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視える後輩看護師の話⑨
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結城李仁が老若男女に非常に人気があるのは周知の事実である。第一に、顔の造作が良い。素の結城は三白眼で無愛想な表情をしているが、何故か笑顔は優し気で、人々の目には麗しい笑顔に映るのだ。加えて学生時代は帰宅部だった割にそこそこ恵まれた体格をしていることも、結城のモテる要素のひとつである。桃太もつい最近知ったことだが、妹である瑠海の一件があってから心霊現象に対抗すべく心身ともに鍛えようと独りで黙々と筋トレをしていたらしい。学生時代の青春をハンドボールに捧げた桃太と比べるとさすがに筋肉量は劣るが、それでもかなり引き締まった体つきである。桃太と結城が働く病棟だけには留まらず、他病棟、他部署、はたまた患者の中にも結城に心酔している人々がいることを桃太は知っていた。時折声を掛けられては丁重に断っている結城の姿を目にするが、事あるごとに「みんな俺の外側しか見ていないんです」と自嘲気味に答えるのがお決まりのパターンだった。結城は多くの人に愛情を差し出されてもなお、自分の容姿に価値はないと思っている。桃太はいまだにそれが不思議だった。
桃太の生霊のことがあった後、結城に尋ねてみたことがある。
「なぁ、お前めちゃくちゃモテるのに、生霊に憑かれることってないのか?」
「ないですね。あれは、皮ではなく魂に吸い寄せられますから」
結城は風呂上がりの桃太の脚を揉みながら、僅かの思案も見せずに答えた。いまだ自分の家に帰らず桃太と同居を続けている結城は、最近ではこのような……桃太の髪を乾かしたり、帰宅後立ち仕事でパンパンの脚を揉んでくれたりするようになった。「経絡の流れが悪くなると、体に良くないですからね」とツボ(経穴と言うらしい)を押さえながら整った指と手のひらでマッサージをされると本当に疲れが吹っ飛ぶ。あり得ないような声を出しながらも桃太が「結城、どこでそんな技を?」と問えば「大学時代、東洋医学サークルに入っていました」と真顔で宣うのだ。そんなサークルがあるのかと言うことと、大学生にとってサークルとは遊ぶために入るものじゃないのか?と言う疑問が脳内に過るが、それどころではない気持ち良さでいつも思考が停止した。
……魂。結城は魂と言うものに拘っている。結城が『皮』と称する外見の美醜は、結城にとって何の判断基準でもないのだ。桃太が気にする腹の贅肉も、頑張って日々セットしているヘアスタイルも、結城は見えていないのだろうか。そもそも、結城は桃太の『何』を以て好きだと口にするのだろうか。
「結城はさ、俺のどこが好きなの?顔?それともやっぱり魂ってやつ?」
自ら口にするのは羞恥の極みだが、表面上は何気なさを装うしかない。決して自分の容姿に自信があるわけではないが、桃太も学生時代はそこそこモテていた自覚はあった。結城の指先が桃太のふくらはぎを丁寧に揉んでいる。ちょうどソファに座る桃太と、足元に跪く結城の目が合った。
「俺は桃太さんが好きですよ」
結城は桃太のふくらはぎから足裏へとその指を滑らせる。ふと微笑んだその表情はあまりにも自然だった。
「だから、それってどう言う……」
「俺の言葉をそのまま受け止めることは難しいですか?」
「……」
どこかで聞いたような台詞を言われ、桃太は閉口した。
「別に揶揄ってはないです。桃太さんの魂もその外側も全部引っくるめて桃太さんですから」
「……そう」
結城の言葉に嘘がないのは知っている。結城は酷く真面目だ。最初は軽薄さが鼻に付く後輩だと思っていたが、中身は素朴で純粋な人間だった。今思えば外側しか見えていなかった自分が馬鹿らしく思える。だから結城は心の底からそう思っているのだろう。『桃太』が好きなのだと。真正面から真っ直ぐに告げられると、自分の柔らかな部分が擽られてているような気分になる。
桃太は結城の頭に手を置き、滑らかなその髪を撫でた。結城がそのままの言葉を綴るならば、自分の気持ちも少し差し出してみても良いのではないかと思える。
「あのさ、俺には魂とかそういう難しいことは分からないし、結城みたいに視たり感じたりすることは出来ない。だからその人を認識するには、外見と人となりを見るしかないんだよな」
「はい」
結城は桃太の脚を揉む手を止め、大人しく身を委ねている。このわんこ然たるや、愛着を湧かざるを得ないではないか。
「結城は自分の外見に価値がないように考えているかもしれないけど、俺はお前の顔、かなり良いと思う」
「……」
白い肌が一面にサッと紅潮する様を見た。血管が拡張し、瞳孔が開く。言葉にした桃太ではなく、言われた結城がここまで動揺するとは思わなかった。外見を褒められることなど、数多あったであろうに。
結城は一度唇を引き結ぶと、ゆっくりと桃太に尋ねた。
「桃太さん、俺の顔好きなんですか?」
「まぁ、そうだな」
「ありがとうございます」
結城は照れたように笑った。釣られて桃太までも顔が赤らんでしまう。どうしようもなく面映い気持ちが胸の辺りから滲み出て、桃太の足先まで伝わってゆくようだ。
「俺、この皮に生まれて良かったです」
「……うん」
またどこか歪曲して捉えていないかが心配だったが、恐らく凡そのことは伝わっているとは思う。はにかんだ表情でそれは分かった。結城と共に過ごすと、言葉というものの不確定さを思い知る。言葉とそれを紡ぎ出す表情や仕草、受けた相手の反応。全てが会話の要素として必要なのだ。結城との会話は一進一退の繰り返しで、かなり不毛な過程を踏まなければならない。しかしそれを厭わない自分がいることに、桃太は少しばかり納得していた。
結城の頭から手を離すと、桃太はその赤い耳を摘む。結城の耳朶はいまだ熱を帯び、触り心地が良かった。
「まぁ、だから結城も気をつけろ。もしかしたら、とんでもなく変わり種の生霊が結城に惚れるかもしれないからな」
「俺は大丈夫ですよ」
そう言って結城は笑っていたが……。
そんな会話を交わしたのがつい三日前のことだ。
今日、夜勤明けの桃太は夕方まで死んだように眠っていた。ようやく桃太が目を覚ましたのが午後七時。結城は日勤で、いつもなら桃太が家にいる日はなるべく早く帰宅するのだが、珍しくこの時間になっても帰って来ない。しかし桃太はどうせ残業だろうとそれほど深刻に考えず、夕食を作りながら撮り溜めていたアニメを観たりして過ごしていた。
不意にガチャリと玄関のドアが開く音とともに、床に何かが落ちたような鈍い音がして桃太は飛び上がる。
「……結城?」
恐る恐る玄関へ向かうと、床の上に結城が倒れていた。慌てて抱き起こすと、顔面蒼白な結城は桃太の体にしがみ付いて来る。
「おい、大丈夫か?」
「……桃太さん、俺失敗しました」
結城はそれだけ言うと、脱力して桃太に凭れ掛かった。耳元に結城の頭部があるが、息が荒く、酷く辛そうだ。体温を確かめるために触れた首筋が熱かった。さすがの桃太も結城の様子が尋常ではないと察し、ひとまずその体を何とか抱えるとベッドまで運んだ。しかしやっとの思いでベッドへ横たえても、結城は桃太の体に腕を回したまま離そうとしない。
「結城、ちょっと……。一旦離してくれ」
「桃太さんから少しでも離れたら、駄目なんです……」
そう言って結城は力尽くで桃太をベッドの上に引き上げると、さらに桃太の体に絡みつく。
「結城、お前どうしたんだよ。とりあえず何があったんだ?」
桃太はもう無理矢理引き剥がそうとするのを止め、大人しく結城の腕の中に引き込まれた。背中を撫でてやると、少しだけ結城の呼吸が和らぐ。
「桃太さん、ナースステーションにコピー機がありますよね」
「ああ」
結城がなぜ今病棟のコピー機の話を始めたのか分からないが、桃太はとりあえず頷いた。病棟の片隅、カンファレンスルームの横。配薬カートが置かれている場所にコピー機がある。そこはいつも人の気配が無くひっそりとしていて、何となく薄暗い雰囲気だ。
「夕方になると、コピー機の周りを白衣がうろうろしているんです。白衣だけで、脚とか腕とかは無いんですけど」
「……」
おい、そんなことを言われたらこれからコピー機が使えなくなるだろう……。
桃太は突如始まった怖い話に体を硬くした。耳を塞いでしまいたい思いを必死に堪え、続く結城の言葉を待つ。結城は辛そうに一呼吸置き、桃太の肩口に頭を埋めた。
「……いつも、目を合わせないように注意をしてたんですけど……油断しました。あれに顔が付いていて」
「……目が合うとどうなるんだ?」
白衣からゆっくりと目線が上に上がっていく様子が嫌でも脳内で再現されてしまう。その先には白い顎、そして……。桃太は怖いのに想像をしてしまう自分が嫌になる。
「認識されます。そして、憑かれる……。今の俺みたいに」
「え!?」
桃太は思わず結城の体を引き剥がし、両腕を掴んでその顔をマジマジと見つめた。結城は目を開けているのも億劫なようで、眉間に皺を寄せている。普段汗などかかない癖に少し額も汗ばんでいるようだ。つい先日桃太も生霊による霊障を受けたばかりなので、結城の苦痛はよく分かった。
「大丈夫です。憑かれはしましたが、本体は病院にいます。地縛霊みたいなものでしょう。今俺の中にあるのは、その残滓です……」
「残滓……?」
「僅かな影響が残っている、と言う意味です」
「なるほど」
しかしその残滓と言えど、これほどまでに影響を与える本体の力はかなり強いはずだ。普段何の気無しにコピー機の周囲をうろうろしていたことを思い出し、桃太は背筋が寒くなった。
「その、何か俺に出来ることはないか?」
先日の生霊の件では、桃太の症状を緩和するために結城は色々と策を講じた。身体的接触、吸引性皮下出血(キスマーク)である。桃太はじわりと汗を掻きながらも、覚悟を決めようと思った。生霊の件では結城にかなり助けられたのだ。先輩として後輩に恩を受けたままには出来ない。
結城は桃太の言葉に逡巡するような表情を浮かべた。この表情を何度目にしたことか。桃太は「何でも言ってみろ。俺に出来ることなら手伝うから」と漢気を見せるように胸を張った。
「……では、口を開けてください」
口を開けて何をするのだろう。桃太はとりあえず言われるがままにぱかりと口を開いた。
「そのまま、俺の口の中に桃太さんの唾液を」
「いやいや」
それはさすがにマニアック過ぎないか?
躊躇する桃太に結城が息も絶え絶え解説をする。
「桃太さんの、唾液……多分浄化作用があると思うんです」
「そんな聖水みたいな作用が?」
桃太は成人指定のアニメか漫画のような展開に若干引き気味になったが、大真面目な上に辛そうな結城を見て神妙な顔に戻した。結城はなおも続ける。
「古来から日本では唾液に霊力が宿ると言われて来ました……。日本書紀に登場する速玉之男命(ハヤタマノオノカミ)は、黄泉の国から帰る際、……伊弉諾尊(イザナギノミコト)が吐いた唾から生まれた神です。加えて海幸彦の話では……」
「いや、いいから。お前はもう喋るな」
苦しいながらも桃太のために懇切丁寧に根拠を述べようとしていた結城は、その制止の一言で口を噤んだ。しかし閉じたはずの唇からは堪えようのない息が漏れている。
「もう分かったから」
桃太は溜め息とともに結城の顔を見据えた。結城は苦悶の表情を浮かべてはいるが、桃太を正面から見つめている。三白眼の目元は淡く潤み、長く伸びた睫毛は湿り気を帯びていた。結城は荒い呼吸の合間に「桃太さん」と声を絞り出す。
桃太は結城の頬に両手を添えると、結城の唇に自分のそれを重ねた。僅かに開かれた口の中に自分の舌を入れ込み、纏わり付く唾液を結城の舌に載せる。他人の粘膜に直接触れるのは久しぶりで、桃太の背筋は痺れたように強張った。チラリと見遣れば、目の前の結城は驚いたように目を見開いて固まっている。
……俺の唾液をくれって言ったのはお前だろ?
しかし、そう言えば結城はその方法については言及をしていなかったことに気付きハッとした。
もしかして、もっと別の方法があったとか?
冷静に考えてみれば、桃太の唾液を結城の口の中に入れる方法はキスだけではない。口の中の唾液をスプーンで掬ってもいいし、ストローと言う手もある(それも道義的にどうかとは思うが)。
桃太が怯んで動きを止めると、突如結城は反撃とばかりにその頭を抱えて深く口付けた。無反応だった舌が桃太のそれを絡め取る。強請るように何度も舌全体を撫で回され、息をすることも出来ず桃太の喉元から小さな声が漏れた。
結城はいつの間にか桃太の体に馬乗りになるように体重を掛け、覆い被さっている。気力が戻ってきたのか桃太の頭を抱えていた手のひらは、髪や頬を撫でたりと忙しい。どれくらい結城の舌に翻弄されていただろう。執拗に舐め回す結城の舌に、じわりと懐かしい感覚が桃太の下腹に広がってゆく。
駄目だ。それだけは阻止せねば。
「……ちょっと、結城……、落ち着け……ッ」
桃太は全力で結城の体を押し退け、口の端から零れ落ちた唾液を拭った。
「……勿体無い」
何を指してそう呟いたのかと思えば、結城は桃太の唇の端に顔を寄せ、拭い損ねた唾液を吸い上げる。
もう何と言っていいのか。
桃太はとりあえず少し表情が良くなった結城に安堵した。
「……結城、今の気分はどうだ?」
桃太としては結城の体調を気遣ってそう声を掛けたのだが、結城からの返答は「気持ちよかったです」だった。
「……お前な」
呆れた桃太が結城の額を小突くと、まだ怠さの残る結城はふらりと床へ落ちそうになる。桃太が慌ててその体を支えると、再び二人ともベッドへ倒れ込んだ。
「……ごめんな。別にキスしなくても唾液をお前に飲ませることは出来たのに」
桃太の言葉に結城が目を瞠り、確かめるようにその顔を覗き込む。
「やっぱり、あれはキスですよね。桃太さん、俺にキスしたんですよね?」
「……えっと」
蒼白だった結城の顔にもほんの少しだけ赤みが差している。これは十中八九あの行為による火照りではないだろうか。そう考えると、今の自分の惨状はどんな風に結城の目に映っているのか……。想像するだに恐ろしい。
「…………そういう事になるか」
「はい」
「そうだな」
桃太は徐に起き上がると、胡座をかいて腕を組んだ。背後で結城も起き上がった気配がする。
「俺の頼みを聞いてくれたからとは言え、嬉しいです」
後ろから体重を掛けるように腕を回してきた結城の重みで、桃太の体は前に傾いた。触れた背中がまだ熱い。いつも触れる指先は凍えそうなほど冷たいのに。
桃太は結城から突き付けられた事実に、半ば呆然としていた。いつもの結城からの一方的なキスとは違う。人助けとは言え、自ら結城にキスをしたという事実……しかもディープキス……。
桃太にとってのキスの意味とその行為に対する衝動が頭の中でぐるぐると回っていた。桃太にとって、キスは愛情表現だ。それは今も変わらない。
桃太が考え込んでいる間にも、結城は甘えるように桃太の首筋に額を擦り付けてくる。
「……おい、ちゃんと寝てろ。まだ本調子じゃないだろ?」
背中に凭れ掛かっている結城の体をベッドに沈ませると、桃太は眉尻が下がったその額を撫でた。
「……桃太さん、ありがとうございます」
結城は桃太の手のひらが心地良いのか、目を細めて桃太を見上げている。
「ああ……。でもさ、これでその、地縛霊の影響って無くなったのか?」
「いえ。……今は少し治っているだけです。また多分発作みたいに苦しくなると思います。以前もそうでした」
結城によると以前同じようなことが起こったことがあり、その時は祖父が懇意にしている神主の手を借りて霊障を押さえ込んだと言う。では今回もそのように出来ないかと提案すると、結城は首を振った。
「それが、処置を施してくれた方はもう引退していて……、無理なんです」
当時行われたのは、数時間毎に魂と体を清める儀式だったそうだ。そのことから着想を得て、結城なりに導き出した対応が『桃太から唾液をもらう』だった。
「じゃ、今回はどうしたら……」
「数時間おきに桃太さんの唾液をもらうのが最適かと。現に今体が楽になってますし」
「……」
桃太は「マジか……」と呟きそうになりながらも寸前で耐えた。結城が申し訳なさそうな表情をする。
「……桃太さん、すみません。巻き込んでしまって」
「いや、俺もこないだかなり助けてもらったし」
あの時も数回のキスとともに定期的に結城にキスマークを付けられた。否、付けてもらった。結城に唾液を渡す方法となると、先ほどのキス以外にも方法は無くはない。
「分かったよ。俺は何時間おきにお前に唾液を与えたらいいんだ?」
「恐らく二、三時間かと」
「オーケー」
桃太の返事に安心した様子の結城の目が、とろとろと今にも閉じそうになってきた。桃太は「もう休め」と布団を掛け直すと、結城の少し汗で湿った前髪を掻き上げてやる。寝付きのいい結城は数秒もしないうちに穏やかな寝息を立て、眠りについた。
桃太はその寝顔を見ながら、大きく溜め息を吐く。
「……」
何故俺は結城に。
『結城にキスをした』と言う事実に加えて、さらに追い討ちを掛ける重大な現象が……。
男の体は正直だ。正直過ぎることが恨めしい。衝動的に沸き上がってきた自身の欲に桃太は打ちのめされていた。
「……結城よ。俺は一体どうすればいいんだ……」
途方に暮れ独りごちてみたところで、相手からの反応は無い。すやすやと眠る目の縁は、既にいつも通りの血の気の無さを取り戻している。桃太がその目元に軽く触れると、結城は小さく身じろいだ。
結城李仁は、桃太の可愛い……情を感じている後輩だ。あれだけ懐かれれば、情も沸くだろう。桃太に対し誠実で、その誠実さが大概ズレてはいるが、何より優しさがある。
陥落しつつある自分の心奥。これを葛藤と言うのか抗いと言うのか、桃太は自身でもどうも解決出来ない感情に振り回されている。人に何かしらの感情を抱くことにこんなに理由付けが必要だっただろうか……。
桃太はもう一度結城を恨めしく見つめると、頭を掻きながら自分もベッドに横になった。結城の異変にすぐに気がつくことが出来るように、なるべくそばにいた方がいいだろう。心なしか、桃太が結城の体に触れている方がその呼吸が穏やかになる気がする。
桃太は結城の背中をさすりながら目を閉じた。手のひらを通し、結城の落ち着いた呼吸を感じる。愛犬のりんごがまだ小さかった頃、こうやってベッドで一緒に眠ったことを思い出した。しかし目の前のこの大型犬は、桃太の愛犬に似ているどころか、もはや自分自身に弁明が出来ないほどの存在になってしまっている。件の後輩は桃太の気持ちなど知る由もないだろうが。
続
閑話休題まんが
「ある夜勤にて」
桃太の生霊のことがあった後、結城に尋ねてみたことがある。
「なぁ、お前めちゃくちゃモテるのに、生霊に憑かれることってないのか?」
「ないですね。あれは、皮ではなく魂に吸い寄せられますから」
結城は風呂上がりの桃太の脚を揉みながら、僅かの思案も見せずに答えた。いまだ自分の家に帰らず桃太と同居を続けている結城は、最近ではこのような……桃太の髪を乾かしたり、帰宅後立ち仕事でパンパンの脚を揉んでくれたりするようになった。「経絡の流れが悪くなると、体に良くないですからね」とツボ(経穴と言うらしい)を押さえながら整った指と手のひらでマッサージをされると本当に疲れが吹っ飛ぶ。あり得ないような声を出しながらも桃太が「結城、どこでそんな技を?」と問えば「大学時代、東洋医学サークルに入っていました」と真顔で宣うのだ。そんなサークルがあるのかと言うことと、大学生にとってサークルとは遊ぶために入るものじゃないのか?と言う疑問が脳内に過るが、それどころではない気持ち良さでいつも思考が停止した。
……魂。結城は魂と言うものに拘っている。結城が『皮』と称する外見の美醜は、結城にとって何の判断基準でもないのだ。桃太が気にする腹の贅肉も、頑張って日々セットしているヘアスタイルも、結城は見えていないのだろうか。そもそも、結城は桃太の『何』を以て好きだと口にするのだろうか。
「結城はさ、俺のどこが好きなの?顔?それともやっぱり魂ってやつ?」
自ら口にするのは羞恥の極みだが、表面上は何気なさを装うしかない。決して自分の容姿に自信があるわけではないが、桃太も学生時代はそこそこモテていた自覚はあった。結城の指先が桃太のふくらはぎを丁寧に揉んでいる。ちょうどソファに座る桃太と、足元に跪く結城の目が合った。
「俺は桃太さんが好きですよ」
結城は桃太のふくらはぎから足裏へとその指を滑らせる。ふと微笑んだその表情はあまりにも自然だった。
「だから、それってどう言う……」
「俺の言葉をそのまま受け止めることは難しいですか?」
「……」
どこかで聞いたような台詞を言われ、桃太は閉口した。
「別に揶揄ってはないです。桃太さんの魂もその外側も全部引っくるめて桃太さんですから」
「……そう」
結城の言葉に嘘がないのは知っている。結城は酷く真面目だ。最初は軽薄さが鼻に付く後輩だと思っていたが、中身は素朴で純粋な人間だった。今思えば外側しか見えていなかった自分が馬鹿らしく思える。だから結城は心の底からそう思っているのだろう。『桃太』が好きなのだと。真正面から真っ直ぐに告げられると、自分の柔らかな部分が擽られてているような気分になる。
桃太は結城の頭に手を置き、滑らかなその髪を撫でた。結城がそのままの言葉を綴るならば、自分の気持ちも少し差し出してみても良いのではないかと思える。
「あのさ、俺には魂とかそういう難しいことは分からないし、結城みたいに視たり感じたりすることは出来ない。だからその人を認識するには、外見と人となりを見るしかないんだよな」
「はい」
結城は桃太の脚を揉む手を止め、大人しく身を委ねている。このわんこ然たるや、愛着を湧かざるを得ないではないか。
「結城は自分の外見に価値がないように考えているかもしれないけど、俺はお前の顔、かなり良いと思う」
「……」
白い肌が一面にサッと紅潮する様を見た。血管が拡張し、瞳孔が開く。言葉にした桃太ではなく、言われた結城がここまで動揺するとは思わなかった。外見を褒められることなど、数多あったであろうに。
結城は一度唇を引き結ぶと、ゆっくりと桃太に尋ねた。
「桃太さん、俺の顔好きなんですか?」
「まぁ、そうだな」
「ありがとうございます」
結城は照れたように笑った。釣られて桃太までも顔が赤らんでしまう。どうしようもなく面映い気持ちが胸の辺りから滲み出て、桃太の足先まで伝わってゆくようだ。
「俺、この皮に生まれて良かったです」
「……うん」
またどこか歪曲して捉えていないかが心配だったが、恐らく凡そのことは伝わっているとは思う。はにかんだ表情でそれは分かった。結城と共に過ごすと、言葉というものの不確定さを思い知る。言葉とそれを紡ぎ出す表情や仕草、受けた相手の反応。全てが会話の要素として必要なのだ。結城との会話は一進一退の繰り返しで、かなり不毛な過程を踏まなければならない。しかしそれを厭わない自分がいることに、桃太は少しばかり納得していた。
結城の頭から手を離すと、桃太はその赤い耳を摘む。結城の耳朶はいまだ熱を帯び、触り心地が良かった。
「まぁ、だから結城も気をつけろ。もしかしたら、とんでもなく変わり種の生霊が結城に惚れるかもしれないからな」
「俺は大丈夫ですよ」
そう言って結城は笑っていたが……。
そんな会話を交わしたのがつい三日前のことだ。
今日、夜勤明けの桃太は夕方まで死んだように眠っていた。ようやく桃太が目を覚ましたのが午後七時。結城は日勤で、いつもなら桃太が家にいる日はなるべく早く帰宅するのだが、珍しくこの時間になっても帰って来ない。しかし桃太はどうせ残業だろうとそれほど深刻に考えず、夕食を作りながら撮り溜めていたアニメを観たりして過ごしていた。
不意にガチャリと玄関のドアが開く音とともに、床に何かが落ちたような鈍い音がして桃太は飛び上がる。
「……結城?」
恐る恐る玄関へ向かうと、床の上に結城が倒れていた。慌てて抱き起こすと、顔面蒼白な結城は桃太の体にしがみ付いて来る。
「おい、大丈夫か?」
「……桃太さん、俺失敗しました」
結城はそれだけ言うと、脱力して桃太に凭れ掛かった。耳元に結城の頭部があるが、息が荒く、酷く辛そうだ。体温を確かめるために触れた首筋が熱かった。さすがの桃太も結城の様子が尋常ではないと察し、ひとまずその体を何とか抱えるとベッドまで運んだ。しかしやっとの思いでベッドへ横たえても、結城は桃太の体に腕を回したまま離そうとしない。
「結城、ちょっと……。一旦離してくれ」
「桃太さんから少しでも離れたら、駄目なんです……」
そう言って結城は力尽くで桃太をベッドの上に引き上げると、さらに桃太の体に絡みつく。
「結城、お前どうしたんだよ。とりあえず何があったんだ?」
桃太はもう無理矢理引き剥がそうとするのを止め、大人しく結城の腕の中に引き込まれた。背中を撫でてやると、少しだけ結城の呼吸が和らぐ。
「桃太さん、ナースステーションにコピー機がありますよね」
「ああ」
結城がなぜ今病棟のコピー機の話を始めたのか分からないが、桃太はとりあえず頷いた。病棟の片隅、カンファレンスルームの横。配薬カートが置かれている場所にコピー機がある。そこはいつも人の気配が無くひっそりとしていて、何となく薄暗い雰囲気だ。
「夕方になると、コピー機の周りを白衣がうろうろしているんです。白衣だけで、脚とか腕とかは無いんですけど」
「……」
おい、そんなことを言われたらこれからコピー機が使えなくなるだろう……。
桃太は突如始まった怖い話に体を硬くした。耳を塞いでしまいたい思いを必死に堪え、続く結城の言葉を待つ。結城は辛そうに一呼吸置き、桃太の肩口に頭を埋めた。
「……いつも、目を合わせないように注意をしてたんですけど……油断しました。あれに顔が付いていて」
「……目が合うとどうなるんだ?」
白衣からゆっくりと目線が上に上がっていく様子が嫌でも脳内で再現されてしまう。その先には白い顎、そして……。桃太は怖いのに想像をしてしまう自分が嫌になる。
「認識されます。そして、憑かれる……。今の俺みたいに」
「え!?」
桃太は思わず結城の体を引き剥がし、両腕を掴んでその顔をマジマジと見つめた。結城は目を開けているのも億劫なようで、眉間に皺を寄せている。普段汗などかかない癖に少し額も汗ばんでいるようだ。つい先日桃太も生霊による霊障を受けたばかりなので、結城の苦痛はよく分かった。
「大丈夫です。憑かれはしましたが、本体は病院にいます。地縛霊みたいなものでしょう。今俺の中にあるのは、その残滓です……」
「残滓……?」
「僅かな影響が残っている、と言う意味です」
「なるほど」
しかしその残滓と言えど、これほどまでに影響を与える本体の力はかなり強いはずだ。普段何の気無しにコピー機の周囲をうろうろしていたことを思い出し、桃太は背筋が寒くなった。
「その、何か俺に出来ることはないか?」
先日の生霊の件では、桃太の症状を緩和するために結城は色々と策を講じた。身体的接触、吸引性皮下出血(キスマーク)である。桃太はじわりと汗を掻きながらも、覚悟を決めようと思った。生霊の件では結城にかなり助けられたのだ。先輩として後輩に恩を受けたままには出来ない。
結城は桃太の言葉に逡巡するような表情を浮かべた。この表情を何度目にしたことか。桃太は「何でも言ってみろ。俺に出来ることなら手伝うから」と漢気を見せるように胸を張った。
「……では、口を開けてください」
口を開けて何をするのだろう。桃太はとりあえず言われるがままにぱかりと口を開いた。
「そのまま、俺の口の中に桃太さんの唾液を」
「いやいや」
それはさすがにマニアック過ぎないか?
躊躇する桃太に結城が息も絶え絶え解説をする。
「桃太さんの、唾液……多分浄化作用があると思うんです」
「そんな聖水みたいな作用が?」
桃太は成人指定のアニメか漫画のような展開に若干引き気味になったが、大真面目な上に辛そうな結城を見て神妙な顔に戻した。結城はなおも続ける。
「古来から日本では唾液に霊力が宿ると言われて来ました……。日本書紀に登場する速玉之男命(ハヤタマノオノカミ)は、黄泉の国から帰る際、……伊弉諾尊(イザナギノミコト)が吐いた唾から生まれた神です。加えて海幸彦の話では……」
「いや、いいから。お前はもう喋るな」
苦しいながらも桃太のために懇切丁寧に根拠を述べようとしていた結城は、その制止の一言で口を噤んだ。しかし閉じたはずの唇からは堪えようのない息が漏れている。
「もう分かったから」
桃太は溜め息とともに結城の顔を見据えた。結城は苦悶の表情を浮かべてはいるが、桃太を正面から見つめている。三白眼の目元は淡く潤み、長く伸びた睫毛は湿り気を帯びていた。結城は荒い呼吸の合間に「桃太さん」と声を絞り出す。
桃太は結城の頬に両手を添えると、結城の唇に自分のそれを重ねた。僅かに開かれた口の中に自分の舌を入れ込み、纏わり付く唾液を結城の舌に載せる。他人の粘膜に直接触れるのは久しぶりで、桃太の背筋は痺れたように強張った。チラリと見遣れば、目の前の結城は驚いたように目を見開いて固まっている。
……俺の唾液をくれって言ったのはお前だろ?
しかし、そう言えば結城はその方法については言及をしていなかったことに気付きハッとした。
もしかして、もっと別の方法があったとか?
冷静に考えてみれば、桃太の唾液を結城の口の中に入れる方法はキスだけではない。口の中の唾液をスプーンで掬ってもいいし、ストローと言う手もある(それも道義的にどうかとは思うが)。
桃太が怯んで動きを止めると、突如結城は反撃とばかりにその頭を抱えて深く口付けた。無反応だった舌が桃太のそれを絡め取る。強請るように何度も舌全体を撫で回され、息をすることも出来ず桃太の喉元から小さな声が漏れた。
結城はいつの間にか桃太の体に馬乗りになるように体重を掛け、覆い被さっている。気力が戻ってきたのか桃太の頭を抱えていた手のひらは、髪や頬を撫でたりと忙しい。どれくらい結城の舌に翻弄されていただろう。執拗に舐め回す結城の舌に、じわりと懐かしい感覚が桃太の下腹に広がってゆく。
駄目だ。それだけは阻止せねば。
「……ちょっと、結城……、落ち着け……ッ」
桃太は全力で結城の体を押し退け、口の端から零れ落ちた唾液を拭った。
「……勿体無い」
何を指してそう呟いたのかと思えば、結城は桃太の唇の端に顔を寄せ、拭い損ねた唾液を吸い上げる。
もう何と言っていいのか。
桃太はとりあえず少し表情が良くなった結城に安堵した。
「……結城、今の気分はどうだ?」
桃太としては結城の体調を気遣ってそう声を掛けたのだが、結城からの返答は「気持ちよかったです」だった。
「……お前な」
呆れた桃太が結城の額を小突くと、まだ怠さの残る結城はふらりと床へ落ちそうになる。桃太が慌ててその体を支えると、再び二人ともベッドへ倒れ込んだ。
「……ごめんな。別にキスしなくても唾液をお前に飲ませることは出来たのに」
桃太の言葉に結城が目を瞠り、確かめるようにその顔を覗き込む。
「やっぱり、あれはキスですよね。桃太さん、俺にキスしたんですよね?」
「……えっと」
蒼白だった結城の顔にもほんの少しだけ赤みが差している。これは十中八九あの行為による火照りではないだろうか。そう考えると、今の自分の惨状はどんな風に結城の目に映っているのか……。想像するだに恐ろしい。
「…………そういう事になるか」
「はい」
「そうだな」
桃太は徐に起き上がると、胡座をかいて腕を組んだ。背後で結城も起き上がった気配がする。
「俺の頼みを聞いてくれたからとは言え、嬉しいです」
後ろから体重を掛けるように腕を回してきた結城の重みで、桃太の体は前に傾いた。触れた背中がまだ熱い。いつも触れる指先は凍えそうなほど冷たいのに。
桃太は結城から突き付けられた事実に、半ば呆然としていた。いつもの結城からの一方的なキスとは違う。人助けとは言え、自ら結城にキスをしたという事実……しかもディープキス……。
桃太にとってのキスの意味とその行為に対する衝動が頭の中でぐるぐると回っていた。桃太にとって、キスは愛情表現だ。それは今も変わらない。
桃太が考え込んでいる間にも、結城は甘えるように桃太の首筋に額を擦り付けてくる。
「……おい、ちゃんと寝てろ。まだ本調子じゃないだろ?」
背中に凭れ掛かっている結城の体をベッドに沈ませると、桃太は眉尻が下がったその額を撫でた。
「……桃太さん、ありがとうございます」
結城は桃太の手のひらが心地良いのか、目を細めて桃太を見上げている。
「ああ……。でもさ、これでその、地縛霊の影響って無くなったのか?」
「いえ。……今は少し治っているだけです。また多分発作みたいに苦しくなると思います。以前もそうでした」
結城によると以前同じようなことが起こったことがあり、その時は祖父が懇意にしている神主の手を借りて霊障を押さえ込んだと言う。では今回もそのように出来ないかと提案すると、結城は首を振った。
「それが、処置を施してくれた方はもう引退していて……、無理なんです」
当時行われたのは、数時間毎に魂と体を清める儀式だったそうだ。そのことから着想を得て、結城なりに導き出した対応が『桃太から唾液をもらう』だった。
「じゃ、今回はどうしたら……」
「数時間おきに桃太さんの唾液をもらうのが最適かと。現に今体が楽になってますし」
「……」
桃太は「マジか……」と呟きそうになりながらも寸前で耐えた。結城が申し訳なさそうな表情をする。
「……桃太さん、すみません。巻き込んでしまって」
「いや、俺もこないだかなり助けてもらったし」
あの時も数回のキスとともに定期的に結城にキスマークを付けられた。否、付けてもらった。結城に唾液を渡す方法となると、先ほどのキス以外にも方法は無くはない。
「分かったよ。俺は何時間おきにお前に唾液を与えたらいいんだ?」
「恐らく二、三時間かと」
「オーケー」
桃太の返事に安心した様子の結城の目が、とろとろと今にも閉じそうになってきた。桃太は「もう休め」と布団を掛け直すと、結城の少し汗で湿った前髪を掻き上げてやる。寝付きのいい結城は数秒もしないうちに穏やかな寝息を立て、眠りについた。
桃太はその寝顔を見ながら、大きく溜め息を吐く。
「……」
何故俺は結城に。
『結城にキスをした』と言う事実に加えて、さらに追い討ちを掛ける重大な現象が……。
男の体は正直だ。正直過ぎることが恨めしい。衝動的に沸き上がってきた自身の欲に桃太は打ちのめされていた。
「……結城よ。俺は一体どうすればいいんだ……」
途方に暮れ独りごちてみたところで、相手からの反応は無い。すやすやと眠る目の縁は、既にいつも通りの血の気の無さを取り戻している。桃太がその目元に軽く触れると、結城は小さく身じろいだ。
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桃太はもう一度結城を恨めしく見つめると、頭を掻きながら自分もベッドに横になった。結城の異変にすぐに気がつくことが出来るように、なるべくそばにいた方がいいだろう。心なしか、桃太が結城の体に触れている方がその呼吸が穏やかになる気がする。
桃太は結城の背中をさすりながら目を閉じた。手のひらを通し、結城の落ち着いた呼吸を感じる。愛犬のりんごがまだ小さかった頃、こうやってベッドで一緒に眠ったことを思い出した。しかし目の前のこの大型犬は、桃太の愛犬に似ているどころか、もはや自分自身に弁明が出来ないほどの存在になってしまっている。件の後輩は桃太の気持ちなど知る由もないだろうが。
続
閑話休題まんが
「ある夜勤にて」
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