アネモネの花

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アネモネの花

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「脈や心音にも問題ないわね」
女医者のリーフが青髪の少女の検診を終えるなり、近くにいた栗色の髪にショートの女性のカスターニャに語りかけた。
「そうか」
「顔の血色にも問題ないし、貴女がこの子の世話をしっかりしていることが分かるわ」
リーフは柔らかな口調で言った。
カスターニャとリーフの目の前にいる青髪の少女の面倒をカスターニャが見ていた。
食べさせたり、体を綺麗にしたり、服を変えるなどを毎日欠かさず行っている。
「いつも来てくれて助かる」
カスターニャはリーフに感謝をした。
「貴女にこの子を押し付けて悪いと思ってるからね」
リーフは申し訳なさそうに言った。カスターニャが少女を発見し、その後少女を診たのはリーフで、最初はリーフが引き取ってものの、怪我の治り具合が異常に早かったため、気味が悪いからと、カスターニャに引き取ってもらうように依頼したのはリーフなのだ。
 しかし、いくら気味が悪いといっても、受け持った患者に何かあったら困るという理由で、週に一回検診に来ているのだ。

リーフは医療器具をバックにしまい、立ち上がった。カスターニャはリーフと一緒に玄関まで来た。
「じゃあ、また一週間後に来るわ、もし何かあったらすぐに知らせて」
「分かった。今日は有難うな」
カスターニャはリーフが出て行くのを見送った。
カスターニャは少女のいる部屋に戻った。
「ん?」
少女の右腕が垂れていることに気づき、カスターニャはゆっくりとした足取りで少女に近づく。
 少女は寝相が悪いのか、時々毛布から腕が出ることがある。
 いつもの事だと思い、カスターニャは少女の右手をそっと掴んだ。その途端にカスターニャの意識は真っ白になった。

 次に気づいた時には、カスターニャは青いアネモネの花が大量に咲いた場所にいた。  
「何だ? ここは」
突然のことにカスターニャは戸惑った。さっきまでは部屋にいたはずが、アネモネの花畑に立っているからだ。
「あの」
不意に声をかけられ、カスターニャが振り向くと、寝ているはずの青髪の少女が立っていた。
「……きみは?」
「わたしは力を蓄えるために眠る必要があったけど、明日には目を覚ませそうです。あなたがわたしを守ってくれたお陰です。有難うございます」
青髪の少女は笑った。
「ここはどこなんだ?」
カスターニャは優しく訊ねた。
光に包まれて落ちてきたり、傷の治りが早い時点で少女が只者ではないと思ってはいたが、少なくとも悪者ではないと感じた。
「ここはあなたと話すために作り出した世界です」
少女は返した。
「綺麗な世界だな」
カスターニャは言った。
アネモネの綺麗さは見ているだけで心が洗われる。
「そう言ってもらえて嬉しいです」
少女は明るい表情で言うと、地面に生えていたアネモネを一本抜いて、カスターニャに差し出した。
何の突拍子もない少女の行動にカスターニャは戸惑いを隠せなかった。
「急にどうしたんだ」
「これ、あげます。青いアネモネの花言葉には希望も含まれているんです。あなたはわたしに希望をくれました。だからわたしはあなたに希望を与えたいんです」
少女は力強く言った。
「希望か、いい言葉だな」
カスターニャは少女からアネモネを受け取った。
「明日起きたら宜しくお願いします」
少女は表情を輝かせた。次の瞬間カスターニャはまた白い光に包まれた。

カスターニャは気がつくと、再び自分の部屋に戻ってきていた。青髪の少女は眠ったままである。
「……きみは不思議な力が使えるんだな」
カスターニャは少女に語りかけた。
「ん?」
左手に違和感を抱き、掌を開くとアネモネがあった。これも少女の力によるものだとカスターニャは感じた。
「明日目が覚めるのを楽しみにしてるぞ」
カスターニャは右手で少女の右手を毛布に入れ、立ち上がった。

カスターニャは少女から貰った一輪のアネモネを花瓶に入れ、部屋に置いた。
リーフにさっきのことを話そうかと考えたが、現実離れしてるので、胸にしまうことにした。


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