幸運の精霊ココの時戻しの呪文

青山ねる

文字の大きさ
8 / 10

あの時はごめんなさい

しおりを挟む
春佳はすみれに頭を下げた。
「あの時はごめん、すみれの気持ちも考えずに傷つけることを口走ったりして……」
春佳の心は不安と緊張がごちゃ混ぜになった。
「本当にごめんなさい! 許して欲しいなんて言わない、でもちゃんと謝りたかったの」
自分の言うべきかことを言い切り、春佳の心臓は早鐘のように打ち付ける。
あんな別れ方をしているから許してくれるかどうか分からない。
足音が静かに春佳の前に近づく。
「顔上げて」
すみれの声が飛んできた。
春佳は恐る恐る顔を上げる。
その途端に、春佳はすみれに体を抱き締められた。
すみれは体を震わせ、嗚咽を漏らしていた。
「私の方こそ……ごめんなさい……
勉強のことで頭が一杯で……周りに目がいかなくて……
春佳や弥生逹を大切にできなかった……」
すみれは涙ながらに自分の思いを口に出した。
すみれもすみれで辛かったんだなと春佳は思った。
春佳の目からも薄っすらと涙が流れ落ちる。
「もういいよ、終わったことなんだし」
涙を拭い春佳はやんわりと言った。
過ぎたことを言っても何も変わらないからだ。
すみれは勉強の甲斐があって第一志望の高校に合格したという。
「良くないよ! 春佳は引っ越しちゃうのに……」
すみれは涙だらけの顔で悲しげに叫ぶ。
春佳はすみれの両腕をそっと掴む。
「手紙も書くし電話もする。夏休みには会いに来るよ、約束する」
春佳は優しく語りかける。
「本当?」
「本当よ、離れても友達だから」
「私も連絡欠かさないから、絶対また会おうね」
二人は顔を合わせると笑いあう。すみれの暖かい笑顔を見るのは久しぶりだった。
仲直りできたと春佳は思った。
そんな時だった。
手を叩く音がして、弥生と薫が入ってきた。
「良かった良かったー!」
二人の前まで来ると弥生は手を叩くのをやめた。
「弥生……」
「いやー私までヒヤヒヤしたよ、すみれが手を上げるんじゃないかってさー
それも取り越し苦労に終わって良かったよ」
弥生は明るく言った。
すみれは人に手を上げるような人物ではない。
「もしかしてずっと見てたの?」
春佳が訊ねると、弥生は「ごめんごめん」と誠意のない謝罪をした。
どうやら一部始終見ていたようだ。
春佳の謝罪とは大違いである。
「私も止めたんだよ、邪魔したらダメだって」
薫は言った。
「もう……弥生ったら……」
「まあまあ細かい事は気にしない! 四人揃った所で仲直り&卒業記念を兼ねて、レストランでお祝いしよう!」
呆れるすみれを背に、弥生ははりきった。

それから四人はレストランに行き楽しい時間を過ごした。
弥生はコーラを飲んで騒ぎ、薫は弥生を見て笑い、すみれは好物のモンブランを満足げに食べた。
 春佳は三人を眺めてチョコパフェを頬張った。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

初夜に暴言を吐いた夫は後悔し続ける──10年後の償い【完結】

星森 永羽(ほしもりとわ)
恋愛
王命により、辺境伯ロキアのもとへ嫁いだのは、金髪翠眼の美しき公爵令嬢スフィア。 だが、初夜に彼が告げたのは、愛も権限も与えないという冷酷な宣言だった。噂に踊らされ、彼女を「穢れた花嫁」と罵ったロキア。 しかし、わずか一日でスフィアは姿を消し、教会から届いたのは婚姻無効と慰謝料請求の書状──。 王と公爵の怒りを買ったロキアは、爵位も領地も名誉も奪われ、ただの補佐官として生きることに。 そして十年後、運命のいたずらか、彼は被災地で再びスフィアと出会う。 地位も捨て、娘を抱えて生きる彼女の姿に、ロキアの胸に去来するのは、悔恨と赦しを乞う想い──。 ⚠️本作はAIの生成した文章を一部に使用しています。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

奪われ系令嬢になるのはごめんなので逃げて幸せになるぞ!

よもぎ
ファンタジー
とある伯爵家の令嬢アリサは転生者である。薄々察していたヤバい未来が現実になる前に逃げおおせ、好き勝手生きる決意をキメていた彼女は家を追放されても想定通りという顔で旅立つのだった。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

【完結短編】ある公爵令嬢の結婚前日

のま
ファンタジー
クラリスはもうすぐ結婚式を控えた公爵令嬢。 ある日から人生が変わっていったことを思い出しながら自宅での最後のお茶会を楽しむ。

処理中です...