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明るみに出る謎
神に選ばれた天使
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「……ごめんなさい、メルキ先生」
「気にすることないよ、ラフィアさんがしたことは正しいよ」
ラフィアの謝罪に、横たわったナルジスにラビエス草(ラフィアがメルキに渡した)を飲ませつつメルキは明るく答える。
緊張感を持ったままなのか未だにラフィアをさん付けして呼んでるが。
ラフィアが謝ったのは保健室の半分や廊下の壁を呪文で壊してしまったことだ。
ラフィア達は保健室の難を逃れた壁の隅で固まっていた。
「後で壊れた箇所は直せば良いんだし、ラフィアさんも呪文使ったから疲れてるでしょ、後で癒しの呪文をかけてあげるから、座ってなよ」
「……はい」
ラフィアは二人の横で、体育座りをした。メルキが言ったように呪文を使った影響で体には疲労が溜まっていた。
「メルキ先生」
「何かな」
ナルジスにラビエス草を飲ませ終え、メルキはラフィアに顔を向ける。
「知ったんですか? わたしが他の天使より力が強いって」
ラフィアは問いかけた。
メルキは親しみやすい先生だが、肝心な事を言わないのが欠点である。ラフィアもそれは知っていた。
メルキはラフィアの質問に答えずに立ち上がり、ラフィアの側に来た。
「次はラフィアさんだね、すぐに治してあげるから」
メルキは癒しの呪文を紡ぎ、ラフィアの体に黄色い光が注がれる。
「力のことは誰から聞いたのかな」
「ティーア士官からです」
「ティーアからか、なら信用できるね」
メルキは安心したように言った。ティーアとは親交があるようで、彼女のことは呼び捨てにする。
ティーアもメルキのことは呼び捨てにしていた。
「答えを返すのが遅くなったけど、ごめんね、先生はラフィアさんの力のことは知ってたし、伝えようとは思ってた。他の天使にも言えるけど、天使の力は悪用したら大変だからね。ラフィアさんは力が高いから尚更だよ」
メルキは神妙な面持ちで語った。
「高い力を得た天使は"神に選ばれた天使"って呼ばれてるんだよ、ラフィアさんを除く"神に選ばれた天使"の全員には説明は済ませたけど、ラフィアさんの場合は色々あって、説明が後回しになったんだよ」
「黒天使が天界に侵入したことは絡んでますよね」
「そうだね、でも先生はその事でラフィアさんを責めないよ、ラフィアさんは何もしてないしね、根本的に悪いのは黒天使だから」
メルキは「おっと」と言い、話を止めた。
「"神に選ばれた天使"について説明しないといけないね、時間が切迫してるから簡単にするよ」
「あ、お願いします」
メルキは"神に選ばれた天使"のことを話し始めた。"神に選ばれた天使"の首筋には力を得たのと同時に、刻印が刻まれ、悪用したら使用者の呪文を一定期間使用を禁止。悪用の限度が過ぎると力を剥奪されるという。
力で人や天使に危害を加えることを防ぐためだ。ラフィアの首筋にも既につけられているらしい。
十八歳になったら神様になれる"神様選択権"を与えられるという、ただしラフィアはまだ十八ではないので、その年齢になったら詳しい説明があるようだ。
「……つまり、悪いことに使うなと言いたいんですね」
「そうだね、ラフィアさんを見ている限りは大丈夫だと思うけどね」
メルキが言った直後に、癒しの呪文の光も消えた。
「はい治療終わり、力は戻ったか後で確認してみてね、さっきの説明で質問はある?」
メルキはラフィアに問いかけてきた。力のことや、神様選択権のことは一応理解はできた。疑問点が出てきたら、その時に質問しようと考えた。
「多分大丈夫だと思います。わたしの力は人や天使の役に立つことに使います」
ラフィアは率直に言った。過去にも"神に選ばれた天使"の中には、力の大きさ故に人柄も変わってしまった天使もいる。その天使は力を剥奪されただの天使に成り下がってしまった。
その天使のようにならないためにも、ラフィアは自分の力を過信せず、今まで通り誰かのために使おうと決めた。
「いい心がけだね。その気持ちを忘れないでね」
「はい、分かりました」
話が一段落した時だった。脳内に聞き覚えのある声が響いてきた。
『ラフィアさん、聞こえますか』
『ええ、聞こえますよ』
ラフィアはカーシヴに答えを返した。
『コンソーラさんが、ラフィアさんにテレパシーを送ったようですが、何か感じませんでしたか?』
コンソーラと聞き、赤毛にラフィアを恩人と崇める少女の顔が浮かぶ。
『いえ……全然です』
『そうですか、黒天使が天使にテレパシーで連絡を取ることはできないみたいですね』
カーシヴは冷静に言った。
『話がそれてすみません、ぼく達は今学校の近くにいます。リンさんはメルキ先輩に連絡を取ってます』
ラフィアは隣にいるメルキに顔を向けた。確かにメルキは黙っている。
『ラフィアさん達は保健室にいるんですよね?』
『はい、護衛の呪文を張ってはいますが、ここも安全では無いので、怪我をしたナルジス……くんの回復を待って移動しようと考えていた所です。
単なる怪我じゃなくて、黒天使の異常呪文にやられたんです』
ラフィアはカーシヴの心境を考えて、サレオスとワゾンが来たことを伏せた。
『黒天使が来たんですか』
『そうです、メルキ先生やナルジス……くんとわたしで退けたんです』
『さっきの凄い力はラフィアさんが呪文を使ったんですか? リンさんはラフィアさんの力だとすぐに勘づいていたみたいですけど』
流石は幼馴染だなと、ラフィアは思った。下手に誤魔化すのは良くないと判断した。
『そう……です。けど黒天使を退けるためにはやむ得なかったんです』
ラフィアが言うと、カーシヴは深追いせず『分かりました』と返した。
『これはリンさんにも伝えるようにお願いしたことですが、事情があってベリルも一緒にいます』
ベリルと聞き、乱暴な言動がふと頭に蘇った。コンソーラの話によると彼と戦わないとならないのだ。
加えてメルキの話だと戦闘経験も豊富で、強いという。
会いたくないという気持ちはあった。幼馴染やメルキは戦うのは駄目だと言うだろう。不安の感情が押し寄せる中で、ラフィアは気持ちを定める。
『……連れてきても構いません。覚悟は出来ているつもりです』
ラフィアの真面目な言い方に、カーシヴは感づいたようだ。
『ぼくがこんな事を言う資格は無いでしょうが、ぼくはラフィアさんがベリルと戦うのは賛成できないです』
『カーシヴさんの気持ちは嬉しいです。わたしだって戦いたくないです。でも逃げれば逃げた分わたしに跳ね返ってくると思うんです。それに』
ラフィアはよく通る声で言った。
このまま逃げ回っても何も解決しないのはラフィアも分かっていた。
『こちらも準備がいりますし、すぐに戦うなんてことにはならないはずですから、連れてきても問題ないと思います』
戦いには準備もしなければならない。場所や武器・防具などを用意する必要がある。
ラフィアは呪文が使えても武器・防具を持ってないので、どこかで調達しないとならない。よってベリルと会ったからと言って即戦闘になるとは考えにくい。
『了解しました。準備のことはベリルにも伝えてみます。あと数分で着きますから、くれぐれも用心して下さい』
『カーシヴさんも気を付けて下さいね。さっきわたしが呪文使ったせいで他の黒天使が来るかもしれませんので』
『……ラフィアさんは優しいですね。戦わせるなんてやっぱりぼくにはできないです』
カーシヴのテレパシーはそこで終わった。
五人の白黒天使は、都心部の外れにある洞窟に身を潜めていた。
「ラフィアとテレパシーで連絡はとれたか?」
「……はい」
ベリルの問いに、カーシヴは短く答える。
「兄さんも終わったみたいだな」
ユラが言うと、リンはカーシヴの隣に並ぶ。
「僕たちはこれから学校に行く、さっきも言ったけどメルキ先生にはベリルのことは伝えたから」
「それで良いぜ、さっさと行ってラフィアと戦いてぇな!」
ベリルはやる気に満ちている。
「……さっきみたいに黒天使に見つからずに行ければだけどな」
ユラは突っ込んだ。
本当なら五人が力を合わせて移動呪文を使用して学校に行くはずだったが、三人の黒天使に見つかってしまい、やむ無く戦闘になったのだ。ベリルやカーシヴが武器で応戦し、リンとコンソーラは呪文で二人の戦いを助けた。
三人の黒天使をどうにか倒したものの、仲間を呼んだらしく新たに十人以上の黒天使が現れ、戦うのは危険だと判断し、五人は逃げることになったのだ。
今いる洞窟で戦闘で負った傷を癒した。戦闘の際に切れた服はリンとカーシヴが天使にしか使用できない製作の呪文で服を作った。
「……ユラさんのイタズラ道具のお陰ですねぇ」
コンソーラは言った。
ユラがカーシヴから返してもらったイタズラ道具の中に煙幕を張るものがあり、それを使って、十人の黒天使を撒いたのである。
「オマエの道具面白ぇな、呪文にはねぇものがある気がするな」
ベリルはユラを褒める。
「今回ばかりはユラには助けられたよ」
リンはベリルに同意した。弟のイタズラには頭を悩ませていたが、思わぬ突破口になってくれたのだ。
ユラは頭をかいで、照れ臭そうに兄とベリルから視線をそらす。
「そんな風に言われると、作った甲斐はあるな、へへっ」
ユラは変な笑い声を出した。
「この洞窟は一応安全だから、移動呪文を使うにしても問題なさそうだな」
弟の笑い声につられ、リンの声にも笑いが混ざる。しかし緊迫した空気には変わらなかったので咳払いして気を取り直した。
「……そうですね。黒天使がうろついていることを考えると、移動呪文が最適ですね」
「あれって力を結構使うよな、オレは戦いに備えたいから手助けしねぇからな」
「アルマロス草にはまだ余裕がありますよぉ」
コンソーラは言った。
コンソーラはリュアレから貰ったアルマロス草だけでなくラビエス草を多く持参している。
「ぼくとリンさんだけで十分です」
カーシヴはベリルが言いたいことを汲んだ。二人の天使がいれば、学校までの距離なら五人を移動することは可能だ。
よって黒天使の力を借りなくても平気だ。
「今すぐ出発したい所ですが、ベリル、あなたに言いたいことがあります」
カーシヴは真剣な顔つきでベリルの目を見た。
「気にすることないよ、ラフィアさんがしたことは正しいよ」
ラフィアの謝罪に、横たわったナルジスにラビエス草(ラフィアがメルキに渡した)を飲ませつつメルキは明るく答える。
緊張感を持ったままなのか未だにラフィアをさん付けして呼んでるが。
ラフィアが謝ったのは保健室の半分や廊下の壁を呪文で壊してしまったことだ。
ラフィア達は保健室の難を逃れた壁の隅で固まっていた。
「後で壊れた箇所は直せば良いんだし、ラフィアさんも呪文使ったから疲れてるでしょ、後で癒しの呪文をかけてあげるから、座ってなよ」
「……はい」
ラフィアは二人の横で、体育座りをした。メルキが言ったように呪文を使った影響で体には疲労が溜まっていた。
「メルキ先生」
「何かな」
ナルジスにラビエス草を飲ませ終え、メルキはラフィアに顔を向ける。
「知ったんですか? わたしが他の天使より力が強いって」
ラフィアは問いかけた。
メルキは親しみやすい先生だが、肝心な事を言わないのが欠点である。ラフィアもそれは知っていた。
メルキはラフィアの質問に答えずに立ち上がり、ラフィアの側に来た。
「次はラフィアさんだね、すぐに治してあげるから」
メルキは癒しの呪文を紡ぎ、ラフィアの体に黄色い光が注がれる。
「力のことは誰から聞いたのかな」
「ティーア士官からです」
「ティーアからか、なら信用できるね」
メルキは安心したように言った。ティーアとは親交があるようで、彼女のことは呼び捨てにする。
ティーアもメルキのことは呼び捨てにしていた。
「答えを返すのが遅くなったけど、ごめんね、先生はラフィアさんの力のことは知ってたし、伝えようとは思ってた。他の天使にも言えるけど、天使の力は悪用したら大変だからね。ラフィアさんは力が高いから尚更だよ」
メルキは神妙な面持ちで語った。
「高い力を得た天使は"神に選ばれた天使"って呼ばれてるんだよ、ラフィアさんを除く"神に選ばれた天使"の全員には説明は済ませたけど、ラフィアさんの場合は色々あって、説明が後回しになったんだよ」
「黒天使が天界に侵入したことは絡んでますよね」
「そうだね、でも先生はその事でラフィアさんを責めないよ、ラフィアさんは何もしてないしね、根本的に悪いのは黒天使だから」
メルキは「おっと」と言い、話を止めた。
「"神に選ばれた天使"について説明しないといけないね、時間が切迫してるから簡単にするよ」
「あ、お願いします」
メルキは"神に選ばれた天使"のことを話し始めた。"神に選ばれた天使"の首筋には力を得たのと同時に、刻印が刻まれ、悪用したら使用者の呪文を一定期間使用を禁止。悪用の限度が過ぎると力を剥奪されるという。
力で人や天使に危害を加えることを防ぐためだ。ラフィアの首筋にも既につけられているらしい。
十八歳になったら神様になれる"神様選択権"を与えられるという、ただしラフィアはまだ十八ではないので、その年齢になったら詳しい説明があるようだ。
「……つまり、悪いことに使うなと言いたいんですね」
「そうだね、ラフィアさんを見ている限りは大丈夫だと思うけどね」
メルキが言った直後に、癒しの呪文の光も消えた。
「はい治療終わり、力は戻ったか後で確認してみてね、さっきの説明で質問はある?」
メルキはラフィアに問いかけてきた。力のことや、神様選択権のことは一応理解はできた。疑問点が出てきたら、その時に質問しようと考えた。
「多分大丈夫だと思います。わたしの力は人や天使の役に立つことに使います」
ラフィアは率直に言った。過去にも"神に選ばれた天使"の中には、力の大きさ故に人柄も変わってしまった天使もいる。その天使は力を剥奪されただの天使に成り下がってしまった。
その天使のようにならないためにも、ラフィアは自分の力を過信せず、今まで通り誰かのために使おうと決めた。
「いい心がけだね。その気持ちを忘れないでね」
「はい、分かりました」
話が一段落した時だった。脳内に聞き覚えのある声が響いてきた。
『ラフィアさん、聞こえますか』
『ええ、聞こえますよ』
ラフィアはカーシヴに答えを返した。
『コンソーラさんが、ラフィアさんにテレパシーを送ったようですが、何か感じませんでしたか?』
コンソーラと聞き、赤毛にラフィアを恩人と崇める少女の顔が浮かぶ。
『いえ……全然です』
『そうですか、黒天使が天使にテレパシーで連絡を取ることはできないみたいですね』
カーシヴは冷静に言った。
『話がそれてすみません、ぼく達は今学校の近くにいます。リンさんはメルキ先輩に連絡を取ってます』
ラフィアは隣にいるメルキに顔を向けた。確かにメルキは黙っている。
『ラフィアさん達は保健室にいるんですよね?』
『はい、護衛の呪文を張ってはいますが、ここも安全では無いので、怪我をしたナルジス……くんの回復を待って移動しようと考えていた所です。
単なる怪我じゃなくて、黒天使の異常呪文にやられたんです』
ラフィアはカーシヴの心境を考えて、サレオスとワゾンが来たことを伏せた。
『黒天使が来たんですか』
『そうです、メルキ先生やナルジス……くんとわたしで退けたんです』
『さっきの凄い力はラフィアさんが呪文を使ったんですか? リンさんはラフィアさんの力だとすぐに勘づいていたみたいですけど』
流石は幼馴染だなと、ラフィアは思った。下手に誤魔化すのは良くないと判断した。
『そう……です。けど黒天使を退けるためにはやむ得なかったんです』
ラフィアが言うと、カーシヴは深追いせず『分かりました』と返した。
『これはリンさんにも伝えるようにお願いしたことですが、事情があってベリルも一緒にいます』
ベリルと聞き、乱暴な言動がふと頭に蘇った。コンソーラの話によると彼と戦わないとならないのだ。
加えてメルキの話だと戦闘経験も豊富で、強いという。
会いたくないという気持ちはあった。幼馴染やメルキは戦うのは駄目だと言うだろう。不安の感情が押し寄せる中で、ラフィアは気持ちを定める。
『……連れてきても構いません。覚悟は出来ているつもりです』
ラフィアの真面目な言い方に、カーシヴは感づいたようだ。
『ぼくがこんな事を言う資格は無いでしょうが、ぼくはラフィアさんがベリルと戦うのは賛成できないです』
『カーシヴさんの気持ちは嬉しいです。わたしだって戦いたくないです。でも逃げれば逃げた分わたしに跳ね返ってくると思うんです。それに』
ラフィアはよく通る声で言った。
このまま逃げ回っても何も解決しないのはラフィアも分かっていた。
『こちらも準備がいりますし、すぐに戦うなんてことにはならないはずですから、連れてきても問題ないと思います』
戦いには準備もしなければならない。場所や武器・防具などを用意する必要がある。
ラフィアは呪文が使えても武器・防具を持ってないので、どこかで調達しないとならない。よってベリルと会ったからと言って即戦闘になるとは考えにくい。
『了解しました。準備のことはベリルにも伝えてみます。あと数分で着きますから、くれぐれも用心して下さい』
『カーシヴさんも気を付けて下さいね。さっきわたしが呪文使ったせいで他の黒天使が来るかもしれませんので』
『……ラフィアさんは優しいですね。戦わせるなんてやっぱりぼくにはできないです』
カーシヴのテレパシーはそこで終わった。
五人の白黒天使は、都心部の外れにある洞窟に身を潜めていた。
「ラフィアとテレパシーで連絡はとれたか?」
「……はい」
ベリルの問いに、カーシヴは短く答える。
「兄さんも終わったみたいだな」
ユラが言うと、リンはカーシヴの隣に並ぶ。
「僕たちはこれから学校に行く、さっきも言ったけどメルキ先生にはベリルのことは伝えたから」
「それで良いぜ、さっさと行ってラフィアと戦いてぇな!」
ベリルはやる気に満ちている。
「……さっきみたいに黒天使に見つからずに行ければだけどな」
ユラは突っ込んだ。
本当なら五人が力を合わせて移動呪文を使用して学校に行くはずだったが、三人の黒天使に見つかってしまい、やむ無く戦闘になったのだ。ベリルやカーシヴが武器で応戦し、リンとコンソーラは呪文で二人の戦いを助けた。
三人の黒天使をどうにか倒したものの、仲間を呼んだらしく新たに十人以上の黒天使が現れ、戦うのは危険だと判断し、五人は逃げることになったのだ。
今いる洞窟で戦闘で負った傷を癒した。戦闘の際に切れた服はリンとカーシヴが天使にしか使用できない製作の呪文で服を作った。
「……ユラさんのイタズラ道具のお陰ですねぇ」
コンソーラは言った。
ユラがカーシヴから返してもらったイタズラ道具の中に煙幕を張るものがあり、それを使って、十人の黒天使を撒いたのである。
「オマエの道具面白ぇな、呪文にはねぇものがある気がするな」
ベリルはユラを褒める。
「今回ばかりはユラには助けられたよ」
リンはベリルに同意した。弟のイタズラには頭を悩ませていたが、思わぬ突破口になってくれたのだ。
ユラは頭をかいで、照れ臭そうに兄とベリルから視線をそらす。
「そんな風に言われると、作った甲斐はあるな、へへっ」
ユラは変な笑い声を出した。
「この洞窟は一応安全だから、移動呪文を使うにしても問題なさそうだな」
弟の笑い声につられ、リンの声にも笑いが混ざる。しかし緊迫した空気には変わらなかったので咳払いして気を取り直した。
「……そうですね。黒天使がうろついていることを考えると、移動呪文が最適ですね」
「あれって力を結構使うよな、オレは戦いに備えたいから手助けしねぇからな」
「アルマロス草にはまだ余裕がありますよぉ」
コンソーラは言った。
コンソーラはリュアレから貰ったアルマロス草だけでなくラビエス草を多く持参している。
「ぼくとリンさんだけで十分です」
カーシヴはベリルが言いたいことを汲んだ。二人の天使がいれば、学校までの距離なら五人を移動することは可能だ。
よって黒天使の力を借りなくても平気だ。
「今すぐ出発したい所ですが、ベリル、あなたに言いたいことがあります」
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