38 / 49
裏で動き出す者
白銀の天使人形・3
しおりを挟む
「おばさん、美味しい紅茶とクッキー有難う」
フィッダはロウェルに礼に頭を下げて礼をした。ロウェルの会話が途切れたのをチャンスだと思い、礼の言葉を述べたのだ。
次にフィッダは右側にいるリエトに顔を向ける。
「おじさん、私のこと心配してくれて有難う」
フィッダは再び頭を下げた。リエトは息子に何度も連絡をとろうとしたが息子に繋がらず、息子の安否を気にしつつもフィッダのことを心配していた。
フィッダは立ち上がり口を開いた。
「二人には感謝してるわ、とても良くしてもらったから」
フィッダの口からは、少女とは程遠い、女性の声が出た。
急変ぶりに、二人の顔つきが目に見えて変わった。
「フィッダ……ちゃん?」
ロウェルは声を詰まらせていた。少女の変化についていけないのだ。
「私の名前はフィッダじゃないわ、貴方達の間では発明家のガリアと呼ばれてるわね」
「ガリア……ああ、黒天使に有利になる道具を作ることで有名だな、その天使もお前が作ったものか」
「そうよ、立派にできた人形でしょう?」
「私達を騙すなんてな、それで何の用だ」
リエトの声色は怒りに満ちていた。子供のふりをして騙したことに頭に来ている様子だ。
「騙したことについては謝るわ、用事は他でもない、これから起きる事を伝えに来たのよ」
「まさか、私達を始末しに来たのか」
「そんな物騒な事はしないわ、むしろ貴方達の子供には黒天使が世話になったから感謝したいくらいよ、でも貴方達の子供に関する事だから、言うのが辛いけどね」
「それって……何?」
ロウェルは訊ねた。子供が世話になったというのも引っ掛かるが、最後の辛いというのが気になる。
「ラフィアがある黒天使と一対一で戦うことになるわ」
ガリアは静かに、かつ聞き取りやすい声で語る。
戦う、すなわち治安部隊や特殊部隊が黒天使と戦うように、ラフィアも武器を手にすることになる。
「そんなの駄目よ! ラフィアを戦わせるなんて!」
ロウェルは叫んだ。ガリアに騙されたことに対する怒りはなく、ラフィアを守りたい親心によるものだ。
天使人形と同じ目線になるように再び身を屈め、天使人形の両肩を掴む。
「ガリア、イロウと話をさせて、今回の件は彼が絡んでるでしょう」
ロウェルは真剣な顔つきで言った。ラフィアがイロウと過去に関わりがあったのは知っているからだ。今回黒天使が天界内に入ったのもイロウが絡んでいるに違いない。
しかしガリアは「ダメよ」と返した。
「イロウは取り込み中よ、話すのは難しいわ」
「そこを何とかできないの?」
「仮に出来たとしても、貴方の言葉でイロウの意思を覆すことはできないでしょうね」
「でも……」
ロウェルが言いかけた時、ロウェルの肩に温もりを感じた。
「やめておけ、ガリアが言うようにイロウと交渉なんて無謀だ」
「そんな……」
「私はラフィアより息子達の安否の方が心配だよ」
リエトの心ない発言に、ロウェルは怒りが沸く。
ロウェルは立ち上がると、リエトを睨みつけた。
「何を言ってるのです。そんな事を言うのはやめて下さい」
ロウェルは怒りのこもった声を発した。
「君はラフィアにばかり気をとられているが、リンとユラのことが心配ではないのか」
「心配に決まってます。三人は私にとって大切な子です。子を心配しない親はいません、血の繋がりは関係無いです。貴方のように一人の子を蔑ろにしません」
ロウェルはきっぱり言いきった。三人が無事でないと困る。
「今のところ、三人は無事よ」
ガリアは二人の間に入った。ロウェルはガリアに向き直る。
「最も、一人は私のパートナーにしようと決めてるわ」
ガリアはどこか嬉しそうに言った。
「なっ……どういうこと」
「貴方達の子供が黒天使の世話になった私なりの礼として助言するわ」
ロウェルの疑問に答えることなくガリアは白い羽根を動かし、宙を浮く。
「この者達に、時間が来れば指定されし場所に移動されん!」
呪文がガリアの口から紡がれた瞬間、緑の光の洪水が目の前に降り注ぐ。ロウェルは目を瞑る。
「さよなら、おばさん、おじさん、今日のことは忘れないからね」
自身の声でなく、フィッダの声でガリアは二人に別れの挨拶をした。これはガリアの気まぐれである。
羽根をはばたかせた後に、扉が閉まる音がした。
モニター室には部外者であるフェンネが斧を手に、怒りに歪んだ形相でこちらを見ていた。
『ごめんなさイ、ガリアさン、フェンネさんの侵入を許したりしテ』
隣にいるリュアレがテレパシーで申し訳なさそうに謝罪する。
ガリアは扉にちらりと目をやると、扉は開いていた。フェンネの武器である斧で傷つけた傷痕ができており、扉が壊されると判断し、リュアレが扉の施錠を解除したのだ。
『構わないわよ、貴方が無事ならそれで良いわ』
ガリアはリュアレを宥めた。
扉は修復すれば良い、しかしリュアレが傷つくのは胸糞が悪い。
「ガリア、貴方は何を考えてるのですか、イロウ様の娘に似た天使を作り出した上に、勝手な行動までさせて……」
フェンネは冷静を装っているが、怒りを滲ませているのが伝わってくる。
彼の様子からして、別のモニター室で見ていたのだろう。
「あの……こんな事を聞くと怒るかもしれないですけド、何でガリアさンの仕業だって分かったんですカ? もしかしたらワゾンの悪ふざけかもしれないシ」
リュアレはフェンネに訊ねた。
斧が怖いためか、普段の明るい口調とは違い低姿勢だ。
ワゾンは時と場合を選ばず悪ふざけをする事がある。エイミーそっくりな天使を作り出しても不思議ではない。
「悪意が無かったことです。ワゾンはあからさまな悪意を感じるからです」
フェンネはリュアレに声をぶつけた。ワゾンなら天使人形を傷つけたり、爆発させるなどしそうだ。
「あれは天使の人形よ、イロウには許可をとってあるわ、それと貴方には勝手に見えるでしょうけど、今回の作戦には必要なことよ」
黙っていたガリアは強い口調で言い返した。
二人に移動呪文をかけ、時間が来ればラフィアとベリルが戦う場に向かうようにした。
天使人形のフィッダは移動呪文を使用して帰ってきており、モニター室の椅子に座らせて動かなくなっている。
二人はラフィアがベリルの決闘を見てもらうために、呪文で強制的に決闘の場所に移動するようにした。ガリアの発明ではなく、ガリア自身の呪文をかけたのである。
「その物騒な斧を何とかしてくれないかしら、怖いわ」
ガリアはフェンネの斧に指を差した。フェンネは斧を下ろし、背中に戻した。
「貴方はイロウ様に申し訳ないと思わないのですか、あの天使はエイミー様に似てました。例え貴方が言うように人形だとしても何かあったらイロウ様のお心に傷が残ると考えなかったのですか」
フェンネは空気が緊張するような荒々しい声を出した。フェンネはイロウに忠誠心を持っているため、イロウ一家の人間にも「様」を付けて呼ぶ。
「それもイロウには許可をとったわ」
ガリアは利き手である左手を少し掲げ、背中の黒い羽根を動かした。
椅子に横たわっていた天使人形が緑色の光を纏った状態で宙を浮きガリアの前に降りてきた。
発明ではなく呪文を使ったのだ。
「この子に傷一つ付いてないでしょ? 私もその辺は気を遣ったわ」
ガリアはフェンネに人形を見せた。フェンネは人形を隅から隅まで眺める。
「……確かに付いてませんね」
フェンネは納得したように言った。
「気は済んだ? 私も暇じゃないの、そろそろ出ていってくれないかしら」
ガリアはやんわりと言った。フェンネは体を動かさずに、口を動かした。
「貴方に目的があったことは認めますし、扉の件も謝罪します……しかし」
フェンネは言葉を途中で切った。
「ロンカの件で貴方がしたことは許せませんからね、例え九年経ったとしてもです」
声を荒げてフェンネは言った。
背中を見せて黒い羽根を羽ばたかせて、扉を律儀に閉めてモニター室から去った。
リュアレは「はぁ……」と深いため息をつく。
「やっと行ったネ」
リュアレは呟き、ガリアの顔を見た。
緊張が解れ、元の明るい口調になったが、ガリアの胸にフェンネの言葉が突き刺さったままである。
「あんま気にしない方が良いヨ、フェンネさんは神経が高ぶっているだけだかラ」
リュアレはガリアに温かな言葉をかけてきた。リュアレはガリアの過去を知ってる上で言っているのだ。
「リュアレ」
「何?」
「悪いけど一人にしてくれるかしら、次の発明に取りかかりたいから」
「う……うん、分かっタ、あまり根詰め過ぎないでネ」
リュアレはガリアの気持ちを察し、ガリアに背を向けた。
モニター室の扉にまで歩いて移動し、リュアレが扉を潜ろうとした瞬間、ガリアはリュアレの名をまた呼んだ。
「てんとう虫のクッキーご馳走さま、お陰で疲れが飛んだわ」
ガリアはリュアレに礼を述べる。
そうしないとクッキーを作ってくれたリュアレに失礼だからだ。
リュアレは顔をこちらに向ける。
「作戦が終わった後にも作るかラ、楽しみにしてテ」
リュアレは口元を緩めた。そして扉を潜って姿を消した。
『ガリアさん、お願いします。わたしのお姉ちゃんを助けて下さい』
『どうして貴方は部外者の天使を優先したんですか、同胞のロンカの方を先に助けるべきだったでしょう』
ガリアの脳内に、九年前に起きた出来事が甦る。動かなくなった姉を助けてと懇願する幼い青髪の少女と、フェンネが自分を責める声が生々しく聞こえてくる。
ガリアにとって消すことのできない記憶だ。戦艦内の動力室の点検をしている時でも流れてくる。
研究室にいても気が滅入ると思い出ても、記憶はガリアを容赦しなかった。
……いけない、私ったら。
ガリアは頭を軽く振り作業に没頭した。手元が狂って機械を傷つけたら大変だからだ。
……ラフィア、また貴方に会えるのが楽しみね。
フィッダはロウェルに礼に頭を下げて礼をした。ロウェルの会話が途切れたのをチャンスだと思い、礼の言葉を述べたのだ。
次にフィッダは右側にいるリエトに顔を向ける。
「おじさん、私のこと心配してくれて有難う」
フィッダは再び頭を下げた。リエトは息子に何度も連絡をとろうとしたが息子に繋がらず、息子の安否を気にしつつもフィッダのことを心配していた。
フィッダは立ち上がり口を開いた。
「二人には感謝してるわ、とても良くしてもらったから」
フィッダの口からは、少女とは程遠い、女性の声が出た。
急変ぶりに、二人の顔つきが目に見えて変わった。
「フィッダ……ちゃん?」
ロウェルは声を詰まらせていた。少女の変化についていけないのだ。
「私の名前はフィッダじゃないわ、貴方達の間では発明家のガリアと呼ばれてるわね」
「ガリア……ああ、黒天使に有利になる道具を作ることで有名だな、その天使もお前が作ったものか」
「そうよ、立派にできた人形でしょう?」
「私達を騙すなんてな、それで何の用だ」
リエトの声色は怒りに満ちていた。子供のふりをして騙したことに頭に来ている様子だ。
「騙したことについては謝るわ、用事は他でもない、これから起きる事を伝えに来たのよ」
「まさか、私達を始末しに来たのか」
「そんな物騒な事はしないわ、むしろ貴方達の子供には黒天使が世話になったから感謝したいくらいよ、でも貴方達の子供に関する事だから、言うのが辛いけどね」
「それって……何?」
ロウェルは訊ねた。子供が世話になったというのも引っ掛かるが、最後の辛いというのが気になる。
「ラフィアがある黒天使と一対一で戦うことになるわ」
ガリアは静かに、かつ聞き取りやすい声で語る。
戦う、すなわち治安部隊や特殊部隊が黒天使と戦うように、ラフィアも武器を手にすることになる。
「そんなの駄目よ! ラフィアを戦わせるなんて!」
ロウェルは叫んだ。ガリアに騙されたことに対する怒りはなく、ラフィアを守りたい親心によるものだ。
天使人形と同じ目線になるように再び身を屈め、天使人形の両肩を掴む。
「ガリア、イロウと話をさせて、今回の件は彼が絡んでるでしょう」
ロウェルは真剣な顔つきで言った。ラフィアがイロウと過去に関わりがあったのは知っているからだ。今回黒天使が天界内に入ったのもイロウが絡んでいるに違いない。
しかしガリアは「ダメよ」と返した。
「イロウは取り込み中よ、話すのは難しいわ」
「そこを何とかできないの?」
「仮に出来たとしても、貴方の言葉でイロウの意思を覆すことはできないでしょうね」
「でも……」
ロウェルが言いかけた時、ロウェルの肩に温もりを感じた。
「やめておけ、ガリアが言うようにイロウと交渉なんて無謀だ」
「そんな……」
「私はラフィアより息子達の安否の方が心配だよ」
リエトの心ない発言に、ロウェルは怒りが沸く。
ロウェルは立ち上がると、リエトを睨みつけた。
「何を言ってるのです。そんな事を言うのはやめて下さい」
ロウェルは怒りのこもった声を発した。
「君はラフィアにばかり気をとられているが、リンとユラのことが心配ではないのか」
「心配に決まってます。三人は私にとって大切な子です。子を心配しない親はいません、血の繋がりは関係無いです。貴方のように一人の子を蔑ろにしません」
ロウェルはきっぱり言いきった。三人が無事でないと困る。
「今のところ、三人は無事よ」
ガリアは二人の間に入った。ロウェルはガリアに向き直る。
「最も、一人は私のパートナーにしようと決めてるわ」
ガリアはどこか嬉しそうに言った。
「なっ……どういうこと」
「貴方達の子供が黒天使の世話になった私なりの礼として助言するわ」
ロウェルの疑問に答えることなくガリアは白い羽根を動かし、宙を浮く。
「この者達に、時間が来れば指定されし場所に移動されん!」
呪文がガリアの口から紡がれた瞬間、緑の光の洪水が目の前に降り注ぐ。ロウェルは目を瞑る。
「さよなら、おばさん、おじさん、今日のことは忘れないからね」
自身の声でなく、フィッダの声でガリアは二人に別れの挨拶をした。これはガリアの気まぐれである。
羽根をはばたかせた後に、扉が閉まる音がした。
モニター室には部外者であるフェンネが斧を手に、怒りに歪んだ形相でこちらを見ていた。
『ごめんなさイ、ガリアさン、フェンネさんの侵入を許したりしテ』
隣にいるリュアレがテレパシーで申し訳なさそうに謝罪する。
ガリアは扉にちらりと目をやると、扉は開いていた。フェンネの武器である斧で傷つけた傷痕ができており、扉が壊されると判断し、リュアレが扉の施錠を解除したのだ。
『構わないわよ、貴方が無事ならそれで良いわ』
ガリアはリュアレを宥めた。
扉は修復すれば良い、しかしリュアレが傷つくのは胸糞が悪い。
「ガリア、貴方は何を考えてるのですか、イロウ様の娘に似た天使を作り出した上に、勝手な行動までさせて……」
フェンネは冷静を装っているが、怒りを滲ませているのが伝わってくる。
彼の様子からして、別のモニター室で見ていたのだろう。
「あの……こんな事を聞くと怒るかもしれないですけド、何でガリアさンの仕業だって分かったんですカ? もしかしたらワゾンの悪ふざけかもしれないシ」
リュアレはフェンネに訊ねた。
斧が怖いためか、普段の明るい口調とは違い低姿勢だ。
ワゾンは時と場合を選ばず悪ふざけをする事がある。エイミーそっくりな天使を作り出しても不思議ではない。
「悪意が無かったことです。ワゾンはあからさまな悪意を感じるからです」
フェンネはリュアレに声をぶつけた。ワゾンなら天使人形を傷つけたり、爆発させるなどしそうだ。
「あれは天使の人形よ、イロウには許可をとってあるわ、それと貴方には勝手に見えるでしょうけど、今回の作戦には必要なことよ」
黙っていたガリアは強い口調で言い返した。
二人に移動呪文をかけ、時間が来ればラフィアとベリルが戦う場に向かうようにした。
天使人形のフィッダは移動呪文を使用して帰ってきており、モニター室の椅子に座らせて動かなくなっている。
二人はラフィアがベリルの決闘を見てもらうために、呪文で強制的に決闘の場所に移動するようにした。ガリアの発明ではなく、ガリア自身の呪文をかけたのである。
「その物騒な斧を何とかしてくれないかしら、怖いわ」
ガリアはフェンネの斧に指を差した。フェンネは斧を下ろし、背中に戻した。
「貴方はイロウ様に申し訳ないと思わないのですか、あの天使はエイミー様に似てました。例え貴方が言うように人形だとしても何かあったらイロウ様のお心に傷が残ると考えなかったのですか」
フェンネは空気が緊張するような荒々しい声を出した。フェンネはイロウに忠誠心を持っているため、イロウ一家の人間にも「様」を付けて呼ぶ。
「それもイロウには許可をとったわ」
ガリアは利き手である左手を少し掲げ、背中の黒い羽根を動かした。
椅子に横たわっていた天使人形が緑色の光を纏った状態で宙を浮きガリアの前に降りてきた。
発明ではなく呪文を使ったのだ。
「この子に傷一つ付いてないでしょ? 私もその辺は気を遣ったわ」
ガリアはフェンネに人形を見せた。フェンネは人形を隅から隅まで眺める。
「……確かに付いてませんね」
フェンネは納得したように言った。
「気は済んだ? 私も暇じゃないの、そろそろ出ていってくれないかしら」
ガリアはやんわりと言った。フェンネは体を動かさずに、口を動かした。
「貴方に目的があったことは認めますし、扉の件も謝罪します……しかし」
フェンネは言葉を途中で切った。
「ロンカの件で貴方がしたことは許せませんからね、例え九年経ったとしてもです」
声を荒げてフェンネは言った。
背中を見せて黒い羽根を羽ばたかせて、扉を律儀に閉めてモニター室から去った。
リュアレは「はぁ……」と深いため息をつく。
「やっと行ったネ」
リュアレは呟き、ガリアの顔を見た。
緊張が解れ、元の明るい口調になったが、ガリアの胸にフェンネの言葉が突き刺さったままである。
「あんま気にしない方が良いヨ、フェンネさんは神経が高ぶっているだけだかラ」
リュアレはガリアに温かな言葉をかけてきた。リュアレはガリアの過去を知ってる上で言っているのだ。
「リュアレ」
「何?」
「悪いけど一人にしてくれるかしら、次の発明に取りかかりたいから」
「う……うん、分かっタ、あまり根詰め過ぎないでネ」
リュアレはガリアの気持ちを察し、ガリアに背を向けた。
モニター室の扉にまで歩いて移動し、リュアレが扉を潜ろうとした瞬間、ガリアはリュアレの名をまた呼んだ。
「てんとう虫のクッキーご馳走さま、お陰で疲れが飛んだわ」
ガリアはリュアレに礼を述べる。
そうしないとクッキーを作ってくれたリュアレに失礼だからだ。
リュアレは顔をこちらに向ける。
「作戦が終わった後にも作るかラ、楽しみにしてテ」
リュアレは口元を緩めた。そして扉を潜って姿を消した。
『ガリアさん、お願いします。わたしのお姉ちゃんを助けて下さい』
『どうして貴方は部外者の天使を優先したんですか、同胞のロンカの方を先に助けるべきだったでしょう』
ガリアの脳内に、九年前に起きた出来事が甦る。動かなくなった姉を助けてと懇願する幼い青髪の少女と、フェンネが自分を責める声が生々しく聞こえてくる。
ガリアにとって消すことのできない記憶だ。戦艦内の動力室の点検をしている時でも流れてくる。
研究室にいても気が滅入ると思い出ても、記憶はガリアを容赦しなかった。
……いけない、私ったら。
ガリアは頭を軽く振り作業に没頭した。手元が狂って機械を傷つけたら大変だからだ。
……ラフィア、また貴方に会えるのが楽しみね。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します
白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。
あなたは【真実の愛】を信じますか?
そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。
だって・・・そうでしょ?
ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!?
それだけではない。
何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!!
私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。
それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。
しかも!
ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!!
マジかーーーっ!!!
前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!!
思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。
世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。
【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く
ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。
5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。
夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…
夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い
青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。
神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。
もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。
生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。
過去世と同じ轍を踏みたくない……
「お前を愛する事はない」を信じたので
あんど もあ
ファンタジー
「お前を愛することは無い。お前も私を愛するな。私からの愛を求めるな」
お互いの利益のために三年間の契約結婚をしたアヴェリンとロデリック。楽しく三年を過ごしたアヴェリンは屋敷を出ていこうとするのだが……。
「がっかりです」——その一言で終わる夫婦が、王宮にはある
柴田はつみ
恋愛
妃の席を踏みにじったのは令嬢——けれど妃の心を折ったのは、夫のたった一言だった
王太子妃リディアの唯一の安らぎは、王太子アーヴィンと交わす午後の茶会。だが新しく王宮に出入りする伯爵令嬢ミレーユは、妃の席に先に座り、殿下を私的に呼び、距離感のない振る舞いを重ねる。
リディアは王宮の礼節としてその場で正す——正しいはずだった。けれど夫は「リディア、そこまで言わなくても……」と、妃を止めた。
「わかりました。あなたには、がっかりです」
微笑んで去ったその日から、夫婦の茶会は終わる。沈黙の王宮で、言葉を失った王太子は、初めて“追う”ことを選ぶが——遅すぎた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる