転生悪役令嬢の考察。

saito

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11,転生悪役令嬢の継続調査。

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「いいですか?
絶対大人しくして下さいね。
黙ってやるとあなたが怒るから報告したんであって、邪魔されたいわけじゃないんですから。

本当にわかってるんですか?

よろしくお願いしますね。

今日の風紀委員長は会議があるはずですから、このロビーで待っていれば確実に出たとこを抑えられます。
私が聞き取り調査している間、静かに見ていて下さいね。

話は聞いてもらえるのかって?
それは分りませんが、王子ほどは嫌われていないんじゃないかと。
たまにすれ違うと嫌味を言ってくるじゃないですか。
まだ、話しかける気があるだけこちらに寛容だと思うんですよね。

え、確かにそうですね。
普段周りに嫌われすぎて好意の判定がガバガバかも知れません。
今ならちょっとした一言すら愛の告白に聞こえるかも。

え?あ、はい。
労いどうも。
大丈夫ですよ。
周囲が冷たいのは慣れてますから。

嘘つき?
そんなことないです。

さて、まだ会議が終わるまで時間がありますから、私はもう一度聞きたいことを整理しておきます。

何を調べるのかって、
この世界の『王道』がどんな存在なのかですかね。
前にも言った通り、今は『アンチ王道』が悪役令嬢ものにとって目的なのか手段なのかを考えたいので。
仮に『アンチ王道』を『手段』とすると、その目的は『王道ではない何らかの価値の肯定』であると考えられます。
そうなると、『王道』の中身が重要になってきます。
それと反対の価値を肯定することが物語の目的であるからです。

『王道』の中身自体を否定することに意味があまりない場合、いよいよ『アンチ王道』こそが悪役令嬢ものの目的だという線が強くなります。
実は、密かにこちらの説が私の本命だったりします。
あまり根拠がないので結論として採用するに至れてはいませんが。

『アンチ王道』自体を物語の目的とするには、それが単体で目的たりえる価値であることが必要です。
『勝利』や『愛』などのように、人間にとって絶対的なものかどうか、ということです。

人間にとって絶対的なもの、とはすなわち、その実現が種の存続に繋がるものです。
『勝利』も『愛』も、それが人間の生存に欠かせないので、物語の目的に据える事が許されます。

そうですね。
おっしゃる通り、『アンチ王道』自体が人間の生存に関わるものかと言うと疑問です。
そこで示したいのが、物語における『悲劇』の存在です。

そうです。
悲劇では、人間にとっての不都合が肯定されます。
それが直接人間の生存に関わるとは言えないでしょう。
でも、『悲劇』はしばしば物語の最終到達点になります。

では何故『悲劇』は物語の目的たりえるかというと、私たちの直面する現実に悲劇が溢れているからです。
従って、人が生きていくには、身に起こる悲劇を克服する必要があります。

つまり、悲劇そのものは人間の生存に繋がりませんが、読み手が物語の中の『悲劇』を悲しみ、物語が終わることでそれを乗り越える疑似体験をする事が、現実を生きていくのに不可欠な『悲しみの克服』という価値を産むのです。

私は、『アンチ王道』の物語を読む事が、これに近い効果を生むのではないかと考えています。
本来正しいとされるものが否定される物語を読む事が、生存に不可欠な何らかの克服や癒しを読み手に提供しているのではないでしょうか。

そしてその提供される克服や癒しが何かと言うと、読み手が現実で抱えている個々の疎外感や劣等感に対するものではないかと思うのです。
それは、自分では到底肯定したり受け入れたり出来るものでも、まして外に出せるものでもないかもしれません。
社会の主流から外れるものだからです。

でも、悪役令嬢ものは物語の中の主流を覆す『アンチ王道』文学であるために、それを読み王道が打ち倒される様を疑似体験する事が、読み手の抱える心の憂いを少し晴らしてくれるのだとしたら。
それは『アンチ王道』が物語の目的たりえる十分な理由になると、私は思います。

ん?何か言いました?

そこまで考えが巡るのに何で?
何で、なんですか?

あ、ちょっと、黙ってください。
委員長が来ました。
よいですね、くれぐれも大人しく……って。
ちょっと、止まりなさい。
喧嘩売らないって言いましたよね?

ステイ。

ステーーーーイ。

ああ。始まっちゃった。
今回の調査も失敗ですねこれは。」
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