8 / 49
黒天使の動向
終わりなき訓練
しおりを挟む
ラフィアが治安部隊に連行されている同じ時刻。
黒天使が移動の際に使用する戦艦アルシエルの内部で、コンソーラはタオルと水筒を持って廊下を歩いていた。
修行部屋の扉の前に立つと、コンソーラは扉をノックする。
「ベリルさん、入りますよぉ」
コンソーラはドアノブに手を当て、ゆっくりと扉を開く。
が、その瞬間、ドクロの幻影が迫ってきて、コンソーラは慌てて扉をしめた。
直後に扉に強い衝撃が走る。
「悪ぃ悪ぃ! 大丈夫か?」
再度扉が開くと、ベリルが右手を上げて謝った。
ベリルは呪文の修行をしており、今放った幻影は攻撃呪文の一種である。
「私は平気です。それよりベリルさんの方が汗びっしょりですよ」
「おっ、サンキューな」
コンソーラはタオルをベリルに差し出した。ベリルはタオルを受け取り、顔や体を拭く。
「あのぉ、ベリルさん」
ベリルは手を止めコンソーラの顔を見る。
「良かったらお話ししませんかぁ? 修行の途中なら後で良いですけど」
「修行も一区切りついたから良いぜ」
コンソーラはもじもじしながら口走ると、ベリルは少し笑って歓迎するように言った。
部屋の中はベリルの呪文で壁が壊れたり、焦げてたりしていた。
コンソーラは臭いをかぎ、表情を曇らせる。
「毒の呪文を練習してましたか?」
コンソーラは訊ねる。コンソーラは臭いで呪文を識別できるのだ。
「してたぜ、だからどうした」
「駄目ですよぉ、異常呪文使ったりしたら!」
コンソーラは両手を握って怒った。
黒天使は攻撃呪文に加え、毒、しびれ、暗闇、石化等の体に異変を起こす呪文が使える。
黒天使にしか使用できず。一度かかるとラビエス草という薬草でしか治せない。
コンソーラや天使が使う癒しの呪文が効かないのだ。
「ちゃんとラビエス草は持ってるし、大丈夫だよ」
ベリルは腰に携えている煎じたラビエス草入りの小さな瓶を見せた。
瓶には異常や破壊から守る呪文が施されている。
「そういう問題ではないですよぉ! ベリルさんはまだ完全に魔力が回復してないんですよ?」
コンソーラは心配するような目付きだった。異常呪文は魔力を大幅に消耗するため乱発はできない。
コンソーラの癒しの呪文は怪我は治っても、魔力は回復しない欠点がある。
自然回復の場合は時間がかかるので、そんな中修行でも異常呪文を使用すると、回復が遅くなる。
「回復なんて待ってられっかよ、オレは強くなりたいんだ」
「そうですけどぉ……」
「心配しなくても、後でアルマロス草飲むよ、ってか水筒くれよ、喉渇いた」
コンソーラはタオルに続いてベリルに水筒を手渡した。アルマロス草とは体力・魔力を回復させる薬草である。
苦いがその分効くのが早い。
黒天使の回復は主にアルマロス草を使用している。
ベリルは水筒の水を飲むと、腕で口を拭った。
「つーか、オレの事より自分の心配しろよ」
「何でですか?」
「オマエだって戦わないとも限らないからな、これからの事を考えるとなおさらだ」
「戦う」と聞き、コンソーラの表情は青ざめる。
コンソーラは性格上、戦闘が苦手で天使と戦うことが難しい。
元にコンソーラは一人の天使に追いかけ回され、他の黒天使から馬鹿にされたことがある。
「私には無理ですよぉ」
「無理って決めつけるな、オレが稽古つけてやるよ」
「でも、ベリルさん……」
「異常呪文は使わない、攻撃呪文のみを使う、だから今から稽古はするぞ」
ベリルは何がなんでも、コンソーラに戦闘の訓練をさせたいのだ。
「わ……分かりましたぁ」
コンソーラは渋々返事をした。
ベリルは黒い翼を羽ばたかせ、宙に浮かぶ。
「じゃあ手始めに炎の呪文を放って来い、本気でやれよ!」
「は……はぃぃ」
コンソーラは不安混じりに言った。
ベリルとは長い付き合いで、時々こうして稽古をするが乗り気はしない。
コンソーラは黒い翼を広げて手に意識を集中させた。手には小さな炎の玉が現れ、コンソーラは炎の玉をベリル目掛けて投げる。
ベリルは逃げることなく炎の玉を手で受け取った。
「何してんだよ! こんな弱っちい玉じゃ敵を倒せねーぞ!」
「す……すみませぇん」
「次は氷の呪文だ! オレを敵だと思え!」
「はい……」
コンソーラは仕方なさそうに返答した。
ベリルに叱咤されたにも関わらず、氷と雷の呪文は共に弱々しく、とても敵を倒せる威力ではない。
「しっかりやれよ、そんなんじゃこの先本当に死ぬぞ!」
ベリルは口調がきつくなった。
「で、でもぉ……」
コンソーラの体はますます震えた。
頭では分かってはいても、相手を傷つけたくないという思いから意識的に呪文の威力を弱めてしまうのだ。
「この先、ラフィアが出てきたらオレが真っ先に始末する」
ベリルは恐ろしいことを言い始めた。
「単に始末するんじゃねーぞ、オマエの前でラフィアを痛め付ける。オマエやラフィアが泣き叫んでもオレは手を止めない」
ベリルがコンソーラを挑発しているのは明白である。
しかしコンソーラの様子はみるみる変化していった。
自信のない表情から怒りになり、両手を強く握る。
「今からラフィアを痛めつけるのが楽しみだな、どんな呪文を使用するか決めておかねーとな」
コンソーラの全身に力が入り、魔力が急上昇する。
「……めて下さい」
「最初はそうだな、毒をかけてジワジワやって、次には痺れだな毒と全身の痺れは悪夢だぜ」
「やめて下さい!」
コンソーラはベリルを睨んだ。コンソーラの髪は魔力の影響で浮かぶ。
「いくらベリルさんでも、ラフィアさんを傷つけることは許しません!」
コンソーラは怒りを露にした。ラフィアはコンソーラの恩人なので、いかなる人であっても傷つけることを許さないのだ。
「だったらどうする?」
ベリルの問いかけに答えるように、コンソーラは両手に力を込め、先程よりも大きな炎の玉を出した。
「倒します! 覚悟してください!」
コンソーラは炎の玉をベリル目掛けて飛ばした。ベリルは炎の玉を回避した。
「そうこなくちゃな、かかってこい!」
ベリルはコンソーラに背を向けて逃げた。羽根をはばたかせて宙を舞い、コンソーラはベリルの後を素早く追った。
両翼に魔力を集め、複数の氷の刃を生成して、ベリルに向けて放出する。
ベリルは氷の刃を空中回転して避けようとした。氷の刃先がベリルの黒い翼にかすり、羽根は一枚落ちた。
「まだまだありますよ」
コンソーラは低い声で言うと、ベリルの真下から氷の刃の群れが飛んできた。
ベリルは炎の壁を作り、氷の刃を溶かした。
「隙ありですね」
コンソーラは右手を宙に掲げて、下に落とす仕草をした。
その直後に、ベリルの体に雷が落ち「うわあっ!」とベリルは悲鳴を上げて地面に落下した。
「いてて……さっきのが嘘みてーだな」
ベリルは頭を擦った。弱々しいコンソーラを焚き付けることに成功し、ほんの少し安心した。
「まだ終わってませんよ」
コンソーラはまだ戦い足りない様子である。
「ああ心配すんな、終わらせる気はねーからな」
ベリルは勢い良く立ち上がろうとした瞬間に、暗闇の呪文を手から放つ。
コンソーラは後ろに下がって逃れようとしたが、暗闇はコンソーラを覆うように被さってきた。
視界を奪われたコンソーラは、その場にうずくまる。暗闇はラビエス草を飲まない限り治らない。
「う……やりますね、ベリルさん」
「オマエも中々だったな、あの雷はかなり痛ぇ」
ベリルは言った。
コンソーラの雷はベリルの体力を随分削ったのだ。少し前にも訓練をしたがコンソーラの魔力は上がっていると感じた。
コンソーラはラフィアを絡ませて挑発させないとやる気を出さない上に、訓練の度にやらないといけないので心が痛む。
暗闇でコンソーラの視界を遮ったのは訓練を終了させるためのベリルなりの配慮である。
「終わらないと言ったが終わりにしよう、ラビエス草やるから飲めよ」
「終わりません」
コンソーラの声には重みがあった。
「これからブファス派も活動を増すでしょう、その人達がラフィアさんを始末しないとも限りません」
コンソーラは翼と手に魔力を集め出した。
熱が彼女の周囲を渦巻く。上級呪文・火嵐を放つためだ。
「なあコンソーラ、もう終わりだ。呪文使うのやめろよ、な」
ベリルは言った。しかしコンソーラは止めようとしない。
「私だってベリルさんと同じく強くなりたいです。これから会うラフィアさんを守るためにも……そして」
コンソーラは両手を伸ばした。
「ラフィアさんを傷つける人を倒せるように!」
彼女が高らかに言った直後だった。火嵐がベリルに向かって襲いかかってきた。
高速だったため、回避できずベリルは火嵐をまともに食らい、空中に吹き飛ばされてしまった。ベリルは再び地面に落ち、立てなくなってしまった。
「う……いて……っ」
ベリルは小声で言った。自身の修行とコンソーラから食らったダメージにより話すのも辛い。
「あれ……何で真っ暗なんですかぁ?」
コンソーラの怒りは収まり、暗闇にかかっていることに困惑する。
「コン……ソーラ……オレはここだ」
ベリルは絞り出すように言った。
「ひいやぁっ、ベッ、べリルさん!」
コンソーラは驚いた。ベリルの体力が著しく低下しているのは目が見えなくても分かるのだ。直ちに癒しの呪文をかけないといけないのは明白である。
コンソーラは魔力を頼りに、四つん這いで歩いてベリルの元にたどり着いた。
「ここですかぁ?」
コンソーラはベリルの手に触れる。
「ああ……」
「すみませぇん、私のせいですね」
「いや……けしかけたオレが悪い」
ベリルは詫びた。
毎度ベリルはコンソーラとの訓練で必ず傷だらけになり、コンソーラに回復してもらっている。
「じゃあ、回復しますね」
コンソーラが言って癒しの呪文をかけようとした矢先だった。 修行部屋の扉が開く音がした。
「遅いと思ったらここにいたか」
男の声だった。顔は暗闇の影響で見えないが知ってる人物である。
コンソーラが慕うイロウの弟・サレオスだ。
黒天使が移動の際に使用する戦艦アルシエルの内部で、コンソーラはタオルと水筒を持って廊下を歩いていた。
修行部屋の扉の前に立つと、コンソーラは扉をノックする。
「ベリルさん、入りますよぉ」
コンソーラはドアノブに手を当て、ゆっくりと扉を開く。
が、その瞬間、ドクロの幻影が迫ってきて、コンソーラは慌てて扉をしめた。
直後に扉に強い衝撃が走る。
「悪ぃ悪ぃ! 大丈夫か?」
再度扉が開くと、ベリルが右手を上げて謝った。
ベリルは呪文の修行をしており、今放った幻影は攻撃呪文の一種である。
「私は平気です。それよりベリルさんの方が汗びっしょりですよ」
「おっ、サンキューな」
コンソーラはタオルをベリルに差し出した。ベリルはタオルを受け取り、顔や体を拭く。
「あのぉ、ベリルさん」
ベリルは手を止めコンソーラの顔を見る。
「良かったらお話ししませんかぁ? 修行の途中なら後で良いですけど」
「修行も一区切りついたから良いぜ」
コンソーラはもじもじしながら口走ると、ベリルは少し笑って歓迎するように言った。
部屋の中はベリルの呪文で壁が壊れたり、焦げてたりしていた。
コンソーラは臭いをかぎ、表情を曇らせる。
「毒の呪文を練習してましたか?」
コンソーラは訊ねる。コンソーラは臭いで呪文を識別できるのだ。
「してたぜ、だからどうした」
「駄目ですよぉ、異常呪文使ったりしたら!」
コンソーラは両手を握って怒った。
黒天使は攻撃呪文に加え、毒、しびれ、暗闇、石化等の体に異変を起こす呪文が使える。
黒天使にしか使用できず。一度かかるとラビエス草という薬草でしか治せない。
コンソーラや天使が使う癒しの呪文が効かないのだ。
「ちゃんとラビエス草は持ってるし、大丈夫だよ」
ベリルは腰に携えている煎じたラビエス草入りの小さな瓶を見せた。
瓶には異常や破壊から守る呪文が施されている。
「そういう問題ではないですよぉ! ベリルさんはまだ完全に魔力が回復してないんですよ?」
コンソーラは心配するような目付きだった。異常呪文は魔力を大幅に消耗するため乱発はできない。
コンソーラの癒しの呪文は怪我は治っても、魔力は回復しない欠点がある。
自然回復の場合は時間がかかるので、そんな中修行でも異常呪文を使用すると、回復が遅くなる。
「回復なんて待ってられっかよ、オレは強くなりたいんだ」
「そうですけどぉ……」
「心配しなくても、後でアルマロス草飲むよ、ってか水筒くれよ、喉渇いた」
コンソーラはタオルに続いてベリルに水筒を手渡した。アルマロス草とは体力・魔力を回復させる薬草である。
苦いがその分効くのが早い。
黒天使の回復は主にアルマロス草を使用している。
ベリルは水筒の水を飲むと、腕で口を拭った。
「つーか、オレの事より自分の心配しろよ」
「何でですか?」
「オマエだって戦わないとも限らないからな、これからの事を考えるとなおさらだ」
「戦う」と聞き、コンソーラの表情は青ざめる。
コンソーラは性格上、戦闘が苦手で天使と戦うことが難しい。
元にコンソーラは一人の天使に追いかけ回され、他の黒天使から馬鹿にされたことがある。
「私には無理ですよぉ」
「無理って決めつけるな、オレが稽古つけてやるよ」
「でも、ベリルさん……」
「異常呪文は使わない、攻撃呪文のみを使う、だから今から稽古はするぞ」
ベリルは何がなんでも、コンソーラに戦闘の訓練をさせたいのだ。
「わ……分かりましたぁ」
コンソーラは渋々返事をした。
ベリルは黒い翼を羽ばたかせ、宙に浮かぶ。
「じゃあ手始めに炎の呪文を放って来い、本気でやれよ!」
「は……はぃぃ」
コンソーラは不安混じりに言った。
ベリルとは長い付き合いで、時々こうして稽古をするが乗り気はしない。
コンソーラは黒い翼を広げて手に意識を集中させた。手には小さな炎の玉が現れ、コンソーラは炎の玉をベリル目掛けて投げる。
ベリルは逃げることなく炎の玉を手で受け取った。
「何してんだよ! こんな弱っちい玉じゃ敵を倒せねーぞ!」
「す……すみませぇん」
「次は氷の呪文だ! オレを敵だと思え!」
「はい……」
コンソーラは仕方なさそうに返答した。
ベリルに叱咤されたにも関わらず、氷と雷の呪文は共に弱々しく、とても敵を倒せる威力ではない。
「しっかりやれよ、そんなんじゃこの先本当に死ぬぞ!」
ベリルは口調がきつくなった。
「で、でもぉ……」
コンソーラの体はますます震えた。
頭では分かってはいても、相手を傷つけたくないという思いから意識的に呪文の威力を弱めてしまうのだ。
「この先、ラフィアが出てきたらオレが真っ先に始末する」
ベリルは恐ろしいことを言い始めた。
「単に始末するんじゃねーぞ、オマエの前でラフィアを痛め付ける。オマエやラフィアが泣き叫んでもオレは手を止めない」
ベリルがコンソーラを挑発しているのは明白である。
しかしコンソーラの様子はみるみる変化していった。
自信のない表情から怒りになり、両手を強く握る。
「今からラフィアを痛めつけるのが楽しみだな、どんな呪文を使用するか決めておかねーとな」
コンソーラの全身に力が入り、魔力が急上昇する。
「……めて下さい」
「最初はそうだな、毒をかけてジワジワやって、次には痺れだな毒と全身の痺れは悪夢だぜ」
「やめて下さい!」
コンソーラはベリルを睨んだ。コンソーラの髪は魔力の影響で浮かぶ。
「いくらベリルさんでも、ラフィアさんを傷つけることは許しません!」
コンソーラは怒りを露にした。ラフィアはコンソーラの恩人なので、いかなる人であっても傷つけることを許さないのだ。
「だったらどうする?」
ベリルの問いかけに答えるように、コンソーラは両手に力を込め、先程よりも大きな炎の玉を出した。
「倒します! 覚悟してください!」
コンソーラは炎の玉をベリル目掛けて飛ばした。ベリルは炎の玉を回避した。
「そうこなくちゃな、かかってこい!」
ベリルはコンソーラに背を向けて逃げた。羽根をはばたかせて宙を舞い、コンソーラはベリルの後を素早く追った。
両翼に魔力を集め、複数の氷の刃を生成して、ベリルに向けて放出する。
ベリルは氷の刃を空中回転して避けようとした。氷の刃先がベリルの黒い翼にかすり、羽根は一枚落ちた。
「まだまだありますよ」
コンソーラは低い声で言うと、ベリルの真下から氷の刃の群れが飛んできた。
ベリルは炎の壁を作り、氷の刃を溶かした。
「隙ありですね」
コンソーラは右手を宙に掲げて、下に落とす仕草をした。
その直後に、ベリルの体に雷が落ち「うわあっ!」とベリルは悲鳴を上げて地面に落下した。
「いてて……さっきのが嘘みてーだな」
ベリルは頭を擦った。弱々しいコンソーラを焚き付けることに成功し、ほんの少し安心した。
「まだ終わってませんよ」
コンソーラはまだ戦い足りない様子である。
「ああ心配すんな、終わらせる気はねーからな」
ベリルは勢い良く立ち上がろうとした瞬間に、暗闇の呪文を手から放つ。
コンソーラは後ろに下がって逃れようとしたが、暗闇はコンソーラを覆うように被さってきた。
視界を奪われたコンソーラは、その場にうずくまる。暗闇はラビエス草を飲まない限り治らない。
「う……やりますね、ベリルさん」
「オマエも中々だったな、あの雷はかなり痛ぇ」
ベリルは言った。
コンソーラの雷はベリルの体力を随分削ったのだ。少し前にも訓練をしたがコンソーラの魔力は上がっていると感じた。
コンソーラはラフィアを絡ませて挑発させないとやる気を出さない上に、訓練の度にやらないといけないので心が痛む。
暗闇でコンソーラの視界を遮ったのは訓練を終了させるためのベリルなりの配慮である。
「終わらないと言ったが終わりにしよう、ラビエス草やるから飲めよ」
「終わりません」
コンソーラの声には重みがあった。
「これからブファス派も活動を増すでしょう、その人達がラフィアさんを始末しないとも限りません」
コンソーラは翼と手に魔力を集め出した。
熱が彼女の周囲を渦巻く。上級呪文・火嵐を放つためだ。
「なあコンソーラ、もう終わりだ。呪文使うのやめろよ、な」
ベリルは言った。しかしコンソーラは止めようとしない。
「私だってベリルさんと同じく強くなりたいです。これから会うラフィアさんを守るためにも……そして」
コンソーラは両手を伸ばした。
「ラフィアさんを傷つける人を倒せるように!」
彼女が高らかに言った直後だった。火嵐がベリルに向かって襲いかかってきた。
高速だったため、回避できずベリルは火嵐をまともに食らい、空中に吹き飛ばされてしまった。ベリルは再び地面に落ち、立てなくなってしまった。
「う……いて……っ」
ベリルは小声で言った。自身の修行とコンソーラから食らったダメージにより話すのも辛い。
「あれ……何で真っ暗なんですかぁ?」
コンソーラの怒りは収まり、暗闇にかかっていることに困惑する。
「コン……ソーラ……オレはここだ」
ベリルは絞り出すように言った。
「ひいやぁっ、ベッ、べリルさん!」
コンソーラは驚いた。ベリルの体力が著しく低下しているのは目が見えなくても分かるのだ。直ちに癒しの呪文をかけないといけないのは明白である。
コンソーラは魔力を頼りに、四つん這いで歩いてベリルの元にたどり着いた。
「ここですかぁ?」
コンソーラはベリルの手に触れる。
「ああ……」
「すみませぇん、私のせいですね」
「いや……けしかけたオレが悪い」
ベリルは詫びた。
毎度ベリルはコンソーラとの訓練で必ず傷だらけになり、コンソーラに回復してもらっている。
「じゃあ、回復しますね」
コンソーラが言って癒しの呪文をかけようとした矢先だった。 修行部屋の扉が開く音がした。
「遅いと思ったらここにいたか」
男の声だった。顔は暗闇の影響で見えないが知ってる人物である。
コンソーラが慕うイロウの弟・サレオスだ。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる