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8,転生悪役令嬢の思想。
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「へ?あ、すみません考え事をしてました。
文句言わないで下さい。
大丈夫ですよ。
最近慣れすぎて目を瞑っても手当て出来るようになりましたから。
少しくらい気が逸れた所で手元は狂いません。
何って、いつも通りですよ。
悪役令嬢について考えてました。
あなたを気にしていると心労でハゲそうになるので。
どんな考えかって?
そうですね。
私も人に話すことで仮説が整理されるので、少し聞いて下さい。
そもそも一口に転生悪役令嬢といっても、その表現は一様でなかったりします。
もちろん、良く見る要素はあります。
『溺愛』とか『ざまぁ』とか『チート』とか言われるのがその代表ですね。
でも、『じゃあ悪役令嬢ものが、それらを表現することを目的にしたものか』と問われると、そこまでは言えないと思うんですよね。
というのも、『溺愛』じゃない悪役令嬢ものも、『ざまぁ』じゃない悪役令嬢ものも、『チート』じゃない悪役令嬢ものもたくさんあるからです。
もし、悪役令嬢ものがこれらを表現する手段として選ばれた作品形態だとすれば、作品の殆どがその要素を持つなどもっと分かち難く結びついていないといけないはずです。
だから、これらは、悪役令嬢ものに取り入れられやすい人気の要素ではあっても、悪役令嬢ものはそれを表現することを目的とした創作ではないのです。
そうなると気になるのが、
『では悪役令嬢ものとは本質的に何を意味するジャンルなのか?』
という所ですが、私はこれを『アンチ王道』である、と考えます。
『転生悪役令嬢もの=アンチ王道』という図式が成立するくらい、悪役令嬢ものとアンチ王道は分かち難く結びついているのです。
『アンチ王道』ではない悪役令嬢ものは存在しないとすら断言できます。
まず、『乙女ゲームの世界』これが即ち王道です。
そしてそこに出てくる登場人物が、王道を実行する存在です。
悪役令嬢ものは、ほとんどの場合『悪役令嬢』が、そして合わせ鏡のように、実は『ヒロイン』も王道を実行しません。
王道を実行することで一番利益を享受するはずの主人公が、性格が改悪されていて自滅したり逆に悪役令嬢の味方になってしまったりするのが、悪役令嬢ものの大きな特徴の一つでもあります。
この、転生悪役令嬢がアンチ王道文学であるというのは二つの側面から補強できます。
一つは、既に挙げた『溺愛』や『ざまぁ』や『チート』が、『アンチ王道』ととても相性が良いと言う点です。
本来愛されないはずが愛される、本来強い立場の側が転落する、本来負ける立場のはずが物凄く強い、これらは全て『アンチ王道』の範疇に入ります。
だから、悪役令嬢ものにはこれらの要素が多いのです。
次に、悪役令嬢ものが『アンチ王道』文学である結果、次々と『悪役令嬢ものから外れる悪役令嬢もの』が生まれる事態が生じている、と言う点です。
悪役令嬢ものは、『アンチ王道』文学として成功するほど、『アンチ王道ものの王道』という自家撞着を起こす羽目になります。
だから、悪役令嬢ものは、出来上がる王道展開を常に回避するように絶え間なく変容していくのです。
例えば、悪役令嬢が王子を好きにならない展開が増えれば今度は王子が大好きな悪役令嬢が出てくる、転生して悪役令嬢になるのが王道化すれば、前世が悪役令嬢という設定が増える、といった具合です。
ではなぜ、悪役令嬢ものは『アンチ王道』を徹底するのか。
それは……
……ちょっと。
さっきから人の顔ばっかりニヤニヤしながら見て、
話ちゃんと聞いてますか?
じゃあなんで人のおでこを撫でているんですか。
話に飽きたんでしょう?
確かにハゲて来たなと思って?
ぶちますよ。
やっぱり飽きてるんじゃないですか。
え?
……今何しました。
とぼけないげ下さい。
人のデコにキスしませんでしたか?
生えてくるおまじない?
本当ですか?
それは凄いですね。
さっそく立派な額を持つ我が校の老獪な教授方に、自慢の弟の特技を教えて差し上げないと。
そう。
そうやって最初から素直に謝っておけば良いんです。
ふふふ。
私をおちょくろうなんて100年早いですよ。」
文句言わないで下さい。
大丈夫ですよ。
最近慣れすぎて目を瞑っても手当て出来るようになりましたから。
少しくらい気が逸れた所で手元は狂いません。
何って、いつも通りですよ。
悪役令嬢について考えてました。
あなたを気にしていると心労でハゲそうになるので。
どんな考えかって?
そうですね。
私も人に話すことで仮説が整理されるので、少し聞いて下さい。
そもそも一口に転生悪役令嬢といっても、その表現は一様でなかったりします。
もちろん、良く見る要素はあります。
『溺愛』とか『ざまぁ』とか『チート』とか言われるのがその代表ですね。
でも、『じゃあ悪役令嬢ものが、それらを表現することを目的にしたものか』と問われると、そこまでは言えないと思うんですよね。
というのも、『溺愛』じゃない悪役令嬢ものも、『ざまぁ』じゃない悪役令嬢ものも、『チート』じゃない悪役令嬢ものもたくさんあるからです。
もし、悪役令嬢ものがこれらを表現する手段として選ばれた作品形態だとすれば、作品の殆どがその要素を持つなどもっと分かち難く結びついていないといけないはずです。
だから、これらは、悪役令嬢ものに取り入れられやすい人気の要素ではあっても、悪役令嬢ものはそれを表現することを目的とした創作ではないのです。
そうなると気になるのが、
『では悪役令嬢ものとは本質的に何を意味するジャンルなのか?』
という所ですが、私はこれを『アンチ王道』である、と考えます。
『転生悪役令嬢もの=アンチ王道』という図式が成立するくらい、悪役令嬢ものとアンチ王道は分かち難く結びついているのです。
『アンチ王道』ではない悪役令嬢ものは存在しないとすら断言できます。
まず、『乙女ゲームの世界』これが即ち王道です。
そしてそこに出てくる登場人物が、王道を実行する存在です。
悪役令嬢ものは、ほとんどの場合『悪役令嬢』が、そして合わせ鏡のように、実は『ヒロイン』も王道を実行しません。
王道を実行することで一番利益を享受するはずの主人公が、性格が改悪されていて自滅したり逆に悪役令嬢の味方になってしまったりするのが、悪役令嬢ものの大きな特徴の一つでもあります。
この、転生悪役令嬢がアンチ王道文学であるというのは二つの側面から補強できます。
一つは、既に挙げた『溺愛』や『ざまぁ』や『チート』が、『アンチ王道』ととても相性が良いと言う点です。
本来愛されないはずが愛される、本来強い立場の側が転落する、本来負ける立場のはずが物凄く強い、これらは全て『アンチ王道』の範疇に入ります。
だから、悪役令嬢ものにはこれらの要素が多いのです。
次に、悪役令嬢ものが『アンチ王道』文学である結果、次々と『悪役令嬢ものから外れる悪役令嬢もの』が生まれる事態が生じている、と言う点です。
悪役令嬢ものは、『アンチ王道』文学として成功するほど、『アンチ王道ものの王道』という自家撞着を起こす羽目になります。
だから、悪役令嬢ものは、出来上がる王道展開を常に回避するように絶え間なく変容していくのです。
例えば、悪役令嬢が王子を好きにならない展開が増えれば今度は王子が大好きな悪役令嬢が出てくる、転生して悪役令嬢になるのが王道化すれば、前世が悪役令嬢という設定が増える、といった具合です。
ではなぜ、悪役令嬢ものは『アンチ王道』を徹底するのか。
それは……
……ちょっと。
さっきから人の顔ばっかりニヤニヤしながら見て、
話ちゃんと聞いてますか?
じゃあなんで人のおでこを撫でているんですか。
話に飽きたんでしょう?
確かにハゲて来たなと思って?
ぶちますよ。
やっぱり飽きてるんじゃないですか。
え?
……今何しました。
とぼけないげ下さい。
人のデコにキスしませんでしたか?
生えてくるおまじない?
本当ですか?
それは凄いですね。
さっそく立派な額を持つ我が校の老獪な教授方に、自慢の弟の特技を教えて差し上げないと。
そう。
そうやって最初から素直に謝っておけば良いんです。
ふふふ。
私をおちょくろうなんて100年早いですよ。」
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