャックは知っていた。
さすが天下のNo.2様。貰い物の酒も1級品が揃っている。
目ぼしい酒とグラスを見繕ってジャックはソファへと戻った。
栓を開けグラスになみなみと酒を注ぐ。
「乾杯しましょ、ほらグラス持って。」
ジャックは気乗りしていないノエルの手に無理矢理グラスを握らせる。
「乾杯って…何に乾杯するんだよ。」
「ノエルの失恋記念に~!はい、かんぱ~い!」
「も~お前本当性格悪い…。」
そう言いながらもノエルは乾杯に付き合ってくれる。
カランというグラスがぶつかる音の後に琥珀色の酒を口に含む。
芳醇な香りが広がる。さすが1級品の酒はそこらの安酒とは違うな、とジャックは思った。
ノエルはというとグラスに口を付けずに、注がれた琥珀を揺らしてただ眺めていた。
「失礼ですね。慰めてやってんですよ。浴びるほど飲んでそんな女忘れちゃいましょ。ほら、飲んで飲んで。」
「…そんなの無理だよ…。」
「俺何度もいいましたよね?あの女はやめておけって。あの女は最低最悪のオンナですよ。」
「なんでそう言えんの。」
「…カンですよ、カン。ああいうタイプはたちが悪い。そう昔から相場は決まってるんです。だいたい彼氏いるのにお前に迫ったんでしょ?もし何らかの奇跡が起こって付き合えたとしても、また他の男に浮気されるのが関の山ですよ。これに懲りたらスッパリ諦めて次行ったほうがお前のためですよ。」
そうだ、お前のためだ。
お前みたいに純粋な男にあの女は似合わない。
それ以上足を踏み入れると、後はこの泥沼に沈んでいくだけだ。
彼女への独占欲。彼への友情。自分の保身。
どれを取ってもこの選択が1番いいのだ。
昔から何度も彼の恋の相談に乗りつつ、時には背中を押して、時には窘めて、諦めるように諭してきた。
「そんな簡単に諦められねぇよ。」
「どうしてです?」
「ずっと…好きだったし…。」
「どうしてずっと好きだったんですか?」
「どうしてって…。」
ノエルは天井を見つめて思案に耽る。
視線が宙を舞い、伏せられる。
長い沈黙の後、再びその瞳が開いた。
「…あれ、俺なんでアンジェラさんのこと好きなんだろう。」
彼女の能力に当てられると否応なしに彼女に心奪われる。
そこに理由などないのだ。
ただ彼女への好意だけが刻まれる。
彼女の能力に強く当てられた者、あるいは感受性が豊かすぎる者がその能力の影響を強く受ける。
ノエルはおそらく後者だろう。
そして、昨日彼女の意思でさらにその能力を強く当てられた。
「お前は恋に恋してるだけですよ。本当は彼女のこと好きでもなんでもないんです。ただ彼女が好きな自分に酔っているだけ。」
「…そんなことない。…本当に好きなんだ。好きで好きでたまらない。それは、嘘じゃないんだ。」
ノエル自身も混乱しているのだろう。
確かめるように、自分に言い聞かせるようにノエルは呟く。
「あーもうわけわかんねぇ。」
そう言って、思考を放棄するようにノエルはグラスの中の酒を一気に飲み干した。
そしてドン、と音を立ててグラスをテーブルに置き、ん、と空のグラスを指差す。
注げということだろう。
「おー、いい飲みっぷりじゃねぇですか。ほらもっと飲め飲め。んで、全部忘れちまえ。」
ジャックはノエルのグラスに酒を注ぐ。
ノエルは満たされたグラスを手に取り、グイッと半分ほどを一気に飲み込んだ。
煽ったのは自分だが、あまりのペースの早さにジャックは少し心配になる。
ノエルはあまり酒が強くない。
人前で滅多に酒を飲まないのもそれが理由だ。
そして彼は、酒に飲まれるタイプだ。
無言で何度かグラスを空にした後、ぐすっと鼻を啜る音が聞こえた。
「彼氏いるとか聞いてないし…。なんでキスしようとしてきたの…。もー、アンジェラさん俺のことどー思ってんの…わけわかんねぇ~…。」
瞳いっぱいに涙を溜めて、ノエルは尚も酒を煽る。
そうだ、コイツは泣き上戸だった。
「てか彼氏いるの知っててキスした俺最低じゃない…?も~ほんと馬鹿…。なんてことしちまったんだ…。最低最低最低…。最低過ぎて死にたい…。」
「はいはい、百回くらい死んどいた方がいいですよ。」
「…彼氏いるから諦めないといけないのに…それもできないし…。かと言って奪うなんてそんなことできないし…。も~やだぁ~…。彼氏ってどこのどいつだよ~…。絶対俺の方が好きなのに~…。」
「おーおー。そうですねぇ。」
隣で適当に相槌打ってる奴がそうだとは口が裂けても言えない。
正確に言えば彼氏ではないのだけれど。
いや複数いる彼氏のうちの1人と言った方が正しいのか。
彼女との関係はどんな名前が付くのかなんて自分でもわからなかった。
「それに俺…キス、初めてだったのに…。こんなファーストキス辛すぎるじゃん…。キスってもっと幸せなものだと思ってたのに…。」
「はぁ?初めて?その歳で?」
「そーだよ、悪いかよ。」
「お前、一途にも程があるでしょ。天下のNo.2様の価値、わかってないわけじゃないんでしょう?」
強い者がモテるのは動物界でも人間界でも同じだ。
現にNo.3である自分にも女性からの誘いがないわけではない。
遊び相手に不自由しないくらいには声がかかる。
自分よりもナンバーが上で高身長、加えて顔もいいし頭脳も賢い。
そんな彼がモテないわけはないのだ。
彼を狙っている女性は案外多い。
「…そういう誘いは全部断ってる。俺、アンジェラさんじゃないと嫌だし。アンジェラさん以外どうでもいいし。」
「わーお。今の発言、世の女どもが泣きますよ。」
「…失言した。今のはなかったことにして。」
酔ってぴーぴー泣いていても一応この国のNo.2という自覚はあるらしい。
上に立つものとして、国民を蔑ろにする発言はご法度だ。
ジャックはグラスを傾ける。
「お前は彼女を美化しすぎなんですよ。一回くらい他の女抱いてみたらどうです?相手には困らないでしょう。案外こんなもんか、ってなりますよ。」
「絶対嫌だ。…てか、お前そんなことしてんの?」
「さぁ?ご想像にお任せします。」
ノエルは心底軽蔑したような視線をジャックに向ける。
「とにかく、彼氏持ちの女なんてお前の倫理に反するんでしょう?そんなうじうじウダウダしてねーでさっさと諦めて次いきゃいーじゃないですか。それ以外の選択肢、お前の中じゃ無しなんでしょう?」
「そう、だけど…。」
本当は気づいているんだろう?
目を覚ませ。まだ、引き返せるうちに。
忘れてしまえ。そんな操られた感情なんて。
祈りにも似た思いを隠してジャックは諭す。
「追うだけ無駄ですよ。100%報われない。さっさと諦めちまえ。」
「わかってる…。そうするのがいいって頭ではちゃんとわかってるんだけど…。でも、やっぱり俺、アンジェラさんが好きだよ。諦められないんだ。アンジェラさんじゃないとダメなんだ。」
ほろりと、ノエルの頬に一粒の涙が伝う。
馬鹿な男だと思った。
同時に、自分も彼と同じように馬鹿な男なのだと悟った。
彼の気持ちは痛いほどよくわかる。
彼女への自分の愛は、彼女の能力によるよるものか、はたまた自分の本心からか、正直なところもうよくわからない。
キッカケは確かに彼女の能力に当てられたからだ。
そこからズルズルと抜け出せない泥沼にハマっている。
もし彼女が自分への魅了を解くとして、果たして自分はそれを望むだろうか。
答えはNOだ。キッカケが作られた感情だとしても、今の自分の彼女への愛は本物なのだ。
彼女と過ごした時間も、触れた体温もまがいものなどではない。自分は確かに彼女を愛している。
他人にとやかく言われたとて、到底諦めきれるものではない。
目の前の男も、きっと同じなのだろう。
ジャックは大きな溜息をつく。
「今日は朝まで飲み明かしましょう。幸いお前の家にはいい酒たっぷり揃ってますからね。全部カラにして泥酔して寝て起きたら…晴れて全てがどうでもよくなるくらいのえげつねぇ二日酔いですよ。」
「これこそ酒覚えたてのガキがすることだろ。一応俺達国のトップ7なんだけど…。」
「いいじゃないですか、たまには。お前、大人ぶってても中身はただのガキですし。背伸びばっかじゃ疲れるでしょう?たまには子供に戻って悪い遊びしてもいいと思いますけどね。誰に迷惑かけるわけでもないし。」
「No.2が連日休むこと自体、国にとって大迷惑な気がするんだけど…。」
「そんなことねぇですよ。お前は少し働きすぎです。お前も人間なんだから、たまには心も身体も休める時間を作らないとね。」
「さぼってばっかで何してるかわからないお前に言われたくないんだけど。」
「ははっ、ちがいねぇ。」
こうして2人は日が暮れて、朝が来るまで酒を飲み明かした。
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