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おにいちゃんは帰ってこない
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このあたりについては、物理学のぶの字にも思考停止する文系脳のさゆりには、その真偽を検証する素地すらないので、まるきり鵜呑みベースで兄の説明を聞いた。
みつるはゴリゴリの理系なので、彼が原口の本の内容を説明に用いるということは、きっとある程度合理的な推測なのだ、うん、多分、と思いながら。
ようするに、兄は運悪く異世界に転移してしまい、そこで1年暮らすうちにこちらでは10年経っていたと。
なるほど。じゃあ、
「じゃあなんでもっと早くこの穴作って連絡してこなかったの?」
「良い質問だな。」
こと自分の得意分野になるとウエメセになる兄に池上何某かお前は、とイラっとしながらもさゆりは後の言葉を待った。
結論としては、初めて成功したのが今回のぽっかりで、このタイミングが最短だったようだ。
この穴は兄の能力、よりファンタジックに言えば魔法で作った穴らしいが、その習得と実用化に一年かかったのだという。
ほらまた、処理しきれない事実出て来た!
さゆりは頭を抱えたが、仕方なく続きを聞いた。
すでにだいぶ胡散臭い原口氏によると、移転先の世界は物理法則からさゆりたちの世界とは違うらしい。
時空の密度の違いが電子の確率波の違いを生んで全く違う力学がってうるせぇばか。
こっちが分からない頭の良い話をするな。
とさゆりはみつるを止めた。
そして、この世界の万物の動力源は生命体が生み出す魔力である。
世界自体が一つの独立した生命体で、自然は全てその生命体、母神というらしいが、の生み出す魔力で形成されている。
その世界に生きる生命もまた、母神の魔力を体に蓄積させるので魔法が使える。
中でも、地球から転移して来た人間は、その身体構造が取り込んだ魔力をものすごく増幅させるように作用するらしい。
だから、母神の世界では地球から人間が転移してくると保護し、帰化教育を施した上で国の職員にして、その能力を利用するのだそうだ。
原口の書籍はそれ自体に魔法が施されていたようで、一通り読むとそれまでわからなかった言葉や文字がわかるようになっていた。
そしてわかるようになった彼らの言動から察した。
彼らの意向に従わなければ、割とヤバいことになると。
こうしてみつるは、国家から生命を保証してもらう対価として、国の仕事に従事することになったのだった。
以上が、かいつまんで聞いた事の顛末である。
「いや、そんな強制公務員やってないで帰って来なよ。」
さゆりは思わず言ってしまった。
だってもう、そのぽっかりさえ乗り越えてしまえばどんだけ好きに生きたって命の保証なんていくらでもある。基本的人権最高!
「それは出来ないんだ。」
「そりゃ確かに、現代日本で職歴のない見た目二十歳の大学中退三十路超えはなかなかハードモードだけど、私や両親も協力するし…。」
言い募るさゆりに、みつるは首を振った。
「体が保たないと思う。俺の体は、そっちに戻った途端これまでの時間経過を一気に受けることになる。つまり代謝も9年分一気に起こるんだけど、それに合わせて9年分の栄養を補給できないと、俺の体は朽ちて消えてしまう。」
そうか。時空をつなぐ魔法があるということは、それを使って帰ろうとした先人がいておかしくないわけで。
でも、現時点で異世界の存在なんて空想の世界としか思われていない。
ということは、もうお察しだ。
つまり、未だかつて誰も帰って来れたことがないのだろう。
「俺は、もう一生こっちで暮らすしかないんだ。」
10年ぶりに再会した兄は異世界で生きる覚悟を決めていた。
みつるはゴリゴリの理系なので、彼が原口の本の内容を説明に用いるということは、きっとある程度合理的な推測なのだ、うん、多分、と思いながら。
ようするに、兄は運悪く異世界に転移してしまい、そこで1年暮らすうちにこちらでは10年経っていたと。
なるほど。じゃあ、
「じゃあなんでもっと早くこの穴作って連絡してこなかったの?」
「良い質問だな。」
こと自分の得意分野になるとウエメセになる兄に池上何某かお前は、とイラっとしながらもさゆりは後の言葉を待った。
結論としては、初めて成功したのが今回のぽっかりで、このタイミングが最短だったようだ。
この穴は兄の能力、よりファンタジックに言えば魔法で作った穴らしいが、その習得と実用化に一年かかったのだという。
ほらまた、処理しきれない事実出て来た!
さゆりは頭を抱えたが、仕方なく続きを聞いた。
すでにだいぶ胡散臭い原口氏によると、移転先の世界は物理法則からさゆりたちの世界とは違うらしい。
時空の密度の違いが電子の確率波の違いを生んで全く違う力学がってうるせぇばか。
こっちが分からない頭の良い話をするな。
とさゆりはみつるを止めた。
そして、この世界の万物の動力源は生命体が生み出す魔力である。
世界自体が一つの独立した生命体で、自然は全てその生命体、母神というらしいが、の生み出す魔力で形成されている。
その世界に生きる生命もまた、母神の魔力を体に蓄積させるので魔法が使える。
中でも、地球から転移して来た人間は、その身体構造が取り込んだ魔力をものすごく増幅させるように作用するらしい。
だから、母神の世界では地球から人間が転移してくると保護し、帰化教育を施した上で国の職員にして、その能力を利用するのだそうだ。
原口の書籍はそれ自体に魔法が施されていたようで、一通り読むとそれまでわからなかった言葉や文字がわかるようになっていた。
そしてわかるようになった彼らの言動から察した。
彼らの意向に従わなければ、割とヤバいことになると。
こうしてみつるは、国家から生命を保証してもらう対価として、国の仕事に従事することになったのだった。
以上が、かいつまんで聞いた事の顛末である。
「いや、そんな強制公務員やってないで帰って来なよ。」
さゆりは思わず言ってしまった。
だってもう、そのぽっかりさえ乗り越えてしまえばどんだけ好きに生きたって命の保証なんていくらでもある。基本的人権最高!
「それは出来ないんだ。」
「そりゃ確かに、現代日本で職歴のない見た目二十歳の大学中退三十路超えはなかなかハードモードだけど、私や両親も協力するし…。」
言い募るさゆりに、みつるは首を振った。
「体が保たないと思う。俺の体は、そっちに戻った途端これまでの時間経過を一気に受けることになる。つまり代謝も9年分一気に起こるんだけど、それに合わせて9年分の栄養を補給できないと、俺の体は朽ちて消えてしまう。」
そうか。時空をつなぐ魔法があるということは、それを使って帰ろうとした先人がいておかしくないわけで。
でも、現時点で異世界の存在なんて空想の世界としか思われていない。
ということは、もうお察しだ。
つまり、未だかつて誰も帰って来れたことがないのだろう。
「俺は、もう一生こっちで暮らすしかないんだ。」
10年ぶりに再会した兄は異世界で生きる覚悟を決めていた。
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