転生悪役令嬢の考察。

saito

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12,転生悪役令嬢の慈愛。

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「ああ、そうですね。
少し休憩をしましょう。
裏庭が良いですね。
人も少なくてのんびりできます。

物資は全部運び終えましたね。

いえ、今日はこの後お誕生日会に招待されました。
ほら、来た時出迎えてくれたおさげの子ですよ。

この孤児院も、それくらい余裕が出て来たと言うことですね。
嬉しい限りです。
ここなら、私も悪役令嬢じゃないから嫌われてもいませんし。

いえ、私たちの援助なんて微々たるものですよ。
みんなここで暮らす方々の努力によるものです。

あなたも、せっかくの休みにいつも私の自己満足に付き合わせてすみません。

そうですね。
これはあなたの自主的な奉仕活動でもあるんでした。

こうして身分を隠して街に出ると、いかにこの社会が脆いものかわかります。
少しのことで飢饉や疫病が蔓延し、貧しい人から死んで行く。

前世でそれを解決したのは科学でした。
沢山の人間が少しずつ長い時間をかけて技術を発展させ、それを分け合うことで豊かになりました。
もちろん、科学は悲しい使われ方もされていたので、完璧な世界ではありませんでしたが。

ふふふ。
おっしゃる通り。
完璧なんて存在しないのだから、不完全さに罪悪を抱いていたら生きていけませんね。

それでもこの世界の魔法は、科学になるべきです。
魔力の仕組みを解明し、より沢山の人に分け与えられれば、生産性は飛躍的に向上するでしょうし、医学も発展します。
それを独占しているのが今の貴族社会です。

……こんなこと、商人の娘を騙っていないとできる話ではありませんが、魔力を持つ貴族は自分たちの魔力のプロテクトを外して世の中に提供するべきです。
それは貴族の優位性を失わせますが、世の中はもっと便利で豊かになります。
私がいた世界のように。

どうやって、ですか。
ご安心ください。
ヒロインがしてくれますよ。

ヒロインは、魔道具商の娘で、魔力を魔道具に移す高度な技術を持っています。
通常魔術の使い手は、自分の優位性を守るためプロテクトをかけますから、魔道具は希少であり広範に使える技術とは言えません。
しかし、ヒロインの攻略対象は全員優秀な魔力の持ち主です。

そう、身もふたもない言い方をすれば、ゲームの大体のラストではヒロインが攻略対象をたらし込んでで魔力供給源を確保することで、世の中が少し良くなって終わります。

魔力を独占している貴族の象徴たる悪役令嬢を打倒し、魔法を世に広めることへの理解を王子をはじめとした攻略対象から得ることが、この世の中のためになるのです。
私の魔力は大したことがないので、この院の収益源になるパワーストーンに加護を込めるのが精一杯ですが、うちの家はゴリゴリの魔力独占派ですから。

ええ、そうでしょうね。
この話は初めてします。

だって、悪役令嬢が断罪された方が世の中のためになる事を知られたら、悪役令嬢が誰かに見捨てられるかもしれないじゃないですか。

黙っていてすみませんでした。
でも、ずっと勇気が出なく--

な、ちょっと、

関係ない?

そうですね。
今のあなたは商人の娘の幼馴染でした。

……
あの、

……もう少しだけこのまま、抱きしめてもらっていても良いですか?

今の私は、悪役令嬢でも、あなたの義姉でもないので。」
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